No.115455

追姫†無双 7

こひさん

対姫†無双の続編7話目です。
タイトルの『追』は『つい』です。

最終回です。

2009-12-31 04:01:55 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5321   閲覧ユーザー数:4325

scene-参道

 

 

「祭さまっ!」

 思いがけぬ場所で突然の、しかも死んだと思っていた人物との再会。

 明命は涙する。

「よしよし。この程度で泣きおって。しっかりせぬか」

 そう言いつつ明命の頭を優しくなでる祭。

 

「本当に祭なの?」

 華琳たちも近づき、声をかける。

「なんじゃ? お主たちまで。いったいどうなっておるというのじゃ?」

「それはこちらの台詞よ。あなた、死んだはずでしょ?」

「ふむ。死んだから天に来たというわけではないらしいの」

「当たり前だ。貴様だって生きてるではないか」

 春蘭にそう指摘された。

 

「ふむ。生きているか……この身は幽霊かも知れぬぞ」

「な、なんだと!」

 祭の言葉に春蘭は大剣を向ける。

「おのれ! 赤壁での策の失敗を根に持ち、迷うたか!」

 その剣幕に少しも動じずに祭は笑う。

「ははは。冗談だ。瀕死にはなったがの、この天の医術でわしは助かった」

「そうなのですか! よかったのです!」

 明命がぱぁっと顔を明るくした。

 

「春蘭、武器の携帯は禁止したはずだけれど?」

 華琳が春蘭の武器を咎める。

「そおですよ~。こっちだとそんなの持ってたらメンドくさいことになるんですよ~」

「華琳さまを守るためだ。けいさつとやらに見つからねばよいのだろう?」

「そんなわけないでしょう」

 桂花がわざとらしく大きな溜息をつき。

「後でお仕置きね」

 華琳の決定に春蘭は喜ぶのだった。

 

 

 その様子を見ながら祭は聞く。

「……明命、呉が負けたというのは真実か?」

「はっ、はい……しかし、孫策様、孫権様、小蓮さまは御無事です。また将、軍師ともに元気です」

「ふむ」

「敗戦国とはいえ、呉も自治権を保ち、三国は平和になっております!」

 明命の説明に。

「そうか……負けてしまったのは残念じゃが、勝敗は兵家の常。皆が平穏無事に暮らしておるならばよしとしようぞ」

 そう祭は微笑んだ。

 

 

「祭、呉の敗戦を誰から聞いたの?」

「華琳殿のよく知る男じゃ」

 祭がそう言うと魏の皆は騒ぎ出す。

 

「華琳さまがよく知っている男だと!? そんな男がいるというのかっ!」

「姉者、北郷のことだ」

「わ、わかっていたさ、うん」

 春蘭の勘違いを秋蘭が訂正し。

 

「やっぱり兄ちゃんだよね!」

「兄様にやっと会える!」

 季衣と流琉は素直に喜び。

 

「ううっ、隊長~」

「凪、沙和、泣くのはまだ早いで」

「そう言う真桜ちゃんだって泣いてるの~」

 北郷隊の三人はもう涙していた。

 

「つまり、あいつが狙っていたのは黄蓋ということ?」

「さすがお兄さんです。下は季衣ちゃんたちから上は黄蓋さんまで。老若男女問わずなのですよ~」

「いえ、さすがに男はないでしょう?」

 三軍師はこの神社に一刀が通ってる原因が祭であると予測する。

 

「だそうやで。一刀はやっぱ大きい胸が好きやねんな」

「そうだね、一刀は大きい胸がいいよね~」

「胸は関係ない! ちぃたちが待っている間にあんなオバサンといたっていうの!?」

「一刀さんですから」

 霞と張三姉妹は祭と自分の胸を見比べた。

 

 

「ん? 北郷がこの神社に通っている理由はわしではないぞ。まあ、話はよくするがの」

「どういうこと?」

 華琳に聞かれ社務所を指差す祭。

「神主殿と話をするために来ておるのじゃ。今日も来ておるぞ」

 すぐさま社務所に向かおうとすると大きな声が響きわたった。

 

 

「このバカ弟子がぁぁ!」

 

 

 

 

「こ、この声は……師匠!」

「お師様!」

 社務所から出てきた人物を見て驚く季衣と流琉。

 他の皆はその人物の姿に驚いていたが。

 

「バ、バケモノ」

「キモっ」

「怖い……」

 

