――――1年後、ミッドチルダ――――
俺は晴れて一佐に昇進し、部隊もどうにか軌道に乗り始めた頃、はやてが俺に会いたいと言ってきた。
仕事で会いたいなど珍しい事だ。
そう思い、俺は会談場所のミッドチルダ極北地区ベルカ自治領、聖王教会に赴く。
誰にも行き先を継げず一人で来いとはいった何事かといぶかしんだ。
俺は制服の上にフード付きのマントを纏い、サングラスを着け、門の前で待っていた。
暫くしているとシスターの格好をしたショートの髪型の女が俺に近づいてきた。
「お待たせいたしました。騎士ジン、騎士カリムと騎士はやて、クロノ提督、ユーノ書記長がお待ちです。どうぞ・・・」
全く・・・あの四人は一体何の会談をする気だ?
俺はサングラスを外しながらそう思った。
いぶかしみ、シスターシャッハの導かれるままにカリムの執務室に案内される。
扉の前で止まり俺は制帽を被りネクタイを片手で直す。
シャッハは軽くノックを行う。
「失礼いたします。騎士カリム。騎士ジンをお連れいたしました」
「お通しして」
扉の向こう側から透き通る様なカリムの声が聞こえた。
シャッハの手により重厚な木の扉は静かに開かれる。
そこにいたのは部屋の主たる騎士カリム、はやて、クロノ、ユーノがいた。
俺は直立不動の姿勢になり敬礼を行う。
そうすると全員が立ち上がり、カリムとユーノは頭を下げ、はやてとクロノは敬礼し挨拶をした。
俺は制帽を取り、左脇に挟むと、全員にこう言う。
「お互いこうして会うのは久しぶりですな・・・火急の、しかも内々の御用向きと伺い、参上いたしました。して、ご用件とは?」
「何もそんな予防線はらんでもええやん。折角皆集まったんやし・・・堅いでジン」
はやてがそう言う。
「そうですわ、ジン・・・気心知れた私達にその言い方は些か度が過ぎる言うものですわ」
カリムもそう言い私に崩した話し方をする。
「ジン・・・それは嫌味か? 相変わらずだな君は」
クロノもそう言い嗜めた。
「・・・ジン・・・相変わらずだね。変わってないようで何よりだよ」
ユーノは呆れながらも歓迎してくれた。
「・・・・・・・どうやら知り合いしかいないみたいだな、で、話とは?」
俺の質問にカリムが応える。
「丁度今その事を話そうとしていた所だったの取り合えず座って」
俺は取り合えず近場のイスに座る。
「今回皆さんに集まってもらったのはある予言についての話です」
ああ・・・例の・・・
カリムのレアスキル『プロフェーティン・シュリフテン』のやつか・・・
確か文章はこうだったか・・・
『旧い結晶と無限の欲望が交わる地
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る
使者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち
それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる
そして獅子の魂と狼の魂は互い牙を剥く 』
だったな・・・
「多分やけどこの旧い結晶いうのはレリックとウチは考えとんや・・・」
ロストロギアのレリックか、俺等とも縁があるな・・・
「それ絡みでもう4、5件、テロが起きている。何とか抑えてはいるが、キリが無い。
だから本拠地を叩こうとしたが既に廃棄された後だった。しかも災害が起きた後での廃棄された後だ・・・それを考えると背後に大きな組織がいる可能性もある」
俺はそう喋りながらモニターを動かし、調査資料を説明する。
俺の説明に皆聞き入るが、コレといって成果が無い事が理解できただけだった。
暫くアーでもないコーでもないと会議は紛糾し、はやてが話題を変える。
「そこでウチはこの予言に対応する為に新しく部隊を作りたいんよ」
新たな部隊、か・・・
「で、その部隊の表向きの発足理由は? 悪いが地上本部は予言をビタイチ信じちゃいないぞ・・・特にレジアス中将殿は・・・『そんなのでまたお前達海は優秀な人材を持っていく気か!?』って、怒鳴られるぞ確実に・・・」
唯でさえ俺が陸さんに無断で緊急出動しているからな。
風当たりは強くなるな確実に・・・
「だからや・・・表向きはレリック事件の解決や、緊急非常時の通常部隊での瞬時の部隊派遣を行う為の試験部隊として採用してもろおたんや・・・」
ふむ・・・どうやらはやては水面下で動いていたらしい・・・
お互い仕事が忙しいのと、プライベートで会うことがあってもお互い仕事の話題はしないからな・・・
「で・・・? その部隊の名称は?」
はやては誇らしそうに胸を張り応える。
「『古代遺物管理部機動六課』通称、6課や」
こうして俺ははやての機動部隊、古代遺物管理部機動六課を知ることになった。
しかも、その人員を聞いて俺は呆れた。
何故なら部隊長、副隊長、その他のスタッフが知り合いか、友達や身内と来ている。
機動部隊の兵員事態が行き過ぎな気もする。
