~真・恋姫✝無双~ 孫呉の外史1-2
「・・・・・・」
見渡す限りの広い荒野と青い空。その中であって一人佇む少女がすぅっと息を吸う。
「二年半・・・久しぶりの外の世界の空気のなんと清々しい事か」
「蓮華様」
自身の名を呼ばれ、少女が振りかえると。
少女の見知った顔があった。
「何かしら。思春」
「いえ、どうかされたのではないか・・・と」
「大したことではないのよ。久しぶりの外の世界の広さを感じていただけ・・・」
「そうですね。よもや、袁術公認で動けるとは考えておりませんでした」
自分の後ろに控える少女の口から出た名前に、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「その点に関しては、袁術の馬鹿さ加減に感謝しなくてはね」
「はい。雪蓮様、元気にしておられるとよいですね」
少女の口にした名に苦笑が自然と浮かんでしまう。少女にとって会うのも、言葉を交わすのも、全てが久しぶりなのだが、どういう人物なのかをよく知っているために喜びもそうだが心配も同時に浮かんでしまう。
「母様や冥琳を困らせていないとよいのだけど」
「雪蓮様ですから」
「それもそうね。・・・・そういえば、〝天の御遣い〟とやらを保護したらしいけど、そういう得体の知れない者を傍に置くのは感心しないわ。母様も姉様も何を考えているのかしら」
苦笑していた少女の表情が微かに鋭くなる。それを見て側近の少女がフォローするように声を割り込ませる。
「公瑾殿や黄蓋殿も認めておられるようですから、何かあるのでしょう」
そう言ったが少女の表情は微かな鋭さを湛えたままだった。
「だからといって、私が認める理由にはならないわ。だから、私自身の目で見て判断する。もし、信じるに足りないと判断した時は、姉様たちに進言しなくてはね」
――それから暫くして、少女達は自分達の合流地点に到着する。
そこにあった牙門旗には、孫の字があった。
雪蓮たちが駐留している場所からほんの少しだけ離れた所で、一刀は氷花や燕と手合わせしていた。
尤も、手合わせといっても常にしているような激しいものではなく、体をあっためる程度のものだった。
「よ・・・っと・・・そう、いえばさ」
「なん、でしょうか。一様」
今現在、氷花と手合わせしていた一刀が氷花に質問を投げ掛ける。
お互いに、本気ではなく戯れ程度の緩い手合わせ。
こうなったのは、単純に暇が出来たからだった。
――行軍を再開するのは孫権と合流してからとのことで、しばらくこの場に留まる事になったからだ。
「氷花は、さ・・・どうして普段はその旋棍(トンファー)は使わないの?」
翻るポニーテールを綺麗だなと思いながら一刀はそんな事を聞いた。
一方の質問を投げ掛けられた氷花は、ああそのことかといった感じの顔をする。
「一様や雪蓮様、香蓮様、祭様に穏様。それに燕ちゃんの様な〝将〟相手ならばともかく、普段から使おうとは考えてませんね。これはとっておきなんですよ」
とても軽い音を両者の間に響き合う。
一刀の訓練用の木剣と氷花が普段使っている手甲・脚甲の〝青嵐〟がぶつかる音だった。
「それに、・・・ふっ!大概の場合は・・・青嵐で事足ります」
少女はサラリとそう答えるのだった。
「しかし・・・拳士ってすごいんだね」
木剣を引いた後で、一刀はそう言った。対していた氷花も今は構えを解き、手ぬぐいで汗を拭いていた。
「お言葉ですが。私なんかよりも、その細身の剣・・・〝刀〟でしたか。それで勝つ事こそ出来てはいませんが、香蓮様や雪蓮様、それに祭様とも打ち合えている一様の方がよほど凄いんですよ?」
「そーそー。かずと、次はつばめと」
割り込んできた燕が、くいくいと一刀の袖を引く。しかし、一刀はそれを断った。
無論、燕は頬を膨らませて抗議するのだが、一刀の指さす方向を見てその講義も取り下げた。
だが、ただで引き下がる燕ではない。袖を放す前に。
「戻ったら、つばめと・・・・・・手合わせ」
燕の申し出に苦笑しながら一刀は頷くのだった。
「あら、燕とは手合わせしないの?」
「馬鹿娘、一々掘り下げるな。折角燕が身を引いたんだ。その好意はありがたく受け取っておけ」
呉が誇る現王・孫策――雪蓮と先王・孫堅――香蓮がそこには立っていた。
成程、この二人ならば素直に燕が引き下がるのも無理はない。祭の場合は多少ごねてから引き下がり、穏においては徹底的に反論し引き下がらない彼女ではあるが。この二人においては例外らしく、いつもあっさりと引き下がるのだ。
――燕曰く。