「あらあら、みんな、外見で人を判断しちゃ駄目よ」

 紫苑がそう諭すと。

「うむ。神主殿はこの天でいくあてのないわしの面倒を見てくれておる。見てくれはアレかも知れぬが、なかなかの人物じゃぞ」

 祭もそうフォローした。

 

「そうだよみんな、師匠、今日はこんなにまともな格好してるんだよ。ボクびっくりしちゃったもん」

「いつもの服はどうなされたのですか?」

「こちらの世界では刺激が強すぎるらしくてのう」

 流琉にそう答える神主。

「でも、師匠なんでこんなとこに?」

「わしの職業をなんだと思っておる? わしは謎の巫女ぞ……まあ、こっちではこの乙女神宮の神主をやっておるわ」

「そうだったんですか~」

 季衣が納得すると。

 

「まったく、この人数で外史を移動するなど無茶をしおって。このバカ弟子が」

 そう怒った。

「ごめんなさい、師匠」

「ごめんなさい、お師様」

 二人が謝ると、神主は怒り顔を緩め。

「よい。すべては好いたオノコを求める漢女ゴコロのなせる業」

 そう二人の頭をなでる。

 

「ほれ、お前たちの会いたがっていたオノコが待っておるぞ」

 神主が指差した先には北郷一刀がいた。

 

 

 一刀は若干涙目だった。

 皆に再会できた嬉しさだけではなかったと、後に語る。

 

 

「みんな……なんですぐ俺に気づいてくれないかな?」

 

 

 濃すぎる神主の後に出てきたのだ。

 気づかれなかったのは仕方ない。

 

 

 

 

「一刀!」

「よお華琳」

 一番手は華琳だった。

 皆、すぐにでも一刀に飛びつきたかったが華琳に譲った。

 天へ旅立つ前に華琳を除いた皆で相談したことだった。

「あなたが帰ってくるのが、あんまり遅いのでむかえに来たわ。感謝なさい」

「ありがとう華琳」

「なにか不満そうね?」

「再会の抱擁とかはないのか?」

「するわけないでしょう」

 その後に小さな声で。

「皆が見てる前でなんて……」

 と言ったのを一刀は聞き逃さなかった。思わず一刀は。

「華琳!」

 と華琳を抱きしめていた。

 

 

「おお~っ!」

 と順番を譲った皆から歓声があがる。

「先陣を切ってもらった甲斐がありますね~」

「み、みんなの前であれは恥ずかしくないか?」

 真っ赤な顔で凪が聞く。

「甘い! 隊長やで。あんなんまだ軽い方やろ。覚悟しとき!」

「ぶ~~~~~~~~っ!」

 稟が鼻血のアーチを大きく描いた。

 

 

「よかった。みんな相変わらずみたいだ」

「……そうでもないわ。大変だったのよ」

「ごめん」

 華琳を抱きしめたまま謝る。

「俺もみんなに会いたかった」

「みんなに?」

「華琳に! ……愛しているよ華琳」

 そう一刀が耳元で囁いた途端、華琳の頬が染まった。

「言葉じゃなくて態度で示してほしいけれど、後がつかえているの」

「埋め合わせは後で必ず」

「楽しみにしているわ」

 

 

 二番手は季衣と流琉の二人。

 天へ来るための功労者であるということでそう決まった。

「兄ちゃ~んっ!」

「兄様っ!」

 華琳が一刀と離れてすぐに二人は飛び込んできた。

 一刀は堪えきれずに倒れこむ。

「ありがとう。よく我慢してくれたわね、二人とも」

 華琳は微笑むと、皆のところへ戻っていく。

 

 

「え~もん見させてもろたで」

 霞の出迎えに。

「そう? なら私はあなたの泣き顔を楽しませてもらえるかしらね?」

 そう華琳は切り返す。

「うわっ、性格わるっ」

 

 

 一刀を押し倒したまま、二人は聞く。

「兄ちゃんっ! 兄ちゃんはボクの! ボクたちの兄ちゃんだよねっ?」

「おう!」

「兄様っ! もう何処へも行きませんよね?」

「当たり前だろ?」

 そう一刀が答えると。

「兄ちゃんっ! うぅぅっ……会いたかっ……う、うわぁぁぁぁぁぁん! 兄ちゃ~んっ!」

「兄様っ! ……ぐすっ……離れな……ひっく……兄様~っ!」

 季衣も流琉も大泣きし始め、一刀は起き上がることもできずにただ二人の頭をなでるしかできなかった。

 

