No.118466

継い姫†無双 3

こひさん

対姫†無双、追姫†無双の続編です。
三話目です。
宴会編です。
あいかわらず進んでません。

2010-01-14 03:56:50 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4795   閲覧ユーザー数:4015

 

 

scene-漢女塾食堂

 

 

「俺は! 今! 猛烈に! 感動している!!」

 一刀は号泣していた。

 滝涙といった方がいいかもしれない。

 眼前に広がる光景に感涙していた。

 

「大袈裟ね」

 やや引いた感じでそう言った華琳。

 その頬が赤く染まっていたのは風呂上りのせいだけではあるまい。

 

「へへ~♪ 兄ちゃん似合う?」

 一刀の前で軽やかにターンする季衣。

 その姿は巫女であった。

 

 季衣だけではない。

 この場にいる女性全てが巫女装束に身を包んでいた。

 

「似合う! 季衣だけじゃないぞ。みんな凄い綺麗だ! やっぱ巫女さんサイコー♪」

 もう空を飛んでもおかしくないほどのテンションで一刀は浮かれている。

 

「はぅあ!? そ、そんなにこの服は素晴らしいのですか?」

 明命が祭に問う。

「服だけか? 中身も重要じゃろうて」

「当たり前だ。明命なんて長い黒髪がオーソドックスな巫女のイメージそのもので素晴らしい!」

 

「あら、それじゃ私はどうなのかしら?」

「これはこれで、すごくいい! 華琳が普段着そうにない配色だけど見事にマッチしている! なによりも覇王が巫女をしている、というこのギャップ。ご飯三倍はいける!」

「三倍? 三杯じゃないんですか?」

 字が違うことに稟が気づいた。

「巫女さんの袴は赤いから三倍だ!」

 もはや一刀は自分がなにを言ってるのか理解していなかった。

 それほどまでに巫女軍団に酔いしれていた。

 

「ウチら、一刀のおかずというワケやな」

「”一刀”のお”かずと”、やなんてさすが姐さんやわ~♪」

 霞と真桜も一刀に褒められて嬉しいのかケタケタと笑う。

 無論、まだ酒は一滴も入っていない。

 

「うん。結構可愛いの~♪ これならあっちでも流行るの~」

「何を言うんだ。巫女服は巫女さんが着るから素晴らしいんじゃないか! なんちゃって巫女だと有難さは半分くらいだぞ! まあ、それでも1.5倍だけど!」

 

 一刀のとばしっぷりはそれから暫く続いた……。

 

 

 

 

 

「済まん! みんなの巫女さんに我を忘れた」

 やっと正気に戻り、一刀は詫びる。

「兄様、ちょっと怖かった」

「お兄ちゃん面白かったのだ」

 流琉と鈴々の評価に一刀は少しへこんだ。

 

「華琳さま、これからどうしましょう?」

 春蘭が巫女装束の華琳にうっとりしながら聞いた。

「そうね。卑弥呼が戻ってくるまでここを動けないわけだし、一刀、なにか暇をつぶせないかしら?」

「う~ん。テレビでも見てるか」

 テーブルの上に置いてあったリモコンを操作する一刀。

 

 古い型のテレビだったのでブラウン管に映像が映るまでは少し時間がかかったが、音はすぐ出たので皆が注目した。

 映像が出てくるとほとんどの者が騒ぎ出す。

「この時間じゃあんまり面白いのやってないね~」

「そうか? この時代劇なぞ、儂は好きじゃぞ」

 若干こちらの知識がある季衣と祭は番組の内容について話すが。

 

「これがてれび?」

「そう。真桜にカメラ作ってもらったろ。アレのすごいので撮って、それを電波に乗せて流して、このテレビで映してるんだ」

 華琳の質問にそう答えながら、もっと詳しく説明しろと言われたらどうしようと焦る一刀。

 

「なあ、バラしてええ?」

 こちらに来てからもう何度目になるかわからない質問をする真桜。

「あ~、ブラウン管は高圧だから危険だって聞いたことがある。絶対に止めてくれ」

「高圧? 偉そうなん?」

「えっと、高圧電流……あれ? 電圧? ……とにかく電気がすごくて雷に打たれたみたいになるから」

「そうなん? 残念やわ~」

 悩みながらも説得する一刀のおかげでなんとか諦めたようだった。

 

