No.117258

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 7話

虎子さん

拙い文章ですが、読んでやって下さい。

2010-01-08 03:31:38 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5002   閲覧ユーザー数:4184

~荊州北部襄陽郡の山小屋~

日は落ち、辺りは暗くなっていた。

豪臣と朔夜の前には、小屋に置いてあった布団で眠る女性の姿があった。

「・・・何でこうなるんだよ。ったく」

「確かに。何で戦う姿を見に来た者を介抱しなければならないんです?」

溜息を吐く二人。

豪臣は、煙管に火を点けながら思い返してみた。

 

【回想・始】

~襄陽郡の山中~

貂蝉に会った後、幾つかの村に立ち寄り、各地の情報を集め旅をしていた。

そんな中、荊州北部では劉表と袁術の客将孫堅が争っている、という話が耳に入ってきた。

後の世でも、生きていれば歴史が変わっていたかもしれない。そう言われる江東の虎・孫堅の戦いを一目見たいと思った豪臣は、行き先を西に決め旅をし、先日襄陽郡に入った。

 

(ったく。この時期に孫堅対劉表とは・・・俺の知識は本当に役に立たないかもな)

「さて、この山を越えたら戦場が見えるかな」

「孫堅とは、あなたが見たいと思う程の人物なのでしょうか?」

場所は山の中腹。右は崖、左は絶壁となっている。道幅は大人5人も歩けばいっぱいになってしまう程度。

そんな場所を、外套を被った豪臣とその肩に乗る朔夜が歩いていた。

「さぁな。俺が知識として知っているのは、男の孫堅だ。話によれば、この世界の孫堅は女らしいしな。見てみないと分からないよ」

「そうで・・・ん?」

「どうした、朔夜?」

急に黙り込んだ朔夜は

「・・・上です。前方約30m先。左上にかなりの人数が居ま・・・一人落ちました」

「は?・・・」

 

ドッ!バキバキ!

 

「・・・・・・今のか?」

「はい」

引きつる豪臣と、淡々と返事をする朔夜。

丁度、道が左にカーブしているので落ちた処は見えないが、二人には凄く嫌な音が届いていた。

豪臣は

(あんまし見たくないけどなぁ)

と、思いながらも歩いて行った。

 

目の前に倒れる女性を見つけた二人は

(・・・よかった。惨状になってなくて)

(・・・しぶといですね。頭くらい砕けそうですけど)

と、内心でそれぞれ安堵と舌打ちをした。

豪臣は女性の横にしゃがみ、体を調べる。

(驚いたな。両脚と左腕は折れてはいるけど生きてるよ)

そう思い左の壁を見上げる。斜面は、だいたい40m程の高さがある。

(この高さから落ちて致命傷が無いとは・・・やっぱ、この世界の人間はスペックが違うのか?)

そしてまた、女性に顔を戻す。

女性の髪は薄紫色で長髪。その髪を首の後ろで一つに結んである。顔は整っていて可愛らしい。左の目尻の下に泣き黒子。服は赤を基調とした物で、丈の短いワンピースの様な物。首の周りは広く開いていて、肩、臍、脇腹の部分は生地が無く露出されている。

体中には斬り傷があり、血が衣服にまで付いている。しかし、それも含め何処となく艶めかしい。

(それにしても・・・胸、デカイな・・・)

そんな豪臣の視線に気づいた朔夜は

「変態。そんな物ばかり見ないで、その女を治療するか、こっちに来ているゴミを片付けるかして下さい」

そう言って前を見た。それに釣られて豪臣も前を向く。

前方で砂塵が上がっている。何かが向かって来ている証拠だ。

「数えるのが面倒です。約600人くらいです。馬に乗っているのは一人だけですが」

「・・・面倒だなぁ」

そう言って、立ち上がり、リュックの中に手を突っ込み、新月を引っ張り出す。

「助けるのですか?」

「仕方がないだろ。まさか、敵でも無い傷付いた女を、俺が見捨てられるとでも?」

そう笑う豪臣に溜息を吐く朔夜。

「好きにして下さい。私はこの女についています」

「ありがとう」

そう言って、敵の到着を待った。

 

女の敵と思われる集団が到着した。

その集団の先頭で騎乗している男が声を掛けてきた。

「身形から旅人と見受ける。君の後ろに倒れる女を渡して欲しい。黙って渡せば君に危害を加えない」

恰幅が良く、髭を蓄え、大戟を手に携えた初老の男だった。

新月を持つ豪臣に隙を見せず、馬上で胸を張っている。

(このおっさん、かなりの手錬だな)