 

「次は我等だぞ、姉者」

「う、うむ」

「どうした? 季衣と流琉のように泣きそうなのが心配か?」

「そ、そんなことはないぞ!」

 春蘭と秋蘭が自分たちの番を待つことしばし。

 

 一刀が小さな声で。

「お~い」

 そして手招き。

 春蘭と秋蘭が行ってみると。

「二人とも泣きつかれて寝ちゃった」

 困った顔で一刀が言うのだった。

 

 

 春蘭はゴンッと拳骨。

「痛ッ!」

 涙目で春蘭を見る一刀。

「ふん。皆を悲しませた罰だ」

「痛てて……まあ、春蘭にしてはやさしい方、かな?」

「照れておるのだ、姉者は」

「秋~蘭~」

 真っ赤な顔で妹を見る。

 

「久しぶりだな、秋蘭」

「うむ。北郷も元気そうだな」

「そうでもないさ。みんなに会いたくて毎晩泣いてた」

「お前もなのか?」

 一刀の言葉に春蘭が反応した。

「お前もって、春蘭も?」

「! そ、そんなことは……」

「皆が泣いていた。無論、私もな」

「そうか……ゴメン」

「いいさ。さて、後の者たちのために二人は預かろう」

「頼む。季衣、流琉」

 一刀が起こそうとするが。

「いや、いい。ようやくやっと北郷に会えて安心したのだろう。寝かせたままでいい」

 春蘭が季衣を、秋蘭が流琉を負ぶさる。

「積もる話は後でな」

「あ、一つだけ」

 起き上がりながら一刀が引き止めた。

「会いたかったよ、春蘭、秋蘭。本当に嬉しい」

「北郷~」

「その言葉だけで充分だ」

 

 

 次に来たのは桂花だった。

 季衣と流琉を除けば、華琳に仕えた順である。

 その順番でと、事前に決めていた。

「ちっ」

「いきなり舌打ち?」

 一刀はそれも桂花らしいと気にしない。

「あんた、よくもまあ顔出せるわね。あんなに世話になったのにみんなを置いていって!」

「うっ。反省してる」

「どうかしらね? またすぐ消えるんじゃないの?」

「そんなことはしない!」

「あ、そう。ならあんたの顔をまた見なくちゃいけないのね」

「顔も見たくないわけじゃないんだ?」

「ふん」

 それだけで桂花は皆の元へ戻るのだった。

 

 

「隊長!」

「たいちょ!」

「隊長~!」

 次は北郷隊の三人。

「ふ、再び巡り合えて光栄です」

「どうしたんだ凪?」

「久しぶりなんで緊張してるんや。固まらないだけマシ思い」

「そうなの。凪ちゃんずっと隊長と会った時のこと考えていたから余計に緊張しているの~」

 緊張でガチガチの凪をフォローする二人。

 

「まあ待ってたんは凪だけやないけどな」

「真桜も?」

「勿論や! おかげで全然湧いてこなくなったんや! お詫びとしてこっちのカラクリ色々説明してや!」

「いつも湧いてこない言ってた気もするが。それぐらいならいいか」

 

「沙和も待ってたの~」

「悪かった」

「沙和はこっちの服がほしいの~!」

「うっ! 俺こっちだと全然金持ってないんだよ……」

「ぶ~ぶ~」

 

「二人とも、あまり隊長を困らせるな!」

 やっといつもの調子に戻る凪。だが。

「凪はなにかして欲しいことない?」

 そう一刀が尋ねると途端に赤面。

「す、少しでも長く側にいてくれればそれで……」

 なんとかそう言うと硬直してしまう。

 

「あ~、こらもう暫くは無理やな。ほな隊長、次の連中と交代やわ」

「も~凪ちゃんしっかりするの~」

「……」

 立ち去ろうとする三人に一刀は。

「凪、真桜、沙和。俺、なんとか今の約束かなえるから」

「隊長……」

「ホンマ?」

「無理しないでい~の!」

「それぐらいがんばるさ。悪かったお詫びとみんながきてくれたお礼だ」

 

 

 次に来たのは。天和、地和、人和の張三姉妹。

「一刀、会いたかったよぅ~」

「俺だって会いたかったよ」

「ちぃたち、大陸制覇したんだからね!」

「すごいな」

「その時の公演、一刀さんにも見せたかった……」

「俺も見たかったな」

 