『あの・・・二人は、〝別格〟。今のつばめじゃ・・・絶対に勝てない、から。祭様は・・・・・なんとなく反抗・・・したくなる。穏は・・・きっと勝てるから』
とのことだった。
「それで、俺に何か用事かな?」
「別に~。ここに来たのは、単純に避難しにきただけよ」
「あたしは暇つぶしだな。しかし、もう少し早く訪ねるべきだった」
香蓮に関しては〝らしい〟と思った一刀だが、雪蓮の〝避難〟に関しては、何から避難しているかは知らないが、自分にも飛び火しそうな予感がバシバシしたので。
「さ、て・・・ちょっと冥琳の所にでも行くかな」
その場を離れようとして、がっしりと腕を掴まれた。
錆びたブリキ人形のようにギ、ギ、ギ、と重苦しく首を動かすと、そこには何か訴えかけるような、軽く涙目になっている雪蓮がいた。
――やばい、破壊力が凄い。幾らなんでも可愛すぎる。
雪蓮の涙目に一刀が狼狽していると。
「お姉様!」
ビクッと、驚いた猫みたいに雪蓮の背筋が一気に伸びた。
何事かと一刀が後ろを見ると。そこには凛とした雰囲気を持つ少女が立っている。
(・・・香蓮さんや雪蓮さんに似てるな・・・ってことは)
その少女が誰か思い至った一刀は、自分の腕にしがみつきながら青ざめた表情で冷や汗を流す雪蓮に声を掛けた。
「雪蓮、ひょっとしてあの子が」
雪蓮は声ではなく壊れたロボットのようにコクコクとただ頷く。
「貴様!何故姉様の真名を!」
激昂した声が一刀へと向けられる。何故、と疑問に思っていると香蓮が一刀の横に立つ。
「相変わらずの短絡思考め」
呆れたような一言を呟いた後で無造作に〝赤帝〟を振るった。
「!」
息をする程度の軽い感覚で放たれた〝氣〟の衝撃波は、少女に直撃することなく、その少し前で弾かれた。
「香蓮様、何故蓮華様に刃を振るわれたのですか?場合によっては・・・っ」
「場合によっては・・・何だ?興覇よ、まさかお前があたしを殺そうとでもいうのか?嘗めてくれるなよ儒子」
恐らくは少女の護衛か何かだろう。香蓮の放った一撃を防いだ彼女は、香蓮の迫力に呑まれて立ち尽くしてしまう。
そして、自分に向けられているわけでもないのに一刀はその迫力に呑まれそうになった。
他者に全く有無を言わせない圧倒的な殺気。改めて実感する。
――これが、〝江東の虎〟なのだと。
「蓮華」
「は、はい」
「お前が、あの馬鹿と祭の独断専行の件に関して諫めに来たのは結構だ」
「はい」
「だが、その感情を向ける相手を吐き違えるな」
その圧倒的な迫力の中には、先王・孫堅としてのもの以外にも、母親としての一面も感じた一刀は香蓮の横に立つ。
「香蓮さんはあの子の事が大好きなんだ・・・痛っ!」
大好きなんだねと言おうとして、〝ね〟まで言い終える前に拳骨が一発お見舞いされたのだ。
あまりの痛さにその場で一刀はのたうちまわる。
恐らくは照れ隠しのつもりだったのだろうが、これが照れ隠しだというのならその内、命にかかわる事になるのではないかと、少し不安になる〝天の御遣い〟だった。
「余計な事をいちいち言うな。この馬鹿者。雪蓮、お前は逃げようとせずにさっさと来い」
何か諦めたような雪蓮が香蓮に呼ばれてトボトボと歩いてきた。
その後、妹からの説教に雪蓮はぐったりと疲れ切ってしまうのだった。
妹の孫権の説教ですっかりローテンションになった雪蓮の手を引いて冥琳達の所に戻ると、そこには一刀の見知らぬ顔がいた。
艶やかな黒髪が特徴的な少女だ。背中に背負っている武器は、どことなく自分の持つ刀にとても似ているな。と思いつつ、一先ず冥琳達が紹介してくれるであろうと結論付けた一刀は、黙って四人のもとに歩いた。
「北郷、その有様は一体何事だ?」
表情の暗い雪蓮を見て一度は心配そうに訊ねてきた冥琳だったが、雪蓮の後方にいる孫権を見た途端納得がいったようで、それ以上は何も聞いては来なかった。
親友のあっさりとした態度に一度はムスッとした雪蓮だが、自分の手にある自分以外の温かさに今更ながら気付き、隣を見てみるとそこには一刀の姿が。自分と眼があった彼は、何故かにこりと、自分に笑って見せた。
「――!」
一瞬で全身が熱くなるのを感じた。自分ではわからないが、恐らくは耳まで真っ赤になっているだろう。
思わず反射的に手を放して距離をとってしまった。
自分の後ろにいる母を見れば、愉快そうに笑っていて、振り返れば親友も笑っていた。
そして、自分をこんなにした当人は、どうしたのかといわんばかりの心配そうな顔をしている。
――落ち着こう。まずは深呼吸だ。
深く息を吸って、深く吐く。
「ごめんね。もう大丈夫よ。だからそんな顔をしないで一刀」
「そう?なら・・・いいんだけど」
