はじめまして………?
「みんな、準備は良いよね? それじゃ、会議を始めるよ」
とある国で開催された世界会議。お昼休憩中、日本、ドイツ、イギリス、フランスは、イタリアに招集されて、小会議室にいた。
「議題は、兄ちゃんとスペイン兄ちゃんについて。日本、お願い」
黒板に書きながら、進行していくイタリア。いつものようにだらけたり歌い始めたりといったふざけた様子はない。
「こないだ、仕事でイギリスさんとスペインに行ってきた時の事なんですけど………」
口笛を吹いてイギリスをちゃかすフランス。周りに和やかな雰囲気が漂いそうになった瞬間、イタリアが懐に手を入れて、カチャと静かに一回だけならした。
「日本、続けて」
「はい。それではもう一度。こないだスペインに仕事に行ったときに、スペインさんが、見知らぬ女性と子供用品専門店に入る所を見かけました」
「確かに親密な関係に見えたが、それがどうしたんだ? こんな会議まで開いて」
「大問題だよ。ヘタしたら兄ちゃん死んじゃうぐらい」
「イタリア兄なら、今日の会議に出席していたはずだが」
ドイツの言うとおり、ロマーノは会議に出席はしていた。参加せずにずっと寝てはいたが。
「昨日、病院に行ってたんだ。それに、食欲もあんまり無いみたいで………あの、兄ちゃんが一日にトマトを二つしか食べてないんだよ!」
「なんだって!」
衝撃が走った。食い意地を張っていて、無類のトマト好きのロマーノがトマトを殆ど食べないと言うことは、死亡フラグに等しい。
「つまりはさ、ロマーノはスペインの浮気を知って体調不良になったの?」
「そうだよ。早く、何とかしないと消失フラグだよ」
「これは、迅速な対応が必要ですね」
「なら、会議室にいるんだから行った方が良くないか?」
「いや、その前にどういう方向に話を持って行くかを話し合った方が、良くはないだろうか?」
「無理無理。あの二人、どこかフリーダムな所あるから、どうせ脱線するし」
「なら、とりあえず、大まかな流れをいくつか考えておきましょう」
「ああ、そうしてくれ。それなら、安心だ」
結局話し合いで決められたのは、一つだけだった。
『スペイン氏ね』以上である。
会議室に戻ると、スペインとロマーノは、一緒にお昼を食べていた。
「兄ちゃん、もう具合はいいの?」
家を出るときは、具合が悪そうだったが、今は元気そうに見える。トマトを二個しか食べれない人にはとうてい見えない。
「にいちゃーーーん」
あまりにも久しぶりに元気なロマーノを見て歓喜して、泣き始めた。状況が理解出来ずにいたロマーノは、後ろに立っているドイツを睨みつけた。
「おい! ジャガ芋野郎! なに、泣かしてんだ!」
「俺のせいではない! だいたい、お前らが………」
「な、な、イタちゃん。 どうしたん? どっか痛いの?」
ドイツが、なにかを説明しているが、それを無視して、スペインは、イタリアの頭を撫でる。
「スペイン兄ちゃん――――」
「イタちゃ、へ?」
呼ばれた事に安心したスペインだったが、その瞬間、信じられないぐらいスピードで、額に銃を押しつけられる。
「ちょ、なに? ここ会議室やで!?」
話し合いをもっとうにしている会議で、なぜ銃を持って来ている。いや、それをさも当然と見ている周りも可笑しい。アメリカに至っては、楽しそうで、自分も混ぜて欲しいなど、言っている。
「おい、どうしたんだよ? ヴェネチアーノ」
「兄ちゃんは、黙ってて」
自覚は無いが、可愛がっている弟に一別されて、ロマーノは、泣き出しそうだ。本来なら、ここでスペインが、あやしに入る所なのだが、動けないため、フランスがあやしに入る。
「ハァハァ。もう、なに、たまんない。やっぱり、ロマーノ、欲しいな。ハァハァ」
「フランス! いつも言っとるやろ! ロマーノは、絶対にやらへんよ! もし、ロマーノに攻め入る様なことがあれ――――――イタちゃん、離したって。これじゃ、ロマを助けられへん」
「イギリス」
普段からは想像も出来ないぐらい低い声で、呼ばれたイギリスは、溜息をして、フランス駆除を始める。
「もう、なんやの? 俺、何もイタちゃんにしてへんのに」
「ヴェー、言い訳は、みっともないよ。スペイン」
瞳孔が開き初めて、周囲の国は危機感を感じ始めた。だが、スペインとアメリカは、未だにイタリアは、なぜ怒っているんだで、終わっている。
「あの、私から説明させていただきますね」
見かねた日本が、こほんっと一つ咳をして話し始めた。
