作られた外史、外史と言えど基本の流れは正史と同じはずだったが、この外史は何か少し違っていた。
その始まりは嵐のように突然のことであった。
仮面ライダー×真・恋姫†無双 呉編 序章
それはある世界の夜から始まる。
「ふむ……もう春じゃと言うのに肌寒いのぅ」
「気候が狂っているのかもね。……世の中の動きに呼応して」
「…確かに、最近の世の中の動きは、少々狂ってきておりますからな」
「官ぴの圧制、盗賊の横行。飢饉の兆候も出始めているようだし。……世も末よ、ホント」
「うむ。しかも王朝では宦官が好き勝手やっておる。盗賊にでもなって好きに生きたいと望む奴が出るのも、分からんでもないな」
「真面目に生きるのが嫌になる、か。……ま、でも大乱は望むところよ。乱に乗じれば私の野望も達成しやすくなるもの」
「全くじゃな」
「今は袁術の客将に甘んじてるけど。…乱世の兆しが見え始めた今、早く独立しないとね」
「堅殿が死んだ後、うまうまと我らを組み入れたつもりだろうが…いい加減、奴らの下で働くのも飽きてきたしの」
「そういうこと。…だけどまだまだ私達の力は脆弱。…何か切っ掛けがあれば良いんだけれど」
「切っ掛けか。そういえば策殿。こんな噂があるのを知っておるか?」
「どんな噂よ?」
「凄まじき戦士、闇を切り裂き、光をもたらす。天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す。……管輅と言う占い師の占いじゃな」
そんな話をしている時であった。
突然流れ星がその策と呼ばれる女性とその策よりも年がいっている女性の目の前に落ちてきて視界が白くなった。
「ん……んん……戻っ………た?」
「策殿、お怪我はないか!?」
「大丈夫よ、ありがと。…でも今の、一体なんだったのかしら?」
「分からん。妖が我らを化かしに来たのか……」
そして二人は目の前をよく見てると、先ほどまでなかった地面の凹みとそこに倒れている一人の青年を見つける。
「さっきはおらんかった。…あやつが妖か?」
「でもさっきの光と関係しえるのかしら?」
「光と共に現れた小僧、か。……管輅の占い通りと言うことか?」
「占い通り、ねぇ。と言う事は、この子が天の御遣いって奴かな?」
「占いを信じるならばな。確かに、この世のものとは思えん服を着ておる。あながち外れとも言えんじゃろ」
「本当なら面白いんだけどね……あら?」
「どうした? 策殿」
「この子の右手、何かを持ってるわ」
策はその青年の右手をあけてみると、その青年は何やからくりのようなこうもりを持っていた。
「何これ? こうもり?」
「じゃが、からくりのようじゃな。しかし見た事ない」
「まあ、仕方ないわ。連れて帰りましょう」
青年はその二人の女性により二人の住む所に連れてかれた。
そして翌日の朝になり青年は目を覚ました。
「ここどこ?」
青年は辺りを見るが、とても自分が居た部屋とは思えなかった。
「おっ? 目が醒めたか、小僧」
「へっ?」
「気分はどうだ? 怪我はしとらんか?」
「その前に、誰?」
「ん? わしか? わしの名は黄蓋。字は公覆と言う。以後見知りおけ」
「黄蓋……え!?」
青年は黄蓋と言う女性の名前を聞いて驚く。
「どうしたのだ?」
「わるいけど、ここどこ?」
「ここは荊州南陽。我が主、孫策殿の館よ」
「荊州!? そんで孫策って……」
青年は悪夢を見ている気分だった。
(落ち着け、北郷一刀……。いまあの人は黄蓋っと言った。
そしてここは荊州で孫策ってのも言ってたってここは……三国志の時代?
だが黄蓋が女なのはおかしい。じいさんならともかくばあさんとはいってないけどそれなりに年のいったおばさんだ。ここは別世界なのか?)
