No.1138569

精鋭なる横須賀艦隊

戸川さん

初めての建造 予想外の事態

艦娘の口癖や提督の呼び方が曖昧だったり、分からない艦娘がいるので間違っていてもご容赦ください

2024-02-13 02:35:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:102   閲覧ユーザー数:102

泰治郎が第一線を退いてからは永田司令長官の艦隊に配属されていた金剛型四姉妹と泰治郎の妹でもある阿賀野と能代、吹雪と同じ館山基地に所属していた白雪と叢雲を受け入れて数日。8人は完全に馴染んだらしく、毎日が楽しそうであった。特に叢雲と白雪は、前いた基地だけに警戒されるなどの何かしら問題が起きるかと思っていただけに助かったと思った。8人が配属された翌日に永田司令長官に苦言を言おうと電話をしたら出たのは姉の天城で側から愛宕と長門の怒る声が聞こえてきた為、大体予想が付き聞いてみれば案の定自分の許可なしに自分配下の艦娘を横須賀に6人も配属させた事がバレてお説教の最中だと言う。それからしばらくは天城の話して時間を潰し長門と勝手に配属された艦娘達をどうするのか話し合った結果、このまま横須賀配属と言う事になった。そして現在、泰治郎はそんな過去の事を思い出しなが現実逃避をしていた。その理由は目の前にいる1人の艦娘が原因である。

 

(なんで、こうなったんだ!)

 

遡ること1時間程前。

 

執務室に大淀、霧島と入ると鳥海が困った顔をしており、机の上で妖精さん達が建造炉を動かそうと必死になっていた。

 

「やすじろうさん。けんぞうしましょう?」

 

「だいほんえいからも、しざいがとどいたのでけんぞうをやりましょう?」

 

「おねがいします。けんぞう、させてください。」

 

確かに、泰治郎が着任してから1度も建造炉を動かしていない。それに痺れを切らして、直談判にやってきたわけだ。先日の金剛達の着任と同日に艦娘が何人も建造できるだけの資材を送ってくれたおかげだ。

 

「お、おお・・・そうだな。建造すると言っておいて1つもしてなかったな。」

 

「やすじろうさん。うそは、ぶらっくていとくのはじまりなのです」

 

「わたしたちは、もうひつようないんですか」

 

「ち、違うからな。どこぞの司令長官様のせいで急いでしないといけない書類が山積みになったんだ。そのせいで、時間が取れなかった。」

 

ここで、言う司令長官とは永田の事であり、言葉通り、永田司令長官の独断で行った艦娘異動の書類を全て横須賀に押し付けてきたのだ。それも含めて苦言をしようとしたが、長門達にお説教中だったので書類を終わらせようとしたが次から次に来る書類の山に泰治郎のここ一週間の睡眠時間は約2時間から3時間である。そして昨日の夜、ようやく全ての書類が片付いたのだ。これで今日は少しゆっくりできると思ったらこれである。正直言うとゆっくりしたいが、ここでぞんざいにして妖精さん達に離れられたらとんでもない事になるため無下にもできなかったのだが、泰治郎は、後になってこの事を後悔する羽目になった。

 

「分かった。なら、早速やるか」

 

「そうこないと!いざ、けんぞうなのです」

 

早く早くと妖精さん達に急かされて出ていく泰治郎に大淀は執務室を鳥海と霧島に任せて泰治郎の後について行く。

 

「あ、提督」

 

「おう、時雨。」

 

「提督?」

 

「すまん。おはよう、時雨。」

 

「おはよう、提督。大淀もおはよう」

 

「うふふ。おはよう。提督に何かご用が?」

 

「ううん。提督を見かけたから、どこへ行くのかなって」

 

「建造をする為に工廠へな。時雨も来るか?」

 

「うん!僕も建造は気になっていたんだ。」

 

頷いた時雨と工廠へ向かう。これから工廠でとんでもない事が起きるとも知らずに。

 

 

工廠

 

「さあ、はやくはやく」

 

「きぶんがこうようします」

 

妖精さんが数人とんかち等を持って急かしてくる。早く動かしくてたまらないようだ。

 

「わかったわかったって。じゃあ、空母を建造したい。頼むぞ。」

 

「りょうかいなのです」

 

「わたしたちも、ひさしぶりですからうでかなります。」

 

そう言うと妖精さん達は、資材を溶かしたりとんかちでとんとんしたりと忙しく動き始めた。・・・なんか資材の量が多くないか?・・・何か仕様が変わったのか?