どこまでも鈍い子だ。一体誰のせいでこんな事になったと思っているのだろう。まだまだ一緒にいた時間は長いとは決して言えない。けど、短いとも言えない。
だから言える。この子は決して打算して行動していない、と。
「め~いり~ん」
気持ちを切り替えて、さっきから口元を押さえ笑う友人をなんとかしよう。母に関してはどうしようもない。力づくでどうにかなる相手ではないからだ。
「フフっ・・・いやな、許せ。お前があまりにも〝女の子〟だったものでな」
「うるっさいわね~!茶化さないの!祭!穏!貴女達もその含みのありそうな顔をなんとかしなさい!」
ぎゃあぎゃあと喚いていたら、香蓮が全員に聞こえるようにコホン、と咳をした。
「では、蓮華様。改めて紹介いたします。この男が、以前文でお話した〝天の御遣い〟でございます」
咳払いした香蓮のおかげでやっとのことで本題に入る事となった一同。雪蓮はともかく、冥琳はすこしばかり不謹慎だったと申し訳なさそうな顔をしている。
その冥林がチラリと一刀を一瞥する。視線の意味を汲み取った一刀は、冥琳の横にまで歩を進めた。
「初めまして孫権さん。俺は北郷一刀。性が北郷で名前が一刀・・・貴女方でいうところの〝真名〟はない。強いて言うなら、一刀ってのが真名に当たる事になるかな?」
『!!』
一刀の言葉に孫権だけではく。その後ろに控える二人も同様に驚いた表情をする。
それの意味する事を既に知っている一刀は、チラリと香蓮を一瞥すると。案の定、口元を押さえて笑っていた。
「さて、一刀の自己紹介は済んだね。三人とも、自己紹介なさい。そして、真名を預けなさい」
『!!』
「何せお前達の夫となるかもしれん男だからな。一応言っておく。蓮華、お前に関しては一切の拒否権を認めない」
「な!?」
母親の言葉に言葉を詰まらせる孫権。流石の一刀も、それはあんまりではないかと思ったが、雪蓮に制されて前に踏み出せなかった。
驚愕する妹を余所に、次は雪蓮が言葉を投げかける。
「蓮華、これは孫呉千年の大計のためなの。だから、孫家の人間である貴女の意志は一斉無視するわ。でも、ま、安心なさい。そういう事に及ぶにしたって双方合意のもとでのみって言ってあるから。もし、一刀が強引に貴女と行為に及ぼうとした時は遠慮なく殺っちゃっていいわよ」
一気に自分の体温が下がるのを感じた一刀は、軽く頬をひきつらせている。
「とにかく、蓮華、思春、明命。貴女達三人は真名を一刀に預けなさい。これは、〝孫呉の王〟としての命令よ」
雪蓮の有無を言わせない言葉に、孫権以外の二人は真名を一刀に預けた。
孫権の傍らにいる鋭い目つきの少女が甘寧 興覇、真名を思春といい。
もう一人の艶やかな黒髪の少女が周泰 幼平、真名を明命といった。
孫権は、一刀の事を信じたわけではないと言って真名を預けることを拒んだ。
雪蓮は些か厳しい表情を浮かべたのだが、一刀は雪蓮の肩に手を置き、気にしなくていいとだけ言った。
そして、一刀はそんな態度をとった孫権に真剣な眼差しを向ける。
「それで構わない。だから、孫権さんなりに俺を見て、そして判断して欲しい。もし、君の眼鏡に適った時は・・・君の真名を教えてくれると嬉しいな。それと、信用の最初の一歩ってわけでもないんだけど」
「?」
何かと孫権が一刀の言葉を待っていると、ややあって一度頷いた一刀は、再び口を開く。
「俺の事は、北郷でも一刀でも・・・君の好きな呼び方で呼んでくれ」
「・・・」
しばしの間をおいて、孫権はそっぽを向いて思春と共に自分の指揮する兵たちの所へと歩を進めた。
「やっぱり嫌われてるのかな?」
とても残念そうに呟く一刀の声を聞いた一同は、揃ってため息をついた。
「・・・この儒子は・・・」
「ねぇ、冥琳。蓮華も時間の問題と思わない?」
「同感だ」
「思春ちゃんも長くは持ちそうにないですね~♪」
「うむ。やはり、こ奴は〝英雄〟じゃの」
「なんというか・・・一様には丁度いい言葉と思えてしまいますね」
「ひばな、・・・それ、は褒めすぎ?」
「はわっわ、私はどうすればよいのでしょう?」
各々が好き放題に言ってくれている中、一人のけものにされた一刀はしゃがみ込んで指先でのの字を書くのだった。
立ち直った一刀は、冥琳に呼ばれた。
「や。呼ばれたから来たけど・・・何かな」
「ああ。よく来てくれた。すこしな、お前の意見も聞いておこうと思ってな」
凛とした、氷を彷彿させる雰囲気から、今の冥琳が〝軍師〟としてその言葉を紡いでいるのだと察し、一刀は静かに頷く。
「さて。お前の意見を聞くにあたって、まずは現状からだな」
