No.1150353

英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

soranoさん

第45話

2024-08-19 21:16:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:605   閲覧ユーザー数:536

4spgをこなしながら街を見回っていたヴァン達が昼食を終えるとヴァンのザイファに通信が来た。

 

~伝統地区~

 

(この番号は…………何か掛かったか。)

ヴァンが通信を始めると映像にディンゴが映った。

「ヴァン――――――今、どこにいる?」

「ああ、ちょうど――――――…………?どうした?妙に慌ててるみてえだが。」

「―――――頼まれていた件だが早速、目立つ動きがあった。お前たちが二度出くわしたという護衛を連れた観光客を覚えているか?先ほど連中が騒ぎを起こしたらしい。」

「またですか…………?懲りない人達です。」

「ったく、今度は何をやらかしたんだ?」

ディンゴの話を聞き、昨日の護衛を連れた観光客達を思い出したフェリは眉を顰め、ヴァンは呆れた様子で訊ねた。

「…………周囲にいた目撃者の証言だ。現地の踊り子らしき少女に絡んで車に連れ込んだらしくてな。止めようとしたベレー帽の娘もついでに連れ込んで走り去ったらしい。」

「…………!」

「そ、それって…………!?」

「…………ギルドか警察には?」

ディンゴの話を聞き、観光客達が拉致を実行したことにヴァンは表情を厳しくし、アニエスは不安そうな表情で声を上げ、リゼットは冷静な表情で訊ねた。

「間が悪いことに今は無理そうだ。」

ディンゴの話通り、市内の数か所では喧嘩が発生し、その対処に警察や遊撃士達が駆り出されていた。

「…………市内各地で同時多発的にケンカ騒ぎが起きたようでな。その対処に追われているらしい。」

喧嘩の様子を見つめながらディンゴはヴァン達に状況を説明した。

「おいおい、そいつは…………」

「…………ヴァン様。」

「ああ――――――ディンゴ、駐車場で落ち合うぞ。詳しい話は車で聞く…………!」

一方その頃、拉致を実行した観光客達は護衛の運転によって車でどこかに向かっていた。

 

「イ―――――ヤッハァ――――!」

「オラオラ、ガンガン飛ばせや!」

車内にいる観光客達は自分達の目的を達成したことに気分がいいのか声を上げたり、護衛達に更にスピードを上げるように指示をした。

「ねえ、降ろしてよー!」

「は、早く街に引き返さないと訴えますよっ!」

そこに後部座席でそれぞれ両腕を拘束されたシャヒーナとマリエルが自分達を解放するように要求した。

「はは、心配しなくてもガキや幼児体型には興味ないからさ!」

「むっ、誰がガキだコラーっ!」

「セ、セクハラでも訴えますっ!」

観光客の一人の指摘にシャヒーナとマリエルはそれぞれ反論した。

 

「静かにしてろっつんだ、アア!?」

「…………っ!」

「ひっ…………」

そこにもう一人の観光客が怒鳴り声を上げて二人を黙らせた。

「クク…………安心しろ、お前らはタダのエサだからよ。あの美味しそうな姉貴に女優なんかをおびき寄せるためのなァ。」

「でもちょっとくらい痛い目に遭ってもらうのもアリかもねぇ~?」

「…………ううっ…………」

「あ、貴方たちは…………」

観光客達の目的を知ったシャヒーナは姉に迷惑をかけてしまったことに悲しみ、マリエルは怒りの表情で観光客達を睨んだ。

「ヒヒ、考えるだけで堪んねぇなぁ!何もかもメチャクチャにしてやろうぜ!」

「映画祭前の景気付けだ、お互い愉しんでいこうじゃないかぁ!」

「っ…………」

「そ、そもそもこの車、どこに向かってるんですか…………!?」

「…………アア…………?どこってそりゃ…………」

「…………あれ…………どこだったけぇ…………?」

マリエルの問いかけに対して観光客達は怪しげな黄金の瞳を輝かせながら答えた。

 

