scene-教室
「辛い……」
一刀の顔色は悪かった。
原因はわかっている。
「昨日は飲みすぎた……」
二日酔いだった。
「みんなは……大丈夫か、やっぱ」
自分以上に飲んでた者達の顔を思い出す。
「夢……じゃ、ないよな、この辛さは現実だ……」
息ケアとガムで、なんとか匂いは誤魔化したが、二日酔いの症状は治っていない。
遅刻しなかったのが奇跡だった。
異世界から戻ってからさらに力を入れていた部活。
その朝錬も酷い顔色を見せたら部長に休めと言われた。
放課後の部活も休んでいいと。
「ちょっと気がひけるけど」
「な~にブツブツ言っとんのや?」
机につっぷしたまま考え事をしていた一刀に、友人の及川が声をかける。
「ん? なんだ及川か」
「なんだはないやろ、ロリ鬼畜だけでは飽き足らず、ついに頭おかしゅうなったかって心配したやんか」
「ああ、悪い……って、なんだよロリ鬼畜って!」
「しらばっくれるんか? こんなちっさい娘こましといて」
携帯の画面を見せる及川。
「あ~、そいやお前と会ったって、言ってたっけ」
「かずピーはてっきりおっぱい大好き~やと思ってたけどな~。巨乳以外は乳やない! って」
「だから何度も言ったろ、祭さんとはそんなんじゃねえって」
祭がこの世界にいると知ってからまめに会いにいっていた一刀。及川は友人にやっと春がきたと騒いでいたのだが。
「まさか、真逆の貧乳派やったとは!」
「いや、大きいのも好きだぞ。ほら、天和にも会ったんだろ? 天和でかいじゃん?」
「お~! あの娘、むっちゃ可愛かったな~。ホレ、これなんて昨晩お世話になったで」
そう携帯を操作して画面を切り替え、天和のバストアップを映す。
「お世話って、お前……」
その意味を察してジトっと見る一刀。
「そういや天和たちをナンパしたんだって? ……またフラレタのか」
「ぐさっ」
「残念だったな」
「ぐさっぐさっ……って、かずピー、あん娘らともなんか!?」
「さあな」
一刀は勝利者の微笑を浮かべるのだった。
scene-漢女塾教室
フランチェスカの授業が終わり、一刀は急いで乙女神宮へ。
巫女として神社の仕事をしていた祭に会い、皆は教室にいると教えられすぐに向かった。
教室を覗いて見ると、華琳が声をかけられる。
「一刀、遅いわ」
「これでも早いほうだぞ。今日は部活やんなかったし」
「兄ちゃんサボり?」
「体調不良」
「どこか悪いんですか?」
心配そうに流琉や凪、明命が見ている。
「いや、ただの二日酔い」
「なんだ、あの程度でだらしない」
そう言ったのは春蘭。
一刀に深酒させた数名の一人である。
「誰に飲まされて二日酔いになったと……いえ、なんでもないです」
「で、こっちも授業終ったの?」
卑弥呼がいないのに気づいた一刀。
「神主の仕事があるんだって~」
季衣が空いてる席に座ったばかりの一刀の膝に座りながら説明した。
「参拝客いなくても仕事あるのか?」
「そうらしいのです。風たちもお仕事があるそうなのですよ~」
風が教室の後ろを指差した。
「当番表?」
張られた紙には曜日と、皆の名前が書かれていた。
「今日の授業はそれの決定と、こっちの基礎知識。といっても文字や記号だけだけど」
華琳が教科書らしきものを持って言った。
「ま~、半日くらいならそんなもんじゃないか? 華琳や軍師はともかく、まだ全部覚えてないやつだって」
自然と、春蘭に視線が集まった。
「わ、わたしだって全部覚えたぞ!」
「平仮名であいうえおって、書ける?」
「そ、それぐらい……」
チョークを持ち、黒板にあいう……と書いていく春蘭。
「どうだ!」
自信満々の春蘭だが。
「おかしい……」
「なっ! どこが違うというのだ!?」
