No.1139444

英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

soranoさん

第13話

2024-02-27 21:06:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:670   閲覧ユーザー数:609

 

 

アイーダの後を追ったヴァン達は時折襲い掛かってくる魔獣達を撃破しながら高台に到着した。

 

~クレイユ村郊外・丘陵地帯・高台~

 

「……ぁ……」

「こ、これって……」

高台に到着して目にした光景――――――石柱にワイヤーで拘束されて暴れているアイゼンシルトの猟兵達を目にしたフェリは呆けた声を出し、アニエスは不安そうな表情で呟いた。

「……アイーダさん……どうして……」

「……”その者達はそちらの女性も含めて、先程村で戦った軍用魔獣と同じ――――――つまり、屍鬼(グール)です。”」

ガソリンが入ったタンクで何かの準備をしているアイーダに悲痛そうな表情で声をかけるフェリにメイヴィスレインがアイーダ達を厳しい表情で睨みながら説明し

「ハハ……まさか”天使”までいるとはね。さすが”今のアタシ達の天敵”だけあって、今のアタシ達の状態についてもお見通しだったようだね。――――――そちらの天使の言う通り、今のあたし達は命も意志もなく、蠢き続けるだけの存在……猟兵なんてヤクザな稼業の報いとは思いたくないが……」

背後に視線を向けてヴァン達と共にいるメイヴィスレインを確認したアイーダは苦笑しながら呟いた後ヴァン達の方へと振り向いた。

「……ぁぁ……」

「……いったい……10日前、何があったんですか?」

血管が浮き出ていて、顔色が悪いアイーダを目にしたフェリは悲痛そうな表情で声を上げ、アニエスは辛そうな表情で訊ねた。

「フフ、単純な話さ。負けちまったのさ――――――完膚なきまでに、徹底的にね。」

「……っ!?」

「そいつは……」

アイーダの答えを聞いたフェリは信じられない表情で息を呑み、ヴァンは真剣な表情を浮かべた。

 

 

――――――二週間前、アタシたちの部隊はGIDのハーキュリーズに捕捉された。州内の猟兵にたまに仕掛けてくるってのは聞いた事があったからね。悪くない練度だが包囲網の隙を何とか突破してアタシたちは離脱した。村で一泊した後、ここに野営地を築いてどのルートで帰還するか検討してた時――――――……”アイツら”が現れたんだ。

 

どの使い手もヤバかったが……中でもリーダーの3名は別格だった。一人、また一人仕留められて、為す術もなく嬲(なぶ)り殺しにされて……アタシたちは文字通り”全滅”した。

 

――――――筈だった。なのにふと気づいたらアタシはこの場で目を覚まして……いつの間にか、その大きな石柱の上に赤い光を放つ装置が嵌っていた。死んだ筈の部下達も生きていたがただ呻いて蠢き続けるだけだった……アタシは何故か身動きが取れて意識も残ってたけど……どうしてか陽の光が苦しくてね。……しかも全然、腹が減らないんだ。仕方なく日中はテントに身を隠して夜、動くしかなかったな……

 

さすがに団にも連絡できなくて……でもそのうち”何か”が乾き始めて……全滅した筈の軍用魔獣が同じように蘇って勝手に動き始めて……蠢くだけだった部下達も同じような兆候を見せるようになった。

 

 

「そん……な……アイーダさぁん……」

「貴女がたを全滅させた人達があの装置でそんな事を……?」

アイーダが語った話を聞き、アイーダは既に生者でない事を知ったフェリは涙を流しながらアイーダを見つめ、アニエスは中央の石柱に嵌っている装置――――――”ゲネシス”に視線を向けた後アイーダに確認した。

「多分ね……何とかしようと石柱に登ろうともしたんだが……身体が言う事を聞かなくてね……まるでそう決められたかのように。――――――だからアタシは決意した。この手で全てのケリをつけることを。」