~車内~

 

一方その頃ディンゴと合流したヴァン達は車でシャヒーナとマリエルを拉致した観光客達を追跡し始めた。

「シャヒーナさん!マリエルさんまで………」

映像に映るシャヒーナとマリエルが拉致される様子を目にしたアニエスは声を上げた。

「監視カメラの画像だ。妹の方はベガス社からつまみ出された後、帰る途中で狙われたようだな。」

「そして注意しようとしたマリエルさんまでついでに………」

「オイオイ、完全に犯罪じゃねぇか。」

「あまりに異常、ですね。MK社の追跡調査で判明したメッセルダムの状況と似ています。」

ディンゴの話に続くようにアニエスは呟き、アーロンは真剣な表情を浮かべ、リゼットは自分が知っているあることとサルバッドの状況が似ている事を答えた。

「え…………」

「…………そうなのか?」

リゼットの話を聞いたフェリは呆けた声を出し、ヴァンは真剣な表情で訊ねた。

 

「ああ――――――あちらでも似たような”異様な争い”が頻発していたらしい。そして各方面が対応に追われる中で謎の小火で頻発し、映画祭は中止になった。」

「ハン、あまりにもネタが符号しすぎているってわけかよ。」

「そして消えてしまったとはいえ、メッセルダムは”A"の元本拠地――――――煌都であの人たちが倉庫を借りてたのは”サルバッド通運”という架空会社でした。」

「…………!そいつがあったか!」

「繋がってきたみたいです………!」

煌都での出来事を口にしたアニエスの話を聞いたアーロンとフェリは血相を変えて声を上げた。

「―――――今のところサルバッドにマフィアや半グレの兆候は掴めてねぇ。だがもし”タガが外れたような事件”に連中が結びついているとしたら…………構成員自体も使ってやがった”ブツ”が関係しているかもしれねぇな。」

「…………まさか…………!」

「そ、それって…………」

「”黒月”がご禁制にしてるアレか。ハッ、いかにもありそうじゃねえか。」

ヴァンが口にした話を聞き、最初のゲネシスを手に入れた時に戦ったマフィア達の事を思い返したアニエスは声を上げ、サルバッドの今の状況に関係している”物”が何であるかを察したフェリは血相を変え、アーロンは鼻を鳴らして心当たりの正体を口にした。

 

「…………だがその場合、どうやって広めているかという話になりそうだ。」

「ええ、警察やギルドもそちらには目を光らせていると聞いていますし。」

「…………いくつかピースは揃ってきた。”奴ら”が関わっているとしても今回はまだ身を潜めていそうだが…………その辺りは馬鹿どもを締め上げれば少しは見えてくんだろ。」

その後ヴァン達の車は砂漠をある程度進むと停車し、ヴァン達は車を降りた。

 

~陽炎砂丘~

 

「連中が向かったのはこの先だな。気づかれて人質に取られたら厄介だ。ここからは歩きで追跡するぞ。発見しだい連絡する――――お前はここで各方面と連絡を取ってくれ。」

「警察とギルド方面への働きかけをお願いします…………!」

「ああ、乱闘騒ぎが収まりしだい、応援に来るよう手配する。…………マリエルたちを頼む。」

「了解ですっ!」

「ハッ、とっとと捜し出してサクッと助け出してやるよ!」

「それでは追跡を開始しましょう。」

そしてディンゴと別れたヴァン達は砂漠に残っている車輪の跡を追ってシャヒーナ達を拉致した観光客達の追跡をし、洞窟の近くに停められている車を見つけたヴァン達は準備を整えて洞窟に突入した。

 

~洞窟~

 