「この女性が何・・・」

と、豪臣が答えようとした処で、後ろで動く気配がした。

豪臣は首だけで振り向くと、女性は折れた脚で立ち上がろうとしていた。

「・・・旅の者。申し訳、ないが・・・そ、そこを退い、てくれ。

 俺は・・・そこの男を、打ち取らねば・・・ならぬ」

そう途切れ途切れ話す女性は、膝立ちの状態になり右手一本で剣を構え、馬上の男を睨む。

「ほお!その体で、まだ動くか。我が主の領土を侵す賊将の分際で見上げた胆力よ!」

男は、嬉しそうに口を釣り上げる。

「そう言うことだ。旅人よ、そこを退きたまえ」

そう告げられた豪臣は女性の方へ歩いて行く。

そして

 

ドス!

 

と、女性の腹に拳を叩き込んだ。

「グッ!!・・・な、何を・・・」

眼を見開いた女性は、それだけ言って意識を失った。

豪臣は、そんな女性を優しく寝かせると男たちに振り向いた。

「「「・・・・・・」」」

男たちは豪臣の行動に驚き黙ってしまっていた。

そんな男たちに、豪臣はニヤ、と笑って言う。

「悪いな。怪我した女を黙って殺させる程、俺の心は強く無いんだわ」

「・・・ほう。君一人で我らを相手にする、と?」

豪臣の言葉に侮辱されたと感じた髭の男は睨みつけてくる。

それでも、笑みを崩さない豪臣。

男は

「我が名は黄祖(コウソ)!劉表が将にして江夏が太守!

 我が黄祖隊の兵よ!この男と孫堅の首を取れ!

 首を上げた者には褒美を取らす!かかれぇ!」

そう命じる。

兵は鬨を上げ、豪臣に殺到する。

しかし、はっきり言って豪臣の敵ではない。

一人斬り二人斬り、豪臣は避けては新月を振るう。

(・・・あれ?黄祖って孫堅を罠に嵌めて殺した武将じゃなかったっけ?)

ふと、そんなことを思っていると

「ええい!黄祖隊!一旦、下がれぇい!」

黄祖は叫び、隊を下げる。

豪臣の周りには40程の死体が転がっている。幾人かは崖に転落していた。

「「・・・・・・」」

無言で睨みあう両者。先に声を上げたのは黄祖だった。

「退くぞ、皆の者!

先に見た通り、もう孫堅は戦場に立つどころか指揮すら出来ん状態だ!

 ここで時間を掛けても意味が無い!陣に戻り急ぎ残りの賊を打ち払うぞ!」

兵は退き始める。しかし、そこに黄祖が一人、此方を見ていた。

「・・・旅人よ。君の名を聞いて置きたい」

「別に、覚えなくて良いけど・・・紫堂だ」

「そうか。では、紫堂!今度見える時は死合おうぞ!」

「いやだね。面倒くさい」

豪臣の答えに、フッ、と笑い、黄祖は去って行った。

豪臣は寝かせた孫堅に眼を向ける。

 

(ホント、面倒なことになったな)

 

そう思いながら、黄祖隊の死者に手を合わせる。

そして、孫堅を抱え、山中で見つけた小屋に入り布団に寝かせて仙術での治療を施した。

【回想・終】

 

思い返した後

(本当にどうしよう。歴史通りなら孫堅は死んでいたはず。

 俺は、その歴史を変えてしまった)

そう悩んでいると、朔夜が

「気にしなくても良いでしょう」

と声を掛けてきた。

「・・・何で?」

「ここは“試練”の為に跳ばされた世界です。簡単に私たちの居た世界に影響が出るような場所では無いでしょう」

「・・・そうだな。爺もそこまで耄碌してないか」

「はい」

二人が、そんな問答をしていると

「んん・・・ん?・・・此処は?」

孫堅が眼を覚ました。

「よお。お目覚めか?」

豪臣は三日月の灰を捨てながら言う。

「!!・・・あなたは旅の・・・!黄祖は!?」

現状の分からない孫堅は慌て

「・・・まさか、二人とも捕まったのですか?」

そう聞いてくる。

「いいや。黄祖のおっさんは帰ったよ。此処は山小屋の中だ」

「・・・兵を退いた?あなたが、やったのですか?」

「ま、ね。それよりも、左腕と脚の調子はどうだ?一応上手くいったと思うけど」

豪臣の言葉に、ハッ、と気づき痛みの無い自分の体を撫でる。

そして、折れていたはずの手足がくっついていることを訝しく思い、豪臣を無意識に睨む。

「おいおい。頼むから睨まないでくれ。治してやったのに、これじゃあ、な」

「・・・ええ・・・すみません」

孫堅は、そう言って申し訳無さそうに頭を下げる。

そんな孫堅を見ながら

(ん~・・・若いな。孫堅が死んだのは40前後だったはずなんだけど)