話を終えたアイーダはガソリンが入ったタンクに視線を向けた。

「っ……ダメっ、アイーダさんっ……!」

「死ねない身体ならせめて浄化の焔にってか……?」

その様子を目にしたフェリは悲鳴を上げてアイーダを制止しようとし、ヴァンは重々しい様子を纏ってアイーダの目的を訊ねた。

「ああ、”屍鬼(グール)”の伝承でも定番だろう?もしくは”焔”同様伝承の定番の一つである、”屍鬼(グール)”の”天敵”であるそちらの天使ならアタシたちを確実に葬る事もできるだろうね。―――――こうして話してる間にもアタシは喉が渇いて溜まらないんだ……アンタたちの血と肉を啜りたい……フェリなんかプニプニ柔らかそうだしねぇ。そっちの嬢ちゃんや天使も滅茶苦茶ソソる……ムサくて固そうな野郎はイマイチだけど。」

「っ……!」

「ハッ……ムサくて固そうで悪かったな。」

ヴァンの確認に答えた後自分を”食料”として見つめてくるアイーダの視線と言葉にフェリは息を呑み、ヴァンは苦笑し

「哀れな……自分達の”滅”を望んでいるのならば、望み通りこの私の手で塵も残さず浄化してさしあげましょう。」

「待って、メイヴィスレイン!――――――ダメですよ、アイーダさん。諦めちゃ、ダメです。だって貴女はちゃんと生きている。村の人達を傷つけることなく、私達をそんな風にわざと遠ざけて……――――――でも、フェリちゃんは貴女のためにここまで来たんです。一念発起して、初めての外国でヴァンさんの事務所を捜し当てて……」

メイヴィスレインはアイーダに憐みの視線を向けた後表情を引き締めて自身の武装である聖槍を構え、それを見たアニエスがメイヴィスレインに制止の声をかけた後真剣な表情でアイーダを見つめて指摘した。

「……………………」

「……アニエスさん……」

「……ハっ………」

アニエスの言葉に驚いたアイーダが黙っている中、フェリは呆け、ヴァンは鼻を鳴らして苦笑した。

 

「ですから――――――ちゃんと話してあげてください。貴女の本当の気持ちを、何とか解決方法が無いかも含めて。私達アークライド解決事務所もお手伝いしますから。」

「あ……」

「アニエス……」

「ったく、なに勝手にと言いたいところだが……――――――確かに裏解決屋向きだ。必要なら力になるぜ、”火喰鳥”。”ヨルムンガンド戦役”の共闘のよしみで多少はサービスしたっていいしな。」

アニエスの申し出にフェリが呆け、メイヴィスレインが僅かに複雑そうな表情を浮かべている中ヴァンは溜息を吐いた後アニエスと同じ申し出をした。

「ヴァンさん……」

「ははっ……血を啜りたいっていうのは、別に演技だけじゃないんだがねぇ……だたまあ、敵にいいようにやられて諦めて女神行きってのも”らしく”ないか。アタシを拾ってくれた”アイゼンシルト”にゲラント連隊長たち……異国の小さなライバルにして仔犬みたいに素直で可愛い妹分……西風のみんな――――――懐かしい妹分や誰よりも尊敬していたあの人に……――――――確かに顔向けできなくなっちまいそうだ。」

ヴァンの申し出を聞いたフェリは嬉しそうな表情を浮かべ、アイーダは苦笑を浮かべた後不敵な笑みを浮かべてヴァンの申し出を受け入れる意思を示した。

 

「アイーダさぁん……!」

「……その通りですよ。」

アイーダの答えにフェリが嬉しそうな表情で声を上げ、アニエスが安堵の表情で呟いたその時拍手が聞こえてきた。

「いやぁ、泣かせるじゃないか♪”火喰鳥”アイーダ――――――一人意識を持ってたのも驚きだけど。流石はかの”猟兵王”の右腕と言われたほどの凄腕だね。」

拍手をした人物――――――メルキオルはいつの間にかゲネシスが嵌っている石柱の上に立ってヴァン達を見下ろしていた。

「……夕方の……!」

「てめえ……」

「ハン……やっぱりアンタか。こんなナリになってもうっすら気配は感じてたよ……アタシたちを壊滅させた3人の一人、異形のダガーとボムの使い手……”アルマータ”の幹部の一人、”棘(ソーン)”のメルキオル!」

メルキオルの登場にその場にいる全員がメルキオルを睨んでいる中アイーダはメルキオルの正体を口にした!