洞窟の奥に到着すると大型の植物を目にしていた観光客や護衛達がヴァン達に気づくと振り向いた。

「―――――なんだァ、お前らは…………」

「あァ、お前らもパーティに参加したいのかよ…………?」

「いいじゃんいいじゃん!一緒に愉しもうじゃないかぁ…………!」

観光客達は異様な様子を見せながらそれぞれ武装を構えた。

「チッ…………”普通”じゃねえな。」

「”息吹”がおかしいです!何かに侵されているような…………!」

「ハン、くたばって操られてるってわけじゃなさそうだが…………!」

「―――――来ます、迎撃を。」

対するヴァン達もそれぞれ武装を構えて迎撃の体制に入った。

「キシャアアアアアアッ…………!!!」

そしてヴァン達は観光客達との戦闘を開始した。観光客達は異様な様子ではあったが、戦闘能力自体は低かったので、全員ケガもなく観光客達を制圧した。

 

「ふうっ………」

「妙な”気”を纏ってやがったが所詮はザコだったな。」

「やったあ!すごいよ、フェリたち!!」

「ううっ、助かりました~…………もう服が砂だらけで――――――」

ヴァン達の勝利にシャヒーナは喜びの声を上げ、マリエルは安堵の溜息を吐いた。するとその時地下水路でも現れた天使型の傀儡がヴァン達の上に現れ――――――

「―――――上だ!!」

気配に気づいたヴァンは上を見上げて警告し、フェリとリゼットはそれぞれ人形に銃撃を行ったが人形は腕を振り回して襲い掛かる銃弾を弾いた。

「っ………やっぱり…………!」

「潜んでやがったのかよ…………!」

「高見の見物は終わりだ――――――居るんだろうが、出てこいや!」

「なるほど、私が潜んでいる可能性に備えていましたか。」

ヴァンの言葉に対して女性の声が聞こえると上の物陰にいつのまにか白銀の娘がいた。

 

「アルマータの手先――――――いえ、暗殺者(アサシン)ですか?」

「否定します――――――彼らとは”契約”を結んでいるに過ぎません。そして今回、私と”イシュタンティ”の役目は”ここまで”です。」

フェリの問いかけに対して白銀の娘は淡々とした口調で答えた。

「イシュタンティ…………そいつがその”天使”の名前か。」

「…………どうやら現代の技術で製造されたものでは無さそうですね。その斬撃痕――――――MK社の調査記録に類似のものがあったと記憶しています。―――先々月に全滅した、アイゼンシルト中隊についての。」

「…………!」

「あの幹部(メルキオル)の”古巣”の…………アイーダさんたちを襲った…………!?」

リゼットの分析を聞き、目の前の白銀の娘がアイーダ達の全滅に関わっていることに気づいたアニエスは目を見開き、フェリは驚きの表情で娘に確認した。

 

「肯定します――――――契約の一環として。女性中隊長は想定以上の強敵でした。敬意を表します。」

「ッ………ああああっ!?」

娘の答えを聞き、娘がアイーダ達の仇の一人であると知ったフェリは我を忘れて娘目掛けて銃撃を放ったが、物陰に隠れている娘には命中しなかった。

「…………フェリ様。」

「…………はあっはあっ…………」

フェリの様子を見かねたリゼットがフェリを声をかけるとフェリは我に返り、攻撃を中断して息を切らしていた。

「一連の”実地検証”は完了しました。交戦のオーダーは受けていないため私達は失礼します。」

娘は宣言した後その場から跳躍し、天使の傀儡――――――イシュタンティが差し出した片腕に乗った。

「おい、あの女―――――!?」

「…………やっぱりな。ここでも、地下水路でも感じてたぜ。昨夜のステージと同じ――――――自分も他人も”物”として見てる温度のない視線をな。」

娘の容姿を目にしてナイトクラブでも見覚えがあったアーロンは血相を変えて声を上げ、ヴァンは真剣な表情で呟いた。

「…………なかなかの観察眼。いえ、貴方の場合は”匂い”ですか。せいぜいその嗅覚を無駄にせぬよう。――――――それでは。」

そして娘を腕に乗せたイシュタンティはその場から飛び去った。

 

