真・恋姫無双 二次制作小説 魏アフターシナリオ
『 想いの果てに掴むもの 』
第3話 ~ 旅立ち ~
夢
夢を見ている
最近よく見る夢
内容は、いつも同じ
大きな銅鏡の夢だ
ただ、違うのは、
見るたびに、銅鏡が近づいてくること
後数回で、きっと手に届く事だろう
でも、ただそれだけだった
後は、ひたすら向かい合っている
それだけの、つまらない夢
カン
ガッ
カンッ
木刀が、景気よい音をたてる。
お互い、防具はつけていない。
まともに当れば大怪我だが、集中力をつけるにはちょうどよい
とにかく、回りの動きに注意しがら、
絶えず動き続けることで、相手が一斉に切りかかってこられないようにする。
そんな中、相手の隙を見つけては、無ければ作り、相手を斬り伏せていく
一人、二人・・・・そして最後の一人が倒れたとき
「はーい、ごくろうさーん」
道場に、及川の声が響く。
声と共に、倒れていた部員は体を起こし
「「「「 やれやれ 」」」」
なんて言って、体をほぐしているが、
斬られた後は、寝ているだけの君達と違って、俺は、最後まで動き回っている。
だというのに、何で俺より疲れた顔をしているのか不明だ。
あれから、一月が経とうとしていた。
当初、
『 殺陣は計画なしで、本物の迫力を 』
と、部長の寝言があったが、
実際やってみると、ごちゃごちゃし、
まるで、ヤクザ映画のように、泥臭いものに見えてしまう。
ということが判り、部長の寝言は却下された。
だが、
『 本物に近い殺陣を 』
というコンセプトは残したいと、涙ながらに力説され、部員もそのアホな説得に頷いてしまった。
勘弁してほしいものだ。
結局、斬りかかる順番や、タイミングは綿密に計算されたものになったが、
◆どのように斬りかかるかは部員任せ
◆多くても3合以内
という、危険なコンセプトは残ってしまい
毎回、冷や汗物の練習を、ほぼ毎日行っていた。
むろん、殺陣以外の演技も行ってはいるが、あくまで殺陣がメインらしく
はっきり言って、練習量は少ない、練習の殆どは、殺陣に割り振られていた。
俺は、イメージトレーニング以外でできる 多対1 の練習と割り切り、
真剣に取り組んでいたのだが、その姿が部長達にとって、迫力ある演技と映ったらしく
『 部長の発想は間違いではなかったと 』
後々考えたら、とんでもない伝統を作る後押しをしているのではないかと反省をした。
アトラクションの名前は、
【 仮面●イダー 刃 】
と一昔前のヒーロー者をパチッてきたような名前だった。
「いくらなんでも、そのまんま過ぎないですか?」
と訊いた所
「サムライ ●レードの方がよかったか?」
とどっちにしろ、たいして変わらないと思い、そのままになった。
そんな事を思い出しながら、汗を拭いているところへ、
部長が声を掛けてくる。
「みんな、そのままでいいから聴いてくれ
本番まで、あと3日と迫ったわけだが、
衣装および、小道具が、まだそろっていない」
「ちょ、部長こんだけ練習しといて、中止ってことは無いですよね?」
部長の驚愕の発言に、部員の何名が声を上げる。
まぁ、ここで中止となれば、いままでの練習が無駄になってしまう。
それは、さすがに回避したいので、当然といえば当然だろう。
「まぁ聞け、及川説明をたのむ」
「どうもー、納品が遅れて申し訳ありません。
明日、主人公以外の衣装と小道具が揃います。
さすがに、摸造刀の制作は、学園側の反対が出てしまったため、
制作を中止せざる得ませんでした」
おぉ、さすが学園、じっちゃんや部長達と違って、常識ある判断である
「ですので、金属の平板を少し加工した物を用意しました。
まぁ、舞台で振り回す分には、これで問題ないと思います」
「ちょとまて、危険だから中止命令が出たのじゃないのか?
平板とはいえ、金属を振り回したら、一緒じゃないか」
及川の発言に、俺は口を挟む。
「かずぴー、心配せんでも、俺がしっかり学園側に交渉してきたでー、
何でも、剣を制作するのが、世間体が悪いという事だったので、
『 平板ならいいか? 』
と聞いたところ、問題ないとキッチリ許可もらってきたで」
及川は、なにを勘違いしたのか、俺が残念がっていると思いこみ、得意げに話す。
前言撤回だ、いいのか、教育機関がこんなので?
平和ボケにも、ほどがないか?