 

「あ……」

「そう、繋がりやがるのか……」

「……一つ目を手に入れた時のように、やはり他のゲネシスとやらにも関わっているようですね。」

メルキオルの正体を知ったアニエスは呆けた声を出し、ヴァンとメイヴィスレインは厳しい表情で呟いた。

「フフ……ご紹介ありがとう。確かに僕は”アルマータ”の人間だけど君達を襲ったのは”古巣”の筋でね。ボスのオーダーによる仕事だったからあながち間違いじゃないんだけど。」

「フン……確かにただのマフィアって感じじゃなかったが。あの装置を仕掛けたのもアンタだね?」

メルキオルの話に鼻を鳴らしたアイーダは石柱に嵌っているゲネシスに視線を向けた後メルキオルに確認した。

「ああ、凄いだろう?死者すら蘇らせる”奇蹟”の実験!フフ、まあボスによれば装置自体はどうでもいいらしいけど。」

「え――――――」

「てめえ、何を……」

メルキオルの話を聞いたアニエスが驚き、何かを察したヴァンが警戒の表情を浮かべたその時

「―――――だけど”実験”は最後までやり切って欲しいかな?」

メルキオルは一瞬の早業でダガーを投擲して猟兵達を拘束しているワイヤーを切って拘束を解いた。

 

「ッ……!?」

「ワイヤーが……!?」

ワイヤーが切られた事にアイーダは目を見開き、フェリは声を上げた。

「それじゃあ、始めようか―――――!」

そしてメルキオルが宣言したその時ゲネシスは更に赤く輝き始めた!

「うああああっ……!?」

「アイーダさん……ッ!?」

呻き声を上げたアイーダを目にしたフェリは心配そうな表情で声を上げた。

「ま、ズイね……これハ……アンタたち……ここから逃げナアアアアアア!!」

そしてアイーダが必死に耐えながらヴァン達に警告するとアイーダ達は暴走し始めた!

 

「アイーダさああん!!し、しっかりしてくださいっ!!」

「な、なんてことを……」

「外道が………ッ!」

「クソが……!アニエス、フェリも腹を括れや!メイヴィスレインは”火喰鳥”達を浄化しない程度に加減をして戦ってくれ!姉貴分を取り戻したんだろう!?まずは何とか無力化するぞ―――――!?」

アイーダ達の状態を目にしたフェリは悲鳴を上げ、アニエスは悲痛そうな表情を浮かべ、メイヴィスレインは怒りの表情でメルキオルを睨み、ヴァンは自身の武装を構えてアニエス達に号令をかけた。

「っ……!了解(ウーラ)―――――ッッ!!」

「何としても取り戻しましょう……!」

「天使であるこの私が浄化すべき不浄の者達相手に加減等不本意ですが……それが今の私の”契約者”であるアニエスの望みでもあるのですから仕方ありませんね。」

ヴァンの号令にアニエス達はそれぞれの武装を構えた。

「―――――ならば、俺達も加勢しよう。」

するとその時フラッシュがたかれた後ローガン達がその場に現れてそれぞれの武装を構えた!

 

「ええっ!?”アイゼンシルト”とは別の猟兵……!?」

「クルガの戦士達でもありません……!?」

「その装束にエンブレム。お前達、まさか――――――」

ローガン達の登場にアニエスとフェリが驚いている中、ローガン達の装束や装束に刻まれている紋章に見覚えがあるヴァンが驚きの表情でローガン達の正体を口にしかけた。

「俺達の標的(ターゲット)はそこの”アルマータ”の幹部の男だが、その前に”火喰鳥”達を無力化する必要がある。――――――”火喰鳥”の部下達は俺達が無力化する。お前達は”火喰鳥”の無力化に集中するがいい!総員、戦闘開始(オープンコンバット)!!速やかに火喰鳥以外の”アイゼンシルト”の猟兵達を無力化する!」

「了解(ヤー)!!」

「おいコラ、勝手に話を進めてんじゃねぇよ!?だが、加勢には素直に感謝しとくぜ!――――――どうやら火喰鳥の部下達は連中が相手してくれるようだから、俺達は”火喰鳥”の無力化に集中するぞ!」