「これがこっちの歌?」

 コマーシャルで新譜の宣伝が流れ、張三姉妹が興味を持つ。

「このてれびというのは、公演を映したりもするのですか?」

「うん。まあ最近はDVDとかで販売が多いし、ファンはやっぱりライブの方がいいけど。でも、歌番組とかで色んな歌手が歌うのを見ることはできるよ」

「てれびって高級品? 普通の家にもある?」

 地和のその質問の意味を悟ったのか。

「そこそこ高いけど、この国じゃ大抵の家にあるよ。で、国営放送以外じゃ見るのにお金は取られない」

「これなら全国でわたしたちの歌が聞けるよ~♪」

 天和がそうはしゃぐ。

「ははは。まあ、こっちで歌手デビューできればそうなるのかな?」

「ちぃたちの実力をこっちの連中に見せつけてやるわ!」

 

 

 地和たちがそう張り切ったところで卑弥呼が戻ってきた。

「ふむ。みんな巫女服に着替えたようだな」

「ええ。おかげで一刀が変になったわ」

「面目ない」

 

 

 

 

「師匠、この後はどうするの? 掃除は終ったよ~」

「うむ。巫女の仕事とこちらの勉強は明日からにして、今夜の宴会の準備をするがよい」

「結構話せるんですね、神主さん」

「ふっ。そう褒めるでないわ。惚れても無駄だぞ。儂にはだぁりんがおるからな」

「それはないですから、安心して下さい!」

 一刀は卑弥呼から距離をとるのだった。

 

「漢女塾入塾祝いとなれば、これがなければ始まらん。流琉よ、調理できるか?」

 取り出したものを流琉に渡す卑弥呼。

 それを覗いた風。

「おお、お兄さんの触手がこんな無残な姿になってしまったのですよ」

「俺に触手なんかない! ……蛸の足?」

 卑弥呼が渡したのは立派なミズダコであった。

 

「そう。巫女たるもの、触手を恐れてはいかん! よってこれを喰らうのが漢女塾入塾の慣わしよ」

「げ。そんなモン食えるんかいな」

 卑弥呼の言葉に真桜がビビる。

「いや、霞と真桜は特に気に入るんじゃないか? ……でもこれはたこ焼きには勿体ないか。やっぱり刺身にするのかな?」

「はい。まかせて下さい。お刺身はお師様に教えてもらってますから」

 流琉が頼もしく胸を叩いた。

 

「儂も手伝おうぞ。流琉はまだこちらの台所には慣れておるまい」

 祭がそう言うと。

「それなら私も教えてもらいましょう。ねえ秋蘭」

「はい」

「私もお願いします」

「璃々もお手伝いする~」

 華琳と秋蘭、凪と璃々の料理ができる者達が次々と参加した。

 

 

「これでお米が炊けるの?」

「うむ。研いだ米と分量の水を入れ、スイッチをおせばよい」

 割烹着を着た卑弥呼がそう説明する。

 華琳や流琉たちはといえば。

 

「いい。巫女服にエプロンがこんなに合うなんて! しかも新妻仕様のフリフリハートエプロン!」

 気になって厨房に来ていた一刀を悩殺していた。

 

「に、新妻だなんて、そんな!」

「一刀、邪魔だから厨房から出てなさい」

 流琉が照れて手元が怖いので仕方なく一刀は食堂に戻った。

 カウンターごしにエプロン巫女の後姿を堪能できたので文句は言わなかった。

 

 

「お腹すいた~」

 一刀の膝の上で季衣がへたっている。

「すいたのだ~」

 鈴々が一刀にもたれている。

 

「新妻の華琳さま……」

「奥様は覇王……」

 春蘭と桂花は料理中の華琳の姿に夢中。

 

「酒はまだか~」

「あらあら」

 霞と紫苑は酒の代わりにお茶を。

 

「こっちにもシュウマイあるんだ♪」

「店や商品の宣伝に歌を使う。そういうこともできるのね」

「ちぃたちが歌ったらその店、客が山ほどくるわね」

 張三姉妹は相変わらずテレビで研究。

 

「こっちの服の勉強になるの~」

「やっぱ一番バラしたいんは自動車やな」

「お猫様のお食事も売ってるのですか!」

 沙和、真桜、明命もテレビに夢中。

 