「なら今度はこっちでもっと派手な公演見せてあげるよ~」

 天和がそう言うが

「こっちでか?」

「あ~っ、ちぃたちの実力疑ったわね? 天でだってすぐ売れっ子になって見せるんだから!」

「実力疑うわけじゃないけど、こっちの芸能界だって大変みたいだぞ」

「興味ありますね」

 人和も眼鏡をクイッと動かす。

 

「それじゃさっそくこっちでの計画を練るわよ!」

 地和が勢い込んで皆の元へ行こうとする。

「待って。大陸制覇、三人ならできると信じてたよ。おめでとう」

「一刀~」

「一刀……」

「ありがとうございます。一刀さん」

 その言葉をもらって三人は泣きそうになったが、地和が意地でも涙は見せない、と二人を連れていった。

 

 

 次にあらわれたのは霞。

「えらい待たされたで、一刀」

「霞」

「ウチ約束、覚えとるよ」

「俺もだ」

「ならええ。まだウチ、楽しみでワクワクしとるんや」

 

 霞のテンションが上がっていく。

「それにな、羅馬もええけどな、こっちも面白そうや。ドキドキしてワクワクして興奮しとる!」

「うん。むこうからこっちきたら、冒険かな?」

「冒険やな!」

「そっか。色々案内するよ」

「楽しみやな~。みんなとの話さっさと終わらせてすぐ行こうな!」

 霞はそう言って、皆の元へ戻った。

 

 

 次に来たのは風と稟だった。

「お久しぶりなのです。変態さん」

「ちょ、いきなり?」

 風に感じた違和感を気にしていたら、いきなりそう言われた一刀。

「みんなを長い間放置して喜ぶ変態さんなのですよ」

「そ、それは……ごめん。でも俺も喜んでなんてないぞ。むしろ辛かった!」

「その辛さがやがて快感に」

「なるか! ……ん? ……あ! わかった宝譿がいないんだ!」

 違和感の正体にようやく気づいた一刀。

「宝譿はここにくるための儀式で生贄になったのです。尊い犠牲だったのですよ」

「そ、そうだったのか……スマン宝譿……」

 

「性質の悪い冗談はお止めなさい」

 そう稟がばらす。

「稟! そうか冗談だったのか。よかった」

「よくはないのですがここは稟ちゃんに番を譲るのですよ」

「一刀殿」

「うん。元気か? 華琳との閨はうまくいくようになった?」

「貴殿がいなければ……訓練はできないでしょう?」

 一瞬暗い表情になったが、顔を上げて微笑みながら言った。

「訓練か……そうだな戦友! いつでも手伝うよ」

「お願いしま……ぶ~~~~~~~っ!」

 鼻血が弧を描いて飛び散る。

 

「駄目ですよお兄さん。は~い、稟ちゃんトントンしましょうね~」

「ふがふが」

 風が稟を手当てする。

「重ね重ねスマン。……風、稟。ずっと辛かった。会いたかったよ」

「ありがとなのです。……でも、これ以上そんなこと言われたら稟ちゃんが危険なのでそろそろ失礼しますね~」

「一刀殿……ぶふっ!」

 噴出すほどではないが、たら~と鼻血を流す稟を連れて風は皆の元へ。

 

 

 

 

 次に来たのは鈴々と紫苑だった。

 璃々は皆の元で待っている。

「お兄ちゃん!」

「ご主人様」

「え? 誰?」

 鈴々はともかく、紫苑にご主人様と呼ばれて慌てる一刀。

 

「あ、あの……張飛はなんとかわかるんだけど……女教師でご主人様なんて呼ばれると……」

「そう、ですか……」

 

「お兄ちゃん、鈴々のこと夢で見たことない!?」

「いや、ないと思うけど」

 

 

 

 二人は気落ちした様子で皆の元へ。

「違ったのだ……ちょっぴーたちのお兄ちゃんはいないみたいなのだ」

「お母さん、元気だして~」

 落ち込んだ紫苑をなぐさめる璃々。

 

「ふむ。その二人は以前の弟子と近い状態のようだな」

 それまで黙って一刀との再会を眺めていた神主が口を開いた。

「わかるの?」

「わしは巫女だぞ。それぐらい当然よ」

「ここでは神主じゃがの」

 神主にツッコむ祭。

 

「そろそろ詳しい話を聞かせてもらおうかの」

 社務所へ全員を連れていく。

 

 

 

 

scene-社務所

 

 

