『黒剣王~ Sword king of the darkness ~』
第一章 -聖杯戦争-
第一話 -始まりの呪文(おと)-
夢を見ている。
あの頃の、『シロウ』が生まれた頃の夢だ。
記憶はほとんど無かった。
目が覚めたら、病院で寝ていたのだ。
窓から青々とした空が見える病室で彼は目覚めた。
何が起こっているのか。
自分は誰なのか。
必死で考えた。
その度に頭が割れるようにいたくなり、自分を覗き込む二つの影が目に浮かんだ。
この人達は誰?なんでまっくろなの?
分からない。思い出せない。
自分は誰なのか、自分は今生きているのか。
彼には分からなかった。
そう、だから『シロウ』は生まれたも同然だった。
青々とした空を見るたびに何故か彼は夜空を恋しがった。
何故か分からなかったが彼は夜が好きだった。
晴天よりも曇天を、曇天よりも月夜を、月夜よりも闇夜を好んだ。
医者は言った。
火が、光を放つものにトラウマが出来たのだろうと。
しかし、彼は光が嫌いなのではなく、夜が、暗い所が好きなのだ。
何故か暗い所は安心した。
早く、夜になれと
彼は願った。
目が覚めてから何日が経っただろうか。
時間の感覚さえ分からない病室で彼はぼんやりと夜が来るのを待っていた。
「こんにちは。君がシロウ君だね」
ぼんやりと外を眺めている少年に声をかける男がいた。
しわくちゃの背広にぼさぼさの頭。
そんな見た目の男がそこに立っていた。
「・・・誰?」
おじさんと呼ぶかお兄さんと呼ぶか迷いながら少年は男に話しかけた。
「僕かい?僕は衛宮切嗣って言うんだ。よろしくね」
ぼーっと自分を見る少年に微笑みかけながら男は言った。
「率直に聞くけど。孤児院に預けられるのと、始めてあったおじさんに引き取られるの、君はどっちが良い?」
彼は切嗣に引き取られる方の選択をした。
その時、どうしてその選択をしたのか分からない。
でも、今思い返してみればおそらく最良の選択だっただろう。
「おっと、大切な事を言い忘れてた。うちに来る前に、一つだけ教えないといけないコトがある」
少年から返事を聞き、雑な手際で少年の荷物を鞄にしまうと切嗣は話し始めた。
「うん。始めに言っておくとね、僕は魔法使いなのだ」
その信じられないような一言に少年は
「うわ、爺さんすごいな」
と目を輝かせて返事をした。
そんなこんなでシロウは切嗣の子供となった。
2005年2月2日
「・・・また、懐かしい夢を」
珍しく自室の布団で目が覚めた士郎は目覚めていきなり落ち込み始めた。
あの時自分は切嗣のその言葉を信じてしまった。
事あるごとに切嗣はその思い出を繰り返した。
照れながらも嬉しそうに話す切嗣をみるたびに嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてきた。
その出来事は忘れたい記憶ベスト3に入る。
何故あの時切嗣のその言葉を信じたのか。
自分はそこまで子供だったのかと彼は今も後悔している。
「よし。忘れよう」
いつもより早く起きてしまったが、二度寝をする気分にはなれなかった。
布団から勢いよく立ち上がると洗面所の方へと歩き出した。
自称魔法使い衛宮切嗣と士郎の生活は長くなかった。
生活が始まって半年も経たずに切嗣は寝込んでしまった。
死期が迫ったからか、始めからそのつもりだったのかは分からない。
切嗣は士郎に様々な事を話した。
自分の身の上話。
自分の夢。
様々な事を教えた。
英語などの言語。
体の鍛え方。
そして、魔術。
魔力を用いて[世界にあらかじめ定められているルール]を起動・安定させ、神秘を起こす―それが魔術だ。
魔術師の体内で生成する魔力―オド、自然や空間に存在する魔力―マナ、そのどちらかを用いて神秘を起こす。
そう切嗣は士郎に神秘の起こし方を教えたのだ。
衛宮家の朝は早いとは言っても今日は起きるのが早すぎた
そのため時間が余った。
洗面所で身支度をし、料理の準備をし、朝の鍛錬をしてもまだ時間が余った。
「さて、どうしたものか」
士郎はいつも忙しい身だ。
常に何かをしている。
だから、こんな風に時間が空いてしまうと何をすればよいのか分からなくなる。
(鍛錬をもう一度するのは中途半端だし・・・料理をもう一品加えるか?)