一刀が冥琳から聞いた話はこうだ。
現在の黄巾党の総力は、おおよそ二十万。普通ならばまず勝てないのだが、各諸侯がそれぞれに動いているため、圧倒する事さえ可能だという。だが、急造の連携など期待できない。それぞれが、名を上げるために動くからだ。では、その中であって名声を得るにはどうするべきか――と。
「・・・・・・う~ん。それなら、諸侯と足並みだけでもそろえる。で、酷い話になるけど・・・こっちは程々に頑張る。そして、周りに頑張ってもらって・・・オイシイところをかっさらう。要は漁夫の利を得るってことなんだけど・・・俺が思いつくのはそれくらいかな?」
一刀の意見を聞き終えた冥琳は、顎に手を当てふむ、と頷く。
「いやはや、本当に良い拾い物だったかもしれんな。中々に悪くない」
冥琳の言葉に自分が試されていた事に気がついた。別段不快にならなかった。満点ではないにしろ、普段は割と厳しい冥琳が自分のことを評価してくれたのだから構わないと思えたからだ。
そんな二人のやり取りを、離れた所から見つめる影が一つ。
「・・・・・・」
(冥琳があれほど楽しそうな顔をしている・・・北郷・・・一体貴方は)
「蓮華様?」
「!・・・何かしら、思春」
振り返ればいつも自分を守ってくれる少女がそこにはいた。
どうにも、意識が冥琳達に集中していたようで、すっかりと上の空になっていたらしい。
「公瑾殿の方を見ておられていたようですが・・・」
「何でもないわ。思春」
そう言って孫権はその場をごまかした。だがその心は、未だに冥琳と一刀の事を気にかけていた。
「〝曹〟に〝公孫〟、〝劉〟、それに〝袁〟。中々どうして壮観ね~」
「ああ。これだけ集まっているなら圧倒できる」
「じゃが公瑾よ。儂らが参戦できる場がなければ功名なぞ得られんぞ。その辺はどうするつもりじゃ?」
「祭の言うとおりだな。各諸侯が出張っている以上、時間を掛けるわけにはいかないだろう」
「かといって、力攻めだけで落とせないでしょうし・・・冥琳、どうするの?」
「そうだな・・・・穏、確か城内の見取り図があった筈だな?」
「ありますよー。もともとは太守さんの持ち物ですからねー。はい、こちらになりますー」
いそいそと、穏は持ってきた見取り図を卓上に広げた。それを見た瞬間、冥琳の眉間に少しだけしわが寄った。
出城は、一言で言うなら〝厄介〟の一言だった。
背後を崖で囲まれたその城は、攻勢に廻るには、呉軍がいささか不利と言わざるを得なかった。
挙句の果てには、雪蓮が正面突破を提案し、祭がそれに同意するなど。皆がどう攻めるか考えあぐねていると、そこで冥琳が一刀へと話を振る。
一刀は見取り図から唯一の死角を発見する。
そして、そこから夜闇に紛れ火をつけ、その混乱に乗じて攻め落とす方針が決まり。決行の夜まで各員が待機となるのだった。
「――」
日が沈み、夜闇が空を染め上げた頃。
北郷一刀は月を見上げていた。
空に雲はなく、満天の星が瞬く。それは、彼がかつて生きていた世界では、簡単にお目にかかれるような光景ではなく、神秘的だった。
「何度見ても・・・やっぱり綺麗だな」
今彼は一人だった。自分の部下である氷花と燕は、一刀の頼みで別行動をとっている。
「・・・・・・」
呟いてまた黙る。この美しい夜空に対する感動も、これから始まる事に思いを馳せれば色褪せてしまう。
「せめて――」
「北郷、そこで何をしている?」
――孫権の声に、一刀の声は最後まで出てくる事はなかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
一刀と孫権は、一言も言葉を交わすことなく並んで座っている。
この、お互いに痛い沈黙。それを破ったのは孫権だった。
「お前は、空を見上げて何をしていた?」
「何も。・・・・・・まあ、強いて言うならお祈り、かな?皆が無事でいますようにって」
「・・・・・・」
孫権は、思わずキョトンとしてしまった。一刀の言葉に、自分も含まれている事に気がついたからだ。
何故という思考が孫権の脳裏を巡る。
母である香蓮や姉の雪蓮。それに祭、冥琳に穏。一刀の部下である氷花や燕は理解できる。逢って間もないとはいえ、真名を預けた思春や明命の心配をするのも、頷ける。
だが、自分はどうだろうか。初見も含め、自身が彼に心配されるような。そんな感情を向けられるような要素がどこにあると言うのか。
だというのに、彼の言葉には自分さえもが入っている。
「私は、お前に心配されるような弱い人間ではないつもりだ。余計な心配をする暇があったら自分の心配をしていろ」