「はいっ!!」

「了解(ウーラ)っ!!」

「ええっ!!」

ローガンはヴァン達に提案をした後部下達に号令をかけ、ローガンの強引な提案に疲れた表情で反論したヴァンだったがすぐに気を取り直してアニエス達に号令をかけてアイーダの元に向かい

「あはは、それじゃあ、レディ~~~、ファイッ!!」

その様子を可笑しそうに見ていたメルキオルは戦闘の開始を宣言した。

 

「――――――♪」

アイーダとの戦闘を開始したフェリは焔と女神に歌を捧げる事で自分や仲間達に攻撃性能を高める付与をするクラフト―――――焔の謠を発動し

「聖なる守りを――――――防護の光陣!!」

メイヴィスレインは防御能力を高める光の魔法陣を自分達の足元に発生させて自分達の防御能力を高めた。

「こっちだ!!」

ヴァンはクラフト―――――コインバレットでアイーダにダメージを与えると共にアイーダの標的を自分に集中させた。

「オオッ!!」

「っと!」

ヴァンのクラフトによって標的をヴァンに定めたアイーダはヴァン目掛けて銃で攻撃し、ヴァンは側面に跳躍して回避した。

「聖なる光よ―――――槌の光霞!!」

「アアアアアアッ!?」

メイヴィスレインは広範囲に強力な光打撃を繰り出す魔術を発動し、不死者(ゾンビ)の一種である屍鬼(グール)であるアイーダは魔力も高いメイヴィスレインが繰り出した不死者にとっての弱点である光の魔術をその身に受けると呻き声を上げながら怯んだ。

「ザイファ駆動―――――アイシクルハンマー!!」

そこにアニエスが発動した無数の氷を降らせるアーツが発動してアイーダの足元を凍結させた。

「そこです――――――ヒートエッジ!!」

「オオオオオォォォ……そこだぁっ!!」

足元が凍結した事で動きを制限されたアイーダの隙を逃さないかのようにフェリは炎をまとわせた銃剣で薙ぎ払うクラフトで、ヴァンは「勁」をまとわせた撃剣による薙ぎ払いうクラフト―――――スタンスラッシュで追撃した。

 

「ソコだぁッ!!」

「!」

「させるか!!」

攻撃が終わるとアイーダは反撃にフェリを攻撃し、フェリに攻撃が届く少し前にヴァンはシャードによる結界を付与して仲間が受けるダメージを軽減させるシャードスキル――――――カバーシールドを発動してフェリが受けるダメージを軽減した。

「受けなさい!」

「ガッ!?」

そこにメイヴィスレインが高速飛行による強襲でアイーダに攻撃をしてダメージを与え

「続きます!!」

メイヴィスレインとSCLMを組んでいるアニエスも続くように導力杖による導力弾を放って追撃した。

「ヤアアァァァッ!!」

「ザイファ駆動―――――エアリアルダスト!!」

更にフェリは銃、ヴァンは竜巻を発生させるアーツとそれぞれ遠距離攻撃で更なる追撃をした。

「セイッ!!」

「甘い!」

ヴァン達の攻撃が終わった後反撃に移ったアイーダはヴァン達の中でメイヴィスレインが最も脅威と判断したのか、メイヴィスレイン目掛けて数個のダガーを投擲したがメイヴィスレインは聖槍を振るって叩き落し

「オオオオォォッ!!」

「その程度――――――光よ、炸裂せよ――――――爆裂光弾!!」

「アアアアアアッ!?」

続けてメイヴィスレイン目掛けて銃で集中攻撃したがメイヴィスレインは片手で簡易結界を展開して集中して襲い掛かる銃弾を防ぎながら魔術の詠唱をしてアイーダを中心に光の魔力球を連続で爆発させる魔術を発動し、弱点である光の魔力球による連続爆発を受けたアイーダはダメージを受けると共に再び怯んだ。

「でやあっ!砕け散れっ!!」

「やあっ!ごめんなさいっ!!」

アイーダが怯むとヴァンはクラフト―――――エリアルバスターで、アニエスは導力杖を霊力による巨大なハンマーに変化させて敵目掛けて叩きつけるクラフト―――――グロウハンマーでアイーダに追撃した。するとアイーダは”スタン”状態になって無防備になり

「ハアッ!これで決めます!ヤアアアアァァァ……ッ!!止めです!イグニス・ランペイジ!!」

アイーダの無防備な状態を見て好機と判断したフェリは全身に炎の闘気を纏い、アイーダの周囲を走りながらアイーダ目掛けて怒涛の銃撃を放ち、止めに空中へと飛び上がってからのダイブ攻撃で大爆発を起こした!