「チッ…………余裕かましやがって。」

「はい…………わたし、まだまだです…………」

「フェリちゃん…………」

「…………ゲネシスも隙あらばと思ったが、そんな甘い相手じゃなかったな。」

「いえ、いいんです。みんな無事だっただけでも…………シャヒーナさん、大丈夫ですか?」

ゲネシスを奪還できなかったことに若干残念がっているヴァンに指摘をしたアニエスはシャヒーナに近づいて声をかけた。

「うん、ちょっと腕が痺れたけど…………――――――アニエスさん、ありがとね!」

「あ、ありがとうございます。…………ううっ、カメラを持ってきてれば!」

そしてアニエスとリゼットはそれぞれシャヒーナとマリエルの両腕を拘束している縄を解いた。

「で、馬鹿共はともかくこのデカイ植物はなんなんだ?」

「多肉植物の一種だろう。この輝き、もしかして――――――」

「―――――ビンゴだったか。良い場面は逃がしたようだが。」

大型の植物を見上げたアーロンの疑問にヴァンが自身の推測を答えた後あることを察したその時ナージェを連れたシェリド公太子がその場に現れた。

 

「…………ぁ…………」

「あ、貴方は…………」

「お姉のスカウトに来てた…………」

「シェリド公太子殿下…………!?」

予想外の人物たちの登場にヴァン達だけでなく、シャヒーナやマリエルも驚いていた。

「…………どうやらそちらも同じネタを追ってたみたいですね?」

「フフ、我が国とカルバードは昔から良き隣人だからね。その関係はカルバードがメンフィル・クロスベル連合の”属州”になっても、変わっていないんだよ。技術に投資、最近では映画音楽産業にも積極的に関わらせてもらっている。そんな中、怪しい動きを調べていたが…………――――――ナージェ、その植物かい?」

「ええ、アルカロイド成分を含む竜舌種(リュウゼツラン)の一種でしょう。やはり七耀脈に反応して活性化しているようです。」

ヴァンの問いかけに答えたシェリド公太子は発行している大型の植物を見上げながらナージェに確認し、シェリド公太子の問いかけにナージェは頷いて自身の分析を答えた。

 

「アルカロイド…………一部の植物から抽出されるという。」

「ええ、麻酔薬などの原料にも使われる成分ですね。――――――植物の種類、用法・用量によっては幻覚や覚醒作用をもたらすものもあります。」

「…………!」

「ハッ、予想通りだったみてぇだな。」

「ああ――――――”ドラッグの材料。”メッセルダムの事件にも関係してたのは間違いねぇだろう。」

アニエスとリゼットの話を聞いたフェリは目を見開き、アーロンの言葉に頷いたヴァンはある推測をした。

「サ、サルバッドにそんなものが………」

「すごいスクープですっ…………!」

ヴァン達の話を聞いていたシャヒーナは驚き、マリエルは興奮した様子で声を上げた。

 

「フッ、一月近く探っていた私達に追いつくとはね…………――――――”やはり”直接ここに乗り込んできて正解だったようだ。」

「…………!?」

「へえ…………?」

「…………目的は同じ。だが協力に来たってノリでもなさそうですね?」

「え…………」

意味ありげな笑みを浮かべたシェリド公太子の言葉を聞いたフェリは驚き、あることを察したアーロンは興味ありげな表情を浮かべ、ヴァンは真剣な表情でシェリド公太子に問いかけ、その問いかけを聞いたアニエスは呆けた声を出した。

「フフ…………君とは個人的には気が合いそうだとは思ったんだが。元々、そちらのメイド君の”出向元”とは折り合いが悪くてね。」

「…………恐れいります。」

シェリド公太子の指摘に対してリゼットは静かな表情で答えた。

「何より信用できないのは君だよ、ヴァン・アークライド君。マルドゥック社の社外テスターにして表と裏のどちらにも顔が利く特異な立場。………場合によっては”彼ら”と裏で繋がっている可能性もありそうだ。」