一刀の頭は混乱状態になっていた。
「お主、名は?」
「俺は北郷一刀だ」
「姓はほん、名はごう、字がかずとか」
「全然違う。姓が北郷、名が一刀。字はない」
「字がない? ふむ……。では更に質問じゃ。昨日の夜、あんなところで何をしていた?」
「あんなところ?」
「この街の外れ。最近、盗賊の出ると噂が出ている場所じゃ」
「知らん」
「ふむ? どういうことじゃ?」
「俺は自分の部屋にいた。そして目が醒めたらここにいただ」
「わしの質問に答えられんのか?」
「答えた結果がこれだ。これ以上の答えを俺に求めないでくれ」
「ううむ……」
二人は悩んでいると突然扉が開く。
「おっ、起きてる起きてる。おはよう少年。気分はどう?」
「状況が理解できてないから、あまりよくないってのが本音だな」
「へぇ~。その割にははきはき答えるのね」
「混乱しすぎて一回りして、冷静になってるだけだ。
で、あんた誰?」
「私は孫策。字は伯符。この館の主よ」
その孫策の紹介を受けても一刀は冷静であった。
「あんたが孫策か。(これで異世界確定だ)」
「あなたの名前は?」
「俺は北郷一刀。姓は北郷で名が一刀。字はないからな」
「へぇ? 珍しい名前ね」
「それはどうも」
孫策と一刀は話し合い、昨晩の事を一刀に話すが、一刀は完全には理解していない。
「ところでこれはあなたの?」
「うん?」
孫策が一刀にあるものを見せる。それは一刀が右手に握っていたものであった。
「俺のじゃないけど、それをどこで手に入れた?」
「あなたの右手にあったのだけれど……、あなたのじゃないにしてもこれが何なのか分かるの?」
「ああ、キバットバット三世だ」
「きば…っと…」
「ばっと?」
(でもこれおもちゃのはず……!?)
一刀の頭に突然、自分がそのキバットバット三世を使ってあるものに変身するものの映像が流れた。
「どうしたの?」
「大丈夫だ。とりあえず言えるのは俺が持ってたのなら俺が持ってた方がいいことと、
それの使い方は俺しか知らないし、俺以外が使ったら死ぬって事だな」
「それって妖術かなにか?」
「そうかもしれないが、妖術ではない。そもそもこの世界のものでもないし、俺はこの世界の人間でも時代の人間でもない」
「この世界の人間ではないとはなんじゃ?」
「この時代の人間じゃないってのも気になるわね…それ、どういう意味かしら?」
一刀は出来る範囲での説明をした。そして何とかだがすぐに殺されるのだけは回避し、しばらく軟禁されることになった。
(まあ、キバの力なら簡単に出れるだろうけど……、やめとくか。やっぱりちょっと怖いし……)
キバというのは北郷一刀が見ていた特撮番組「仮面ライダーキバ」で主人公が変身する仮面ライダーキバである。
しかしそのキバというのは恐ろしい事にその番組で出ている怪人もしくはその怪人の血を引いてないと変身したら死ぬというものである。
「夜の訊問でお主の運命が決まる。……まあ悔いの無いようにな」
とりあえず孫策はキバットバット三世を一刀には渡さずに部屋を出る。
(もし死ぬ事になったらキバットを無理やりでも取りあげて変身するしかないな)
一刀は可能な限りの状況を整理し、それに失敗したらキバに変身する算段もした。
それから夜になり、再び訊問が始まった。
その場には昼と違い、周瑜という孫策と年が変わらなさそうな眼鏡をかけた女性も加えてのものだった。
一刀は生まれた国の事をきちんと話す。
そして未来とか異世界の事になり、一刀はキバットバット三世を出して欲しいと言う。
「これから起こる事は事実だからな。絶対妖術とは思うなよ」
そう言うと一刀はキバットバット三世の口を開ける。
「ガブリ」
そうすると一刀の口の下辺りからステンドグラスが浮かび上がり、ベルトが一刀の腰に現れる。
「変身」
その言葉と共に仮面ライダーキバへと変身した。
「うわぁあ」
「安心してただ変身しただけだから……」
「やっぱり倒す!」
「ちょっと……!」
そして部屋の中で暴れたが、キバの力は常人以上。しばらくすると孫策をキバが抑えてしまった。
「落ち着いた?」
「ぐぅ……」
「まさか雪蓮を負かすとは……」
「別に勝つつもりなんてないよ」
一刀は変身を解いて元の姿に戻り、孫策を抑えている手を離す。