「あグッ!?……………」

フェリが放ったSクラフトによってダメージが限界に来たのかアイーダは疲弊した状態になり、攻撃行動を停止した。ヴァン達がアイーダとの戦闘を終えるとローガン達もアイーダの部下達の無力化を終えていた。

 

「……はハッ……ヤるじゃないか……アンタたチ……」

「アイーダさん……!」

「な、何とかこのまま……!」

アイーダは自分を追い詰めたヴァン達に感心し、正気に戻った様子のアイーダを見たフェリとアニエスはそれぞれアイーダを救えるかもしれない希望を抱いた。

「うんうん、いいじゃない?――――――それじゃあ、最終段階(フェイズ)、行ってみようか♪」

「てめえ――――――!!」

一方その様子を興味ありげに見ていたメルキオルは更なる不穏な言葉を口にし、それを聞いたその場にいる者達がそれぞれ血相を変えている中ヴァンがメルキオルを睨んで声を上げるとメルキオルはゲネシスを発動させた。

「ウガアアアァアァアアアアッッ!?」

するとアイーダは咆哮し、ローガン達が無力化したアイーダの部下達は立ち上がり、アイーダに近づいた。

「いやああああっ!?アイーダさん、アイーダさああん!?」

「やめてくださいっ……!ど、どうしてこんな――――!?」

「ッ……(せめてどちらかだけでも……!)」

その様子を目にしたフェリは悲鳴を上げ、アニエスはメルキオルを見つめて止めるように声を上げ、ヴァンは唇を噛み締めてどうするべきか考え込んだ。

 

「オイオイ――――――随分とお愉しみじゃねえか?」

するとその時獰猛そうな声が聞こえてきた後ランドロスがメルキオルが乗っている石柱を自身の得物である大剣でぶった切った!

「うわわわっと……!?」

ランドロスの強襲に慌てて回避したメルキオルは別の石柱に着地した。

「”仮面の紳士”に”キリングベア”……!良いタイミングだぜ……!」

ランドロスとガルシアの登場にヴァンは口元に笑みを浮かべた。

「だぁはっはっはっ!犬どもはあらかた片づけてなぁ。”加勢”も駆け付けたからあっちは任せてきたぜ。」

「加勢だと……?」

ランドロスの話にヴァンが眉を顰めるとランドロスがメルキオルに視線を向けた。

「―――――よう、テメェが”棘(ソーン)”とやらか。マフィアの幹部ゴッコも含めて随分と色々と遊んでるみたいだなぁ?」

「ふふっ………初めまして、かな?”六銃士”の一人にしてクロスベル双皇帝の片翼――――――噂はかねがね聞いているよ。ちなみにその仮面はまさかとは思うけど、それで正体を隠しているつもりなのかい?」

ランドロスに声をかけられたメルキオルは不敵な笑みを浮かべて答えた後ランドロスに訊ねた。

「何の事を言っているのか知らねぇが、オレ様は”仮面の紳士”ランドロス・サーキュリーで、”六銃士”じゃねぇぜ?だが喜べ、このオレ様が”六銃士”に代わってその噂をその身に刻み込んでやるよ。安心しろ、色々と話を聞くために殺しはしねぇよ?――――――お前達もそれでいいだろう、”北”の”独立”を目指す戦士達?」

「無論だ。――――――俺達の目的の為にもその男は殺すよりも生かして捕らえた方が俺達にとっても都合がいい。」

「俺の古巣の仲間の件も含めて、骨の数本――――――いや、数十本は覚悟してもらおうか?」

メルキオルの問いに対して軽く流したランドロスはローガン達に確認し、ランドロスの確認に頷いたローガンはメルキオルを睨み、ガルシアはアイーダ達に視線を向けた後厳しい表情でメルキオルを睨んだ。

