No.114428

聖夜と恋姫達 -呉編-

ぴかさん

聖夜と恋姫達の第3話。
今度は呉編となります。

今までと同様、現代を舞台にしているためカタカナ語を使っていますし、原作と口調が異なっている場合もあります。
その辺、リアリティを求める方はお気を付け下さい。

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2009-12-25 23:58:06 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:11282   閲覧ユーザー数:9132

「あー、つまらないわ」

「このところ、そればっかりだな」

 

そう言い合いながら長身の女性が二人歩いている。

抜群のスタイルに整った顔立ち。

雪蓮と冥琳である。

 

雪蓮がこの世界に来た当初は、周りにあるモノ全てが目新しかったため、それなりに楽しんでいたのだったが、元来の飽きっぽさですぐに飽きてしまっていた。

冥琳は、そんな雪蓮をフォローし続けていた。

何か新しい話題を提供しなければ、雪蓮はすぐに怠けてしまうのである。

とはいえ、それにも限度があった。

そこにきての先ほどの発言であった。

 

「だってー、学校行っても勉強ばっかりだし……」

「それは学校だからな」

「一刀も最近は相手にしてくれないし」

「それは仕方ないだろう。北郷の周りにはみんながいるしな」

 

冥琳の言葉に、雪蓮が怒り出した。

 

「そうよ!! なんで桃香や華琳まで来ているわけ!!」

「それを私に言われてもな」

 

雪蓮の相手をすることにうんざりしつつも、あっちの世界では味わえなかった平和な時間を楽しむ冥琳であった。

と、ここで冥琳がある事を思い出した。

 

「そうだ雪蓮、クリスマスって知ってる?」

「クリスマス? 誰かの誕生日だっけ……」

「キリストだ」

「そうそう、それ。なんで、もういない人の誕生日なんか祝うのかしらね」

「それが宗教というものだろう」

 

雪蓮は冥琳の言いたい事がよく分からない。

 

「そのクリスマスがどうしたのよ?」

「ここでは、キリストの誕生日を祝うというより、もっと違うイベントのようよ」

「何よ。勿体つけるわね」

 

雪蓮がそう言うと、冥琳は一冊の雑誌を取り出し広げた。

そこにはクリスマス特集として、各所の見所などが紹介されていた。

雪蓮はその記事を食い入るように見ていたが、しばらくするとある一文に目が止まった。

 

「恋人達のクリスマス……」

 

その一文と共に、幸せそうにイルミネーションを眺めるカップルの写真が紹介されていた。

 

「これは是非とも実行しなければならないわね!!」

「そうだな……。だが、そうは簡単にいかないようだ」

「どうして……? あっ!!」

 

冥琳の指さした方向に春蘭と秋蘭の姿があった。

 

「この間の決着を付けようというわけね。どうあがいても勝てっこないのに」

 

そう言いながら楽しそうに春蘭の元へと走っていった。

冥琳は心の中でやれやれと思いながら、この茶番に付き合う事にした。

 

 

一方、学園近くの公園では、孫登と甘述が一緒に遊んでいた。

そのそばには、それぞれの母親である蓮華と思春がベンチに腰掛けて二人の様子を見ていた。

あっちの世界では考えられないような時間である。

 

「思春、クリスマスプレゼントはどうするのかしら?」

「特に何も考えていませんが……」

 

ここでもやはり話題はもうすぐ来るクリスマスである。

二人は自分の子供からクリスマスの事を色々聞かされていた。

一番頭を悩ませているのがプレゼントであった。

この時期に子供にプレゼントを配るサンタという謎の人物のせいで、二人はそれぞれ何をあげるか考える必要があった。

 

サンタという人物が実在してプレゼントも配ってくれれば問題ないのだが、それが架空の人物である事は分かっていた。

だが、それを子供達には伝えていない。

その方がロマンがあっていいからだ。

その代わりにサンタに代わってプレゼントを渡さないといけない。

この世界はとにかく、物が溢れている。

それがかえって二人を悩ませる原因でもあった。

 

それ以外にもクリスマス当日の事があった。

子供達に楽しい時間を過ごしてもらいたい。

それには父親の存在が不可欠なのだが、一刀は忙しそうな上、父親と宣言すると色々大変なのでまだそういう事にはしていない。

 

それに、子供がいるとは言えまだまだ恋人気分を味わいたい年頃である。

そういう意味でも、一刀と一緒に過ごしたいわけだが……。

 