言って自分に軽い嫌悪感を抱いてしまう。
これが姉や母であったなら、もっと素直に彼の言葉を受け止められたことだろう。
だが、これが自分なのだ。今更生き方を変えることなど出来ない。
俯いて、もう一度一刀を見ると彼は苦笑していた。
「そうだね。でも、やっぱり心配になるんだ。どう言い繕ったって、ここが命の懸かっている場所である事に違いはないからね。だから、まあ・・・こうやってお月さんにお祈りしてたってわけ」
「賊ごときに後れを取るつもりはない。・・・安心しろ。お前は私が守ってやる」
「・・・・・・」
それは、孫家の人間としての言葉なのだと感じた。
彼女の。孫権個人の感情ではないと。
そのどこか強がってるような雰囲気を感じた一刀は。
「孫権さん・・・ひょっとして緊張してる?」
「うっ・・・・・」
一瞬たじろいて、少しだけ頬を紅くして孫権は口を開いた。
「これが初陣なのだから、仕方がないでしょ」
今度は一刀の方が呆気にとられてしまった。
今この瞬間に、一刀はこの少女の〝本当〟が見えた気がしたからだ。
なんてことはない。立場や孫の姓を、自分なりに懸命に背負っている少女なのだと。
だからこそ、そんな彼女が少しでも肩の力が抜けるようにと。一刀はごく自然に行動していた。
「な――!?」
驚いたような声を上げる孫権。一刀は彼女の頭を撫でていた。
「うん。やっぱり、俺が孫権さんを守るよ」
「あ、貴方にそれが出来るのかしら」
「出来る・・・ように頑張る。だから、孫権さん・・・ほんの少しでいいから肩の力を抜いてほしいかな?ここにはたくさん凄い人たちがいるんだから。孫権さん一人が全部を背負わなくていいんだ」
「――」
吃驚するぐらいに体が軽くなった。
そうだ。自分は何故そんな当たり前の事を考えなかったのだろうか。
自分の周りには背中を預けられる者たちがいるではないか。自分一人が無理をして背伸びをする必要などどこにもない。
(私は、なんて小さな人間なのかしら・・・)
そして隣に座る青年の姿を、改めて視界に納める。彼は既に頭から手を放しており、とても温かみのある笑みを見せている。
「北郷。――礼を言うわ。ありがとう」
「へ?あ、・・・どういたしまして?」
「ふっ・・・私は行くわ。貴方も、自分の部下をあまり心配させては駄目よ」
礼を言われた理由が分からずに頭をひねらせる一刀を残し、孫権はその場を後にした。
その時、一刀からは見えなかったが。
――孫権は、笑みを湛えていた。
「北郷一刀・・・不思議な人」
完全に信用したわけではない。
だが、彼に嘘は感じなかった。
だから信じてみようと思った。
自分を守ると言った彼の言葉を。
――去り際に見せた。あの笑顔を。
「ありがとう・・・か」
「か~ずとっ」
「考え事か?」
「香蓮さん。それに雪蓮も」
さっぱり答えが見えずに悩んでいたら、いつの間にか二人が目の前にいた。
立ち上がろうとした一刀を、二人は制する。
「礼を言う。お前がなにをしたかは知らんが、あの短絡思考が随分と良い顔をしていた」
「びっくりしちゃった。あのカタブツの蓮華があんな顔をするなんて思いもしなかったもの」
普段の孫権が二人に一体どう評価されているのか気になったが、そちらよりも礼を言われた事の方が気になった。
「あの、さ」
『?』
「さっき孫権さんにも〝ありがとう〟って言われたんだけど・・・香蓮さんはどうして俺に礼を言うなんて言ったの?」
「ふむ。その問いに答えるには、お前が蓮華と何を話していたのかを聞かせてもらえると説明しやすくなる」
そう言われては説明したほうがいいのだろうと考え、一刀は先の一部始終を二人に話すことにした。
「――ということなんだけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
話しを終えると二人は黙り込んだ。
何かまずかったのだろうかと思った一刀だったが。次の瞬間には香蓮に豪快に肩を叩かれた。
雪蓮も声をあげて笑う。
「ああ、お前はやっぱり最高だよ。本当にあたしを。呉を退屈させない」
「母様の言う通りね。一刀、貴方には申し訳ないけど。その理由に関しては、別にわからなくてもいいのよ♪」
「そういう事だ。ただ礼が言いたかったから言った。そう思ってくれ」
二人にそう言われてはそれ以上聞いても何も返っては来ないだろう。
わかったと仕方なく頷く一刀。
「さて、そろそろ作戦開始だ。お前も氷花たちの所に戻ってやれ。二人ともお前を待っているぞ」
「そうよ~。燕なんて頬を膨らませてたんだから急がないと噛みつかれるかもしれないわね♪」