とりあえず、及川後で殴る。
「まぁ、そんなわけで、やられ役の皆さんの分の剣と衣装は
明日の練習前には持ってくるので、本番さながら練習できるんで、頑張ってください」
「俺の分のは?」
「ん? かずぴ~の衣装は、明後日には渡せるようになるので、待ってて~
今日の衝撃試験終えたら、最終調整に入れるから
剣は自分のがあるからいいだろ? 準備しとらんし」
「ちょっと待てい、なんか物騒な事言わなかったか?
それに、自分のって、さすがに平板と打ち合いたくないぞ俺は」
「気のせい気のせい、それに、金属といっても、そう硬い材料やないから
打ち合っても、そう問題はないはずや~、おまえんとこのじいちゃんにも許可もらっとる。
なんでも、
『それくらいの緊張感、制御できんで何の修行か』
とか、聞いてたけど、豪快なじいちゃんやなぁ」
「・・・・あぁ、なんか言いそうだ」
及川の言葉に、思わず納得できてしまう自分が、なんか悲しくなってきた。
どうして、俺の周りはこう、人に無断で話を進める人間ばかりなんだろうか・・・
とりあえず、及川、後で拳で徹底的に話し合おう。
その日、及川との話し合いを 1Round KO で終え
日課の修行の後、昼間の件をじっちゃんに確認した
「なに、普通の人間は、怪我させてしまうことを恐れ、本気でいけんもんだ
お前は、螺子が一本飛んでいるから、心配なところもあるが、まぁ、今の腕なら、大丈夫と判断しただけだ」
「それって、怪我させたら、俺が油断しているって事?」
「当たり前だ、それ以外、なにがある」
「・・・信用してくれるのは、ありがたいけど、 祖父として、その行動ってどうなんだよ・・・」
「孫なら、祖父の信頼の応えるもんじゃ」
「無茶な要望には、応えなくてもよいという家訓が「ない」・・・最後まで言わせてくれよ」
「ふん、まだまだあまい」
そんなやり取りを終え、
最近、夢見も悪い事もあって、寝不足気味だったので、今日くらいは早く寝る事にした。
夢
夢を見ている
最近よく見る夢
いつもと同じだ
銅鏡の夢
ただ違うのは、
見るたびに、銅鏡が近づいてくること
もう、指を伸ばせば、触れる事くらいはできるだろう。
自分の姿も、はっきりとうつる
でも、ただそれだけだった
後は、ひたすら向かい合っている
それだけのつまらない夢
それでは、つまらないので、
俺は、指を伸ばし
銅鏡に、指先に触れさせてみる
眩しい
銅鏡から、眩しい光があふれ出す。
俺は、その眩しさに
目を手で庇う。
やがて、光が収まると
うっすらと光る銅鏡が
そこにあっただけだった
「・・・つまらん」
俺は、これで終わりかと、俺は首を落として、溜息を吐いた。
「あらぁん、つまらないなんて、つれないこと言うわねぇん」
聞いた事ない男の声が、鏡から聞こえた。
そこには、うっすらの光り輝いた鏡が、俺の姿を映すだけで、男らしき姿はどこにもなかった。
「だれだ? どこにいる?」
「あらぁん、乙女の名を尋ねるのに、自分は名乗らないなんて、どうかと思うわよぉ」
「・・・お、乙女って、どう聞いても、あんた男だろっ!
それに、その気色悪いしゃべり、何とかならんのか?」
「きーー悔しい、誰が男ですって、純真な乙女に向かって、なんてこと言うのかしら!」
俺の言葉に、声は怒り出す。
なにやら判らないが、銅鏡から、すさまじい怒りの気配を感じる。
とりあえず、怒りを治めた方がよさそうだ。
「わ、悪かった。 姿も見えないのに、声だけで判断するのは間違いだな。
それと、俺は、北郷一刀、あんたは銅鏡の意思なのか?」
俺の謝罪に、声は、怒りをとりあえず治めてくれたのか、
さっきまでの、すさまじい気配は消えた。
「そう、まぁいいわ、乙女は心は繊細なの、
些細な事でも、傷ついてしまう硝子のようなもの、次から気をつけて頂戴。
それと、私は、銅鏡の意志というわけじゃないわ。
銅鏡を通じて、貴方とお話をしているだけなの。」
「そうか、でも普通、こういった場合、鏡にあんたの姿が映るものじゃないのか?
あと、こっちも名乗ったんだから、名乗ってもらうと助かるんだが」
「ごめんなさい、今はまだ名前は言えないのよ。理由もね。
そうね、呼びづらかったら、鏡の君なんてどうかしら?
