赤壁の戦いは連合軍の勝利に終わった。
一刀は蓮華達のところに戻り、変身を解いて勝利を喜びあった。
(これでいいんだよな。この世界は……。なあ、別の世界の俺達……)
一刀がふと前に会ったアギトの一刀と電王の一刀の事を思う。
彼らの居る世界はどんな風に戦いを終えたの出ろうと……。
そんな時、穏に抱きかかえられた冥琳が近づいてきた。
「冥琳……見ていたか? 勝ったぞ。……我ら孫呉の勝利だ」
「ええ……見事な勝利でした……」
すると冥琳は力が抜けたように倒れそうになり、穏が倒れる寸前に抱きとめて、冥琳を寝かせるようにする。
「ああ……。だから……だから冥琳。私達が勝ったのだから、死ぬな……死なないでくれ……」
蓮華が泣きながら冥琳に言う。
「ふふっ……これは天命。命が尽きるのは、もはやどうにもなりますまい。
だが最後に、孫呉の勇姿を見られたこと、天に感謝しなければなりませんね」
「うっ……グスッ……冥琳、どうして……どうして……」
「泣かないで、蓮華様。私の役目はもはやこれまで…。
後は、あなた達若者の手で、国を守っていけば良いのです」
「だが……だが、私達にはまだ、冥琳の支えが必要だ!」
「ふふっ…そんなことはない。子は親を越え、立派に戦ったではありませんか」
「私は…立派に戦えていたか?」
「ええ…。孫呉の王として、立派に…」
「だが、私はまだ……冥琳に支えていてほしかった!」
「大丈夫ですよ……あなたの支えは他にあるでしょう?」
冥琳に言われて蓮華は自分の周りを見る。
穏、亞莎、思春、明命、祭、キバット、タツロット、それに一刀が皆居る。
「北郷……ここへ」
「ああ」
冥琳は一刀を呼んで、一刀も冥琳のところに行く。
「蓮華様……お手を……」
「ああ……」
冥琳は一刀と蓮華の手を繋げる。
「こうして二人、手を携え…互いを支え合えば、その力は何者にも負けないものとなるでしょう…。
そして手の取り合って平和を享受すべき……劉備との結盟。
これで天下二分の計は成った……」
「ああ……全て冥琳のお陰だ」
「ふふ…これで心残りなく、雪蓮に逢いに逝けます……。
私は立派に務めを果たした……と、胸を張って雪蓮に報告しましょう」
「冥琳……」
「北郷……」
「なんだ?」
「蓮華様を頼むぞ」
「そんなの……頼まれなくたって、ずっと蓮華を支えてやるよ。
だから安心して逝ってくれ」
一刀も泣きそうになるが、一刀は泣かないことを決めたため、泣くのに堪える。
(泣くのはまだ後だ……)
「ああ……その言葉を聞きたかった。これで安心して逝ける…」
「冥琳!」
「蓮華様、私は…雪蓮の名を。己の名を…そして皆の名を、歴史に残すことが出来ました。
為すべきことを為せたのです……こんなに嬉しいことはない。
さぁ……もはや終幕……。皆……先に逝く。後は……頼むぞ……」
そして冥琳は目を閉じ、安らかな永い眠りへとついた。
「冥琳!」
「冥琳様!」
「そんな……こんなのって……無い……!」
「冥琳様……冥琳様……!」
「わしより先に逝くなど、この馬鹿者め……。もう偉そうに説教できんでは無いか。本当に馬鹿者じゃ、貴様は…!」
「冥琳……姉様のところに逝ったんだね」
「周公謹殿……安らかにお眠りください……」
「私は、私はまだ…まだお前に色々と教えてもらいたかった! もっと話をしたかった!