「流石にそれは勘弁願いたいな。それじゃあ俺は急いで戻るとしましょう。二人は?」
「私も母様もすぐに戻るから一刀は早く行きなさい」
「そういうことだ。さっさと行ってやれ」
そして一刀は自分の部下である二人のもとへと急ぐのだった。
一刀が去った後。残った二人は顔を見合わせて笑うのだった。
「なるほど、蓮華があんな顔をする筈だ」
「あれで自覚ないんだから、一刀って本当にいい男と思わない?」
「全くだな。だがな、雪蓮」
先程までの明るい空気は一変していた。
親子としての二人から〝王〟としての二人へと。
「わかってるわ。私たちは、これから一刀の手を汚させてしまう・・・」
「アレは覚悟を決めてはいるが、それでも申し訳なく思ってしまうな。あたし達に出来る事といえば、一刀が皆の無事を祈ってくれたように」
「一刀の心が・・・温かさを忘れない事を祈るだけ・・・か」
そうして二人もまた、自分達のいた場所を後にするのだった。
「作戦を開始する。興覇、幼平。行け!」
『御意』
冥林の命とともに思春と明命が部下と共に城へと向かう。
続いて、冥琳は振り返り、一刀と雪蓮に命を下す。
「北郷は孫策と黄蓋殿と共に正面へ。あとは手筈通りに頼みます」
二人は返事を返し持ち場へと向かう。
孫権は、香蓮、穏と共に後方に待機する事になったのだが、下がる前に一刀の前にまで歩み寄ってきた。
「・・・・・・北郷。武運を祈っておいてやる」
「ありが、とう」
意外そうな顔をする一刀をそのまま放置し、孫権は香蓮と穏と共に後方へと下がった。
持ち場に向かう途中、雪蓮は感心したように小さく笑い。氷花と燕は、一刀の両手を思いっきり抓るのだった。
『――――!!』
抓られる一刀を見て苦笑する雪蓮。すると、腹の底にまで響き渡るような鬨の声が上がった。
「――始まった!」
緊張も合わさって思わず声を張り上げる一刀を、部下である氷花と燕が諌めた。
「一様。まだ火の手が挙がっていません」
「かずと、・・・深呼吸。落ち着かないと、だめ」
「そう、だね。うん」
言われて深く息を吸い、深く吐いた。
二人のお陰で、早まっていた鼓動が落ち着きを取り戻す。
「自分の意志で・・・か」
呟く声は誰にも聞こえていない。一刀は今日この日まで、自分の武の研鑽こそしてきたが、最初の盗賊討伐以来、一度も前線に出されなかった一刀は、今日この日に、遂にその武を振るう事となった。
今度はあの時のように頭がごちゃごちゃしているわけでもない。
自分の意志で刀を振るい人の命を奪うのだ。
「覚悟は決めた。・・・けど、震えが止まらないや」
自分の情けなさに呆れてしまう。
理解はしている。自分が刀を振るうことで守れるものもあるという事を。だが、その言葉の意味を噛みしめてなお、心の中には恐怖があった。
「――雪蓮?」
気がつけば、自分の肩に雪蓮が手を置いていた。
「一刀、何もあなた一人が頑張らなくていいのよ。私や祭もいるし、氷花や燕だって貴方の傍にいるんだから、ね?」
一刀ではなく、雪蓮は一刀の後ろにいる二人へと顔を向ける。目があった二人は、彼女の言葉を肯定するように頷く。
「火の手が上がったわ。一刀、準備は良いわね」
「・・・・・・ああ!」
囮となって敵を正面に引きつけていた祭と合流した一刀たちは、混乱の極みになっていた城内へと突撃をするのだった。
「死ねッ!」
「その頼みは、聞けない!」
一閃。気を纏った刀は、向かってくる黄巾党をいとも容易く切り伏せた。
「皆。行こう!」
『応!』
氷花が、燕が、自分の隊の兵たちが、彼の声に続き、突き進む。
「烈光!」
「げはぁっ!」
敵の懐に入り込み、己の技を叩きこむ氷花、彼女の技の直撃を受けた黄巾兵は二度と立ち上がる事はなかった。そしてさらに向かってくる兵に容赦なく気を纏った鋼の蹴りを見舞う。
「その程度の腕で、この諸葛瑾の頸をとれると思うな!」
撃つ。撃つ。撃つ。
気を纏い、鋼にも等しい五体から繰り出される乱打に、木の葉が舞い散るかの如く黄巾兵が吹き飛ばされて行く。
「愚かですね。略奪などという安易な手段に身を投じた者たちに、私たちは負けない!」
「ほざけ、がきぃ・・・・がは」
氷花へと襲いかかろうとした兵は突然崩れた。その背後には紅と蒼の剣を構える燕が立っていた。
「・・・・ふ、はぁっ!」
「が。ぐ」
「こんな小娘にぃ」
呪詛の言葉を吐きながら崩れていく黄巾兵。
「こい。賀斉 公苗がお前たちを、倒してやる」
燕の剣舞に、次々と敵が倒れて逝く。
「ふっ、せやぁっ!」
斬る、突き刺す。薙払う。
「はっ!」
ともすれば味方を魅了する典雅さのある剣舞。
燕は今、舞っていた。