とてもドラマチックじゃない。
あぁ、ここから恋が始まるのねぇ」
「・・・・・いや、まぁ、ここにはあんたと俺しかいないから、このままでいい
あと、さすがに恋は勘弁してくれ・・・」
「あらぁん、つれないこと言うのねぇ。 てれちゃって、かわいいわぁ」
「・・・・マジ、勘弁してくれ・・・」
さすがに、この野太い声で始まる恋は、想像するどころか、
考えようとするだけで鳥肌がものだ。
そんなわけで、丁寧に辞退申し上げる。
「・・・で結局、なんなんだ、あんたは?」
「せっかちなのねぇ、もう少し私と、あつ~く、愛の言葉を語る
なんてのも良いと思うんだけど~、
まぁ、いいわぁ、サ~ビスして、あ・げ・ち・ゃ・う♪」
「あ、あぁ、そうしてもらえると助かる」
「貴方、戻りたくない?」
「・・・え?・・・」
銅鏡からの言葉に俺は、思わず聞き返す。
な、何の事を言っているんだ?
「あの世界へ、戻りたくないかと訊いているのよ」
今、こいつなんていった?
あの世界へ戻りたくないかって・・・
そんなもの決まっている。
「戻れるのか!? どうやれば戻れるんだ? 教えてくれ!」
「・・・・」
俺は、声を荒げ、声に問う、
あの世界へ戻れるのなら、俺はどんなことしてて戻りたい
そんな事は、2年前、こちらに帰ってきた時から、想い続けたこと
「いいの?」
「当たり前だ! 頼む教えてくれ!」
「もし、あの世界へ行けば、もう二度とこちらの世界へは、帰れなくなるわよ
それでもいいの?」
「あぁ、それでもいい、俺はあの世界へ帰りたいんだ」
「こちらの平穏な生活を捨てて、いつ死ぬかもしれないのよ、それでも?」
「ああ」
俺の考えは変わらない
「あなたは、家族を、友人を捨てる事になるのよ。
それが、どういうことか解っているのかしら~?
もう、貴方の御両親にも、祖父様にも、二度と会えなくなるのよ。
それでも、あちらの世界に行きたい? 後悔しない?」
声が三度問いかけてくる。
・・・正直、二度と両親やじっちゃん、ついでに悪友達に会えなくなるというのは、
悲しいと思うし、戸惑ってしまう。
そりゃぁ、そうだろう、両親もじっちゃんも、俺は心から、好きだし尊敬もしている。
俺を、心から可愛がり愛してくれた人達だ。
及川をはじめとする友人達だって、勉強や修行で付き合い悪くなった時でも、
なんやかんやと気を使い、気に掛けてくれていた。
そのおかげで、悲しみに潰されずにすんだことを、俺は自覚している。
悲しいと思わなければ、逆に失礼だと思う。
でも、俺は、それでもと思う。
きっと、後悔する事もあると思う。
天寿を全うできないかもしれない。
あの世界は、毎日が生きるので一生懸命で、
その日を生きる糧が無くて、人を殺してしまうこともある人達がいる。
つい昨日まで、一緒に警備しながら笑っていた奴が、
次の日には、二度と笑えなくなった事も、何度だってあった。
そんな、悲しい世界、
でも、だからこそ、笑うときは心から笑い。
みんなが、笑ってすごせる世界にしようと、
みんなが、協力できる世界、
俺は、そんな世界が愛おしいと感じている。
それに、この世界には、彼女達がいない。
あちらには、年相応の普通の女の娘なくせに、
その優しさゆにえ、覇道を歩んだ、放っておけない少女がいる。
彼女達に会いたい。
言葉を、心を交わしたい。
俺の心は、いつだって、あの世界にあったのだから、
だから俺は、
「二度と帰れなくなってもいい。
あの世界へ、戻りたい。
頼む」
俺は、まっすぐに、銅鏡を見て、願いを告げる。
「・・・そう、判ったわ
じゃあ、そのまま、銅鏡に向かって歩いて来て」
「えっ、でも俺動けないぞ」
「えぇ、でも、今はもう、動けるはずよ」
銅鏡の声に従うと、今まで動かせなかった足が動く。
俺は、そのまま、銅鏡の直前まで歩いていく
「ここでいいのか?」
「ええ、じゃぁ、次は、目をつぶって
・・・そう、そのままよ」
「ああ」
「そのまま、顔を前に突き出し、銅鏡に向かって優しく、唇を触れさせて
それで、契約は完了するわ」
俺は、言われたとおり、目を瞑ったまま、顔を前に突き出し、
銅鏡に映る俺の唇に、軽く触れさせる。
