No.121654

ようこそ、二次へ 九話

suica.西瓜さん

ようこそ、二次へ 九話です。
今回で恋姫の世界のお話は終わりです。

2010-01-31 20:48:42 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1526   閲覧ユーザー数:1462

いきなり、二次元の世界にやってきてしまった俺。

元の世界に戻るためには七色の物を探し出さなければいけないらしく

二次元の世界の人達とワイワイやりながら頑張る話。らしい。

 

 

前回のそんな感じなあらすじ。

七色の仮面を探して星さんと山へと向かった。

そして、袁招達に絡まれ、華蝶仮面が出てきて

なんやかんやのうちに七色の物が手に入った。

 

では、本編どうぞ!

 

九話 恋姫無双 ~北郷軍⑦~

 

星さんと城に戻った頃には、外はもうだいぶ暗くなり始めていた。

今日はもう疲れたので明日、北郷さんに報告することにして自室のベッドに倒れこんだ。

 

 

「ふぁぁぁぁう・・・まだ薄暗いな・・・」

昨日はかなり早く寝てしまったので、日が上る前に目が覚めてしまった。

「散歩でもするか」

すっかり目が覚めてしまい、二度寝するのもなんなので、大きく伸びをして着替え始める。

 

「んー、早朝散歩っていいものだなー」

のんぴりと城の庭辺りを歩く。

「しっかし、今日でこの世界ともお別れかぁ・・・」

今日の夜、この世界で世話になった人達に別れの挨拶をして旅立つ事にしていた。

幻想郷の時は七色の物に触れたら、1分も経たずに意識がとんで、この世界に来てたから、

紫さん達にゆっくり別れを言う暇がなかった。だから、今回は少し余裕をもって挨拶をしたかった。

「あらぁ?サクちゃんじゃないの」

不意に後ろから声をかけられた。

「あれ?貂蝉さん。こんな時間にどうしたんですか?」

「こんな美女を捕まえて、そんな野暮なこと聞いちゃうのかしらぁ。

実は、今からご主人様の所に行って朝這いするつもりなの、あ・さ・ば・い♪きゃ言っちゃった」

「えっ!?」

「うふっ冗談よ、冗談」

冗談に聞こえないのが怖いんですけど・・・。

「そういえば、星ちゃんから聞いたわよ。七色の、見つかったんですってね」

「はい!おかげさまで」

「もう行っちゃうのかしら?」

「今日の夜に行こうと思います」

「そう、残念ね。もう少しゆっくりしていってもいいんじゃないのかしら?」

「出来ればそうしたいんですけど、ここの主人公は北郷さん。俺みたいな異物が

いつまでも居ちゃいけないと思うんです。だから、皆さんにお別れを言って男らしく

潔く行きたいと行こうと思います」

「ふふっご主人様より先に会ってたら、あなたに惚れちゃいそうよ♪」

「は・・・はは・・・」

自分の笑顔が異様に引きつってるのが鏡を見なくても分かる。

「じゃあ、またね。チュ」

貂蝉さんは投げキッスをして去って行く。

背筋が凍るような寒さを感じながら俺は散歩を再開した。

城周りをゆっくり一周して食堂へと向かう。

朝日も昇ってきて、朝食も出来ている頃だろうと考えながらフラフラと歩く。

 

「おーい、サク」

食堂前でバッタリと北郷さんと鉢合わせになる。

「おはようございますー」

こっちから行く手間が省けたなぁと思いながら挨拶をした。

 

朝食をとりながら俺は昨日のあった事を話す。

「そっか、今日の夜に行っちゃうのか・・・」

北郷さんは少し残念そうな顔をする。

「今まで本当にありがとうございました。俺、北郷さん達に出会えて良かったです」

「ははっ、かしこまってそう言われるとなんか照れるなぁ」

 