「くたばれぇぇぇぇ!!」
「遅い!!」
もはや、妖刀と言っても過言ではない一刀の刀が敵を斬り伏せる。
香蓮達との手合わせによって一刀の武はより一層磨かれている。その今となっては、黄巾党ごとき烏合の衆では一刀にその牙を届かせる事など出来るはずもなく
気を纏った〝徒桜〟は、この時代ではあり得ない細身の刀身からは信じられないほどの切れ味を発揮し黄巾党を戦慄させた。
「戦うと決めて、俺は今ここにいる。だからっ!!」
(言い訳はしない。許しは請わない。だけど、せめて・・・死に逝く貴方達が、来世では幸せになってくれる事を・・・)
「・・・偽善かな」
また一人、黄巾兵が倒れる。
自分の考えはきっと愚かしい考えなのかもしれない。だけど、そう祈らずにはいられなかった。
「かずと!」
「!」
燕の声にハッとすると自分の眼前に黄巾兵がいる。
刀を構えなおす暇がない。
「一様っ!」
目の前にいた黄巾兵は、そのまま弾き飛ばされるよう横へと飛んでいった。
「氷花」
「今は気を抜かないでください!」
氷花の叱咤で緩んでいた緊張感が再び張りを取り戻す。
「ごめん。ありがとう!」
言った瞬間に頭に鈍痛が奔る。
「ありが、と燕。気合・・・入ったよ」
「ん♪」
燕は満足そうに頷いたが。意外に痛みが洒落になってない。
「・・・・よし、あと少しだ。皆、頑張ろう!」
「はいっ!」
「ん!」
『おおおおおおーー!!!!』
一刀の声と共に氷花と燕。そして兵たちは雄叫びを上げる。
一刀を信頼し一刀の旗とともに進む者たちの声が辺りに響き渡った。
「一刀、強いわね」
「じゃの。あやつはこの戦地の中にあって戦いに酔いしれてはおらん。良い事じゃ」
「ききききッ貴様ら!」
雪蓮達は冷たい瞳で目の前にいる男を睨んだ。
「力なき民から略奪し、私腹を肥やした気分はどうだった?最高に幸せだったんでしょ?」
一歩、一歩と男に迫る雪蓮。
「でもツケを払う時が来たみたいよ」
右手に握った南海覇王の刃が炎に照らされ、きらりと光る。
「ひ、ヒィィ、来るなっ!来るな!この化け物め!」
化け物と言われ雪蓮は一瞬だけ歩を止めた。だが、それも本当に一瞬の事だった。
火の手が上がる中で歩を進める雪蓮は、まさしく修羅。
「化け物で結構。お前達のような畜生と一緒にされないだけマシね」
「ひぃぃぃ!!」
顔を苦悶に歪ませ、逃走を試みた男に雪蓮は南海覇王を振るう。
次の瞬間に首から上にあったモノは、少しの間をおいて、ごとりと地面に落ちた。
「雪蓮様!大将旗が落ちました」
明命の声を聞き、雪蓮は声を上げる。
「今こそ決戦の時!皆のもの、今こそ雄叫びと共に猛進せよ!!」
『おおおおおおおおおおぉーーーーーーー!!』
雪蓮の声に、辺りに兵たちが雄叫びをあげて応える。
「一人も逃すでないぞ!奴らは飢えた獣!一匹残らず狩り尽くせい!!」
「甘寧隊、追撃する!」
「周泰隊は敵の側面に廻ります!我が隊旗に続いてください!」
将の声に兵は応え、各々の将の旗のもとへと集ってゆく。
逃げまどう黄巾党の残党に彼らの勢いを止めることなど出来るはずもなく。怒涛の勢いで迫るこの軍勢に飲み込まれ、その命を散らせていった。
全てが終わった後は屍だけが残り、長く感じられたこの戦いは終わりを迎えるのだった。
「皆の物!勝鬨をあげよ」
『おおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーー!!』
夜天に轟く兵士達の雄叫び。その中にあって一刀は、胸騒ぎを感じた。
「!――拙い」
一刀は、城壁に人影を捉えた。それは、この戦で奇跡的に生き残った黄巾党の残党で、その男は弓を構えていた。矢の狙っているであろう先には、雪蓮の姿があった。そして、距離があるせいか彼女はおろか誰も気付いていない。
次の瞬間に一刀は、反射に近い速さで行動に出た。
鞘に収めた〝徒桜〟を抜き、残った〝氣〟を一気に練り上げる。
何事かと周りが騒ぎだすが、一刀はそれを気にも留めずに構えをとった。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
雄叫びと共に、全ての〝氣〟を乗せた刀を振り抜く。
放たれた〝氣〟の衝撃波は城壁に姿を見せた黄巾党の残党に直撃し、そのまま崩れ落ちた。
「やっ・・・・・・た」
安堵の表情を浮かべた瞬間、一刀はそのまま意識を手放した。
「一刀に救われたな。馬鹿娘」
「ええ。本当に感謝してもし足りないわ」
まどろみに沈んだ意識に声が届く。ぼんやりとしてはいたが、聴き馴染んだ声である事はすぐに分かった。