こんな風に迷っている間に時間が過ぎ、二人が来る時間となった。
「士郎ー、おっはよー」
「先輩、おはようございます」
「桜、藤ねえ、おはよう」
玄関から居間の方へとやって来た桜と藤村を迎え入れて士郎が言う。
「あ、先輩。今朝はもう済んでしまいましたか?」
「桜には昨日迷惑かけたし、今日は俺が全部作ったよ」
「そんな迷惑だなんて、私は好きでやってるんですよ。食器の支度任せてください」
むん、とはりきる桜を見て士郎は
(本当に良い子だな、どっかの誰かと違って)
そう心で呟くと食卓方に目をやった。
「士郎ー、早く朝ごはーん!」
そこには当たり前のように藤村が座していた。
いつもより早い時間帯であるにも関わらず、その態度はいつも通りだ。
(・・・放っておこう)
心の中でそう決めると料理の盛り付けを始めた。
いつもより早く食事が終わり、食器の片付けを使用と士郎は立ち上がろうとした。
「先輩、洗い物は私がやりますから寛いでてください」
目の前にあった食器を持ち上げながら桜は士郎に座るように促す。
「でも、2人でやった方が早いだろ」
「先輩は今日一人で朝ご飯の準備したんですから、休憩しててください。それに時間なら大丈夫ですよ」
時計を見ても昨日より早い時間帯だ。一人で食器洗いしても充分間に合うだろう。
結局、桜に押し切られた形で士郎は食卓でニュースを見る事にした。
「士郎、今日どうするの?土曜日だから午後はアルバイト?」
テレビで事故のニュースや汚職事件のニュースをぼーっと聞いている士郎に藤村が話しかけた。
「いや、午後は一成の手伝いをしようかと思ってるけど」
「よし、じゃあお昼はお弁当もって弓道場に来なさい!」
士郎の言葉遮るように藤村がしゃべり出す。
「・・・藤ねえ、まさか」
「アハハハ、今月もちょっとねぇ」
給料日が近づく月の初め、藤村の財布に肖像画がある事はほとんどない。
要するに財政的にピンチなのだ。
こんな時は大抵桜か士郎に弁当を依頼する。
「・・・はぁ、分かった」
空腹状態の藤村を放っておくと周りに被害が出る。
だからしょうがないと心に言い聞かせ、士郎は弁当を作るために立ち上がった。
「あれ?士郎、その痣どうしたの?」
ふと士郎の手の甲を見た藤村がそこを指さした。
その指先である左手の甲を士郎は見た。
(・・・これは)
彼の左手の甲には不思議な痣が浮き出ていた。
「なんだろうな?昨日のバイトでぶつけたかな?」
彼には心当たりがあったがそれを言う訳にも行かず、誤魔化すしかなかった。
いつもより早く始まった一日。
しかし、いつも通りに過ぎていく一日。
何も変わらないはずだった。
しかし、確実に日常は歪められていた。
士郎がそれを確信したのは正門についた頃だった。
学校に近づくにつれ、強まる違和感。
それを感じ士郎の顔はいつもより不機嫌になっていた。
「おはよう、衛宮、桜。・・・どうした、衛宮?今日は調子が悪いのか?」
「おはよう、美綴。俺、そんな風に見えるか?」
「ああ、いつもよりずっと不機嫌な顔をしてるよ」
いつも通り正門に立っていた美綴とそんな会話をし、正門をくぐった瞬間。
「――――――っ!」
いつも通りでない感覚が士郎を襲った。
「先輩?」
「いや、なんでもないよ」
動きを止めた士郎を桜は心配そうに見つめる。
「なら、いいんですけど。本当に調子悪いんでしたら無理しないでください」
心配そうに見付ける桜を見ながら士郎はまだまだ未熟だなと己を叱咤した。
「じゃあ、先輩。またお昼に」
そう言うと桜は弓道部の方へと歩いていった。
「なんだ、衛宮。弓道部に戻る気になったのか?」
「そう言う訳じゃないよ。藤村先生が弁当くれって言ってたから、昼弁当持って行くだけだ」
「ちぇ、そうなのか。戻る気になったら、いつでも弓道部に来な。歓迎するから」
桜の後を追うように美綴は歩いていく。
士郎は無言でその背中を見送った。
いつも通りの風景がそこには広がっている。
朝練をする生徒達。
授業の準備をする先生達。
見た目には何も変わっていないように見える。
しかし、士郎にはその全てが嘘のように感じた。
目を瞑れば生徒達も先生達もどこか虚ろな人形に見える。
空気は粘っこく絡んできて、まるで蝶を捕らえる蜘蛛の糸のように感じられた。
「衛宮君大丈夫?」
目を瞑り、その感覚を感じていた士郎に声をかけるものがいた。
「・・・三枝さん」
「おい!あたしらは無視かよ?」
「蒔の字、衛宮に声をかけたのは由紀香だ。それに反応しているのだろう」
士郎に声をかけた三枝の後ろから、蒔寺と氷室がひょっこりと顔を出す。
「氷室さん、蒔寺。・・・おはよう」
「うん、おはよう」
「ふむ、その様子では大丈夫そうだな。おはよう、衛宮」
「だから、なんであたしは呼び捨てなんだよ!」
ぶーぶーと文句を言う蒔寺を尻目に三枝は更に話しかける。