そんな事を考えていると、思春が察したかのように言った。

 

「北郷の奴は私が連れてきます!!」

「連れてきますって思春はどうするの?」

「私は別に……」

「それじゃダメだわ!! 甘述ちゃんが可哀想だし、何より思春も……」

「私は別に、北郷の事など……」

「嘘だわ!!」

 

蓮華は思わず大声を出してしまった。

思春はもちろん、孫登と甘述もその声に驚いてしまった。

 

「思春はいつもそう!! 私に遠慮ばっかり!! もう私の事気にしないで自分に素直になって!!」

「……はい」

 

なぜ自分が言われなきゃいけないのか分からないが、思春はとりあえず肯定しておいた。

一方、子供達は蓮華の様子に驚いて遊ぶのをやめてそばに来ていた。

 

「お母様、どうされたのですか?」

 

蓮華の表情を覗き込む孫登。

そんな孫登の姿に、蓮華は笑顔で言った。

 

「ごめんね、何でもないのよ。ほら、甘述ちゃんと遊んでらっしゃい。」

「はい」

 

蓮華の様子を不思議に思いながらも、孫登はまた甘述と遊びだした。

 

蓮華は孫登にまで心配をかけてしまったと悔やんでいた。

だが、過ぎたことは仕方ない。

今はクリスマスをどうするかが大事だ。

と、ここであることを思い付いた。

 

「そうだわ!! みんな一緒にクリスマスをしましょう!!」

「一緒に……ですか?」

「そう。姉様や小蓮、冥琳に隠、祭や亞莎に明命も。もちろん子供達も!!」

「ですが、全員となると大変なのでは?」

「だから早く行動しないと!! 思春は二人の事をお願い!!」

「お願いって!! 蓮華さま~!!」

 

思春にこう言い残すと、蓮華はどこかへ走っていった。

思春がぽかーんとしている向こうでは、孫登と甘述が何事もなかったかのように遊んでいた。

 

 

「火の扱いに気を付けてね」

「はいなのです」

 

亞莎と呂琮親子が昼間からキッチンで調理をしている。

よく見ると、小豆を火にかけてあんこを作っているようだった。

呂琮がおっかなびっくりに鍋に入っている小豆をかき混ぜている。

亞莎は、それを見ながら危なくなりそうな時だけ手伝っているようだった。

 

「けど、呂琮……。突然ごま団子を作りたいってどうしたの?」

「クリスマスです」

「クリスマス?」

 

クリスマスというイベントがあるのは知っている。

その日にどんな事をするかという事も。

しかし、自分は主役ではないだろう。

だから、呂琮と二人で楽しめればいいと思っていた。

だが、娘はそのクリスマスの為にごま団子を作るというのだ。

 

「クリスマスは知っているけど、それとごま団子にどんな関係が?」

「お父様とお母様にプレゼントするのです」

「だんな様と私に!?」

「はいなのです。クリスマスは子供にはサンタさんがプレゼントくれると聞いたです。でも、大人であるお父様とお母様はもらえないですから、私からプレゼントするです」

 

この言葉を聞いて、亞莎は涙を流し呂琮を抱きしめた。

 

「お母様、危ないです」

「あっ、そうだったわね」

 

鍋を火にかけて作業をしていた呂琮を思わず抱きしめてしまい慌てて離れた。

 

「でも……、うれしくて……」

「だから、頑張って作るのです」

「そうね!!」

 

涙を拭いて亞莎も一緒にごま団子を作った。

 

しばらくして、亞莎親子特製のごま団子が出来た。

クリスマスらしく、小さな箱に入れてラッピングもした。

 

「お父様、喜ぶですか?」

「きっと嬉しすぎて倒れちゃうんじゃないかしら?」

「倒れられたら困りますです」

「そうね。それじゃ、行きましょうか」

 

二人で一刀の元にごま団子を届ける為に部屋を後にした。

 

 

商店街を一際目立つ女性が歩いていた。

容姿はもちろんだが、何より惹かれるのはその大きな胸だった。

すれ違う男性の全てが振り返ってしまうほどの胸の持ち主は、祭であった。

酒瓶片手に歩くその姿は、まさに豪儀という感じで、とてもじゃないが声をかけられる雰囲気ではなかった。

祭も特にそういうモノを求めているわけではなく、ただブラブラと酒を飲みながら歩いているだけであった。

 