「誰もがただで見れるということは」

「民の意識を操作しやすいかもしれませんね~。怖い道具なのですよ」

 稟と風はテレビの政治的利用価値を話していた。

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね」

 テーブルの料理が並べられ、酒も各自に行き渡った。

「北郷殿、音頭を頼む」

「そうね。任せるわ」

 卑弥呼と華琳にそう言われて一刀がグラスを手に立ち上がる。

 

「……みんな、俺を迎えにきてくれてありがとう。……も、もう会えないかもしれないじゃないかって思ってて……」

 一刀は瞳を潤ませながら。

「でも諦められなくて、祭さんに会って、神主さんにむこうのこと聞いて……絶対になんとか戻ろうって……でもその前にみんなが来てくれ……」

 堪えきれずに泣き出し、それでも続ける。

「本当にありがとう。こんなに嬉しいことはない……」

 一刀の涙が移ったのか泣いてる者、必死に涙をこらえてる者が多かった。

「……ごめん、おめでたいのに、湿っぽくなっちゃって……」

 涙を拭いて、グラスを掲げる。

「乾杯!」

 

「ほれ、皆も同じように杯を持たぬか」

 祭が現代日本式の乾杯のやり方を教える。

「代表者が音頭をとったら儂らも同じように……乾杯!」

 乾杯してグラスの日本酒を飲み干す。

「と、杯を空にするのじゃ。さ、一刀、もう一度じゃ」

 空になったグラスになみなみと酒を注いでから一刀を促した。

「あ、うん。乾杯!」

「乾杯!」

 一刀の音頭に続いて、皆が乾杯し、飲み干した。

 

 

 

「これが天の酒?」

「うん。日本酒。まずはビールからかな? とも思ったけど慣れないとあれ苦いし、この国の酒でお祝いしたかったから」

 そう答え、空になった華琳のグラスに注ぐ一刀。

「お酌はやっぱり女の子の方がいいかもしれないけど、今日は俺にやらせてくれ」

「ふふっ。そんなに私を酔わせたいのかしら?」

「そんなに無理には飲ませないって」

「そう? まあいいわ。他の皆にもお酌してきなさい」

 

 

「季衣はジュースの方がいいか?」

「うん。コーラちょうだい」

 リクエスト通り、コーラを注ぐ。

「ありがとう兄ちゃん」

「コーラのことも知ってるんだな」

「うん。後でボクと流琉の旅のこと、教えてあげるね~」

 

 

「流琉は日本酒でいい?」

「はい。お刺身と合いますね」

「でも刺身もできるなんてすごいな。さすが流琉だ。蛸なんてこんな薄く切れてるし」

 流琉が仕上げた蛸刺しを見て驚く一刀。

「それは、お師様に教えてもらって、皮をむいた後、冷やしたんです。半分凍ってたから簡単に切れました」

「皮の方は酢味噌和えになってるし、この分ならすぐに和食もマスターしちゃうんじゃないか?」

「せっかくだから覚えたいです。兄様の国のお料理」

 

 

「霞、飲んでるか~」

「当ったり前や。こん酒も美味いな~」

「もう別の飲んでるのか」

 空になった缶や瓶が前に並んでいた。

「色々買うたんや。飲まんとな~」

「次はどれがいい?」

「一刀が飲ませたいやつでええよ」

「ん~、じゃ苦いのと甘いのどっちがいい?」

「苦いのなんてあるん?」

「ビール、麦の酒だよ」

 言いながら霞のグラスに注ぐ。

「けっこう泡立つな~。これもシュワシュワなんか~……苦っ! 一刀のあれとどっちが苦いんやろな~」

「俺が知るわけないだろっ」

 

 

「桂花……は華琳のとこか」

 席が空いているので見回し、桂花が華琳にお酌しているのを確認した一刀。

「風、稟、どう? こっちのお酒」

「ぐ~」

「美味しいですね。これなら、星も喜んだでしょう」

「趙雲さんか。俺、むこうで初めて会ったのは趙雲さんも入れた三人だったんだよな~」

「お兄さんが初めて会ったのは盗賊さんたちなのです」

「そういやそうだったけ。俺も酔ってるな~。っと、起きたんならまだ飲むか?」

「お兄さんの触手がまだ残っているのです。それに合うお酒を注いで欲しいのですよ」

「だから俺に触手なんかないって」

 