・・・自分とキスをするみたいで、少し自己嫌悪するが、ここは我慢だ・・・
ゾゾゾゾゾゾッ
触れさせたとたん、ものすごい悪寒に全身を襲われ、俺は思わず目を開けてしまう。
そこには、さっきまで俺の姿ではなく、
乙女チックに恥ずかしそうな姿勢で、
ビキニ姿で
全身筋肉ムキムキの
大漢の姿が映っていた。
「うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーーーーーー!」
「あらぁん、乙女の唇を奪っておいて、つれない態度」
俺は、気持ち悪くなり、その場で吐き出す。
感触は、確かに銅鏡のままだったのが救いだ。
さっきのは、銅鏡だ。
あのおっさん自身じゃない。
何とか、自分を説得させるが、
なかなか気分の悪いのは治らない。
「いったい、何考えてるんだ、あんたは!」
「あらぁん、せっかく協力してあげるんだから、
あれぐらいの御褒美をもらっても、いいと思うのよぉん」
「ふざけるなぁぁぁぁーーーー!」
「そろそろ時間かしらぁん、また会う事もあるかもしれないけど
いまは、さよならよ~」
「こら、待て! 俺をあの世界へ」
「さよならぁ~ん、また会いましょ~」
「まてぇぇぇぇぇぇ!」
「まてぇぇぇぇぇぇ!」
ガバッ
叫びと共に、飛び起きた俺を向かえたのは、
目が覚めたら、向こうの世界という事はなく
寝る前と同じ、俺の部屋だった。
「・・・ははははははっ・・・」
そうだよな、現実を思い知らされ、俺は乾いた笑い声をあげる。
「そうそう都合よく、いけるなら苦労は無いよな・・・・
それにしても、いつになくリアルな夢だったなぁ・・・
くそぉ・・・あの変態親父のせいで、朝から気分が悪い
ウプッ・・・」
夢の中での、変態親父との出来ことを思い出し、気持ち悪くなった。
「あぁぁ、やめ、忘れろ、あんな悪夢! 気分が悪くなるだけだ」
次の日、
いつもどおり、部活の練習を終え、
明日、本番の舞台の練習の準備をしていた。
もっとも、着替えたのは俺以外の全員で、
俺は、まだ衣装が出来ていないので、いつもどおり、道着姿のままだ。
「こんち~、かずぴーいるぅ?」
そんな中、及川が、いつもどおり、軽い感じで顔を出す。
「当たり前だ。
明日本番だって言うのに、さすがに来ないわけ、いかないだろうが」
「うんうん、あいかわらず、そういうところは真面目だねぇ、かずぴーって」
「お前と一緒にするな、それより俺の衣装はどうなったんだ? 明日本番なんだぞ」
「ふふふふふっ、ま・か・せ・な・さーーーい
なんと、本日ただいまをもって、
かずぴーを、正義のヒーローへと、変身させるのでありまーーす」
「・・・・これでサイズが合わなかったら、お前、部長に ぼこぼこ にされるぞ? 無論俺にもな」
「そんなイケズな事言わないでさ、ささっ、こっちの更衣室で着替えて着替えて」
「・・あぁ」
面白そうに笑いながら、手招きする及川に、
軽く溜息を吐いて、更衣室に入る。
「・・・なぁ、及川」
「なに、かずぴー?」
「その呼び方、いい加減何とかならんか? 恥ずかしいぞ」
「無理」
「・・・即答かよ、ちったぁ、考えてくれ・・・
で、これ、なんかえらく凝ってないか?」
「ふふふ~ん、そうだろそうだろ」
「いや、予算とか、遥かに超えていそうな気がするんだが、桁単位で・・・」
「さすが、かずぴー、お目が高ーい」
「・・・お目が高いって、どうしたんだよ、これ?」
「ノンノン、ノープロブレム。
最初に言ったろ、教授の協力を得たって」
「・・・・・」
確かに、そんなこと言ってた気がしたが、かといって、
「教授の趣味で作るには、ちょっと金かかりすぎてないか?」
「いやいやいや、そこはキッチリと、教授の研究の一環さ。
米国のある映画監督の依頼で、ヒーロー物をCG抜きで、
リアルの限界に挑戦したいってことで、その作品の主人公の衣装の、試作品なんだってさ。
なんでも、剣戟はもちろん、衝撃や爆発シーンにも耐えられるよう
硬度、衝撃吸収、防刃、防弾、防炎を徹底的に追求したんだってさ
その上、各種アクションに応えられるよう、
特殊樹脂と繊維のハイブリット構造で軽量、さらに装備も満載!