「いきなり立ち止まったから調子悪いのかなって思ったんだけど、大丈夫?」
「・・・大丈夫だ。今日はいつもより起きるのが早かったから、少し眠くてね」
「なんだ、寝不足かよ。精進が足りねーなー」
あっはっはーと盛大に蒔寺が笑う。
「あー、確かに、そうだな。じゃあ、3人とも部活頑張って」
士郎は苦笑いを浮かべると校舎の方へと歩き出した。
「調子は悪そうじゃないね」
「確かに、由紀香の言うとおりだ。調子は悪そうではないし、"アレ"でもないようだ」
「なんで衛宮なんかの事心配しないといけないんだよ。今日はただでさえ"ナンかヘン"だってのに」
「そうだね。何か変だよね。なんて言ったらいいか分からないけど」
「ふむ。それに関しては私も一緒だ。変なのは分かるがそれが何かは分からない」
「全く、ヘンなのは衛宮だけで充分なのによー」
3人は口々に言いながら部活へと戻っていった。
違和感だらけの一日ではあるがつつがなく過ぎていく。
感じる違和感の増大に士郎はどうする事も出来ず、ただいつも通り過ごしていった。
土曜日である今日は午前授業だ、つまり午後から授業がない。
「一成」
今日一日の終わりを告げる藤村の一言を合図に各々が行動を始める。
士郎もまた、行動を開始する。
「どうした、衛宮」
士郎の昼は一成と食べることが殆どだ。
「ああ、今日の昼なんだが藤村先生の所に行かなきゃならなくなったから、昼は一緒に出来ない」
「またか。それならばしょうがない・・・が、藤村先生にも困ったものだな」
「すまんな、一成」
そう言うと士郎は弓道場の方へ向かった。
弓道場に着いたら虎が暴れてました。
「なんでさ」
その光景を呆然と眺めながら士郎は呟いた。
つい先程まで同じ教室の空気を吸っていたはずである。
一体教室から弓道部までの間に何があったのだろうか。
「やあ、衛宮。遅かったね」
士郎が入ってくるのを確認すると美綴と桜が近づいてきた。
「なあ、桜。藤ねえはなんで暴れてるんだ?」
暴れてると言っても本当に暴れている訳ではない。
精々無理難題を押しつけたり、理不尽な事を言ってるくらいである。
それでも充分迷惑ではあるが。
「あの、今朝はいつもより早く朝ご飯を食べたのでいつもより早くお腹が空いたようです」
苦笑いし、言い辛そうに桜が言う。
(まさか、早く起きただけでこの大惨事とは・・・)
時間的に考えてもまだお昼だ。
学食で食事しているもの、教室で食事しているもの、同じ弓道部員でも様々な人が居る。
その中で[早めに弓道部に行く]を選択した者達だけがこんな目に遭っている。
選択一つでこうも被害が違うとは世界は理不尽だ。
「ぷはぁーっ。おいしかったー」
お腹いっぱいに弁当を食べ、先程までの不機嫌さはどこに行ったのか、藤村は鼻歌を歌い出す。
「そう言えば、桜。慎二、今日どうしたんだ?学校休んでるみたいだけど」
弁当を片付けながら士郎は桜に聞く。
今日、彼の中学以来の友人で、桜の兄である慎二は学校に来ていない。
友人としても心配であるが、それ以上に"別の理由"で士郎は心配している。
「あ、えっと、今日は調子が悪いって言ってました」
「そうか。お大事にと言っておいてくれ」
桜の反応から"別の理由"の方だと士郎は確信した。
「じゃあ、俺は生徒会の方に行くよ。後、今日も遅くなると思うから」
「あ、先輩。今朝言い忘れたんですけど、月曜日まで行けないと思います」
「え、そうなのか。藤ねえ、夕食作れそうにないから今日は自分の家で食べてくれ」
そう言うと士郎は弓道場から出て行った。
弓道場から学校では藤村先生と呼びなさーいという叫び声が上がった気がするがきっと気のせいだろう。
放課後までどうやって時間を潰そうか。
士郎は今そう考えている。
一度帰宅する事も考えたが、その間に何かがないとは限らない。
出来るだけ校舎内にいたい。
結論に至ったらしい士郎は歩き出す。
「一成、いるか?」
生徒会室の扉を開き、中の様子を見る。
「衛宮か。藤村先生はもう良いのか?」
一成はもう昼を終えていたのか、教科書を広げて予習をやっているようである。
「ああ、腹一杯になってご機嫌だよ。修理するものあるか?」
「ふむ。あるにはあるが・・・。今日はアルバイトなどはないのか?」
「バイトはないけど、用事がある。だから全部は出来ないかもしれないな」
士郎は生徒会を時間潰しに利用する事にしたらしい。
一成が帰宅する前に帰るフリをする。
それが士郎の選んだ選択。
「・・・衛宮。手伝ってくれるの嬉しいが用事がある時くらい頼み事は断ってはどうだ?」
「いや、用事って言ってもたいしたものじゃないし、明日は休みだから問題ないよ」
「そこまで言うなら俺に止める事は出来ん。では、衛宮美術室のストーブから行こう」
一成は手元にあったリストを見ながら言った。
「かなりのご老体だ。無理をなさって体を痛められたらしい」
「はは、それは確り治療しないとな」
