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第2形態以降、
ルルは 自らの変異を大いに楽しんでいた。
奔放に 様々な星々 様々な世界を駆け巡り
病魔を振りまきながら
若き悪魔は狂乱の日々を謳歌していた。
しかし 何かがおかしい
どれだけ鮮血を浴びても 喉は潤わず
どんなに激しい淫行を繰り返しても
ルルの心は満たされなくなっていった。
そして 彼女は
自分が取り返しのつかない状況に置かれていることに
ようやく気が付く。
それも
なぜ気が付かなかったのか分からないほど
自身の変質が進んでから。
ルルは 配下のフレイドワン達を
ポケットディメンションに押し込むと
しばし周りの惑星に当たり散らし
この非常事態を解決するために奔走する。
が 効果的な糸口は見つからず
ルルの心は疲弊していった。
配下からの信仰は完全に絶ち消え
ケイオススポーン同然になり果てながら
苦痛にさいなまれ暴れ狂う。
遂に 力を使い果たしたルルは 大地に倒れ込んだ。
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身体が溶けゆく中
ルルの眼前に様々な光景が点滅する
フレイドワン達との狂乱の日々
初めて味わう自由な空気
割れる空
蹂躙される日々
足枷を引きずり鞭打たれ 横たわる砂の味
そして
目の前で切り飛ばされる 慈しみあふれる笑顔
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牡牛の骸骨が語り掛ける
「お前の人生はろくでもないモノであったな。
しかし悔いる必要は無い。
お前の命は この偉大なる忘却の巨獣
その復活の贄となれるのだ。
我が真の力取り戻したれば
不可能なる理はもはや存在せぬ。
我は忘却の巨獣。
その力ゆえに 同胞に切り刻まれた
事実を歪ませる 真理の変調者である。
幼き者よ 我が此方に立つを誇るがよい
我が一部となりて
そなたの望みは報われるであろう。
そなたの飢えは 満たされるであろう。
皮剥ぐ者に汚されしその光を
再び我が声に描き換えよ。
星の声拾いし子供よ
今一度
ク:タンのささやきに耳を傾けよ。」
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笑みを浮かべる巨獣は
エルフの小さくなった身体をつまみ上げると
深淵に通ずる大口を広げた。
が
ルルの魂が消えゆく刹那 ベヒモスの意識に亀裂が生じる。
巨獣の勝利は確実と思われたが事態は一変する。
「!? なぜだっ!!なぜ 屈していないっ!!?」
巨獣の掌がめくれ上がり
アリの食べ残しのようになり果てたルルの体が
失われた形を取り戻し始める。
膝をつき 苦悶する巨獣。
「こ こんなバカな・・・。」
掴むべき弱みは 失われていた。
「見つけたのに
気がつけなかった。
なんで忘れていたんだろう。
いちばん大切な事なのに。
おなかいっぱいだけじゃダメ。
キモチぃだけじゃダメ。
{全部}じゃなきゃダメ。
{全部}集めて 染め上げる。
{全部}を {私たち}だけに。」
「舌も 性器 も 奪っ てやった。
お 前の 浅はかな 望み なんぞ
絶ち消え て・・・!!
な、なぜ つけこめぬ!!!」
「あなたは 私から 何も 取れていない。
私は あなたに 何も 取られていない。
振り出しじゃない。
やっと 始まったんだ。
ここからだ。」
地に伏す巨人の鼻先に
小さな影がのびる。
「今度は
あなた達が
私の声を聞くの。」
「待てっ! やめっ・・・・!!!」グシャァッ・・・!!
いまわの言葉を叩き伏せるが如く
失われたはずの足が 牡牛の頭を踏み砕いていた。
吹き出した玉虫色の脳髄が足裏を舐める。
久しく手に入れた甘美に
ルルは恍惚の表情で身を震わせ つま先を握りしめた。
ベヒモスのシャードは 今度こそ その意思を失い
力は ク:タンを語る悪魔へと受け継がれた。
そして 若きディーモンプリンスに
新たな変異が訪れる。
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