「っ…………そんな!?」

「ハア…………?コイツがアルマータとか?」

「ま、確かに筋さえ通せばどんな連中の依頼も受ける可能性はありますがね――――――」

「でもあり得ません…………あの人たちは幾つも一線を踏み越えていますから。その時点でヴァンさんが受ける可能性はゼロだと思います。」

シェリド公太子がヴァンがアルマータと繋がっている事を疑っていることにフェリは信じられない表情で声を上げ、アーロンは困惑の表情を浮かべ、ヴァンは苦笑し、アニエスは否定の意見と指摘をした。

 

「…………」

「アニエスさん…………」

「ふふ、良い助手を持ったね。だが――――――それとこれとは話が別だ。」

アニエスの意見に対して苦笑したシェリド公太子は指を鳴らした。するとナージェが前に出て自身の武装である中東系の剣を構え、シェリド公太子自身の戦闘の構えをした。

「湾曲銃刀(ガンシャムシール)…………!」

「クク、上等だ…………さっきはザコばかりだったからな。」

「えっ、えっ…………!?」

「なんなの、どうなってるの~!?」

ナージェが抜いた剣を目にしたフェリは警戒の表情で声を上げ、アーロンは不敵な笑みを浮かべ、ヴァン達とシェリド公太子達が戦闘を始めようとしている雰囲気にマリエルとシャヒーナは困惑していた。

「是非もなし、ですか。」

「ああ…………しかしアンタもやるつもりかい?」

「なに、ただの余興さ。彼女一人でも十分だろうがね。言葉だけでは不足だ…………君と、君たちの力と質(たち)を推し量るには。このシェリド・アスヴァール――――――手ずからアークライド解決事務所を検分させてもらうよ!」

「公王家護衛官ナージェ・ベルカ、参る…………!」

「来るぞ――――――相手が相手だ。アーロン、”切り札”を呼べ!」

「ハッ、小娘の天使の方で十分だと思うが…………出番だぜ、姉貴!!」

そしてアーロンに召喚されたマルティーナを加えたヴァン達はシェリド公太子とナージェとの戦闘を開始した!

 

「”天使”…………!」

「ほう…………?そちらが噂に聞く異世界にいるという異種族の一種にして”本物の天使”殿か。しかしこちらの調べによると、確かそちらには”まだ他にも天使が二人いる”はずだろう?”残りの二人”は呼ばなくていいのかい?」

「…………!メイヴィスレインとユエファさんの事まで…………」

「手配魔獣や敵対している連中との戦いでもないのに、”余興”目的の殿下を相手にさすがにそんな”戦力過剰”な事はできませんよ。余興とはいえそちらの護衛官殿は相当な手練れのようですから、こちらも”切り札”を一つだけ切らせてもらっただけです。」

マルティーナを目にしたナージェは驚き、興味ありげな表情を浮かべたシェリド公太子の問いかけにアニエスはシェリド公太子がメイヴィスレインとユエファの存在も把握していることに驚き、ヴァンは苦笑しながら答えた。

「フフ、舐められたものだね。――――――そこまで言われたら余計に残り二人も出さざるを得ない状況に追いやりたくなるじゃないか、ナージェ!」

「承知しました、殿下!参ります――――――ハアアァッ!!」

シェリド公太子の指示に答えたナージェは先制攻撃にジグザグに動きながら曲刀を振るうクラフト―――――ラムズスラッシュでヴァン達にダメージを与えたがマルティーナだけは見切っていた為、自身の得物である聖槍で防いだ。

「今のを防ぐとはやりますね。ならば、これはどうですか!?」

「甘い!奔れ――――――瞬雷!!」

「うっ!?」

続いて曲刀による連続斬撃を繰り出したナージェの攻撃を次々と弾いたマルティーナは反撃に雷の力を纏わせた電光石火の攻撃を叩きこんでナージェにダメージを与えた。

「ザイファ駆動―――――フレアスコール!!」

その時アーツの駆動を終えたシェリド公太子がヴァン達に炎を空から次々と降り注がせる上位アーツを放った。

 

