私はマネージャーである。
まだ年端も行かぬ五人の小娘共に使えている。
放課後ティータイム、という名前も近頃ではようやく知られるようになってきた。
それもひとえに私の血と涙と汗と努力と屈辱と忍耐と命を削られる思いをした日々の賜であることは知られていない。
これは彼女たちが暴虐の果てに天下一武道館を制覇するまでの日々を綴った記録である。
「お疲れさまでした」
私は控え室のドアを開け、そう声をかけた。
控え室に入ってすぐのところにテーブルがある。
椅子に座り、そのテーブルの上に両足を放りだしてだらしなく足を広げておられるのが、
秋山澪さまだ。
ステージが終わって控え室に戻ってこられたばかりなのでまだ衣装を着たまま。
大層お疲れの御様子である。
ステージ中、ちらりと澪さまの縞パンを覗ける可能性があるかもしれないといわれている最前列のチケットは、
今や公僕のボーナス一年分程度にまで値がつり上がるほど大人気である。
もっとも、見えた! という声は一度も聞いたことはない。
それほど貴重な澪さまの縞パンであるが、今私の目の前に惜しげもなく大きくくつろげられている。
すっかりとスカートがめくれ上がって隠すものがないほどである。
思うに、おぱんちゅというものは隠されているからこそ価値があるのであって、
このようにこれ見よがしに見せつけられてしまうともはやなんの興味も湧かない。
隠れているものがちらりともったいぶって見えるからこそ希少価値があるのである。
また、それに恥じらう乙女の姿に興奮するのである。
だから堂々と見せつけられても興醒めである。
しかし、澪さまがこれほどの人気を博しているのは、
その絶品の演技力と超絶な営業スマイルの賜である。
結果、世のおたく共を魅了する幻想少女、秋山澪ができあがるのだ。
などと言っている間も私の視線は澪さまの秘部に釘付けになってしまっていたらしい。
それに気づかれた澪さまは怒りを露にされた。
「テメェ、何見てんだ! ぶっころがすぞ!」
彼女の営業ボイスは天使の歌声だとおたく共の間で評判であるが、
この怒りに満ちて濁った声は三十年以上も昔からガキ大将を勤めているあの少年のもののようだ。
しかし、体を動かすのが余程ご面倒なのか、
もはやパンツごときでは動じないのかは定かでないが、
ブルーとホワイトのストライプを隠そうとは断じてされないのである。
「申し訳ありませんでした」
私は机に額を打ち付けるようにして頭を垂れる。
そのうしろで、パイプ椅子の背もたれに持たれてぐったりとしているのが、平沢唯さまだ。
指で白い棒をはさみ、それをしきりに口に運んでは、
口と鼻から煙突のようにもうもうと煙を吐き出しておられる。
そうして唯さまは菩薩様のように心を落ち着けておられるのだ。
私はまだそれが切れていないか鞄の中を確認する。
万が一それを切らすようなことがあると、唯さまはその愛らしいお顔を歪め、
仁王の如き憤怒の形相でお怒りになったのち、
ギータと称する凶器が折れる程に激しくしこたま私をおぶちになる。
「お疲れさまです」
私は唯さまの前で一度立ち止まり、腰を深々と折り曲げる。
「ちゃ!」
テーブルの澪さまの斜め向かいに座って、今私にそう声をかけられたのが琴吹紬さまである。
「んちゃ!」
私も右手を軽くあげて、笑顔でお応えする。
すると、陶器の湯飲みが空気を切り裂く音をたてながら、私の顔面めがけて飛来した後、
鈍い音を立てて粉砕した。
湯飲みの中にぬるくなった液体が残っていたのか、あるいは私の額辺りからなまぬるい何かが吹き出したのかは定かではないが、
ぽたぽたと顔面を滴っている感触がある。
「てめぇ、ぼけてんのか!? ぶっころがすぞ! 茶を入れろって言ってんだよぉ!」
「申し訳ありませんでした」
私は二度床に頭を打ち付けんばかりの勢いで頭をたれた。
「ふん、役に立たないジャーマネね」
そう言って、紬さまはご自慢の長い髪を後ろに掻き遣られた。
「おっす、おつかれジャーマネ」
何故か意識がもうろうとし、ふらふらする体を辛うじて直立させながらポットの前に立っていた私の肩を背後から叩いてご挨拶くださったのがりっちゃんさまである。
「どうした、じゃーまね? 頭から血が出てるぞ?」
既に衣装から着替えを済まされたりっちゃんさまは、ポケットから絆創膏を取り出すと、
私の額にお張りくださった。
「お茶か? 私がいれてやるから少し座ってろ」
と涙がこみ上げてくるほど心優しいお言葉をかけてくださるのだ。
思うに、彼女こそが天からこの汚れた地上に唯一使わされた女神様である。
私が椅子に腰をかけ、りっちゃんさまに張っていただいた絆創膏を一旦剥して、
額に刺さっていた破片を一つずつ取り除いていたところ、
突然椅子の背中の部分を激しく蹴飛ばされてしまった。
顔面から床に衝突すること土下座の如し。
「テメェ、目障りなんだよ! ぶっころがすぞ!」
と仰る中野梓さまに対して私はただただ謝るしかない。
「ごめんなさい。役に立たなくてごめんなさい。生まれてきてごめんなさい」
「まぁフットレストとして使えるから許してあげるわよ」
梓さまは小柄でありながらも、ヒールの鋭く尖った踵で私の後頭部を容赦なくお責めになる。
このようにがさつで粗暴な少女たちも、一度カメラを向けられると、
あるいは観客の前に立つと、見事にアイドルを演じあげる。
そして彼女たちはその笑顔の裏側で、
オタクたちの純真な心を蔑みそして華麗に踏みにじっておられるのだが、それはまた別の話だ。
こんな感じのけいおん!のギャグ本を書いてみたいなぁと思ったのですが、
こんなのありでしょうか?
良さそうなら手直しをした後続きを書きたいと思っているところです。
そんなことより書きかけのらき☆すたの話はどうなったかって?
それは……まぁ……ねぇ?
あと、1/17のコミックトレジャー15にサークル参加します。
「いつも反省中」4号館 N-35bです。
らき☆すた本だけですが、よろしくです。
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放課後ティータイム、彼女たちがカメラや観客の目が向けられていないときに見せる真実の素顔を描いた物語。
という設定のギャグだと認識してもらえると嬉しいです。
くれぐれも、「テメェ、俺の嫁を汚しやがって! ぶっころがすぞ!」などという感想はお寄せ下さらないように願います。