 

「そのとおり。しようがかわったのです」

 

「ですのでこれくらいひつようなのです」

 

ニヤリと笑っているのが怪しすぎるが、ここで妖精さんの気を損ねる訳にもいかず、とりあえず黙っていた。やがて準備ができたのか1列に整列した。

 

「じゅんびができました。このぼたんをおしてください」

 

建造開始のボタンを押すと上に時間が表示された。『4時間20分』

 

「ほう、これはこれは」

 

「これはせんかんならふそうがた、くうぼならかがです」

 

「お、そうなのか」

 

「ていとくさん、あぶりませんか?」

 

「ん?ああ、高速建造材か。頼む。」

 

「きょかがでたぞー」

 

「あぶれー」

 

高速建造材から炎(に具現化した何か)が建造炉を炙っていく。やがて、終えた妖精さん達が泰治郎達をドヤ顔で見る。泰治郎の後ろで見守っていた妖精さん達も万歳しながら飛び跳ねている。

 

「やすじろうさんできました」

 

「ひさしぶりだけど、うまくいきました。」

 

「そ、そうか。よし、出てきてくれ。」

 

煙の中から現れたのはサイドテールに青い袴、キッりとした顔立ちの艦娘

 

「航空母艦、加賀です。あなたが私の提督なの?それなりに期待しているわ。」

 

「ああ、これからよろしく頼むぞ。加賀」

 

「任せておいて。」

 

「やすじろうさん、もうひとつはどうしましょー」

 

妖精さんが話が途切れたタイミングで聞いてくる。

 

「また、空母だと戦力が偏るからな。戦艦を狙っていくか。」

 

「わかりました。それでは、はじめましょう。」

 

始めて数分何やら妖精さん達が興奮しだした。

 

「おお、これはすごいエネルギーをかんじます。」

 

「こんなものは、みたことがありません」

 

そうして興奮した妖精さんが状況を教えてくれる。

 

「わたしたちのみつもりでは、かんせいまで8じかんはかかるでしょう」

 

「は、8時間!?」

 

「ただ、わたしたちのみつもりなのでちがうかのうせいもあります。さて、じゅんびができました。」

 

泰治郎がボタンを押そうとすると時雨が声をかけてきた。

 

「提督、僕にも押させてくれる?」

 

「お、良いぞ。」

 

「ありがとう」

 

時雨は笑顔で、ボタンを押す。すると時間の所には妖精さん達の見積もり通り『8時間』と表示された。

 

「大淀、1番長いのは何時間だっけ?」

 

「わ、私の記憶では翔鶴さんの6時間ですが・・・」

 

「明日の準備や何やらがあってそんなに時間も取れないしな。妖精さん、高速建造材を使っていいよ。」

 

「楽しみだね」

 

「きょかがでたぞー」

 

「あぶれー」

 

「がまんできねー」

 

謎の興奮状態のまま高速建造材を使用する妖精さん達。やがて炎が消え煙が建造炉を隠す。

 

「おっといれぎゅらーです」

 

何やら不穏な言葉を発した妖精さん。それと同時に泰治郎も嫌な予感がした。煙が晴れ現れたのは見た事がない艦娘だ。目を閉じている。手には赤い傘みたいなのを持ち黒く美しい髪が桜の髪留めで纏められている。そして優雅な風貌。まさに大和撫子の言葉が果てはまるだろう。そして何より目を引くのが長門型よりも大きな艤装。凄まじい火力を持っていそうな巨砲がたくさん。大淀も誰なのか分からず目を白黒させている。眉目秀麗な艦娘が目を開く。泰治郎を見て微笑むと彼女は言った。泰治郎を現実逃避させた言葉を。

 

「初めまして提督。大和型戦艦1番艦、大和。推して参ります!」

 

「「はい?」」

 

泰治郎と大淀は気の抜けた返事しかできなかった。

 

こうして冒頭に戻る。

 

執務室

 

椅子に座って、眉間を押さえ難しい顔をする泰治郎と頭を抱え外を見つめる大淀、事情を聞いて呆然とする霧島と鳥海。そしてどうすれば良いかわからずオドオドする大和と名乗る艦娘。(加賀は時雨に頼んで赤城の所に連れて行って貰うついでに施設案内をしてもらっている。)

 

大和。そうあの大和だ。日本海軍において最強と言われ世界最大の戦艦。その艦娘が顕現してしまった。艦娘が現れた十数年、長年に渡り大勢の提督が顕現させようとして失敗してきた最強の戦艦の魂を持った艦娘。

 

 

 

「大和型戦艦」

 

 

どういう訳か分からないがその1番艦『大和』が生まれてきた。妖精さん達は涙を流して歓喜し、大和に対して万歳をしていたが。どれだけの資材を使ったのか、永田司令長官から送られてきた資材はほとんど使い果たされていた。たった2人の艦娘で、きれいさっぱりと。どうやら、妖精さんは大型建造をしたらしい。泰治郎的には通常建造で戦艦と空母が来ればラッキー程度だったのだ。そこで食い違っていた。

 

妖精さんは全てを使ってでも戦艦を欲したのだろう。1回目は泰治郎が2回目を時雨がボタンを押した。大和が現れたのは、2回目つまり時雨が押した方だ。時雨の幸運か何かが働いたのか・・・

 

「あ、あの・・・私ってここにいたらダメなのでしょうか?」

 

大和が不安げに聞いてきた。それに慌てて泰治郎が答える。

 