「さて、まずは季衣と流琉に起きてもらわねばなるまい」

 座布団を枕に寝かされた二人を見ながら。

「北郷殿、二人を起こしてやってくれ」

 そう神主は言う。

「俺が起こすの?」

「うむ。乙女を起こすのは王子様のきっすと決まっておろう」

「えっ!?」

 皆の視線が集まり、ビビる一刀。

「マジで?」

 

 こくりと頷いた神主に仕方なく。

「季衣、起きてくれ」

 まず季衣にキスする。

「にゃっ!」

 すぐさま季衣が目覚めた。

 

「あれは華琳さまの口付けが効いてるのですよ~」

 風が言う通り、自分にキスしたのが一刀と知って華琳と一刀を見比べる季衣。

「兄ちゃんだったの?」

「うん。おはよう」

 ボッと音がするぐらい季衣は瞬時に真っ赤になった。

 

「次は流琉か……ん?」

 流琉を凝視する一刀。

「もしかして……起きてない?」

 寝てるはずの流琉の頬が赤く染まる。

 

「一刀。流琉の期待を裏切っては駄目よ」

 華琳に促され、流琉にもキスする。

「や、やっぱり恥ずかしい……」

「おはよう流琉」

 

 

 

「二人も起きたことだし、話を進めましょう」

「うむ」

「まずあなたは何者?」

 華琳が場を仕切り、神主に問う。

「わしは謎の巫女にして、この乙女神宮の神主、卑弥呼」

「ボクと流琉の師匠なんですよ~」

 

「卑弥呼、なぜあなたが祭の面倒を見ているの? そもそもなぜ祭が生きてここへいるの?」

「知らぬ膣内(なか)でもないしの、ほっておくわけにもいくまい」

 祭の面倒を見ている理由をそう語った。仲の字は違ったが。

「お師様は優しいんですよ」

「とってもいい人なんだよ~」

 そう言って卑弥呼の間近両隣に座り、その肩に頭をもたれかける流琉と季衣。

「ふ、二人は神主さんの弟子なのか!?」

 慌てて聞く一刀。

「そ~だよ。師匠とっても強いんだよ~」

「鍛えてもらったんです。厳しい修行でしたがお師様のおかげでなんとか耐え切れました」

「そうか……尊敬してるんだな」

「うん。ボク師匠大好きだよ」

「なっ!」

 衝撃を受ける一刀。

「そりゃたしかに、二人を縛りたくないとは言ったけど……好きにしていいって言ったけど……」

 

「ふむ。意中のオノコの前であえて別の者と仲良くして、自らへの想いを確認させる。漢女の高等技よの」

「へへ~」

「だが、わしにはだぁりんがおる。そのような技の道具にするでないわ!」

「わわっ、ごめんなさ~い」

「すみません」

 

「な、なんだ」

 ホッとする一刀。

「ゴメンね兄ちゃん。ボクたちが一番好きな男の人は兄ちゃんだから安心してい~よ~」

「でも少しはやきもち妬いてくれたんなら嬉しいです」

 キチンとまっすぐ座りなおして二人は一刀に言った。

 

 

「話がそれたな。次は祭殿が生きている理由か。この世界の医術で助かったというわけだ。ならばなぜ、この世界に祭殿が来たという理由であるが。それはそこにいる北郷殿のせいぞ」

「一刀の?」

 再び一刀に注目が集まった。

「うむ。北郷殿がおらねば、祭殿が死ぬこともなかったのであろう?」

「うん。こっちの歴史じゃ黄蓋は赤壁で死んでいない」

「だからだ。修正力が働いて祭殿は北郷殿の出身のこの世界に跳ばされた。結果、むこうでは必死の怪我を負った祭殿も助かったということだな」

「しかし、それなら他にも大勢こちらへ来てるのではないか? 北郷が原因でむこうの歴史は結構変わってしまったのだろう?」

 秋蘭が疑問を口にする。

「歴史に名を残すような人物でなければ修正力は働かん」

「なるほど。張飛と黄忠も同じ理由ね」

 華琳が考えながら言う。

「張飛と黄忠が魂だけだったのは、私たちの世界にも張飛と黄忠がいたからかしら?」

「それもある。二人が死ぬ原因となった季衣と流琉が魂だけだったというのもある」

 

 

「それじゃ、鈴々たちのお兄ちゃんはどうなったのだ?」

 ちょっぴーが待ちきれない、といった感じで聞く。

「こちらのご主人様に憑いている様子でもありませんし」

 紫苑も続けた。

 