笑い声を上げながら士郎達は廊下を歩いていく。
太陽が沈み、辺りを暗闇が占めた頃士郎は屋上へとやって来た。
「さてと、・・・この辺りだと思うんだけどな」
かつん、と音を立てて立ち止まると士郎は辺りを見渡した。
「これ、か?」
何もないように見えるコンクリートの地面を士郎は見つめる。
彼の目には赤紫の文字が映っていた。
それは魔術師にしか見えない結界の刻印。
間違いなく今朝からの違和感の正体だ。
「――――――解析(トレース)・開始(オン)」
頭の中に流れてくるイメージ。
それは分かっていたが、出来ればそうあって欲しくなかったもの。
顔をいびつに歪めながら、士郎は何事は思考する。
完全には眠っていない27の撃鉄のうち1つを起こす
頭の中でそうイメージする。
それが魔術回路が始動する合図。
魔術回路、それは[世界にあらかじめ定められているルール]に魔力を注ぐためのものだ。
それがなければ魔術行使などすることが出来ない。
途端、左の二の腕がズキンと反応した。
「――――――投影(トレース)・開始(オン)」
頭の中にイメージを構成していく。
7つの短剣。
銘はなく、そもそも何のために作られたのかは分からない。
しかし、それは担い手により宝具の域まで達した短剣であった。
「――――――投影(トレース)・完了(オフ)」
呪文が終わると彼の目の前にはイメージ通りの短剣が転がっていた。
「―――我が声を聞け」
士郎の呟きに導かれるかのようにその7つの短剣は空へ舞い上がった。
「―――我が語らいに従え」
空高く短剣は飛び立ち、まるで何かを探すように踊り出す。
「―――我が骨は闇を映し出す鏡なり、我が肉は光を映し出す鏡なり」
空中で短剣が停止する。
まるで先程までの動きがなかったかのようにピクリとも動かない。
「―――換われ。木が火に換わるごとく。火が土に換わるごとく」
その言葉に反応し短剣は赤紫の文字の周りに突き刺さった。
「―――換われ。闇は光に。光は闇に」
校舎が、学校が騒ぎ出す。
まるでそれを歓迎するように、まるでそれを激励するように。
「―――この弐は逆に成りてこそ、全ては成り立つ」
突き刺さった短剣が光を放つ。
神々しい光は天まで渦を巻くように上がり、内包する赤紫の文字を巻き込んでいく。
「―――“反転結界・有無転成”」
天まで届く光の渦は天から地に叩きつけられるように消えていった。
そこにはまだ赤紫の文字が刻まれていたが、士郎は満足したように屋上より去っていった。
「あいつ」
士郎が屋上から降りていくのを一人の少女が見ていた。
「凛。あいつは一体何者だね?この結界の作り主か?」
少女―遠坂凛の横に赤い外套を着た男が立っていた。
背は高く、髪は白く、肌は褐色。
その見た目から日本人ではないように感じられ、放つ存在感から人ではないように感じられた。
「同学年の男の子よ。ただの人間のはずなんだけど」
「何を言っているのだ?あれは確実に何か呪文であったはずだぞ」
「この結界を完成させるものじゃないし。さっきのはいったい何なのかしら?それに・・・」
「どうした、凛?」
「彼、マスターね」
右手の甲をさすり、士郎が出て行った先を見ながら言う。
「ふむ、ならば後を追って殺すとしよう。サーヴァントを連れずに学校に来るとは間抜けだな」
屋上の昇降口の方へと男は歩き出す。
「待ちなさい、アーチャー。彼よりもこの結界をどうにかするのが先よ」
アーチャーと呼ばれた男が立ち止まる。
「しかし、敵は早めに排除した方がいい」
「敵になるかどうか分からない奴より、この不愉快極まりないものの方が先よ」
そう言うと赤紫の文字の方へと近づいていった。
「・・・これが七つ目ね」
(一体どういうコトだ?[衛宮士郎]の髪は"あんな色"だったか?)
遠坂が結界の解析をしている横でアーチャーは黙り込み、そう心の中で呟く。
士郎の髪は夜でも栄える赤色。シグナルレッドという色名の色が一番近い色だ。
「・・・ん。これは最悪な結界ね。中にいる人を“溶解”させる結界か」
(身長も体格も全然違う)
「あいつ、一体何をしたのかしらね。全然分からない」
(それだけではない。さっきの"完璧に投影が出来ていた")
「どうしたの?」
黙り込んでいる男を見上げながら遠坂が言う。
「いやなに、何故凛が彼を魔術師と気づいてなかったのかと思ってな」
「?」
「分からないか?彼の魔力量は君と同じくらいだ」
「・・・それ、ほんと?」
「嘘は言っていない。これは真実だ。
大分隠しているから分かりづらいが。一般の魔術師より遙かに多く魔力を持っている」
「・・・あいつ一体何者なの?」
「私が知るわけあるまい。今から言って洗脳して聞けばいいのだ。
マスターが反対しなければ私が追いかけて殺すのだが。」
「・・・っ!」
「この[聖杯戦争]を勝ち抜くためにはそうすべきだと思うが?