「クリスマスか……」

 

この世界の風習はある程度学んだ。

あっちの世界では考えられないほど楽しい事が多いようだが、純粋に楽しむには長生きしすぎたような気がする。

祭はそういう風に思っており、クリスマスもまるっきりの他人事であった。

 

「今更一刀と楽しむといってもなぁ」

 

他人事とは言いつつもやはり気になっていた。

事あるごとに商店街に来てはいるが、いまいちパッとしなかった。

何かが足りない。

そう、自分がクリスマスを楽しむには決定的な何かが足りないような気がしていた。

 

今日も結局見つからないだろう……。

そう思っていた祭の元に一人の少女が走って来た。

 

「母ちゃん!!」

 

そう、祭の娘の黄柄である。

別に隠すつもりではなかったが、娘と歩くなど何となく恥ずかしいので一緒に来たことはなかった。

 

「こ……黄柄……。どうしてここに……」

「冥琳さんに教えてもらったんだよ!! 母ちゃんはよくここを歩いているって」

「冥琳め……」

「それより、クリスマスやろうよ!!」

 

やはり、娘は聞いていたか。

祭はそう思った。

恋人とそして、子供が喜ぶ日であるというのがクリスマスという認識だった。

 

と、ここで祭はあることを思い付いた。

 

「そうじゃな。クリスマスやるか!!」

「やったー!!」

 

祭は、黄柄を連れて商店街を後にした。

 

 

冬場なのに日が照ってぽかぽかと暖かい商店街の一角。

ここには、猫たちがよく集まっていた。

と、猫以外にもう一人この場に留まっている者がいた。

 

「ふわぁ~、モフモフです~」

 

そう、呉軍一の猫好きである明命である。

ここに猫が集まることを知ってから、何かにつけてはここに来て猫たちとじゃれ合っているのであった。

猫たちは、特に相手にする様子もなくされるがままになっていた。

それがまた嬉しくて、より一層この場所に寄りつくようになっていったのである。

 

そして、クリスマス間近のこの日も、明命は猫たちとじゃれ合っていた。

ただ、いつもと違うのはもう一人お客さんが居たことだった。

 

「母上……」

 

そう、明命の娘の周卲だった。

隠密の仕事を生業としていた明命の事は尊敬しているのだが、この猫好きの部分だけはどうにも好きになれなかった。

 

「母上~、このままでいいのですか?」

「このままでいいです~」

 

そう言って猫を抱きしめる明命。

周卲のいうこのままと明命の認識しているこのままに隔たりがあるのは明らかだった。

 

「クリスマスですよ~」

 

そう言いながら周卲は明命の体を揺すった。

だが、猫を抱く明命は動じない。

こうなったらと、周卲はある言葉を言うことにした。

 

「母上はこのまま逃げるつもりなのですか?」

 

周卲の言葉に、明命はピクッと反応した。

そう、クリスマスの事は明命も知っていた。

しかし、自分なんかは一刀と一緒に居られるような人間じゃない。

それに雪蓮や蓮華、桃香や華琳もいるこの世界じゃ、自分なんかダメだと思い猫の元に来ていたのだ。

それを娘に言われてしまい、明命は複雑だった。

 

「……分かっています。けれど、私なんかじゃ……」

「母上の父上への想いはそんなもんなのですか? 見損ないました!!」

 

そう言って周卲は、母親譲りの早足でその場から去っていった。

残された明命はさらに複雑な想いになっていた。

 

自分勝手な想像で逃げ出して、娘にそんな事を言われてしまう始末。

結局全然成長できてないではないか。

 

明命は、猫を放すとグッと拳を作り周卲の後を追うように走り出した。

 

 

「おかあさま~、眠いです~」

「陸延ちゃ~ん、せっかく本を読むんですから寝ちゃダメですよ~」

 

そう言いながら隠は恍惚の表情を浮かべていた。

 

ここは、学園内の図書館。

学校の図書館と言っても下手な図書館よりも大きく、蔵書数は国内有数の量を誇っている。

これは、教養を得るにはまず本からと言う理事長の方針によるモノであった。

 

その図書館内の入館者が本を読むために用意されている一角で、先ほどのやり取りは行われていた。

 

隠は、本を読むとヤバい方向に興奮してしまうという性癖を持っているため、冥琳より図書館への入館を禁止されていた。

今まで幾度となく図書館への侵入を試みようとしていた。

だが、そのたびに冥琳か冥琳の命令を受けた明命に拒まれていたのだ。

 