まさに、わが大学の最新技術の粋を凝らした、夢のヒーロースーツさ」
「・・・・・やりすぎだろ」
俺は、及川の説明を聞きながら、わが大学の将来が不安になった。
それにしても、部長といい、その監督といい、
何で、こう変な奴ばかり、俺に関係してくるんだ?
とりあえず、説明を聞きながら、白を基調とした衣装を着ていく。
見た目は、いかにもTVに出てきそうな、派手な意匠が施されているわりに、
ものすごく軽い、プラスチックとまではいかないが、
あちらの世界で着ていた装備に比べたら、雲泥の差だ。
まぁ、及川の説明がどこまで本当かはともかく、
感触としては、それなりに強度はありそうだ。
最近はプラスチックでも、鉄より硬いものがあるしな。
「あと、これ、装備品の説明の写し、教授が一応目を通しとけって」
「・・・・・これ、軍事用か?」
「ははははは、まさか、そんな派手な格好した軍人さんが、
いるわけが無いじゃないか」
及川の渡してくれた紙に、目を軽く通した俺はは、
その内容に、額に冷や汗が流れるのを感じた。
「ただ、軍事転用は可能って言ってたなぁ」
「おいっ!」
「まぁまぁ、難しい事はお偉いさんに任せて、これ、最後にヘルメット被って」
「たくっ、本当に大丈夫か、この大学・・・
・・・おっ、これ顔の部分は、外れるようになってるんだな」
「あぁ、撮影用だからね、きっと、イケメン俳優が着るわけだから
顔を出したい場面用なんだろ、きっと」
「そのあたりを聞くと、ちょっぴり安心するなぁ」
「あぁ、あと教授が、終わったら、感想や意見を提出してくれってさ
レポート50枚くらいで」
「ゲッ、なんだよそれ? 聞いてないぞ俺はっ!」
「えっ、でも部長さん二つ返事でOKだしたぞ」
「だから、何で、そういうことは、俺に聞かないんだよっ?
書くの俺なんだよな?」
「だって、かずぴーに聞いたら、いやだって言うに決まってるじゃん」
「当たり前だー! くそー、部長だけ、本気で当ててやろうかなぁ」
「あっ、じゃあ、引き受けてくれるんだ」
「仕方ないだろう、ここまできたら」
「うんうん、さすが、かずぴー、文句言いながら、なんやかんやとやってくれるところが
かずぴーの良い所だよな」
俺が、ぶつぶつと言っていると、及川は、嬉しそうに頷いている。
人を嵌めた張本人が、目の前でそういう態度を、とらないでほしいものである。
とりあえず、着替え終わり、各関節の動作を確認してみる。
想像した以上に、動かしやすさに驚愕した。
なんだこれ・・・殆ど違和感ないじゃないか
ここまでくると気持ち悪いなぁ
そんな動作を繰り返していると、
及川は、出て行こうとしたところで振り向き
「あと、今日は、本番の舞台で練習するから、荷物もって移動だってさ」
「なんだよ、だったら、向こうで着替えればよかったじゃないか
終わってから、ここに戻ってくるなんて、面倒だぞ」
「だから、荷物もってだって言ったろ。
後、着替えさせたのは、移動しながら宣伝するためだよ
その姿目立つからな、あと、面はとっとけよ」
「まぁ、視界は悪くないとはいえ邪魔と言えば邪魔だしな」
「いや、かずぴー、イケメン系だから、宣伝だよ、宣伝」
「なんだよそれ」
そう言って、及川はとっとと先に行ってしまう。
俺はとりあえず、面はそのままで、鞄に着替えを無理やり放り込み
じっちゃんからもらった2本の刀を腰に挿し、出口に向かう。
途中、道場の玄関内に、姿見があったので、姿を確認してみると、
さすが映画撮影用、かっこいい。
ピシッ
俺は思わず、決めポーズをとってみる
おぉ、この格好だと決まるなぁ
そんな感想に浸っていると
「かーずぴー、鏡の中の前で決めポーズって、ノリノリやん」
「・・・・・」
いつの間にか戻ってきた及川が、ニヤニヤ笑みを浮かべて、こちらを覗きこんでいた。
見られていた・・・・
クソー、絶対からかうネタにするに違いない。
そんな及川を、照れ隠しにとっとと追い払う。
とりあえず、靴は、スーツと一体なので、自分の靴は手に持ち
面を外して、道場を出ようとする。
だが俺は、気づかなかった。
この時、鏡が
光っていた事に、
やがて光は、
輝きを増し
俺の背中から
俺を包み込んだ
つづく
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『真・恋姫無双』魏END後の二次創作のショート小説です。
拙い文ですが、よろしくお願いします。