「アクセス――――――ブートアップ!!」

「癒しを――――ホワイトヒール!!」

その時リゼットが展開したMK社が開発した独自の防御力場――――――コバルトカーテンを展開してシェリド公太子が放った上位アーツによるダメージを防ぎ、アニエスは回復クラフトを発動して自分達のダメージを回復した。

「燃え尽きろっ!!」

「おっと!」

そこにフェリが反撃代わりにシェリド公太子にクラフト―――――ラピッドバーストを放ったがシェリド公太子は大きく側面に跳躍して回避した。

「殿下!」

それを目にしたナージェは攻撃目標をフェリに変えようとしたが

「鈍いぜ――――――そらっ!!」

「!!」

ヴァンが放ったクラフト―――――コインバレットを対処するためにその場で剣を振るって次々と襲い掛かるコインを弾いた。

「飛天翔駆!!」

「!!」

更に空中に飛び上がったアーロンが急降下による強襲には後方に跳躍して回避した。

「吹き飛びなさい!!」

「く…………っ!?ガッ!?」

回避し終えた瞬間を狙ったマルティーナは聖光の衝撃波――――――神界の波動を放ってナージェを壁まで吹き飛ばして叩きつけた。

 

「ナージェ!やれやれ、女性達ばかりを相手にしなければならないのは本意ではないが…………闇を照らせ!!」

ナージェの様子を見て思わず声を上げたシェリド公太子は自分と対峙しているのは女性達ばかり――――――アニエス、フェリ、リゼットの状況に苦笑した後空に宝石を放り投げた。すると七色の魔法陣が展開され、七色のエネルギーがアニエス達を襲ってアニエス達にダメージを与えた。

「!身体が凍って…………!」

「視界不良…………申し訳ございません、”暗闇”状態に陥りました…………!」

「二人共、少しだけ待っててください!今回復します!癒しを――――あうっ!?」

シェリド公太子が放ったクラフト―――――セブンシャムスは相手にダメージに加えて様々な状態異常を付与する効果もあった為、フェリは凍結状態に、リゼットは暗闇状態に陥り、二人の状態異常をダメージと共に回復するためにクラフトを発動しようとしたアニエスは封技状態の為クラフトが発動できなかった。

「私が今治すわ!不浄を退ける風よ―――――」

アニエス達の状態を目にしたマルティーナはアニエス達の状態異常を回復するために魔術の詠唱を始め

「させるか――――――ウルスラグナ!!」

それを目にしたナージェは曲刀から光線を放つクラフトでマルティーナを攻撃し、魔術の詠唱を妨害しようとした。

「させねぇのはこっちの台詞だ――――――炎よ、焼き斬れ!!」

「エリアル――――――バスター!!」

「!!」

そこにアーロンがナージェが放った光線の射線上に飛び込み、クラフト―――――魔王炎撃波でナージェが放った光線を斬って無効化し、ヴァンが飛び上がっての叩きつけ攻撃のクラフトをナージェに放つと、ナージェはヴァンのクラフトを回避するために跳躍した。

 

「大いなる浄化の風!!」

そこに魔術の詠唱を終えたマルティーナが放った魔術によってアニエス達の状態異常は回復した。

「やれやれ、ナージェとやり合いながら他の仲間たちの状態にも気を配ることができ、更に治癒系の魔術によるサポートまでできるとは厄介な相手だね。闇を――――――」

アニエス達の状態異常が回復するところを目にしたシェリド公太子はマルティーナの厄介さに苦笑した後再びクラフトを発動しようとしたが

「捉えました!やあっ!!」

「そこですっ!!」

「ぐっ!?」

リゼットが放った正確無比な射撃――――エーデルスナイプとフェリの銃撃によってダメージを受けるとともに怯んだ為クラフトは中断させられた。

「ザイファ駆動―――――ロストメビウス!!

