やっと陳留についた。
思えば漢の土を踏むのは何年ぶりだろう。 …10年ぐらい?
そもそも、私が匈奴の地に引っ越したのは物心つく前のこと。
あっちはあっちで家族や友人が出来ていたし、異国からの客人と言うことで、単于(ぜんう)様から破格の庇護を受けて暮らしていたのだ。
今さら「祖国」に戻ると言っても、私は漢に住んでいた頃のことをまったく覚えていない。
両親が死んだのも、物心つく前のこと。
母親は私を産んですぐ死んだので、顔も覚えていない。
私を育ててくれたのは、父だった。
低くてよく通る、それでいて優しい声。
毎晩、私は父親の子守唄を聞いて眠りについていた。
いや、夜だけでは無かった。
朝も父の歌声を聞いて目が覚めた。
日中は古(いにしえ)の武将や賢人の物語を聞かせてくれた。
それらのすべてを、私は今でも覚えている。
そしてその記憶こそ、匈奴での平安の日々を捨てて「新天地」陳留に来るに至った理由。
【あとがき】
読んでくださってありがとうございます。
主人公「蔡炎」ですが、先に言っちゃうと魏の「才女」として名高い蔡文姫がモデルです。
ただし、史実はかなり無視することになると思います。
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真・恋姫†無双の魏ルートを元にした二次創作です。