しかし、ここ数日冥琳は何やら忙しそうだし、明命もすぐに猫の元へと向かってしまう。

これは絶好の機会だという事で、今日はその禁を破って図書館に来ていたのだった。

 

あっちの世界では考えられないくらいの本の量。

そして、その内容も非常に興味深いモノばっかりだった。

ページをめくるたびに新しい知識と興奮、そして快感が隠を駆け上った。

そのたびに艶やかな声を上げるものだから、精神衛生上よろしくなかった。

しかし、その雰囲気に近づけるモノはなくそれを止める事も出来なかった。

 

それからどれくらいの時間が経っただろうか。

結局途中で陸延は寝てしまい、隠は一人で自分の世界に入り込んでしまっていた。

その中で、一つ気になるキーワードを見つけていた。

 

クリスマス。

 

図書館でも別枠でコーナーが設けられており、それだけで何やら特別なモノであるというのが感じ取れた。

ある程度の本を読み終えた隠は、その一角の本を手に取っていた。

 

「あらあら~、これはいけませんね~」

 

その本の中にあるモノを見つけたようだ。

隠は寝ている陸延を抱きかかえるとその本を借りて図書館を出ていった。

 

彼女が出ていったあとの図書館は微妙な空気に包まれていた。

 

 

一人の少女が学園内を歩いている。

美しいというよりは可愛らしいその少女はなにやら怒っていた。

 

「もう!! みんなシャオの事無視して!!」

 

孫家の末娘小蓮である。

風邪をひいてしばらく自宅で療養をしていた。

元気になったので、せっかく遊びに誘っても、雪蓮はもちろん蓮華や明命。

亞莎に祭も忙しいと言って取り合ってくれなかった。

それならばと、季衣や流琉、朱里に雛里など魏や蜀のみんなにも声をかけたが同じような状況だった。

 

最後の砦、一刀に至ってはどこにいるか分からずじまい。

 

これでは怒るのも無理はないのである。

 

「それにしても、なんでみんな忙しいのかなぁ。年末に近いから?」

 

年越しとなれば一大イベントだ。

あっちの世界とは暦が少し違うので、なかなか慣れない部分もあるがもうすぐ年越しである。

そう考えれば忙しいというのも納得できるが、まだ分からない部分があった。

みんながやけにソワソワしているのである。

 

年越しとはそんなにソワソワするものだろうか。

イマイチ分からなかった。

 

学園内にいても仕方ないので、商店街へと足を運んだ。

 

「うわぁ!!」

 

小蓮は、商店街を彩るイルミネーションに心奪われた。

自分が風邪をひいている間に、何という変貌だろう。

それを見ているだけで、なんだか楽しくなってきた。

その勢いで近くにいた店舗のおじさんに話しかけていた。

 

「凄くキレイね!!」

「そりゃ、クリスマスのイルミネーションだからね」

「クリスマス?」

「ありゃ、お嬢ちゃん知らないのかい? クリスマスはね……」

 

小蓮はおじさんからクリスマスについて色々教えてもらった。

サンタの事、ケーキやご馳走を食べる事、そして……。

 

「おじさんも若い頃は結構やったもんだ~」

「ありがとう!! シャオ、用事思い出した、またね!!」

「おお!! 気をつけてな!!」

 

小蓮は全て理解した。

みんなが忙しいのもソワソワしているのもクリスマスが原因だったんだ。

そして、その原因の元凶は……。

 

「シャオが一刀と一緒に過ごすんだから!!」

 

そう言って、まだ見ぬ一刀を捜しに学園へと戻った。

 

 

ギリギリ間に合いましたでしょうか?

 

はっきり言って違いを作るのが難しかったです。

特に、明命や隠のくだりは非常に困難でした。

でも、よく読むとみんな同じような感じになっちゃっているかな…。

しかも、投げっぱなしの終わり方(^^ゞ

回収作業も大変そうだ……。

 

子供達のしゃべりですが、はっきり言って適当です。

原作でも最後に絵が出てくるだけで話し方とか不明でしたから。

でも、全体的に大人っぽすぎたかなぁと思います。

 

時間が出来たら修正していきたいですね。

 

次も何とか早めに書き上げて年内にはアップしたいと思います。

が、無理かも(;^_^A アセアセ…

 

今回もご覧いただきありがとうございました。


 
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