 

「蛸刺し、ですか。美味しいです」

 そう言った凪の醤油皿には山葵がこんもりと盛られていた。

 溶いてないわけではない。醤油に山葵を溶いた後からさらに盛っているのだ。

「足りるか? はいこれ」

 お酌ではなく、山葵のチューブを渡す一刀であった。

「ありがとうございます!」

 潤んだ瞳で一刀を見る凪。

 酔いかそれとも山葵のせいか。

 

 

「ぷるたぶ、言うんか」

 缶ビールのプルタブを調べている真桜。

「うん。昔は缶切りで開けてたらしいけど」

「缶切り? ウチの螺旋槍なら一発やな!」

「こっちにもドリル……螺旋槍みたいのあるから今度調べような」

「ホンマ? どんなんやろ。楽しみや」

 

 

「甘くて綺麗で美味しいの~♪」

「こっちはカクテル系か」

 缶入りのカクテル系ドリンクを飲んでる沙和。

「こういうのは缶でできてるのじゃなくて、オシャレな店でバーテンダーが作ってくれるらしいぞ。行ったことないけど」

「オシャレなお店! 行ってみたいの~」

「未成年者は無理だろ」

「残念なの~。それなら隊長が作り方覚えればいいの~」

「たしかにカクテルとか作れるとカッコイイよな~」

 

 

「張飛も、ジュースの方がいいよな」

「違うのだ!」

「え? お酒?」

「鈴々は鈴々でいいのだ、お兄ちゃん!」

「……いいのか?」

「いいのだ!」

 

 

「璃々ちゃんはジュースだよね」

 グラスにジュースを注ぐ。

「ありがとうございます、ご主人様」

「あの、そのご主人様っていうのは勘弁して下さい」

 紫苑にそう頼む一刀。

「俺、こっちじゃただの学生だし、年上の女性にそう呼ばれると困ります」

「年上はお嫌ですか?」

「そんなことはまったくないです!」

「そうですか……なら、北郷さん、でよろしいかしら」

「ありがとうございます。あ、どうぞ」

 紫苑のグラスにも日本酒を注ぐ。

「そうですよね……しーちゃんのご主人様も歳は気になさらずにご寵愛下さったそうですし」

 

 

「お猫様のお酒なのです!」

 明命は祭が選んだワインを手にうっとりとしている。

 栓は開けられていなかった。

「飲まないの?」

「はぅわ! あ、開け方がわからないのです」

「あ~、ワインオープナーあったけかな」

 厨房へ行き、戻ってくる一刀。

「今開けてあげるね」

「お、お願いします!」

 コルクを抜いて、ついでに持ってきたワイングラスに注ぐ。

「ありがとうございます」

 明命しばらく、その液体を眺めてから恐る恐る口にした。

「美味しいです! さすがお猫様のお酒なのです!」

 

 

「祭さん、どうぞ」

 祭に酌をする。

「おお。かたじけない。どうじゃな? 皆の様子は」

「別れた頃と変わらなくてホッとした」

「ふむ。しかし明命の話じゃとかなりの時がたっているらしいの。儂がこちらへ来てからほんの一月じゃというのに」

「時間の流れが違うのかな?」

 

 

「神主さんも」

 卑弥呼にも酌をする。

「みんなのこと、よろしくお願いします」

「なに、儂も久しぶりに漢女塾ができて喜んでおるのだぞ。がははは」

 

 

「春蘭、秋蘭、あんまり飲みすぎないでくれよ」

 二人のグラスに注ぎながらそう言う。

「にゃんだとぅ~」

「げ、もう出来上がっているのか?」

「姉者は可愛いなあ」

「これ、もう空にしたの?」

 ウイスキーの瓶が数本、空になってるのに気づく一刀。

「このて~ろ、たいひたことないのにゃ~」

 二人のところに来るのを後回しにしていたことを後悔する一刀だった。

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

 宴会編です。

 でも、女性キャラ同士の絡みがないですね。反省。

 

 黒猫はコルクじゃないのも多いですけれど、話の都合上コルクのやつで。

 


 
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