「しまった、確かこのアーツは一時的に身体の動きを…………!」

そこにアニエスが放ったアーツによってシェリド公太子はアーツによる吸引効果によって体の動きは封じ込められた。

「二人共、今です!」

「了解(ウーラ)!ハアアアァァァ…………ッ!イフリータレイド!!」

「お任せください!参ります――――――ソニックチェイサー!!」

それを目にしたアニエスはフェリとリゼットに呼びかけ、呼びかけられたフェリは炎をまとわせた銃剣で連続で斬りつけてから、 最後にゼロ距離で射撃を繰り出すクラフト――――――イフリータレイド、リゼットは連続で斬りつけてから、最後はサマーソルトキックを叩きこむクラフト―――――ソニックチェイサーをシェリド公太子に叩きこんだ。

「ぐあっ!?フフッ、さすがにこれ以上は不味いかな…………!」

二人が放った一人に集中攻撃するかつ威力が最も高いクラフトを受けた事によって自分が受けたダメージが不味い状態にまで陥ったシェリド公太子は大きく後ろに跳躍してアニエス達と距離を取った。

 

「殿下!そこをどけ!――――――ハアアァッ!!」

「っとぉっ!!」

「ハッ、2度も同じ手は食うかっての!!」

「先程より剣筋が荒れているわよ!」

一方フェリとリゼットの集中攻撃を受けている様子のシェリド公太子を目にしたナージェは血相を変えてクラフト―――――ラムズスラッシュをヴァン達に放ったがヴァン達はそれぞれの武装でナージェのクラフトを防いだ。

「光よ、行けっ!!」

「チッ!!」

マルティーナは反撃に衝撃力のある光の魔力弾を広範囲に放つ魔術――――――連射光衝撃弾・広範囲を放ち、襲い掛かる無数の光弾をナージェは舌打ちをして回避や剣を振るって襲い掛かる光弾を弾いていた。

「ショットガン――――――ボルト!!」

「ああっ!?」

ナージェがマルティーナの魔術の対処に集中している隙に側面からナージェに接近したヴァンは撃剣(スタンキャリバー)から小さい電撃を炸裂させてナージェにダメージを与え

「らああああああっ!百華斬!!」

「くっ…………!うっ!?」

更に追撃するようにナージェの真正面から襲い掛かってきたアーロンは無数の剣撃をナージェに放ち、ナージェはアーロンのクラフトに対処しようとしたがヴァンの撃剣の電撃をその身に受けた事で身体が一瞬麻痺した為対処が遅れ、ダメージを受けた。

「腹ぁ、くくれよっ!天狼滅牙!!」

「咲き乱れなさい――――――桜花乱舞!!」

「うあっ!?ぐっ…………まさか…………これ程とは…………!」

そこにヴァンが神速の剣戟を叩きこむクラフト―――――天狼滅牙、マルティーナは咲き乱れる花のように美しい剣技――――――奥義・桜花乱舞をナージェに叩きこみ、二人が放った強力な威力のあるクラフトによって大ダメージを受けたナージェは戦闘不能になり、地面に崩れ落ちた。

 

 

「ハハ、”様子見”とはいえ、まさかナージェをそこまで追い詰めるとはね…………!」

「何…………!?」

戦闘不能になったナージェの様子を見て呟いたシェリド公太子の言葉を聞いたアーロンが驚いたその時、戦闘不能になったはずのナージェが立ち上がった。

「………仕留めても?」

「助手君たち以外はそのつもりで行くといい!」

「ナメんな…………!!」

「やれやれ――――――仕方ねえな!」

ナージェの確認に答えたシェリド公太子の指示を聞いたアーロンは怒りの声を上げ、不敵な笑みを浮かべたヴァンがナージェとの戦闘を再開をしようとしたその時

「―――――双方そこまで。」

「…………!」

「なに…………!?」

フィーが飛び込んでナージェとヴァンにそれぞれ銃口を向けて二人の戦闘を止め

「殿下も”戯れ”は程ほどにしてください!」

「やれやれ、剣を向ける相手は向こうだと思うのだがね。」

更にシェリド公太子とアニエス達の間に飛び込んだアネラスはシェリド公太子に剣を向けて警告し、アネラスに剣を向けられたシェリド公太子は苦笑した。

「………妖精…………」

「それにてめぇは”剣迅”…………」

フィーとアネラスの登場にフェリは呆けえ、アーロンは真剣な表情で呟いた。

 

