No.1145815

ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~ 28.優しさか? 忖度か?

リューガさん

皆さん、母の日やったかー
僕はようやく田植えシーズンが終わりそう
ようやく母にプレゼントを渡せそうです

2024-06-07 22:41:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:110   閲覧ユーザー数:110

「おーい」

 その時、ビルから呼ばれた。

 有村さんから。

 だけど、遠くて続くことばが聞き取れない。

「有村店長からです」

 誰か、聞こえた人が伝えてくれた。

「話し合いするなら、店でしてくださいって。

 蚊に食われますよって」

 なるほど。

 それはもっともだ。

 そう思ってビルに目を向けたら。

 うわっ。

 ビルの前に、銃を構えた人たちがズラリと並んでた!

 窓からも!

 ロケット砲を担いだ人もたくさんいる!

 ビルの守備部隊だよ。

 まあ、当然の対応だよね。

 そして、その一人が有村さんのことばを伝えてくれたんだ。

「店に、戻ろうか」

 歩きながら達美さんが呼ぶ。

「そうですね」

 みんな、一時の興奮は冷えたみたいだ。

 みんな、落ち着くの早いね。

「あっ!」

 守備部隊から驚きの声がかさなった。

 滑走路を見て。

 私たちも向くと。

 ボンボニエールたちは、音もなく消えていた。

「あんまりお腹空いてないけど、・・・・・・ナポリタン、好きだったね」

 アーリンくんが聴かれた。

 朱墨ちゃんから。

「僕はもういただきました。

 あなたは、カレーライスでしたね。

 甘口の」

 私は教えることにした。

「カレーライス、あるよ」

 私も、夕飯はまだだ。

 帰るまでまちきれない。

 ここで食べちゃおう。

 

 朱墨ちゃんとアーリンくんは、好きな料理があるのに、うれしそうにはみえない。

 無表情のままだった。

 でも、話し合うことを認めあったんだ。

 それは素晴らしいことなんだ。

 だったらいいな。

 

「あっ!」

 そう言えば!

「すっかり忘れてた!

 私たちの動画、今日できあがったの!

 朱墨ちゃんたちのお陰だよ。

 ありがとう」

 私からのお礼を聴くと、朱墨ちゃんは今日初めての笑顔を見せてくれた。

「こちらこそ、いい訓練になりました」

 この子の巫女装束も、ボンボニエールと同じように消えていた。

 今は、白に青の横縞が入ったTシャツ。

 それにブルーグリーンの、すそが広いパンツ。

 するんと入りそうな、柔らかシューズ。

 涼しげな普段着だね。

「また、やりたいです」

 うれしくなるほど、ニコニコ顔で言われた。

 う~ん。

 それには予算がちょっと、その・・・・・・。

 その時、私のお腹の虫がグ~となった。

 

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 

 私たちはグロリオススメに戻った。

 改めて見ても、素晴らしい量のお菓子!

 

 グ~

 

 お腹の虫が、無心してくる。

 そう言えば、お腹がすいた時は、胃が強く縮むんだ。

 縮むけど、ねじれる動きもあるらしい。

 その動きが、胃の中の空気や液体などを腸へ押し出す。

 それが、この音なんだそうだよ。

 

 グ~ グ~グ~ 

 

「・・・・・・まずは、食べようか」

「そうですね」

 朱墨ちゃんがさそうと、アーリンくんが続く。

 泣けてくる。

 小学生にかばわれた。

「やっぱり、甘口のカレーをいただきます」

「ぼくも、今度は小さい牛丼をください」

 かばわれたからには?

 答えてもいいよね。

 席について、目の前のサンドイッチをパクッ!

 おいしい!

 

 テーブルにはまだまだ、美味が待ってる。

 キャラメルのロール、包まれたクリームの甘さがうれしい。

 ロールケーキ。

 もちろん、長さをたもったままの。

 

 ギュッと濃密なクリームチーズ。

 コクがあってお得感たっぷりの、チーズケーキ。

 

 しっとりフンワリなココア生地。

 それを包む艶やかで厚いチョコレート。

 食べると重圧な甘さをたっぷり楽しめる、チョコレートケーキ。

 ケーキは、円さをほとんど残している。

 切り分けは、任せて。

 

 地元の小豆を使った、どら焼きも忘れてはいけない。

 大きめで艶のあるこの小豆。

 そこから作ったアンコがたっぷり。

 作りおきされたクッキーも豊富。

 そしてだされる、カプチーノ!

 フワッフワの泡だよ。

 

 ハア。

 至福の時間だ。

「あの、うさぎ?」

 達美さんに止められた。

 そのとき感じたのは、うらみ!

 それまでこの人から感じたこともないほどの。

 でもすぐ、自分への恐ろしさにとってかわられた。

 これから、しなきゃいけないことがあるのに。

 私、いつのまにか忖度されるのが当たり前になったのかな。

「アーリンくん。まず、さっき気づいたことから、話してくれますか」

 お箸は不得意なのか、スプーンで食べ終えたミニ牛丼は、空だった。

「・・・・・・はい」 


 
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