そう思いながら自分よりも年下に見える孫堅に問う。

「で、あんたは孫堅で良いんだよな?」

「はい。助けて頂いて名乗りもせず申し訳ありません。

 我が名は孫堅。字は文台と申します。

 助けて頂いた礼として、まずは、真名、青蓮(しょうれん)を受け取って下さい」

そう言って、また頭を下げる。

「分かった。青蓮、確かに受け取らせてもらった。

 俺は紫堂豪臣。こっちは虎の朔夜だ。

生憎と真名は無いんで豪臣と呼んでくれ」

「ありがとう。それにしても、真名が無いとは珍しいですね?」

「ああ。俺の出身はこの国じゃないんだ」

「他国の?・・・五胡の者ですか?」

「五胡?何だそれは?」

「漢の周りに住む異民族のことですが、知らないのなら違うのですね」

(ああ、羌族とかのことね)

豪臣は合点がいき答える。

「まあ、それとは違うな。で、他に聞きたいことがあるんだろ?」

「はい・・・私の怪我はどうやったのですか?」

青蓮は、少し身構えて尋ねた。

 

尋ねた青蓮に豪臣は答える。

「簡単だ。仙術で治した」

「仙術!あなたは仙人なのですか!?」

豪臣の答えに眼を見開いて驚く。

「まあ、見習いなんだけどな。他言無用で頼む。無用な争いは避けたい」

「え、ええ・・・」

まだ、驚きが治まらない青蓮はそれだけ言って黙った。

そんな、青蓮に豪臣が聞く。

「で、これからのことだ。青蓮はどうするつもりだ?」

「私は自陣に帰ります。豪臣さんへのお礼は、その後したいので一緒に来て頂きたいのですが?」

青蓮の言葉に

(礼ね・・・帰るまで、黄祖のおっさんに滅ぼされてなければ良いけどな)

「分かった。仕方ないから、お前を抱えて連れて行ってやるよ」

溜息を吐き、そう答える。

「いえ、治療して頂いたのです。自分で歩きますよ」

「歩ければな・・・立ってみな」

「?・・・なっ!?」

青蓮は首を傾げた後、上手く立ち上がれない自分に気づいた。

「豪臣さん。これは、いったい?」

焦って聞いてくる青蓮に豪臣は言う。

「仕方ないさ。本当なら一生歩けない体になっていたはずなんだ。それが行き成り治って体がビックリしている。おそらく4、5日はまともに動けないぞ」

(本当は俺の仙気、他人の気が大量に入ったから慣れるまで時間がかかるってだけだけど)

「そんな・・・これでは帰還しても戦場に戻れません」

落胆する青蓮。豪臣は新たな煙草を三日月に詰め火を点ける。

「そう落ち込むな。味方に無事な姿を見せて、安心させてやれるだけ良しとしておけ。さっきも言ったが本当なら一生歩けなくなる程の重傷だったんだからな」

「そう、ですね」

そう言って、青蓮は豪臣の眼を見据え

「豪臣さん。私を我が軍まで連れて行って下さい」

深く頭を下げた。

「いいよ。それくらいどうってことないし。礼は美味い飯でいいぞ」

「な!此処までして頂いたのです。その程度の礼では済むはずが・・・」

「ああ、受けた恩以上を返すのが礼儀、みたいなやつか?

気にすんな。俺が勝手にしたことだ。それに、お前にとってはその程度でも、俺にとっては久しく誰かの料理何て喰ってないんだ。礼をしたいんなら相手に合わせろよ」

豪臣の言葉に、驚いた後、何か安心した顔をした。

「あなたはそうなんですね」

「?・・・そうってどういう意味だ?」

豪臣が聞くと、青蓮は

「ふふ。あなたは良い人、という意味ですよ」

そう言って、初めて笑顔を見せた。

その笑顔は凄く綺麗で

「そうか///・・・なら良い///」

豪臣を赤面させた。

「ふふ。可愛いですね、あなたは///」

そんな豪臣を見て、笑みを深める青蓮だった。

「寝ろ。夜が明けたら此処を出る///」

「はい。分かりました」

そう言って二人は横になり、夜が更けていった。

 

二人が寝静まると、豪臣の耳元で

 

「またですか。変態」

 

という声が聞こえたとか聞こえなかったとか。

 

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

 

