No.1140616

英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

soranoさん

第19話

2024-03-18 20:18:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:572   閲覧ユーザー数:522

 

情報収集の際、港湾区の露店に”ゲネシスと思われる古い装置”が売られているという情報を手にしたヴァン達はその情報を確認する為に港湾区にある露店に向かった。

 

~港湾区~

 

「寄ってらっしゃい~、見てらっしゃい~。珍しいモンも扱ってるぜ!そこの船員の兄ちゃん、どうよ?海軍から流れた導力ラジオとかお勧めだぜ!」

「興味なくもねぇが、アンタんトコのモンだ。どうせ一ヶ月も使わないうちに壊れちまうだろ。」

「た、たまにそういう運が悪い事もあんだろうが……コイツは大丈夫だって!ほら、ピカピカの新品同然だろ!?」

「やっぱやめとくわ、カラクタ買ったら女房に怒られるしな。」

露天商に話しかけられた船員は露天商の熱心な紹介を聞いていたが購入するつもりはなく、その場から去って行った。

「ってそんなこと言わずに!他にも色々と面白いモンが――――――」

「なら俺に紹介してくれよ。」

去って行く船員を露天商が呼び止めようとするとアニエスとフェリを連れたヴァンが声をかけた。

「おお兄ちゃん、見てく?カワイコちゃんを連れてるが旅の者かい?」

「まあな――――――他の露店も見てみたがどうも売ってるモンがありきたりでな。面白いしながねぇが覗いてみたんだが。」

「そいつはちょうどいい!ウチが扱ってるのは曰く付きだったり他とは一味違うと思うぜぇ?ちなみにどういうのをお探しだい?」

「これと似たモンを探してるんだが……」

露天商の問いに対してヴァンはザイファに保存しているゲネシスの写真を露天商に見せた。

 

「コイツは……少し違うが”前のあれ”と………」

(この反応……)

(当たりですね。)

写真を目にして驚いている様子の露天商の反応を目にしたアニエスとフェリはそれぞれ真剣な表情を浮かべた。

「もしかして扱ってたりするか?だったら見せてもらいてぇんだが。」

「悪いが兄ちゃん、こいつは扱ってねぇ。」

ヴァンの要求に対して露天商は少しの間黙った後要求に応えられない事を答えた。

 

「アン?おかしいな……この辺りで見かけたって噂を聞いたんだが。」

「それは……」

「―――――お願いします、何かご存じなら教えていただけませんか?」

ヴァンの指摘に露天商が答えを誤魔化しているとアニエスが真剣な表情で説明を頼んだ。

「っ……?じょ、嬢ちゃん……?」

「その……実は私に縁のあるものかもしれなくて。相応の謝礼もお払いします……どうか力を貸して頂けないでしょうか?」

「っ……いや、その……」

(なんだか露天商さんがたじろいでます……)

(眩しさの不意打ちってヤツだな。………段取りとは違うがまあアリか。)

アニエスの頼みに露天商がたじろいでいる様子をフェリと共に見守っていたヴァンは露天商に説明を始めた。

 

「詳しくは言えねぇが聞くも涙、語るも涙の事情があってな……俺達も偶然知っちまって前から捜索を手伝ってるんだよ。そっちの子なんか遥か大陸中東から手伝いに駆け付けてくれたくらいだぜ?」

「え。」

ヴァンの嘘の説明にアニエスが呆けた声を出すとヴァンと視線を交わしたフェリが前に出て説明をした。

「はいっ、義を見てせざるはですから!翼の女神(アルージャ)のお導きですっ!」

「ちょっとフェリちゃん……」

ヴァンの嘘に便乗している様子のフェリをアニエスは困った表情で見つめ

「見ろ、こんな子供まで他人のために頑張ってるんだぜ?アンタもここらで女神、いや天上聖母の覚えも良くなる功徳を積んじゃあどうだ?」

「………ううっ………」

(よく瞬時に次から次へと嘘の話を考えて口にできますね……もはや呆れを通り越して感心の域ですよ……)

更に嘘の話を拡大化するヴァンの話を聞いてアニエスは罪悪感を抱いたのか思わずヴァンから視線を逸らし、その様子を見守っていたメイヴィスレインはジト目で呟いた。

 

「ったく、何だか知らねぇがそこまで言うなら教えてやるよ。――――――確かに少し前、その画像とかなり似た装置を扱ってたんだが……嬢ちゃん、悪いことは言わない。スッパリ諦めちまいな。」