なのに…なのに、姉様と同じように、お前は私を置いて逝くのね……」
そんな蓮華の肩に一刀が手を置く。
「人にはいつか別れの時が来る。でも、俺達と冥琳の絆が切れたわけじゃない。
冥琳の生きた証。俺達はその証を引き継ぐことが大事なんだ」
一刀がバイオリンとバイオリンの弓を持つ。
「冥琳……。俺は泣かないと決めた。だけど俺はその決まりを破る。
俺は今から泣く……。お前のために……」
一刀はバイオリンを奏でる。一刀は泣いていない。だがその奏でられた音には一刀の泣く声が聞こえてくるように皆が感じた。
一刀はいつの間にか変身していた。その姿は仮面ライダークウガアルティメットフォームを超える、ライジングアルティメットフォーム。それも赤い瞳で……。
「蓮華…立って。そしてこれまでの戦い全てに決着をつけよう。
皆と一緒に。死んでいった人達に聞こえるように。盛大に。戦いの終わりを伝えよう……」
「…ええ」
そして蓮華は立ちあがる。
「親を子を。伴侶を友を。失いながら戦った、長い長い戦いの日々。
その戦いが、ようやく終わりを告げたのだ……。
悲しみを。怒りを。苦しみを…。今は飲み干して高らかに謳おう。
天に向かって。未来に向かって………。
……………………………………勝ち鬨をあげよ!」
兵達が勝ち鬨をあげる中でもクウガはバイオリンを奏でる。
「天国で俺達を見ていてくれ……」
それから幾ばくの時が流れた。
ここからは劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王の主題歌「Circle of Life」が流れているものだと思ってください。
一刀はキバ飛翔態となって呉の領土を上空から視察していた。
(特にこれと言ったことはないな……)
一刀はそんな事を思いながら、別の事を思っていた。
それは赤壁の戦いから少し経った日。曹操を探していた皆の元にある情報が届く。
それは曹操が本城に帰らず、何人かの側近と共に海を渡ったとの事であった。
もっとも一刀はその事を知っていたが、その向かった先が日本だと言うことは一刀には驚きだった。
(でも外史だから当たり前かな……。となると、あのマッチョなおっさんは……。誰だ?)
あのマッチョな男の正体が分からないので、もし管輅に会うことがあったら、聞いてみよう一刀は考えた。
そして曹操が居なくなったことで、劉備は西、蓮華が東を治め、天下は二分されたのだった。
(さてと……そろそろ帰るか……)
キバ飛翔態は自分の家に帰る。
そしてキバ飛翔態が城に戻って、キバエンペラーに戻り着地し、変身を解いて元の姿になって城の中庭を歩く。
すると……。
「だんな様~~~~?」
「うん?」
一刀を呼ぶ声が聞こえ、一刀、キバット、タツロットがその声がするほうを振り向く。
声の主は穏であった。しかも子供付き。
「穏。どうしたの?」
「今日は陸延と遊んでくれるお約束でしたよ?」
「そうだっけ?」
「忘れてたなんて、ひどいです~」
「まあ遊んでやるよ」
「じゃあ、周邵と遊んで下さるってお約束は、覚えてくれてましたか?」
今度は明命が来た。こっちも子供付き。
「いたのか……。遊ぶのは別にいいぞ」
「良かったです♪」
「じゃあ二人まとめて遊んでやるぜ」
「おいおい。では黄柄は父と一緒に遊べないとでも言うんかい?」
さらに祭が来た。しかも亞莎付き。またしても子供付き。しかも二人。
「あ、あの……だんな様は呂琮と遊んで下さると思っていたのですが……」
さらにさらに思春も来た! やっぱり子供付き。
「待て。甘述の面倒を見ると約束もしていたはずだが?」
「仕方ないな……。いくらでも相手してやる!」
そこでとどめに蓮華が来た! 子供付き。
「へぇ~六人の子供と遊ぶの? 子供を舐めてると死ぬわよ、一刀」
「蓮華」
「孫登と遊ぶ約束していたの、よもや忘れたとは言わないわよね?」
蓮華の恐ろしいプレッシャーが一刀を襲う。
「忘れてた……。だがさっきも言ったようにいくらでも相手しやる!」
「シャオも一緒に遊ぶー!」
「勘弁して下さい」
一刀は小蓮に頭を下げて謝った。
「ぶー! あーあ、シャオも早く一刀の子供が欲しいなぁ~」
「いつかな……」
「一刀。子供達の前でふしだらな事を言うな。……全くもう。ほら、早く子供達と遊んであげて」
「はいはい。キバットとタツロットも手伝えよ」
「おいおい……」
「何でですか~!?」
「オートバジンも使うから我慢しろ」
一刀がファイズフォンでオートバジンを起動させて、オートバジンをバトルモードにして子供達と遊ばせる。
キバットとタツロットも子供達にいじられる。
「ははは……」
一刀は空を見上げる。
(俺はこうして幸せに暮らしてる。……人間として……。
……お前達も幸せか? 別の世界の俺達……)
仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編 完
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基本的には真・恋姫†無双の呉ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
なお、今回で呉編の本編は終わりです。
そして仮面ライダー×真・恋姫†無双シリーズも一端ここで幕を閉じます。