彼はマスターなのだろう?敵な上にあの魔力。危険でしかない」
「その辺りは今夜相談しましょう。それよりもこの結界ね。消せれば良いんだけど」
「おいおい。わざわざ、ソレに何かすんのか?」
その声は突然聞こえてきた。
給水塔の上に見た事も男が立っていた。
群青の髪、それと同じ色の服。
肩に防具らしきものをつけ、風貌、存在感、どれをとっても普通には見えなかった。
「ソレ消したけりゃ本体叩くだけで充分なのによ」
遠坂達を見下ろしながら彼は言う。
「何が言いたい?」
群青の男を見上げながら赤い男が言い放つ。
「んなもん消そうとするより、ライダー潰した方が楽だって言ったんだよ。聞こえなかったのか?」
給水塔から降りてくる。
たん、と音を立てて男は着地する。
「いやー、実際に見てみると更にいい女だね。うちのマスターもいい女だが」
遠坂を見ながら、その男は言う。
遠坂の目は男から離す事が出来なかった。
男の放つ存在感に飲み込まれていく。
ふと視界に赤い何かが入り込んできた。
「・・・その様子だとこの結界を張った犯人を知っているようだな」
遠坂と群青の男の間に立ち、赤い男が言う。
「あん?てめえ、何寝ぼけた事言ってんだ?アーチャー」
「――――――っ!」
まだ、明かしていないことを言われアーチャーと呼ばれた男の顔が歪む。
「随分と鋭い洞察力だな。それとも動物的な勘か?」
「・・・マジで言ってんのか?」
先程までの飄々とした態度はどこへ行ったのか。
男が放つ雰囲気に周りの空気が張り付いていく。
(凛、ここは狭すぎる。とりあえず逃げるぞ)
(分かったわ)
目の前の男に気付かれないよう2人は合図するとダン、と地面を蹴りフェンスの方へと飛んでいく。
そしてフェンスを飛び越えるとそのまま落ちていった。
「マジかよ」
深くため息を吐き、二人が行った方向へと目を向け、誰に言うでもなく呟いた。
「一体、何が起こってんだ?」
走る、走る、走る。
出来るだけ広い所へ、出来るだけ遮蔽物がない所へ。
それが一番の選択。
最も戦いやすい所へ。
それが該当する所は・・・ここしかない。
「アーチャー、ここなら十分に戦える?」
校庭の中心に立ち、遠坂は近くにいる男に声をかける。
「無論だ。凛、君に私を召喚した幸運さを見せよう」
そう言うと自分達が来た方向へむき直す。
「アーチャー、確認するがてめえはさっき俺が言った事は分からねぇんだな?」
つい先程まで誰も居なかった場所に突如男が出現する。
屋上では何も持っていなかったはずの手に赤き槍が握られていた。
「貴様が何を知っているか知らんがもう戦っても良いのか?
どうやらランサーのサーヴァントはお喋り好きらしいな」
「はっ、てめえはのんきだな。何が起こっているのか知らずによぉ」
「ふん。何が起こっているかなど興味が湧かんな。
ただランサーのサーヴァントは皆、貴様みたいにお喋り好きの腰抜けかには興味があるな」
その言葉にランサーと呼ばれた男は顔色を変える。
「・・・やっぱ、てめえはブッ殺す!」
手に持つ槍を構えた次の瞬間。
キィイイィィィン
高い音が辺りに響く。
キィイン、ギィン
響く音が止む暇もなく次の音が生まれる。
遠坂には何が起こっているのか理解できたのはもう何回ソレらが交わった後だったろうか。
遠坂が気付いた時には目の前の男の手に2本の中国風の剣が握られていた。
人の目には見えぬほどの速さでそれは起こっている。
目を強化した遠坂でも攻防が線として見える程度であった。
(これが英霊同士の戦い。これが[聖杯戦争])
遠坂はそれを呆然と見ている事しかできなかった。
[聖杯戦争]
その名が示す通り、聖杯かけて争われる戦争だ。
聖杯といってもキリストが最後の晩餐で使った杯とは違う。
この聖杯はあくまで聖杯"候補"の一つだ。
聖杯"候補"とはいえ、それが持つ力は絶大。
不可能に近い願い事でも叶えるだろう。
全ての[聖杯戦争]の中で、冬木市の[聖杯戦争]にしか存在しないシステムがある。
それはサーヴァントシステム。
サーヴァントとは聖杯により選ばれた七人の魔術師(マスター)が聖杯の助けを借りて召喚する七人の英霊だ。
英霊とは、過去・現在・未来の全時系列のどこかに存在した英雄達の霊。
その英霊達を召喚し殺し合う。それが冬木市の[聖杯戦争]
サーヴァントは予め決められた七つの器(クラス)に見合う英霊が召喚される。
その七つとは
剣の騎士、セイバー
弓の騎士、アーチャー
槍の騎士、ランサー
騎乗兵、ライダー
魔術師、キャスター
狂戦士、バーサーカー
暗殺者、アサシン
の七つだ。
サーヴァント達は基本的にはクラス名で呼ばれる。
英雄だった頃の名前を使えば、能力、弱点などが判明してしまうからだ。
伝説に君臨する英雄達による時空を超えた戦争。
それが目の前で起こっている。
遠坂でなくても呆然と立ちつくすより他に出来る事はないだろう。
「・・・凄いな」
サーヴァント同士の戦いを真っ暗になった教室から見るものがいた。
士郎だ。教室から悟られないようにそれを見続ける。
「・・・?」
ふとその士郎の目にあるはずのない人影が見えてきた。
「―――っ!」
士郎は走り出す。出来るだけ音を立てないように、かつ出来るだけ速く。
(くそっ!なんでこんな事も分からなかったんだ!)