「生きておるわ」

「え? でもボクたち死んだって……」

「不完全な情報で外史を発ったのだな。たしかに瀕死の重傷を負った。普通なら死は免れなかったであろう。だがそこには都合よくだぁりんがおった」

「だぁりん?」

「我が愛しきオノコ、華佗よ」

 そう頬を染めて言う卑弥呼。それを見たほとんどの者は寒気がした。

「お師様はそういう人なんです……」

 流琉の説明も小声だった。

 

「とにかく、お兄ちゃんは生きてるのだな!」

「うむ」

「よかったのだ!」

「ええ。本当に良かった……」

 鈴々は大喜びし、紫苑は涙を拭う。

 

 

 

「よかったね二人とも。……師匠、ボクたちの時みたいにちょっぴーとしーちゃん、元の外史に送れない?」

「お願いしますお師様」

 季衣と流琉が卑弥呼の正面に座りなおしてお願いする。

 

「できんことはないが、二人の身体はすでにないのだぞ」

「それならだいじょうぶ!」

「むこうのわたしたちの身体へ送って下さい」

 二人の言葉に驚く鈴々と紫苑。

「季衣?」

「流琉ちゃん」

 

「むこうのボクたちならとり憑かれるの、慣れてるから」

「ふむ。それでよいか?」

 鈴々と紫苑に聞く卑弥呼。

「お兄ちゃんに会えるならなんでもいいのだ! チビペタでも我慢するのだ!」

「むこうのボクにそう言って断られるなよ~」

「ご主人様や璃々に再び会えるのでしたら……でも、流琉ちゃんいいの?」

「むこうのわたしも璃々ちゃんのこと気にしてたから、きっとわかってくれます」

 

「ならば後ほど本殿にて送り届けようぞ」

「ありがとうなのだ」

「ありがとうございます」

「べ、別にお主らのためなのではないからな! 外史のバランスのため、ってだけなのだからなっ!」

「師匠照れてる~」

 

 

「う、うるさいうるさい! 次はわしから質問するぞ。曹操、お主らはどうするつもりだ。北郷殿と再会できたはいいが、これから先のことを考えておるのか?」

「お師様、わたしたちを元の外史へ送ることはできませんか?」

「ううむ。難しいのう」

 流琉の願いに悩む卑弥呼。

「この人数を送るとなると……銅鏡を使うとしても数年は力を蓄えねばならん」

「そう。ならば数年はこの世界で暮らすことになるわね」

 

「あてもあるまい。戻れるまでは祭殿同様、ここで巫女をやってみぬか? 仕事はしてもらうが住と食は提供する。衣は巫女服支給ぞ」

「そこまで世話になるのもね。一刀のところはどう?」

 華琳はそう聞くが。

「ごめん無理。俺んとこ男子寮。フランチェスカの学生じゃないと駄目だし、女人禁制だし、俺の部屋にみんななんて入れないし」

「そう……」

 

「華琳さま、ここは師匠の申し出うけましょうよ~。兄ちゃん、巫女さんもだ~い好きだし」

「うん。巫女さんいいよね!」

「そう言えば一刀。最近ここへ通っていると聞いたのだけど?」

「あ、それは神主さんにむこうの世界へ帰れないか聞きに来てた。祭さんに会いに来てたってのもあるけど」

 そう一刀が言ったので華琳は迷いを捨てた。

 

「卑弥呼。私たちあなたの世話になるわ。いい?」

「よかろう。ならばあとは北郷殿と同じ学校へ通ってもらうぞ」

「え?」

「銅鏡はあの学校にある。なにより、この人数の年頃の乙女を学校にも通わせずに働かせていたのではご近所様の評判が落ちるのだ」

 卑弥呼がそう説明するが。

「えっと、聖フランチェスカ、一応キリスト教系の学校なんだけど……」

「なに、気にするでないぞ。少子化で共学になるぐらい生徒数が問題ではないか。それとも皆と同じ学校は嫌だと申すのか?」

「そうだな。ありがとう神主さん」

「べ、別にお主らのためなのではないからな! ご近所様の目が気になる、ってだけなのだからなっ!」

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

 この後、巫女とか学園生活編をやるつもりでしたが

 ここに辿り着くまで思ったよりも話数がかかってしまい

 また、キリがいいところが前作と同じ7話目なので追姫†無双は今回で最終回です。

 

 話自体は次作に続きますがタイトルはまだ未定です。

 

 

 


 
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