森の中をサクサクと、一人の大人と二人の子供が歩く。カチャカチャと、ちぃちゃんの右手と、みっちゃんの左手でアームバンドが揺れた。
お姉さんにちぃちゃんは左手を。みっちゃんは右手を繋いでもらいながら、森の中を歩く。
「星が綺麗ねー、本当に。ね、局長」
『……私には見えん』
浦沢はインカムと指揮所のモニタに映し出された地図をにらんでいるだけなので、詳しい情景などは見えない。
「のぶくんきっとね、お星様の見えるところに居るよ」
ちぃちゃんがアオイを見上げ、言った。
「お星様?」
「うん、ママと行くんだって。パパが居た時はパパも行ったんだって。お星様好きなんだって」
「夜のお散歩でもしてたの?」
「んーん、プラネタリウムだって」
「プラネタリウムだってー」
二人の女の子は言い合ってきゃっきゃとはしゃぐ。
何が面白いのか分からないアオイは
「……」
苦笑いで両手を引っ張られていた。
『アオイ君。我慢するんだ』
浦沢がなだめるものの、ずっとアオイは顔がひくひくと引きつったままだ。
「星の見えやすいところってどこかありますかね?」
『普通に考えれば山頂だが、木が多いな。星が見えやすいとはいえな……』
「おばちゃんお菓子―」
浦沢の言葉の途中、ちぃちゃんはお菓子を差し出した。歩く最中、こうして定期的にお菓子をよこしてくる子供たち。
「はいありがとー。でもおばちゃんじゃないよねー?次言ったら次こそぶん殴るからね?
局長こいつらピクニック気分です!」
『……言葉が悪いな、言いなおしなさい』
「こいつらピクニック気分で居やがります!」
言い直してもあまり変わらなかった。しかしアオイは「子供は嫌いです」と言い切っていた割りに、意外とうまくやっているようだ。
「あーはい、コラ!走り回らないの!」
子供たちは遂に鬼ごっこを再開してしまった。説教をしながら、アオイは二人を追いかける。
『ちいさな崖がどうやらあるな。そこからなら、星もよく見えるだろう。視界を遮るような木も、どうやらなさそうだ』
「コラー!卑怯なことしないの!二手に分かれないの!こっちは一人でしょ!」
浦沢の声が届いているのか居ないのか、アオイは追いかけっこに夢中になっていた。
『アオイ君!アオイ君!!』
果たして浦沢の耳元には、ドタドタと走り回る音だけか聞こえるのであった。
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タイムトラベルSF小説
ノーテンキなママの第二話
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