「蓮華、一刀の傍にいてくれないかしら?」
「私が、ですか」
訪ねる孫権に雪蓮と香蓮は頷いた。
「私たちはこれから反省会。色々と反省しないといけない事があるから」
ばつの悪そうな顔をして彼女の母と姉は、天幕を出て行った。
残された孫権は、今も眠っている一刀の隣に腰を下ろす。
そしてそのまま、彼の髪をそっと撫でた。
「ありがとう。お姉様を守ってくれて・・・そして私を守ってくれて」
後方に待機していた孫権たちは動くことなく事を終えたのだった。
それはつまり、彼女たちが危険に晒されるような状況にならなかったという事に他ならない。勿論、一刀一人の力ではない。それくらいの事は百も承知しているが、それでも孫権は一刀に感謝した。
彼が、自分に言った〝守る〟という言葉を守ってくれたと思ったからだ。
「ん・・・孫・・・権さん?」
「目が覚めたのね。よかった」
穏やかな表情を浮かべる孫権に、一刀は何事かと思って自分状況を把握しようとする。
そして思い至る。
〝氣〟を使い果たしてそのまま気絶したのだと。
「あはは、かっこわるいなぁ・・・」
「そのようなことはないわ。あなたはお姉様を守ってくれたのだから、もっと胸を張りなさい」
「・・・・・・」
胸を張れと孫権は言った。静かにその言葉が心に沁みわたる。
「そうだ!雪蓮は!?」
「それは最初に聞く事ではないの?」
確かに、と言って一刀は笑った。それからすぐに、孫権も笑った。
控え目な笑顔だったが、それは心からの笑みであると一刀は確信した。
「北郷・・・いえ、これからは一刀と呼ぶわ。その代わりとは・・・言っては何なのだけど」
少し頬を赤らめて深呼吸をした後、孫権は優しい笑みを湛えそして。
「蓮華よ。私の真名、貴方に預けるわ」
恐らく、鏡で自分の顔を見たならば、目が点になっているだろうと思った。
青天の霹靂。いきなり過ぎて思考が追いついてくれない。
暫くして孫権の言葉の意味を理解した一刀は、体を起こし右手を彼女に差し出した。右手の意味を理解した孫権は彼の右手をそっと握った。
「これからよろしく。蓮華」
「ええ。こちらこそ・・・一刀」
などとストロベリーな空気になっていたのだが、それは長くは続かなかった。主に蓮華の身内の手によって。
「一様!」
「かずと、へいきか!?」
どうにもしびれを切らせてしまったらしい。
もっとも、一刀の身を心配して入ってきた氷花と燕は良しとするのだが、残りの面子の九割はからかい目的だろう。そして、最後の一割は殺気が漲ってる。
「な~に良い雰囲気になってるのよ。一刀、蓮華!」
「やれやれ、一刀。お前、随分と手が早くはないか?」
「これは驚きじゃの。権殿が立派に〝女子〟をやっておる」
「あらら~。一刀さんは本当に女たらしですね♪」
「雄として秀でているという事だ。よいことではないか。興覇、殺してはいかんぞ」
「そのつもりでしたが。蓮華様が笑顔になられているので保留にしておきます」
「一刀様、先程の技、凄かったです」
一気に賑やかになる天幕。その中で一刀は思った。
――自分が刀を振るう理由はここにあると。
それは、人を殺す理由には決してならないだろう。
それでも、彼はこれからも剣を振るう事を決意する。
そして、一刀の胸の内にはそれだけには止まらない決意にも似た何かが宿っていた。
――この天幕の中にある笑顔をもっと広げていきたいと。
そんな願いにも似た決意が彼の心に宿り芽を出していた。
~あとがき~
今まで書いた話の中で一番長くなりました。でも、書いてて楽しいです。
さて、黄巾党の話はこれで一応お終いです。次からは、いよいよ反董卓連合の話となりますが、当然その前に拠点です。
それでは次回でまた――。
Kanadeでした。
次のページのアンケートは終了しました。皆様、ご協力ありがとうございました。
拠点アンケート
なお、氷花と燕は拠点初となるオリキャラですのでデフォです。ちなみにペア扱いとなります
以下のキャラから三人選んでください
1、 香蓮 2、雪蓮 3、蓮華 4、祭 5、冥琳 6、穏 7、思春 8、明命
皆さまのアンケートを基に拠点を書こうと思いますのでご協力お願いします
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黄巾の乱完結。分けようかとも思いましたが一気に書き上げました。次回は拠点となります。
最後のページのアンケートは終了しました。皆様、ご協力ありがとうございました。引き続き今作をお楽しみください。
なお、感想等も添えていただけると嬉しいです。
それではどうぞ