「そ、それはどうして……?」

「もう他の人に売ったんですか?」

「なら、どんな奴に売ったか教えてくれ。そいつと直接交渉してみるからよ。」

溜息を吐いた後答えた露天商の話と指摘にアニエスが戸惑っている中、察しがついたフェリは確認し、ヴァンは露天商がゲネシスらしき装置を売った人物の事を訊ねた。

「それだったらまだ良かったんだが……――――――兄ちゃんたち、”メッセルダム商事”って知ってるか?」

露天商が口にしたある会社を聞いたヴァン達は真剣な表情で互いに視線を交わした後ヴァンが話を続けた。

「……いや、聞き覚えはねぇな。北の港町の会社ってことか?」

「もしそう名乗る奴等に出くわしたらとっとと逃げることをお勧めするぜ。――――――実は半月前、嬢ちゃんの探しモンをとある筋からの処分品として並べていたんだ。そしたら、”メッセルダム商事”を名乗るガラの悪い連中の目に留まっちまってさ……他の高額な品も含めて、ミラも払わずに問答無用で奪われちまったんだよ!当然抗議をしたら暴力を振るわれてよ……あの時の傷は今でも治りきってねぇんだ。」

「そんな……」

「ひどいです……!」

「……成程な、この店の品揃えじゃ警察やギルドにも訴えにくいだろうし。”とある筋”への配慮もありそうだな?」

露天商の話を聞いたアニエスとフェリが露天商に同情している中、ヴァンは納得した後ある事を露天商に確認した。

 

「……兄ちゃん、鋭いな。その……一切口外しないで売られるに任せろって言われたんだよ。悪いがこれ以上は本当に言えないんだよ……」

(何か事情がありそうですね……)

(仕方ない、今日は切り上げるか……)

「面白い話をしてんねー?」

「オレらも混ぜてくれよ~。」

若干顔色を悪くし始めた露天商の様子を見たアニエスは事情がある事を察し、ヴァンが話を切り上げることを決めたその時軽薄そうな声や絡むような声が聞こえた後、半グレ達がヴァン達に近づいた。

「ひぃぃっ!!こ、こいつらだ!俺は逃げるぜ!兄ちゃんたちもそうしな!」

半グレ達を目にした露天商は悲鳴を上げた後その場から逃げ去った。

「あなた方は……」

「狙いはわたしたちのようですね。」

「ハン、お出ましみてぇだな。”メッセルダム商事”の社員諸君。」

一方ヴァン達はそれぞれ警戒の表情を浮かべて半グレ達を睨んだ。

「てめえらみてぇだなぁ?余計な茶々入れてるっつう便利屋は。」

「両手に花で羨ましいじゃ~ん。」

「片方はチンチクリンだが美形だし味見させてもらおうか?」

「チン……チクリン……?(ヴァンさん、無力化していいですか?)」

半グレの自分に向けた言葉に呆けたフェリは静かな怒りを纏ってヴァンに確認した。

 

(死なない程度ならな。)

(了解(ウーラ)。)

(い、いいんでしょうか……)

ヴァン達が半グレ達との戦闘について話し合っていると半グレ達はそれぞれの武器を構えた。

「クソガキどもに良いようにされてこっちも我慢の限界なんだ……」

「血祭りにしてメチャクチャにしてやるよ!」

武器を構えた半グレ達が不敵な笑みを浮かべて声をあげるとヴァン達もそれぞれの武器を構えた。

「敵集団、殲滅します!」

「せ、殲滅しちゃダメですよ!」

そしてヴァン達は半グレ達との戦闘を開始した。半グレ達の人数はヴァン達より多かったが実戦経験や連携もない半グレ達では、ヴァン達には敵わず、ヴァン達は苦も無く半グレ達を戦闘不能に追いやった。

 

「な、なんだコイツら……ガキ共も含めて普通じゃねぇぞ!?」

「もう手段は選ぶな!その娘を何とか人質に取って――――――」

ヴァン達の強さに驚いている半グレに提案した別の半グレの言葉を聞いたアニエスは一歩下がり、ヴァンはアニエスを庇う位置に移動した。

「オイオイ、まだこの街からケツまくって逃げてなかったのかよ?」

「こ、この声は……!」

「まさかっ――――――!?」

するとその時飄々とした声が聞こえ、声を聞いた半グレ達が血相を変えて視線を向けると建物の屋上に赤毛の青年――――――アーロン・ウェイが不敵な笑みを浮かべてヴァン達を見下ろしていた。

「あれは……東方人街の悪タレか!」

「来たか、派手にやれ――――――!」

アーロンの登場に見物人達は嬉しそうな様子で声を上げ

「あ、あの人が……」

「アーロン・ウェイさん……」

「このタイミング……狙ってやがったな?」

アニエスとフェリが驚きの表情でアーロンを見つめている中、ヴァンはアーロンが現れたタイミングを考え口元に笑みを浮かべた。

 