何故気付かなかったのか。
何故分からなかったのか。
彼は自分を激しく罵った。
運命。
そんな一言ですます事が出来るかもしれない。
そう、この戦いは"必ず乱入者が入る運命"だったのだ。
口が、喉が渇く。
それでも遠坂はその戦いから目をそらす事は出来なかった。
すっとランサーが後退する。
激しく切り合っていた2人の間に静寂が流れる。
「ちっ。やっぱ、てめえはむかつくぜ」
ランサーが舌打ちする。
「どうしたランサー、様子見とは君らしくないな。先ほどの勢いは何処にいった」
「・・・くっ、はははははっ!」
アーチャーの言葉を聞いた途端、ランサーは笑い出した。
「・・・何がおかしい?」
眉間に皺を寄せ、笑い続けるランサーに問う。
「はっ。てめえの言う通りどうやら俺は様子見をしていたらしい」
その言葉にアーチャーは更に眉間に皺を寄せる。
「今回はかなり異常でな。俺は無意識に警戒してたらしい。ホント、どうかしてたぜ」
そう言うとランサーは先程までとは違う構えを取った。
「てめえを殺すには全力で行かなきゃいけねえのによ!」
空気が凍っていく。
それは比喩ではなく、大気中に存在するマナが全て凍っていく。
それはサーヴァントの最終武装。
彼らの奥の手であり、サーヴァントが生前に築き上げた伝説の象徴―“宝具”。
サーヴァントが英雄であった頃に愛用した武器や防具だ。
それだけで強力なものだが、その本領は“真名”を以て力を解放する事にある。
そう、ランサーは手に持つ自身の“宝具”の解放を行おうとしている。
負ける。
遠坂はそう確信した。
それなのに体は動かなかった。
ランサーの“宝具”が解放されるその瞬間。
パキッ
何かが折れる音がした。
「・・・坊主か?」
放たれていた鬼気が消え去ったランサーは音が鳴った方向を見る。
誰かが逃げていく影が見える。
「アーチャー、この勝負預ける」
一言告げ、影を追いかけていった。
運が悪い。
その一言で終わらせるにはこの状態は酷すぎる。
いつもより部活が終わるのが遅くなっただけ。
いつもより長く、丁寧に掃除や道具の整理をしただけ。
ただそれだけだ。それだけなのに何故こうなる?
何故本能が逃げろと、頭が逃げ切れないと語りかけてくる?
何も考えずに逃げる。
逃げるのをやめれば殺されるだろう。
アレが殺しに来る。
出来るだけ遠くへ逃げろ。出来るだけ長く逃げ続けろ。
もしかしたら助けが来るかもしれない。
影の主は一心不乱に走り続ける。
「坊主じゃねえな」
声が聞こえてきた。
右か、左か、上か、下か、前か、後ろか。
そんな事すら分からないほど頭が混乱している。
「坊主かと思ってみれば、これはまたいい女だな」
ふっとまるで幽霊が現れるように男が彼女の目の前に立つ。
「ちっ、女を殺す趣味はねえんだが、見られたんならしょうがねえ」
手に持つ槍を男は構える。
逃げなきゃと頭では分かってるのに男の放つ雰囲気に飲み込まれ体が全く動かない。
「せめて楽に殺してやるよ」
槍の切っ先が彼女に向かって放たれた。
「――――――投影(トレース)・完了(オフ)」
キィン、と高い音が鳴る。
彼女に向かって放たれた切っ先は目の前の地面にたたき落とされていた。
「・・・何とか間に合ったか」
彼女の目の前に一人の青年が現れる。
それはあたかも“正義の味方”のようであった。
「美綴、大丈夫か?」
青年は振り向き、女性の方を見る。
「え、衛宮?」
「・・・衛宮士郎、か?」
急に目の前に現れた人物にランサーは問う。
「ああ、そうだ」
「てめえがそうか」
ランサーは士郎を頭からつま先までジロジロと観察する。
「なにか問題でも?」
「いいや、無いね。あえて言うならなんで邪魔する?」
「殺されそうになってる人間を見捨てる事が出来ないんだよ。[衛宮士郎]は」
「・・・くっ。違いねえ」
口角をつり上げ、ランサーは士郎を見る。
「じゃあ、死んでも守ってみせるんだろうな?[衛宮士郎]なら」
ランサーは構える。先程殺し合いをした時と同じ構えを。
「――――――投影(トレース)・開始(オン)」
言葉が紡がれる。
空気がピリッと張り詰める。
士郎のその手にはさっきまで無かったものが出現する。
「――――――投影(トレース)・完了(オフ)」
「・・・二刀流かい」
士郎の手に握られている二つの剣。
見た目が全然違うため、一対の剣ではないと分かる。
しかし、どちらも西洋の剣といった感じであった。
「美綴。離れていてくれ」
「衛宮?戦うって言うのか?無理だ、無茶だ」
「・・・美綴」
振り返らずに士郎は言う。
「もう一度言う。離れていてくれ」
その言葉に従うしかなかった。
士郎が放つ雰囲気はいつものではなかった。
「へぇ、なかなかじゃねえか。でもまさかその程度じゃねえだろうな?」
士郎の雰囲気を感じランサーが言う。
「ああ、もちろんだ。――――――同調(トレース)・開始(オン)。全種(オール) 六重強化(セクステット)」