「いや、間違ってるのは当然なんだけど、”え”が旧仮名の”ゑ”だったり、”お”が”を”だったり、こんな微妙な間違いなんて春蘭らしくない!」
「なんだそれは!」
「それはな、北郷。姉者は部屋にあった漫画に熱中してな。もう平仮名もカタカナも読むだけならできるのだ」
「ああ、なるほど」
秋蘭の説明に納得する。
「そういうわけだから一刀、出かけるわよ」
「うん。本屋か図書館か?」
「もっと大事なところよ」
「ん?」
華琳にそう言われて少し考えてみる。
「大事? ……高級料理店か? それはちょっと無理だ。俺案内できないぞ」
「惜しいかもしれませんね。しかし、食ではありません」
稟が言ったことがヒントとなる。
「食じゃなくて大事となると、衣か住か? 住むとこはここだから……」
「そうなの! 服なの~♪」
嬉しそうな沙和。
「あ~、それならなんとか案内できるかな? さすがに詳しくはないけど。でも、普段は巫女服なんだろ? フランチェスカいくようになれば制服になるだろうけど」
「当番決めたって言うたやろ? みんながずっと巫女さんやるわけやないらしいで。非番の日もあるっちゅうわけや」
「せや。そん時は私服でもええって卑弥呼も言うとる」
当番表を指差す霞と真桜。
「それにもっと切実な問題があります」
やや赤い顔で凪が言う。
「毎日風呂に入れるのはいいのですが……」
「え? タオル……手拭いがない?」
「違うのですよ。お風呂あがりには綺麗な下着を着けたいと思うのが人情というものなのですよ」
「ああ、下着か…………って、ええっ!?」
解答を教えてくれた風の言葉に一刀も顔を赤くした。
「さあ、行くわよ!」
「ちょっ、俺がみんなと下着売り場に?」
「そうよ一刀しか案内できないでしょう?」
「祭さんは?」
「巫女の仕事があるわ」
一刀は必死に抵抗する。
「お、お金は持ってるの?」
「私達がむこうから持ってきたものを卑弥呼が換金してくれたわ。金額が妥当なものか確認して」
桂花が自分名義の通帳を見せる。
「神主さん手回しよすぎだろ……って、なんだよ、この金額!」
「安すぎるの? やっぱり男なんて信用できないわ!」
「逆だ、逆! こんな金額になるなんて……」
桁を何度も数える一刀。
後日、フランチェスカの歴史資料館の展示品が増えたことと関係があるかは不明である。
「季衣はわからないか?」
「ボク、華琳さまが選ぶような下着売ってるとこなんて知らないよぅ」
「俺だって知らないって」
「あ、明命ちゃん、こっちじゃたぶん女の子用の褌は売ってないからね」
季衣にそう言われ、焦る明命。
「そ、そうなのですか! それは困りました……」
「ふ、褌!?」
「あれ? 兄ちゃん褌好きなの?」
「い、いや……好きと言われれば好きと言うか、すごく見たいと言うか……」
「師匠もね、褌愛用してるんだよ~」
卑弥呼の褌姿が頭に浮かんでくる一刀。
「女の子限定だ! あと神主さんの褌借りてはくのも禁止!」
「ちぇ~、せっかく兄ちゃん喜ばせてあげようと思ったのにな~」
「わ、わたしでよろしければ、今度お見せするのです!」
真っ赤になって明命がそう言う。
今度是非! そう答えたかったが、皆の視線があったので困ってしまう一刀。
「褌はともかくとして、皆の下着を選んでもらいましょう」
「だからそれは勘弁してくれ! というかさらにハードル上げないでくれ~!!」
一刀の願いはあっさり却下されるのだった。
<あとがき>
遅くなりました。
日常生活準備編です。
デパートへ続きます。
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対姫†無双、追姫†無双の続編です。
四話目です。
だらだらモード継続中です。