 

「いや~……”北の猟兵”達はともかく、”六銃士”に加えて”キリングベア”相手は荷が重いかなぁ。”今のところ”利害は被らないんだし、見逃してくれないかなあって――――――」

一方メルキオルは苦笑しながらランドロス達に交戦の意志はない事を告げたが

「調子くれてんじゃねえぞオラアッ!!」

「”北の猟兵”を舐めるなぁっ!!」

「既にテメェの方から俺達に喧嘩を売っているんだよぉっ!!」

ランドロス達は聞く耳を持たず、ランドロス、ローガン、ガルシアは同時にメルキオル目掛けて強襲し、三人の攻撃をメルキオルが回避すると三人の攻撃によってゲネシスが嵌っていた石柱は破壊され、ゲネシスは地面に落ちた。

「……!(”ゲネシス”が……!)」

ゲネシスが地面に落ちたことを確認したアニエスは真剣な表情を浮かべた。

 

「アハハハハハッ、僕はこれで失礼するよ!”装置”はとうぞご自由に。それじゃあ頑張って切り抜けてねー!」

そしてメルキオルはその場から撤退し

「総員、これより棘(ソーン)のメルキオルの追跡を開始する!」

「了解(ヤー)!!」

「オレ様は”北”の連中と共に奴を追う!お前は、アークライド達と共にかつての古巣の仲間との決着をつけてやれ!」

「おい、何勝手に決めて――――――って、行っちまいやがった……ったく、古巣の連中やあのガイ・バニングスすらも比較にならない程”規格外”過ぎだろ……」

ローガンや北の猟兵達はメルキオルの追跡を開始し、ランドロスはガルシアに指示をした後ローガン達の後を追い、ランドロスの指示に困惑しながら反論しようとしたガルシアだったが既にランドロスはその場から去っていた為、疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「え、えっと……」

「いいからほっとけ!―――――それよりこっちだ……!」

状況の変化に困惑しているアニエスに指摘したヴァンは屍鬼(グール)と化した部下達と融合して異形の屍鬼(グール)となったアイーダ――――――”渇きし火喰鳥”アイーダ=グーラを睨んだ。

「ウ……ア……………ふぇ、り……………」

「アイーダ………」

「アイーダ、さん……?」

変わり果てた姿の屍鬼アイーダの姿を目にしたガルシアは複雑そうな表情を浮かべ、フェリは呆けた表情で屍鬼アイーダに近づいた。

「フェリちゃん、駄目っ……!」

「離れなさい!その者にもはや正気は――――――」

フェリの行動を目にしたアニエスとメイヴィスレインが警告したその時屍鬼アイーダはフェリ目掛けて強烈な一撃を叩きつけようとした。

「あ――――――」

「……っ……」

「アニエス、また貴女は……!」

「おおおおおおおおっ!!!――――――グハッ!?」

屍鬼アイーダの攻撃をフェリが呆けてみている中アニエスはフェリを庇う為にフェリに駆け寄ろうとし、それを目にしたメイヴィスレインは驚きつつも瞬時にアニエスに結界を付与し、ヴァンは叫びながらフェリの前に出て間一髪のタイミングでシャードによる結界を展開してアイーダの攻撃を防ぎ続けたが結界はすぐに破られ、ヴァンはダメージを受けると共に吹き飛ばされた。

 

「ヴァ、ヴァンさん……っ!?」

「わ、わたしたちをかばって……」

「……依頼人にバイト助手……大怪我させたら信用に関わるからな……(クソ……アバラをやったか……?”仮面の紳士”が言ってた加勢ってのは……)」

アニエスとフェリがヴァンを心配している中、ヴァンは身体の痛みに耐えながら打開策を考えていた。すると屍鬼アイーダはヴァンに止めを刺す為にヴァンに近づこうとしたが

「アイーダぁッ!!」

「グッ……!?」

ガルシアが側面からの強襲で屍鬼アイーダを吹き飛ばし

「聖なる光よ、不浄なる者を浄化せよ――――――贖罪の光霞!!」

「ガあああああぁぁっ!?」

メイヴィスレインは追撃に上位の神聖魔術を発動し、メイヴィスレインが発動した魔術によって神々しき光で包み込まれた屍鬼アイーダは呻き声を上げて怯んだ。

「ったく、成り行きとはいえ、バケモノ化したかつての古巣の仲間とやり合う羽目になるとはな………今のアイーダとやり合う気がないんだったら、足手纏いのテメェらは怪我人を連れて下がって黙って見ていろ、ガキ共!」