「しかしそれはどうなっておるのだ?」
「俺以外の人間がそいつにかまれたら死ぬ。それだけは思ってくれ」
とりあえず孫策は軍師である周瑜に判断を聞く。
「本当にこやつが天の御遣いかどうかは分からないが、少なくとも我らの知らぬ国からやってきたということは分かる。
それに確かに胡散臭いが、人柄は悪くない。何よりまっすぐで良い目をしている。こういう人間は、多少抜けているところがあっても、悪人になりきれんだろう。
それに先ほど雪蓮を抑えた時も、その気になれば我ら三人を倒すどころかこの館からの脱出も出来ただろにそれをしなかった。それが何よりの証拠だな」
「お眼鏡に適ったか。わしもこやつの度胸ぶりは、なかなか好もしいと思っておる」
「なら決まりかな」
「天の御遣いとして祭り上げる資格はあるだろう。雪蓮の好きにすれば良いわ」
「了解♪」
なにやら孫策は嬉しそうであった。
「何かあるの?」
「お主がここに来る前に管輅と言う占い師の吹聴があってな……」
「管輅曰く、流星と共にやってくる者は、この乱世に凄まじき戦士が闇を切り裂き、光をもたらして鎮める天の御使いである、とな」
「なるほど……大体分かった。だが今の俺は一人ではこの世界では生きられない。助けてくれないか?」
「いいわよ、私達と行動するって事ね?」
「ああ、それでいい」
「ただし、条件があるわ」
「何だ? できる事ならやる」
「ええ、まず一つ。あなたの知恵を呉の統治に役立てる事」
「どういうことに使うんだ?」
「あなたがいた世界で知っている事を、私達に教えなさい」
「ああ、あんた達が理解できるかはわからんが、それならいい」
「もう一つは私に仕えている武将たちと、あなたから率先して交流を持つこと」
「いいけど、どんな交流?」
「有り体に言えば口説いてまぐわれってことね」
「口説くのはいいが、まぐわるのは考えさせてくれ。すぐになんてできねえからな」
「もちろん嫌がる女の子にするのはダメだからね? あなたが口説いて、女の子が良いって言うまでは手を出しちゃダメ。分かった?」
「ならいいぜ。それなら落ち着けるな」
「後、最後はさっきの変身したものの力を戦いで貸して欲しいの」
「キバの力をか……」
「きば?」
「さっき変身した時の姿の名前だ」
「キバね……、その力、私達に貸してくれない?」
「…………、わかった」
一刀はそれら全てを承諾した。
「じゃ改めて自己紹介。姓は孫、名は策、字は伯符、真名は雪蓮(しぇれん)よ♪」
「まな?」
「真なる名と書いて真名と読む。私達の誇り、生き様が詰まっている神聖な名前の事だ」
「自分が認めた相手、心を許した相手…そういった者だけに呼ぶ事を許す、大切な名前じゃよ」
「他者の真名を知っていても、その者が許さなければ呼んではいけない。そういう名前」
「大体分かった」
「私のことは雪蓮って呼んでね」
「わかった、雪蓮」
「我が名は黄蓋。字は公覆、真名は祭じゃ」
「祭さんっと…」
「応」
「姓は周、名は瑜。字は公謹。真名は冥琳。北郷よ。貴様には期待させてもらおう」
「こちらこそ、冥琳」
そんな時、部屋にまた別の女性が来て、袁術が呼んでると言って雪蓮はいやいや出て行った。
そして冥琳達は一刀に自分達の生い立ちを説明した。
「なるほど、大体わかった。ところでこの人誰?」
女性は陸遜と名乗り、真名を穏と言った。
こうして物語は始まるのだが、一刀の中では一抹の不安があった。
(何で俺はキバになれたんだ? まさか俺はファンガイア?
いや、俺は普通の人間のはず……。しかし、闇を切り裂き、光をもたらすって俺はどこの救世主仮面ライダーになるんだよ?
まさかそいつの変身も俺は出来るようになるのか? それだったら俺、本当に何者なんだろう?
てか凄まじき戦士って……、あれしか思いつかない…)
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基本的には真・恋姫†無双の呉ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
先に言いますが一刀が手に入れる仮面ライダーの力は全部で3つです。何が出るかはお楽しみ。