「くっ……」

「ここは一旦――――」

一方アーロンの登場に苦々しい表情を浮かべた半グレ達は退却を始めたが

「クク……ボケが。逃げられるワケねえだろ―――――!!落ちろ―――――落雷!!」

「うわあっ!?」

不敵な笑みを浮かべたアーロンが魔術を発動し、アーロンが発動した魔術によって目の前に落ちた雷に退却を始めた半グレ達は怯んで立ち止まるとその隙に跳躍したアーロンが半グレの一人を蹴り倒して再び跳躍し、着地と同時に得物である双星剣(ツインフェンサー)を振るって更に二人の半グレ達を地面に叩き伏せた。

「セイ!ホアン!」

「おお――――!!」

「待ってましたァ!!」

そしてアーロンがいつの間にかその場に現れた東方人の青年たちに呼びかけると、アーロンの呼びかけに応えた青年達が残りの半グレ達をあっという間に地面に叩き伏せた。

「おおっ、さすが”麒麟児”だぜ!」

「”羅州の小覇王”って名前も伊達じゃなさそうだな……!」

「凄いですね……」

「はい……それに迅さも。」

「ああ――――予想以上だな。」

アーロン達の強さに見物人達が興奮している中アーロンの強さを目の当たりにしたアニエスとフェリの感想にヴァンが頷くとアーロンがヴァン達に近づいて声をかけた。

 

「よお、アンタらがチョウに雇われたっつー連中だな?北カルバードの旧首都くんだりから煌都へようこそと歓迎したい所だが――――――」

「危ない!!」

ヴァン達に声をかけたアーロンは自身の得物でヴァン達に襲い掛かり、アーロンの行動に逸早く気づいたフェリが自身の得物でアーロンの得物を受け止めた。

「くっ……!」

「へぇ、猟兵ってヤツか?その歳にしちゃやるじゃねーか。―――――だがすっこんでな、チビ。てめえじゃそのオッサンの足手まといだ。」

「ッ……」

「誰がオッサンだ、誰が!」

アーロンの言葉にフェリが唇を噛みしめている中自分を”オッサン”呼ばわりしたアーロンに反論したヴァンは呆れた表情で肩を落とした後アニエスに視線を向け、視線を向けられたアニエスは頷いた後フェリと共に下がった。

「―――――確かにとんだ跳ねっ返りだな。”エースキラー”の連中の時のようにヨソ者に出張られて面白くねえって所か?」

「ピンポンピンポン~♪黒月が様子見してんならオレらがやるのがスジってもんだろう?メンフィルへのゴマすりの為にわざわざエレボニアから来た連中は癪だがオレらより格上だし、オレらに対するスジも通したから一応認めてやったが………この街の流儀がわからねえアンタらはすっこんでろや、オッサン!!」

そしてヴァンとアーロンは一騎打ちを開始した!

 

「でやぁっ!砕けろ!!」

「っと!フンフン!セイッ!」

「っと!」

先制攻撃にヴァンがクラフト―――――エリアルバスターを放つとアーロンは側面に回避した後得物による攻撃を仕掛け、アーロンの反撃をヴァンは自身の得物で防御態勢を取ってダメージを最小限に抑えた。

「セヤッ!喰らいやがれ!!」

「!遅いぜ!!」

次に放った相手に蹴りを入れた後その勢いで空高く跳躍して止めの強烈な蹴りを繰り出すクラフト―――――鷹翼脚をアーロンが繰り出すとヴァンは最初の一撃目を防御した後止めの二撃目は後ろに跳躍して回避し、反撃にクラフト―――――コインバレットを放った。

「チッ……!吹き飛びやがれ――――迅風!!」

「!」

ヴァンが放ったクラフトによってダメージを受けて舌打ちをしたアーロンは魔術で敵を吹き飛ばす魔力風を生成してヴァン目掛けて放ち、襲い掛かる魔力風をヴァンは側面に跳躍して回避した。

「焼き斬ってやるぜ……!魔王―――」

「ハァァァァァァ………!」

アーロンはヴァン目掛けて走りながら自身の得物に炎の魔力を纏わせ、それを見たヴァンはアーロンの技に対抗するかのようにその場で力を溜め

「炎撃波!!」

「そらよっ!!」

自分に近づいたアーロンが強力な火炎斬撃を放つとヴァンはクラフト―――――スタンスラッシュを放って相殺し、二人の技がぶつかり合った衝撃によってお互い後ろへと後退させられた。その後も二人は互角の戦いを繰り広げていた。

 