「やれやれ、フィー君にアネラス君………もう到着したのかい。」

「殿下、そのくらいで。わたしたちが来た以上、その子たちを休ませるのを優先させてもらう。」

「マリエル、無事か…………!」

シェリド公太子にフィーが宣言したその時ディンゴの声が聞こえた後遊撃士達と共にディンゴがその場に駆け付けた。

「ディンゴさん…………!?ううっ、どこにいたんですかっ!?今朝からぜんぜん連絡が――――!」

「…………フッ、大丈夫そうだな。」

ディンゴの登場にマリエルは安堵の表情で声を上げ、マリエルの元気な様子にディンゴは安堵の表情で呟いた。

 

「こいつらが誘拐犯か。」

「助かりました。こちらで確保しても?」

遊撃士達の確認にヴァンは頷いた。

「伺っていたエレボニアと王国からの…………ディンゴさんの連絡で応援に来て下さったんですね?」

「ん、わたしとアネラスはサルバッドにさっき着いたばかりだけど。」

「少し遅れちゃいましたかね?」

「いや、良いタイミングだったぜ。」

「フフ、残念だ。もう少し”底”もそうだがかの”鉄血宰相”の野望を易々と打ち破った要因の一つである噂の異世界の”力”も見たかったが。謎めいた”捜しもの”に――――――不可思議な黎(あおぐろ)い異形についても。」

アネラスの問いかけにヴァンは口元に笑みを浮かべて答え、シェリド公太子は苦笑した後意味ありげな笑みを浮かべてヴァンを見つめて指摘した。

「……………………」

「なるほど、”そちら”も狙いか。」

シェリド公太子の目的を知ったアニエスは真剣な表情で黙り込み、ヴァンは真剣な表情で呟いた。

「ま、怪しいけど同じくらい信頼できるのも確か。警察もそろそろ来そうだしいったん任せてくれないかな?」

「ああ、元よりそのつもりだ。――――――ナージェ。」

「は。――――どうぞ、お水を。」

フェリの言葉に頷いたシェリド公太子がナージェに声をかけると、ナージェはマリエルとシャヒーナに近づいた水が入った瓶を差し出した。

「…………むー…………」

「はあ、なんだか色々ありすぎて…………」

瓶を差し出されたシャヒーナは頬を膨らませ、マリエルは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「で、一応合格ってことでいいんですかね?」

シャヒーナ達の様子を確認したヴァンはシェリド公太子に訊ねた。

「ああ、底はともかく実力はね。共同依頼についてもこのまま継続でお願いしよう。そちらの植物はギルドと合わせて”折半”するのが良さそうだが。」

「こいつがあったか…………」

「念のためサンプルを採取させていただきましょう。」

シェリド公太子の話を聞いたアーロンは若干呆れた様子で発光している大型の植物を見つめ、リゼットは植物に近づいてサンプルを採取した。

「フフ――――――それではせいぜい証明してみるといい。見えざる”A"の気配が濃密に漂うこの黄金の都(エルドラド)で…………どこまでも底の見えない君がいったい何を明かしてくれるかをね。」

その後、公太子たちは停泊させていた専用飛行船で一足先に街へ戻っていき――――――ヴァンたちは、現地の遊撃士たちに誘拐犯を任せてサルバッドへと戻った。

 

その後、元気を取り戻したシャヒーナとマリエルを家やホテルに送り届ける手配をしつつ………ヴァンたちはフィーと改めて情報交換することにした――――――

 

 

 

 


 
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