そんな話をしていると

「ご主人様!!ご無事ですか!!?」

と物凄い剣幕で愛紗さんが食堂に駆け込んでくる。

「どうしたんだい?」

ただ事じゃない雰囲気に北郷さんの顔に緊張が走る。

「あやつが、華蝶仮面が城内に現われたんです!!」

「なんだ、華蝶仮面かぁ」

北郷さんは強張った顔の筋肉を緩めて安堵した。身内の犯行と分かれば心配ないと思うのも当たり前だろう。

だけど・・・

「なんだ、ではありません!ご主人様がその様な態度だからあやつが好き放題するのです」

星=華蝶仮面と気付いていない人からしたら一大事なのだろう。

しかしながら、気付いていない人は、何を基準に星さんを認識してるのか気になる・・・。

「それで華蝶仮面は?」

「今、鈴々と翠が追ってるところで・・・」

愛紗さんが現状の報告し始める。

その横で俺は、華蝶仮面が現われたと言う報せを聞いた時に、気に掛かった事があった。

まさかとは思うけど・・・

「愛紗さん、今日の華蝶仮面、虹色の仮面をつけてませんでしたか?」

「うーん?そういえば、つけていたような・・・」

「やっぱり・・・」

嫌な予感は当たってしまうらしい。

北郷さんも気が付いたようで

「サク、それって・・・」

と苦笑いをしている。

「何が、それって・・・なのですか?」

一人だけ状況が分かっていない愛紗さんは首を傾げる。

「えっと、その、華蝶仮面がつけてる仮面、俺の探してる物です・・・」

「なに!?では、取り戻しさねば!!」

「あっ、ちょっと、まっ・・・行っちゃった・・・」

止める言葉も虚しく、愛紗さんは走って食堂を出ていく。

「俺達も行こうか」

北郷さんは俺の肩を軽く叩く。そして、愛紗さんを追いかけて二人で食堂を出た。

「北郷さん。星さんはなんでこんな事を・・・?」

「たぶん、サクに返す前に、一度着けてけてみたくなったんだと思うけど・・・。

それで、着けたらテンションが上がって・・・的な感じじゃないかな」

「なるほど」

星さんならやりかねない。と納得。

「でりゃああああぁぁぁぁっ!」

戦っている場所を報せるかの様に激しい金属音と翠さんの声が聞こえた。

「向こうからだ」

走って声の方へ向かう。

 

「てりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ」

現場に着くと鈴々が蛇矛を振るっていた。

「はっ!」

それを軽くいなすのは華蝶仮面。

「避けてばっかりでつまらないのだ!」

「猛将3人相手に真正面からやりあうほど馬鹿ではないのでな」

そう言って少しだけ間合いを取る。

「ふん、そんな余裕を言ってられるのも今のうちだ。今日こそおまえを捕まえてやるぞ!はああぁぁぁ!」

素早く間合いを詰めた愛紗さんが青龍刀を横薙ぎに振るう。

「くっ!?」

避けるのに間に合わず重い一撃を槍で防ぐ。

それを好機とみた鈴々が追撃をかける。

「うぐぅ!!?」

受けきれずによろけた所に翠さんと愛紗さんが得物を振り上げる。

「みんな、ちょっと待って!!」

やばいと感じた北郷さんが声を張り上げて止めようとするも、その声は届かず、武器は振り下ろされた。

「っ!?」

振り下ろされた瞬間、俺はその光景から目を背けてしまう。

 

ガキン!

 

「なっ!!?」

「えっ!!?」

金属音がした後、翠さんと愛紗さんの驚愕の声が聞こえ、背けた目を二人へと移す。

「ええっ!!?」

そこには二人の攻撃を素手で受け止めている、蝶の仮面をつけた貂蝉さんが星さんを守るように立っていた。

・・・つか、ガキンって何の音?・・・まさか素手からっ!?貂蝉さんなら有り得そうだから怖い・・・。

「はぁ・・・」

星さんが無事なのを見て北郷さんは胸を撫で下ろしている。

 

「貴様ッ!?どこから現れた!!?」

貂蝉さんに得物を向け愛紗さんは疑問を口にする。

「仲間の危機に颯爽と現れる美と正義の使者、華蝶仮面2号!現れ方は乙女の秘密よ♪」

「すまぬ。助かった2号よ」

「気にしないでいいわ。それよりココはアタシに任せておきなさい」

「恩に着るぞ!」

そう言って星さんは走り去る。

「あっ待つのだ!!」

鈴々が追いかけようとするがその前に2号が立ち塞がる。

「うぅ、退くのだ!」

「貴方達の相手はア・タ・シ」

「くっ!?こんなバケモノの相手をしなければいけないのか?」

愛紗さんが武器を構え直す。

「こんな花も恥じらう乙女に向かって、この世の言葉では言い表せないほどのバケモノですってぇ!?