「私が、スペインに仕事に行った時のことです。スペインさんが、見知らぬ女性の方と子供用品専門店に入って行く所を見かけまして。その事をイタリア君に言ったら、最近、ロマーノ君の体調も宜しくないと。つまり、イタリア君は、スペインさんが浮気をしていて、それが、ショックで、ロマーノ君が体調を崩したんだって、おっしゃりたいだと思います」
自分の役目は、これで終わりだと言わんばかり、集団の後ろに移動する。これ以上前にいて、被害を受けたらたまらない。今のイタリアには、それぐらいの力を持っている。
「ロマーノ、めっちゃ元気やん。それに、娘と買い物に行っちゃあかんの?」
「おい、娘って。お前、いつガキが出来たんだよ! お兄さん、聞いてないよ」
「だって、誰にも言ってへんもん」
「誰の子?」
「ロマーノとの子やで」
「スペイン!」
あまりにも堂々と言うスペインに思わず、聞いたイタリアまで呆けてしまった。
例え天地がひっくり返っても性別は変わらない。変わらないと言うことは、男のロマーノはどうやっても子供を生むことは出来ない。例え、人ではない国だとしても例外ではない。
「嘘。さすがに俺も騙されないよ」
「嘘ちゃうよ。あれ? な、な、ロマーノ。もしかして、イタちゃんって、知らへんの?」
「………言ってない。それに、たぶん知らないと思う。俺、スペイン暮らしの方が長いし」
「兄ちゃん、何の話?」
顔を見合わせて、にっこり笑うスペインと苦笑いをするロマーノ。今ので、どちらが説明するのかが決まったようだ。
「あのな、最初にこれだけは覚えておけ。お前に、隠してたつもりなは無い。じいちゃんとの約束で、俺はずっと、男のふりをしてたんだ」
「え?」
「だから、女なの!」
「だって、兄ちゃん、女の人、好きだよね?」
「ああ、好きだとも。女だって、あるだろう? あの人、格好いいとか可愛いとか、いろいろ」
「ま、そんな女おっても、ロマーノが世界で一番やで」
「そりゃ、どーも」
スペインを軽く流して、ロマーノはイタリアの前まで来て、頭を下げた。
「悪かった。もう、これ以上、言い訳するつもり無いから」
「言い訳なんて、いらないよ。ええっと、姉ちゃん?」
「キモチワリィ」
「ヒドい! でも、納得。やっぱり、兄ちゃんの方がしっくり来るよね」
今更、性別なんて、どうでも良いことだ。どんなに、否定してもそれが変わることは無いし、二人は、何年経とうと、同じイタリアだ。
「これで、一件落着だな」
「まだだよ」
時計を確認して、ドイツは会議を再開しようとした。イタリアから、待ったがかかった。
「あのね、あの、兄ちゃんが、具合が悪かったのって、もしかして」
「後で説明するから―――」
「せやで、腹の中に居る奴で、三人目や」
せめて、会議が終わってから説明しようと思っていたロマーノ。だが、スペインは会場にいる殆どの人に聞こえるぐらいの声で言った。もう、これ以上の幸せはないといっても良いぐらい、頬は緩んでいる。まるで、お花が飛んでいるような雰囲気だ。
一方、ロマーノは、これ以上ないぐらいに顔を真っ赤にしている。
「テメェなんて、死んじまえ!」
周囲からの視線にとうとう耐えきれなくなったロマーノは、会議室から飛び出す。
「ロマーノ、走ったら、アカンよ」
そう、お花を飛ばしながら、ロマーノを追いかけるスペイン。ずっと、周りに自慢したかったスペインにとって、今日は記念日に匹敵する日になるに違いない。
「ドイツー、ドイツー、どうしよう、俺。いっきに、叔父さんになっちゃった」
「オーストリアさん、帰りにお祝いの品でも見に行きませんか?」
「良いですね。そうしましょう」
「よーし、決めたぞ。今日の議題は、お祝い品についてたぞ」
「そうだな。被るのもなんだしな」
「まぁ、たまには良いんじゃないか」
普段通り、まとまりがなく進むはずだった世界会議。だが、今日は、例を見ないまとまりがある。
「日本、今日の議題は、温暖化についてじゃなかったのか?」
「こうなったら、仕方がないです。さあ、私たちも参加しましょう」
日本に促されて、ドイツは席につく。
どんなに議題がずれても、今日が素晴らしい会議になったことには違いない。
続きはあとがき
ありきたりすぎるが、一度は書いておきたかった、実は女の子ネタ。
そして、ちょっと黒いイタリア。
オーストリアを本気で、オーストラリアと書いてたw
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