「うおおおっ……!なんだこの勝負は!?」

「アーロンもだが余所者もやるぞ!いいぞ、もっとやれ――――――!」

「強ぇ――――あの野郎……!」

「アーロン!様子見ならこのくらいで……」

二人の戦いを見物していた見物人達は盛り上がり、アーロンの仲間達はヴァンの強さに驚いたり、アーロンに忠告したりした。

「ハッハー、邪魔すんなって!このオッサンの膝をつかせたら仕舞いにするからよ!!」

対するアーロンは仲間の忠告を無視して戦闘の続行をした。

「ど、どうやって止めれば……」

「ここまで伯仲すると難しいかもです……」

様子を見守っていたアニエスは不安そうな表情でどうやって勝負を止めるか考え、フェリは真剣な表情でアニエスの考えは難しいことを答えた。

(いい動きをしてやがんな……なら、”巻き取る”か。)

アーロンの強さに感心したヴァンは武器を構えなおして力を溜め、それを見たアーロンも武器を構えなおして力を溜め、互いに睨み合った二人が同時に地面を蹴ってそれぞれの攻撃を繰り出そうとしたその時

「いい加減にしなさい――――――!」

突如女性の声が聞こえた後二人がぶつかり合う瞬間に割り込んだ女性――――――エレインが繰り出した剣によって二人の武器はそれぞれ地面に弾き飛ばされた!

 

「ッ………!?」

「…………………ったく、お前かよ。」

自身の武器が突如弾き飛ばされた事にアーロンが驚いている中、勝負に水を差した人物がエレインである事を確認したヴァンは肩を落とした後苦笑しながらエレインを見つめて声をかけた。

「エレインさん……!?」

「遊撃士の……」

「ソ、”剣の乙女(ソードメイデン)”……!?」

「あの有名なA級遊撃士の……!」

「どうしてここに!?」

エレインの登場にアニエスとフェリは驚き、見物人達もそれぞれ驚き

「う、嘘だろ……!?」

「……マジかよ……」

半グレ達や東方人の青年達もそれぞれ信じられない表情を浮かべていた。

 

「曲がりなりにも公共の場―――私闘は禁じられています。”そちら”の貴方たちもこの上まだ暴れ足りませんか?」

その場にいる全員に注意をしたエレインは半グレ達に視線を向け

「クソが……お綺麗なツラして前にも地元のチームを一人で……」

「な、何が乙女だ……!女ごときにこれ以上舐めた真似―――

視線を向けられた半グレ達は怒りの表情でエレインを睨んだが、対するエレインは半グレ達を睨むと共に威圧を放った。

「ひぃぃ……!!」

「覚えてろおおっ……!!」

エレインが放つ威圧と睨みに怯んだ半グレ達はその場から逃げ去った。

「ハッ……噂のソード・メイデン殿か。―――――このオッサンはともかく、連中についてはオレたちの問題だ。”黒月”すら差し置いて遊撃士が首を突っ込むつもりかよ?」

一方弾き飛ばされた得物を拾って鞘に収めたアーロンはエレインに問いかけ

「ええ、貴方たちが黒月に属さぬ民間人なら”支える篭手”の名に賭けて――――」

エレインの答えを聞くと厳しい表情でエレインを睨んだ。

「……まあ、先程の腕前を見る限り優先度は低そうですが。」

一方アーロンの様子を目にしたエレインは苦笑しながら答えた。

「ならいい――――癪だがアンタもエレボニアから来た連中同様格上なのは認めてやるよ。こっちもギルドと対立するつもりはねぇ、余計な手出しさえしなけりゃな。クク……てめえらも同じだ。オレたちの邪魔だけはすんじゃねえ。せいぜいルウ家の使いっ走りとしてぬりぃ人助けと観光だけして帰るんだな。」

そしてエレインとヴァン達にそれぞれ忠告したアーロンは仲間達と共にその場から去って行った。

 

「ったく……実力はともかく、聞いてた以上のこじらせぶりだな。」

「人の事を言えるのかしら?」

去って行くアーロンの背中を苦笑しながら見つめて呟いたヴァンにエレインは腕を組んで呆れた表情でヴァンに指摘し、エレインの指摘に反論がないかのようにヴァンは気まずそうな表情で頬をかいた。

「先程の仲裁、お見事でした!」

「……その、すみません。お手数をおかけしてしまって……」

「ふう……気にしないで。あれも遊撃士の仕事だしね。”民間人を危険に巻き込ませない”のも含めて。」

「ううっ……」

「あー、なんだ……折角の煌都だし適当な所でメシでも喰うか?」

笑顔を浮かべて答えたエレインのヴァンや自分達への皮肉にアニエスが疲れた表情で肩を落としている中、ヴァンは気まずそうな表情である提案をした。

 

その後ヴァンの提案を受けたエレインは新市街にある料理屋で夕食をヴァン達と共にした――――――

 

 


 
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