「違う違う。そうじゃなくてな、艦娘が現れてから十数年、1度も大和が顕現した事がなかったんだ。つまり、君がこの海軍史上初の事なもんで、どうしたものかと思ってね。」

 

「あ、あの・・・私・・・お料理でも何でもしますから、お願いします。ここに居させてください。もう、暗くて寒い海底には帰りたくないんです。ずっと寒くて暗い所にいて・・・私、怖くて。でも白い光が当たりを呑み込んで目を覚ましたら、ここにいたんです。だ、だから、もう暗いところに帰りたくありません」

 

「ううう、や、やっぱり・・・私はおじゃなんですか?グス・・・うえええええん!」

 

不安が爆発した大和は遂に泣き出した。

 

「うげ!?ちょ、ちょっと待て!とごにもやらないし、解体もしないから!ここにいていいからな!だから泣き止んでくれよ!飯を作ってくれるのはありがたいけど、間宮もいるから、大和は実戦まで鍛錬してくれればいいからな!」

 

「わあああん!やっぱりわだじはおじゃまなんだああああ!!!あああああん!!」

 

「ちょっ!?や、大和違うって!おいお前ら!見てないで助けろ!」

 

「て、提督。女の子を泣かせるなんて見損ないました!」

 

「司令、最低です!」

 

「司令官さん、クソですね!」

 

「お前らな!覚えてろ!」

 

何もしない。今の横須賀にはお前が必要だと何回言ったのか、途中で数えるのをやめた。泣き声を聞きつけてやってきた金剛と榛名のフォローもあり、何とか泣き止んだ大和。だが、これは大変な子が来たと頭が痛くなると同時に、今度商店街へ行った時は金剛と榛名に好きな物を買ってあげて、大淀達は秋子おばさんの店に連れていこうと決心した泰治郎だった。

 

「グス・・・ずびばせんでじた・・・」

 

「こっちこそ、言い方が悪かったな。すまん。横須賀は、君を歓迎しよう。最強の戦艦、大和型1番艦、大和。」

 

「は、はい!不束者ですがよろしくお願いします。」

 

「わかったから、涙を吹いてくれ。」

 

金剛が差し出したハンカチで涙を吹いている様子に周りは微笑ましそうに見ていたが、大淀、鳥海、霧島は次の泰治郎の言葉で固まった。いや、2人は地獄に落ちた気分になった。

 

「あ、そうだ。大淀、鳥海、霧島は次商店街行く時は強制参加で、秋子おばさんの店に行って貰うからな」

 

「「「・・・え」」」

 

「て、提督、お願いします。それだけは許してください。」

 

「し、司令官覚さま。お願いですからそれだけは、やめてください。」

 

「なら、鳥海。連帯責任で摩耶を巻き込んでも良いぞ!」

 

「あ、あのそれは・・・」

 

霧島はわかっていないが、何度も被害にあってる2人は顔を青くさせてそれだけは許してと懇願してきた。

 

結局、よくわかっていなかった榛名の取り無しで秋子の件はチャラとなったが、後日、榛名達と商店街へ行った大淀と鳥海が秋子おばさんの暴走に結局巻き込まれたの別のお話である。

 

 

永田司令長官に大和が顕現した事を伝えると、しばらく無言となった後に「は?」と聞き返してきた。4度程言い直したが、は?と帰ってくる始末。埒があかないと判断した長門が代わり、事の顛末を聞いて納得。翌日の会議にも大和を連れていくと伝え電話を切った。

 

「さてと、昼飯でも食いに行くか。」

 

「そいえば提督。間宮さんが忙しいから手が空いている子をよこして欲しいと言ってましたよ。」

 

「なら、金剛と榛名、大和で手伝ってあげろ。」

 

泰治郎は、館内放送をかけて手の空いてる子達に間宮を手伝うように指示を出し。遠征や出撃から帰ってきた子達を迎えた。食堂に集合した子達は見慣れない2人に戸惑っていたが建造されたと聞くと嬉しそうに自己紹介をしていた。少し心配になって料理をしている所見に行ったが、プロ顔負けの手際の良さだ。かつて、ホテルと呼ばれていた時の名残か?その日の夕飯はオムライスだった。

 

「既に、自己紹介は済んでいると思うが一応紹介しとくぞ。今日から仲間に加わった大和と加賀だ。みんな、仲良くな。いつも通り、表向きの部屋割りだが、大和は扶桑と同室、加賀は五航戦の翔鶴、瑞鶴と同室だ。扶桑と翔鶴、瑞鶴は後で部屋に案内してあげてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

「わかりました。」

 

こうして、新たに仲間を加えた横須賀鎮守府はさらに明るく、賑やかになった。

 

後に横須賀の打撃艦隊の中核を担う事になる大和。

横須賀機動艦隊の一角を担う一航戦の片割れ加賀。

この2人の加入により横須賀艦隊はさらに戦力を増していく事となる。


 
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