「アニエス、貴女はフェリと共にヴァンを安全な場所まで連れてヴァンの回復に専念しなさい!私はその男と共に、上位の屍鬼(グール)と化したあの者を浄化します!」

ガルシアは溜息を吐いた後アニエス達に警告し、メイヴィスレインはアニエスに指示をした後ガルシアと共に屍鬼アイーダと対峙して戦闘の構えをした。するとその時かつて旧首都の地下遺跡での窮地の時のようにその場の空間がヴァン達を除いて停止した!

 

「こ、これって……」

「何だぁ?アイーダの動き――――――いや、周りが……」

「これが地下遺跡の時の……」

停止している屍鬼アイーダや周りを目にしたフェリやガルシアが戸惑っている中、心当たりがあるメイヴィスレインは目を丸くした。すると赤く光っていた地面に落ちていたゲネシスはアニエスが身に着けている小さなポーチの中にあるゲネシスと共鳴し、青い光を放ち始めた。

「二つの”ゲネシス”が響き合っている……?」

「あーあ、またボロボロねぇ。」

突然の出来事にアニエスが呆けている中声が聞こえた後メアのシャード体がヴァンの目の前に現れた。

「ええっ……!?」

「何だテメェは……!?」

「メアちゃん……」

「やはり現れましたか……」

「ハッ……また現れやがったか。”どっちのお前”が本物なんだ?」

メアの登場にフェリとガルシアが驚いている中アニエスとメイヴィスレインは真剣な表情を浮かべ、ヴァンは鼻を鳴らした後メアにある事を訊ねた。

「……?アタシはアタシよ?言ってる意味がわからないんだけど。まあいいや、更なる力も解放。ヴァン―――――どうするの?」

ヴァンの問いかけに不思議そうな表情で答えたメアはヴァンに問いかけ

「やれ―――――!!」

問いかけられたヴァンはメアに”グレンデル”への変身を促した。

「りょーかい、アタシに任せて!シャード解放―――――悪夢を纏え(テイク・ザ・グレンデル)!!」

そしてヴァンの言葉に頷いたメアは力を解放し、ヴァンをグレンデルへと変身させた!

 

「ヲヲヲヲヲッ……!?」

「ヴァンさん……こ、これって……」

「フェリちゃんと共鳴して……力がヴァンさんの元へ……?」

「おいおい………テメェまでバケモノ化とか、どんな展開だよ……」

グレンデルの登場に屍鬼アイーダがグレンデルを警戒している中フェリは自分に起こっている出来事に戸惑い、その様子をアニエスは呆けて見つめながら呟き、ガルシアは疲れた表情で呟いた。

「シャアアアアアッッッ!!」

「ヲヲヲヲヲヲンンンッ!!」

するとその時屍鬼アイーダは咆哮を上げ、対するグレンデルも咆哮を上げてアニエス達と共に戦闘を開始した!

 

「オオオオォォォ――――――ッ!!」

戦闘が始まるとガルシアは自己強化の為に猟兵が使う自己強化のクラフトである戦場の叫び(ウォークライ)――――――絶倫攻を発動して自身の戦闘能力を上昇させた。

「ソコだっ!セいっ!オオオオォォォッ!!」

グレンデルは拳を目にも止まらぬスピードで繰り出すクラフト―――クイックブロウ、腕に装着されている爪で斬りつけて敵の体力を奪うクラフト―――――サベージハンズ、咆哮を上げて敵にダメージを与えると共に敵の注意を自分に惹きつけるクラフト―――――ハウリングロアを次々と繰り出して敵にダメージを与え続けた。