いきなり作品の話ですが・・・

遂に始まりました呉編。ゲームとは、かなり時間のズレがありますが、そこは気にしないで下さい。

初めに会ったのは、オリキャラの孫堅でしたね。

実は、孫堅と小蓮とで迷ったのですが、せっかく序章で出会いフラグ立てていたので孫堅にしました。

次に黄祖です。仇となっていたはずの人物ですので、それなりの能力は必要かな? と思いまして、強めの武将にしてみました。

孫堅と黄祖のプロフィールは次のページに載せましたので、よろしかったらどうぞ。

黄祖の能力値に作者もビックリです。

次は、豪臣の持ち物である“リュック”です。序章でも書きましたが、2ℓペットボトルを2本入れたらいっぱいになりそうな大きさなのです。しかし、何故か中から新月が!! まるで四次元ポ○ットのようですね。

気が向いたら、いつか作中で説明します。

 

さて、次回投稿ですが、早ければ10日。遅くとも11日終了までにと予定しています。

 

文章中に誤字脱字等ありましたら、コメントにガンガン書いてやって下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りに登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

プロフィールの能力値は、真・恋姫✝無双のパーフェクトビジュアルブックでの能力値の5~1をA~E。恋や貂蝉、卑弥呼のEXをSと置き換え、それぞれに+・無印・-を(作者の独断と偏見によって)つけました。つまり、最強がS+で、最弱がE-となります。

補足Ⅰ:SとS+の間には絶対的な壁があります(という設定です)。

補足Ⅱ:一般兵はオールE(という設定)です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

孫堅 文台(ソンケン ブンダイ):青蓮(ショウレン) ♀

 

身長 雪蓮より少し低い 年齢―――

 

 揚州呉郡の出身。数々の賊討伐で名を上げて力をつけるが、賊討伐中に袁術に隙を突かれ呉を占領され客将になる。孫家の家長であり、呉軍最強の武将。さらに料理も出来る。

 可愛いモノが好きで、個人的には袁術との関係は良好だが、いつか立場を逆転させ、袁術を自分の下に置き撫でまわしたいと考えている。

 袁術の命で劉表の領土を奪うために出陣。劉表の本拠襄陽郡での戦いで黄祖を敗走させ、精鋭200を以て追撃。しかし、黄祖の罠に嵌まり部下を全て失い、自身は傷を負い崖下に転落する。黄祖に追い詰められるが、そこで出会った豪臣に助けられる。

 

外見

 髪は薄紫色で長髪。その髪を首の後ろで一つに結んである。顔は整っていて可愛らしい。左の目尻の下に泣き黒子がある。胸は、冥琳と同等。外見年齢は20歳未満に見える。娘(雪蓮)よりも若く見える為、孫堅は不老の秘薬を飲んだ、等と噂されたことがある。

 

服装

服は赤を基調とした物で、丈の短いワンピースの様な物。鎖骨、肩、臍、脇腹の部分は生地が無く露出されている。

 

性格

 普段は礼儀正しく、常に優しい笑顔を皆に向ける。しかし、一度戦場に出ると、血に飢えた獰猛な虎の笑みを浮かべて敵を容赦無く斬り捨てる。二重人格者?

 

口調

 自分の事を、普段は私、戦闘モードでは俺と呼ぶ。祭と娘以外は基本的に、“さん”や“ちゃん”をつけて呼ぶが、戦闘モードではほとんど呼び捨て。

 

趣味

 可愛いモノを抱きしめて撫でまわし、悦に浸ること・料理・鍛錬・町の警邏

 

武器

①南海覇王(ナンカイハオウ)

 

能力値

統率S-・武力A-・知力C+・政治C+・魅力A+

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

黄祖(コウソ):? ♂

 

身長 180㎝ 年齢 45歳前後

 

劉表の将で江夏の太守。頭はあまり良くは無いが、かなりの武と統率力を持っている。襄陽の防衛戦では、副将呂公(リョコウ)の策を使い孫堅に重傷を負わせるも、豪臣のせいで首を逃す。

 

外見

 黒髪で短髪。恰幅の良い体格だが、腹は少々中年太り。

 

性格

 自信家で尊大。部下のことは能力ではなく、自分に傅く者を重用する。将官にはあまり好かれていないが、その実力故に兵からの信頼は厚い。

 

口調

 自分の事を我(われ)と呼ぶ。基本的に上司以外は呼び捨て。

 

武器

①大戟(オオゲキ)

 20㎏くらいある戟。黄祖はこれを軽々と振り回す。

 

能力値

統率B・武力B・知力D・政治D-・魅力E

 


 
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