「――――っ!?」
士郎の雰囲気が空を飲み込んでいく。
そんな感じだ。
彼の醸し出す雰囲気はまるで歴強の戦士のようであった。
誰も喋る事は出来ない。
時が止まったかのように静まりかえる。
ダンッ
低く構えたランサーが地面を蹴る。
放たれるのは必殺の一撃。
ギィン、と音を放ち、士郎はそれを防ぐ。
その戦いの攻防ははっきりとしていた。
ランサーが攻撃を放ち、士郎がそれを弾く。
ランサーの放つ一撃を弾き、反らし、時にたたき落とす。
戦いが始まり、どれだけの時が経っただろうか。
10分か、20分か、それとも1時間か、はたまた1分も経っていないのか。
美綴も、少し離れた所でいつの間にかやってきた遠坂とアーチャーもその戦いを見続けた。
ランサーが仕切り直しと少し間を取った次の瞬間。
ビュン、と音を立てて何かがランサーの足下と腹に向かって飛んできた。
それは2本の剣。
士郎がランサーの攻撃を防ぐために使用していたものだ。
「ちぃっ!」
ランサーはステップで後退し、飛んでくる剣をたたき落とそうとした。。
「――――――“壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”」
士郎が呟いたその瞬間、地面に突き刺さった剣が爆発した。
『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』
莫大な魔力(かやく)が詰まった“宝具(ばくだん)”を爆発させる。
一度爆発させた“宝具”を修復するのは容易ではない。
すなわち『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』とは必殺の武具を使い捨てにする技能だ。
響くは爆音、広がるは砂塵・・・それらが全てを飲み込んだ。
爆音が止み、砂塵が消えた時、そこにランサー、アーチャー、凛の三人しかいなかった。
「・・・逃げやがった」
ランサーは唖然としていた。
唖然としていたのはアーチャーや遠坂も一緒だった。
「あいつ最初からその気だったな」
そう言うとランサーは走り出した―士郎が逃げたであろう方向へ。
その場にたたずむ2人の時が動き出すのはその少し後だった。
「・・・凛。これからどうするつもりだ?」
最初に動き出したのはアーチャーだった。
「そうね。・・・ってあんた何で追いかけないのよ?」
「追いかけろなんて命令受けていないが?」
「・・・追いかけるわよ」
「ふむ。しかし、放っておいても問題なさそうだが」
「衛宮くんと一緒に逃げた女性は私の友達なの。見捨てる訳にはいかないわ」
「追わなかった所で、あの女は死なないさ。気付かなかったか?ランサーはもう殺す気など無い事に」
「え?」
「ランサーの殺意は衛宮士郎の登場でかき消えたのだよ。
ランサーは衛宮士郎との決闘を純粋に楽しんでいただけだ。
本気で殺すつもりだったら“宝具”を解放するだけでいい」
「だからと言って放ってはおけないわ」
「・・・了解した。では行こう」
そう言うとアーチャーは凜を抱えた。
形からしてお姫さまだっこというやつだ。
「ちょ、ちょっと!?」
「今最も速く走るための方法はこれだ。しゃべらぬ方がいい、舌を噛むぞ」
アーチャーは走り出した。
ランサーの後を追い、・・・あるいは自分の記憶に従って衛宮士郎が行くであろう方向へ。
全力で逃げる。
そもそも[衛宮士郎]が通常の英霊に勝つのは難しい。
だからあれは単なる虚仮威し(こけおどし)にしか過ぎないのだ。
全力で走り、何とか自分の家まで逃げ切る。
「お帰り、大丈夫?」
扉を開くと、そこにはフードの女性が立っていた。
「あぁ、悪いがこいつを守ってやってくれないか?ランサーがここにやってくる」
美綴を女性に託すと玄関より士郎は出ようと振り返った。
「よう、坊主」
殺気もなくランサーが士郎の前に立つ。
「・・・どうしたんだ、ランサー。さっきの続きか?」
「確かにそれも良いな。だが、それじゃねえ」
真剣な表情になり、士郎の後ろを見る。
「なんで坊主が意味深な事言ったかと思ったが、あんたのせいか」
美綴を庇うように立つフードの女性に言う。
「・・・・・・・・・」
「だんまりかよ。その様子じゃ、あんたも"そう"らしいな」
「ランサー、結局あんたは何がしたいんだ?」
女性をにらみつけるランサーに対し、士郎が真意を問う。
「確認だ。他のサーヴァントも"そう"なのかどうかのな。
因みに既に召喚されているサーヴァントはアーチャーの奴を除いて全員"そう"らしい。そして―」
士郎の方へとランサーは向き直る。
「七人目(さいご)のサーヴァントもそう"そう"なのかどうか」
沈黙が辺りを包む。
「・・・ランサー、それがあんたの本心か?」
「ああ、俺の本心であり、マスターの本心でもある。
それを確認したら手も出さずに帰る。ただし、そこの嬢ちゃんの始末は坊主がつけろよ?」