「照らせ―――――エトワールレイ!!」

「聖なる光よ、貫け――――――斎戒の洗礼!!」

「そこですっ!燃え尽きろっ!!」

「ガアアアアアアアッ!?」

後方からは互いにSCLMを組んで互いの技や術の威力を高めたアニエスとメイヴィスレインがそれぞれ直線状に光のレーザーを放つクラフトや魔術で、フェリは銃による集中攻撃のクラフト――――――ラピッドイラプションで敵に追撃し

「喰らいやがれっ!!」

三人の遠距離攻撃が終わるとガルシアが強烈な前蹴り――――――バーストキックを敵に叩き込んだ。

「ヲヲヲッ!!」

「っ!」

反撃に敵は銃剣と化した異形の腕でガルシア目掛けて振り下ろし、ガルシアは側面に跳躍して回避し

「ソコだァッ!!」

「……ッ!」

グレンデルには銃撃で反撃し、グレンデルは咄嗟に両腕でガードしてダメージを軽減した。

 

「そこだぁっ!!」

「ハッ!セイッ!ソコだぁっ!!」

回避を終えたガルシアは炎の闘気を纏ってのタックル――――――ベアタックルで敵に反撃を叩き込み、グレンデルはクラフト―――――クイックブロウを2連続で繰り出した後強烈な蹴りを繰り出すクラフト―――――ヘヴィスパイクでそれぞれダメージを与え

「ヲヲヲヲヲッ!ガアッ!!」

「グッ!?」

「チィッ!?」

敵は反撃に銃剣と化している異形の腕で斬りつけた後銃を連射するクラフト―――――ストームレイドで反撃してグレンデルとガルシアにダメージを与えた。

「ザイファ駆動―――――アイシクルハンマー!!」

「焔よ――――――斬!!」

「この一撃、見切れますか――――――そこっ!!」

そこにアニエスが発動した氷を降り注がせるアーツによって敵の足元が凍結するとフェリがクラフト―――――ヒートエッジ、メイヴィスレインは目にも止まらぬ速さで強襲――――――加速襲撃でそれぞれ追撃した。

「ヲヲヲッ!」

「させません!!」

3人の攻撃が終わると敵はフェリ目掛けて銃撃したがアニエスがシャードスキル――――――カバーシールドを発動してフェリへのダメージを軽減した。

 

「オラアアアァァッ!!」

「ソコだっ!セいっ!フンッ!!」

敵がフェリへ攻撃している間に敵を挟み込みんだガルシアは全身を回転させて旋風を起こしながら強烈な蹴りを繰り出すクラフト―――――大回転旋風脚、グレンデルはクラフト―――――クイックブロウ、サベージハンズ、ヘヴィスパイクを連続で繰り出して敵に更なるダメージを与えた。

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲ――――――ッ!!」

するとその時敵は戦場の叫び(ウォークライ)の一種であるオーバークライを発動して戦闘能力を高めると共に、傷の急速的な再生を行った。

「聖なる焔よ、不浄なる者を浄化せよ――――――贖罪の聖炎!!」

「グガアアアアアアア――――――ッ!?」

傷の再生を行った敵だったがメイヴィスレインが放った聖なる炎で敵を焼き尽くす最上位神聖魔術をその身に受けると回復した分の倍以上のダメージを受けて悲鳴を上げながら怯み

「ハッ!セイッ!ソコだぁっ!!」

「照らせ―――――エトワールレイ!!」

「そこですっ!燃え尽きろっ!!」

敵が怯むとグレンデル、アニエス、フェリは総攻撃を叩き込み

「さぁて、仕上げといくか―――――オォォラアアァァァッ!どりゃあぁっ!!」

Sクラフトを発動したガルシアは全身に凄まじい闘気と炎を纏って敵に突撃した後続けてアッパーを叩き込んで敵を空へと吹き飛ばし

「地獄に――――――落ちろぉぉぉぉぉっ!!」

止めに跳躍して両腕を振り下ろして敵に地面に叩きつけた!

「ガアアアアアアア――――――ッ!?」

ガルシアが放った連携攻撃によるSクラフト―――――キリングコンビネーションによる大ダメージによって限界が来た敵は咆哮を上げて爆発を起こすと、元の姿に戻ったアイーダが石柱にもたれかかり、アイーダの部下達もそれぞれ地面に倒れていた――――――

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択