ひどいわ、ひどいわ、ひどすぎるぅ~!・・・ふんぬううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「そこまで言ってないであろう!?」

そして、拳と槍がぶつかりあう。

 

あの3人相手に貂蝉さんは、一歩も引くことなく立ち合っている。

「チートすぎる・・・」

呆然と立ち尽くす俺に北郷さんが

「星を追いかけよう」

と言い星さんが去って行った方へと走りだす。

「あっ・・・はい」

俺もその後に続く。

 

「何処に行ったんだ?」

追いかけて来たが星さんの姿は全く見当たらない。

「はーはっはっはっ!何処を探している」

声のする方を見ると、木の枝の上に立っている華蝶仮面がいた。

「すまぬが、そちらの殿方には御退席願いたい。大丈夫だ、危害を加えるきはない」

木から飛び降りて北郷さんの方を見て言う。

「・・・うん、分かったよ。サク、また後で」

そう言うと踵を返して歩き出す。

北郷さんの姿が見えなくなると華蝶仮面はこちらに向き直り

「すまなかったな。華蝶仮面の正体は私だ」

と言って仮面をはずす。

「どうした?驚いて声も出ないかのか?」

素顔になった星さんは笑っている。

「・・・・・・すいません、最初っから気付いてました」

「そうだろう、そうだろう・・・・なにっ!?」

自分の予想とは全く違う答えが返ってきた星さんはかなり驚いている。

「お主・・・なかなか鋭いのだな。見直したぞ」

「ありがとうございます」

一部の人以外にはとっくにばれているというのは言わないでおく事にした。

「でも、どうしてこんな事を・・・」

「いやな、お主に返す前に一度着けてみたくなってしまってな。着けたらこう、体の底から湧きあがるような

高揚感が襲ってきてな、気が付いたら外にいたのだ」

悪びれもなく笑う星さんは北郷さんの予想通りの行動をしていた。

「ふむ、では戻ろうか」

七色の仮面を懐に入れて、愛紗さん達が戦っている方へと歩き出した。

 

「おーい、愛紗ー!取り返したぞー!」

さっきの場所まで戻ってくると2号と愛紗さん達がまだ戦っていた。

「おぉ!星、でかした!!華蝶仮面はどうした?」

「すまぬ、あと一歩のところで逃げられてしまった・・・」

「そうか・・・」

「1号が逃げ切れたのならアタシの役目は終わりのようね。じゃあね♪とぉう!」

2号は有り得ない跳躍をして3人の前から消える。

「あっ、待ちやがれ!」

「待つのだ!」

追いかけようとする鈴々と翠さん。それを

「ちょっと待った。深追いするのは危ないよ」

と先に戻ってきていた北郷さんが止めに入る。

「でもよぉ、ご主人様・・・」

「大丈夫、ちゃんと警備を強化しておいたから」

「うぅ・・・ご主人様がそう言うなら・・・」

渋々と翠さんは食い下がる。

 

その後、警備隊からの報告は当然の事ながら「怪しい人物は見受けられなかった」だったらしい。

 

夜。

この世界との別れの時が一刻一刻と近づく。

華蝶仮面の事件の後、七色の蝶の仮面は北郷さんに渡された。

俺は、世話になった人達に挨拶をして回っていた。

そして今、玉座に一部の人間だけが集まっている。

「じゃあ、サク。これを」

北郷さんが七色の仮面をさしだす。

「ありがとうございます」

それをゆっくりと受け取る。

すると、幻想郷の時のように体が光を帯び始める。

不思議な光景を目の当たりにしている武将たちは小さく驚きの声を出したが、すぐに何かを理解したようだった。

「みなさん、今日までありがとうございました!では、お元気で」

「サクも気をつけてな」

「またねなのだ!」

「元気でな」

そこにいる皆がそれぞれ別れの言葉を言う。

体の光が強くなり浮遊感が来る。

「さようなら」

そして、落ちていく感じがした。

 

 

 

これで元の世界に帰れるのかな・・・?

それともまた、違う世界に行くのだろうか・・・?

あぁ・・・また・・・意識が・・・・・・

 

 

九話 恋姫無双 ~北郷軍⑦~ 終わり


 
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