ひっと怯える美綴を指さしながらランサーが言う。
真剣な眼差しが交差する。
「・・・・・・分かった。ランサー、あんたを信用する」
そう言うと士郎はランサーの目の前を通り庭の方へと出て行く。それにランサーが続く。
「じゃあ、俺は塀の上にでもいるか」
庭へと出るとひょいっと塀の上へランサーが飛ぶ。
「ランサー、一体何が起こっているんだ?」
塀の上に座り込むランサーに向かって言う。
「さぁな、全く見当がつかない。危険な神父にも聞いてみたがあいつが知る限り初めてらしい」
そうかと呟くと士郎は倉の方へと歩いていく。
その後ろ姿を見つめながらランサーが何やらぼそりと呟いた。
「・・・『黒剣王』」
倉へと歩く士郎の足がその言葉にぴたりと停止した。
「はっ、マスターの言ってた通りかよ」
「・・・ランサー」
「その異名だけは言うなってんだろ?分かってるって。俺はこの異名も良いと思うんだがそんなに嫌いか?」
「嫌いな訳じゃない。それを背負えるだけの実力が俺には"まだ無い"だけだ」
そう告げると士郎は倉の中に入っていった。
七人目(さいご)のサーヴァントを召喚するために。
士郎は昨夜書き足した落書きの上に立っていた。
その落書きとは消去の中に退去、退去の陣を四つ刻んで召喚の陣で囲んだもの。
サーヴァントを召喚する魔法陣だ。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ」
倉中に響いているのは士郎から紡がれていく言の葉。
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
言の葉が響くたびに空気が凍りつていく。
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
言の葉に反応するように魔法陣が光り出す。
「―――――Anfang(セット)」
体内の撃鉄を全てガキンと起こす。
背中が痛む。
発動していなかったそれがうずき出す。
俺を出せば楽になるぞとそれが語りかける。
(集中しろっ!何も考えるな!)
士郎は自分にそう言い聞かせる。
「――――――告げる」
魔法陣から発せられる光が倉中を照らす。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
言葉を発するたびに光は増していく。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
発せられる光に倉自体が巻き込まれていく。
一寸先すら光で見えない。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」
サーヴァント召喚の呪文が終了する。
七人目(さいご)のサーヴァントが召喚された。
そう、それは歪な[聖杯戦争]の始まりの呪文(おと)となった。
第二作目、どうでしたでしょうか。
楽しんでいただけたでしょうか。
前回の第一作目が現在総閲覧数115となっております。
総閲覧数30位いけばいいかなと思ってた身としては嬉しいような、恥ずかしいようなといった気分です。
ここからは誰も興味持ちそうもない裏事情という名の作者の愚痴コーナーです。
・前回より文字数を減らすつもりが逆に増えた。
―推敲するたびに増えるんです。なんでですかね?
・実はprologueを投稿した次の日に投稿するつもりだった。
―単に出来上がらなかったってだけの話です。一番時間がかかったのは5ページ目の士郎くんの呪文ですね。オリジナルの呪文を考えるのに数時間かかりました。
・戦闘描写を考えられない。
―文才がないせいだと思うんですが、どなたか戦闘描写の参考になる作品とか知りませんか?
・蒔寺さんを喋らせるたびに、つ○きすの浦賀さんとか、らき☆○たの日下部さんが脳内に登場。
―蒔寺さんのキャラクターを把握していないのか、脳が腐ってるのか、それとも両方か。
というわけで以上の事から第三作目の課題は
・文字数を減らす
・作品完成を早める
・戦闘描写を頑張って考えるor参考サイトを探す
・蒔寺さんを喋らせるたびに別の作品のキャラクターが脳内に出てこないようにする
の四点ですね。
・・・第三作目に蒔寺さんは出てこない予定ですが。
しかも、明日から大学です。投稿は今回より間が開くかもしれません。
1月31日
今後の展開的に不都合な表現及び言葉と誤字を変更しました。
例.生徒改質→生徒会室
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Fate/stay nightの二次創作第二作目です。
出てくるキャラクターの強さが変わっていたり
性格が全然違ったり
そもそも出てこなかったり
オリジナルキャラクターが出てきたり
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