2小隊の隊長にはなのはとフェイト、副隊長にはシグナムとヴィータ・・・医療班にはシャマル・・・
やり過ぎだ・・・
そう思った。
俺はカリム達と別れてはやてと食事を取る事にした。
丁度、夜の7時。
ご飯が恋しい時間帯だ。
車のナビシートにはやてが乗り、俺は運転していた。
「こうして二人でドライブするの何時振りやろ・・・」
不意にはやてが呟く。
「そうだな・・・最後にドライブしたのは3ヶ月前だったな・・・」
俺はそう呟く。
「もう、そんなにか・・・お互い忙しかったからな・・・」
「全くだ・・・俺は忘れ去られたのかと内心ヒヤヒヤしたよ」
俺の言葉にはやては頬を膨らませて拗ねながら言う。
「ウチかて・・・捨てられたんかと思うた・・・」
おいおい、婚約者相手に酷い事考えてるな。
「俺がそんなことする訳が無い・・・第一・・・俺はお前のモノだ・・・あの時、誓った筈だ・・・『ジン・キサラギは八神 はやての騎士として姫である貴女を守り、貴女の許可無く貴女の前からいなくなる事をいたさないと誓う』と・・・悪いが今でもその誓いは有効だからな」
俺はそう真面目に応えるがはやては苦笑する。
「相変わらずやなジンは・・・それを言うならウチも誓ったんよ・・・『私、八神 はやては、ジン・キサラギを信じ、愛しぬき、貴方と共に支えあう事を誓う』ゆうて・・・今でもその約束、生きとるよ」
そう言い、はやては俺の肩に頭をもたれさせ呟く。
「ジン・・・ジンは・・・リインフォースみたいにおらんようにならんとってよ・・・」
「・・・ああ・・・」
俺は車を走らせながら思った・・・
・・・神様・・・これからもこんな時間をはやてと共に過ごす事が出来ます様に・・・と・・・
―――1年後―――
俺はSeeD隊長室で二人の隊員を待っていた。
暫く仕事をしながら待っていると部屋の扉から軽快なノックの音が響き渡る。
「どうぞ」
俺は入室を許可する。
「「失礼します!!」」
二人の元気な若者の声が部屋に響き渡る。
彼等は敬礼をした。
「来たか、かけろ」
俺は彼らに敬礼を返し、着席を命じる
一人は茶色の髪に青い瞳、身長は175cm位の若者で名はアルベルト・ライヒ。
もう一人は銀髪に銀の瞳、此方も身長は同じくらいで名はゼーレ・ハインリッヒという。
同じ訓練校の同期でこの春、我が部隊に入隊が決まった新人だ。年は16歳、俺とは三歳違いの新人さんだ。
「隊長、ご用件とは?」
アルベルトが俺に質問してくる。
「まさか、一緒に茶でも飲もうなんて話じゃないですよね?」
ゼーレは軽く茶化した。
「落ち着け、今から話す」
そう言い、俺はコーヒーを飲みながら呟く。
まったく・・・若いね・・・
「君達に集まってもらったのは俺と一緒にある新しく出来る部隊への出張だ」
「出張・・・ですか?」
「俺等のようなペイペイが? 冗談でしょ?」
SeeDで言う所の出張とは違う部隊に戦闘訓練や技術指導、特殊作戦のレクチャーを行う事を指す。
まあ、入って2ヶ月のド新人には荷が重い話だ。
彼等がいぶかしむのも無理は無い。
「まあ、俺は出張だがお前達は、訓練をしながらその部隊の兵員として働いてもらう」
「はあ・・・」
「じゃあ、俺等は人事異動ですか?」
彼等は不安そうにそう質問する。
「いや、その部隊は試験的な部隊だ。期間は1年、そこで君達は訓練と任務に励んでもらう」
「その部隊とは?」
アルベルトの質問に俺は答える。
「古代遺物管理部機動六課、八神二佐が試験的に創設した部隊だ」
≪アルベルトサイド≫
一佐の命令で俺とゼーレはミッドチルダ南駐屯地内A73区画にある6課オフィスに車で向かっていた。
「どう思うよ・・・アルベルト・・・今回の任務っつうか、出張?」
ゼーレは助手席のシートを倒し寝転がりながら今回の任務について疑問を口にした。
「さあな・・・師匠が何を考えて俺達をこの部隊に放り込むのか解らん・・・」
俺は自分の思う所を述べた。
「だよな~どう考えても過剰戦力だぜ・・・これ・・・」
資料を見ながら呟いた。
「確かにな・・・高町一尉にハラオウン執務官、ヴィータ三尉にシグナム二尉・・・小隊の隊長陣や副隊長陣が戦力過剰だ・・・コレにウチの師匠までもが入ってくるんだ・・・テロリストだって泣いて素足で逃げ出す・・・」
俺は呆れながら呟いた。
「レリックってもんはそんなに危険なのかね・・・?」
「資料を見ただろう? 明らかにその力は異常だ・・・更にその力を悪用する者は出てくる」
俺の言葉にゼーレは鼻を鳴らす。
「ハッ・・・たっく・・・何で平和に生きれないかね・・・? アイツ等・・・」
「俺に言っても仕方ない・・・それよりも俺達と部隊を組む事になった人員見たか?」
俺の質問にゼーレは悪ガキの様な顔をして嬉しそうに言う。
「ああ、見た、見た! まさかまさか、あの二人と同じ部隊とはね~」
「訓練校以来だからな・・・元気にしてるかな・・・? スバルとティアナ・・・」
俺の疑問にゼーレは笑いながら言う。
「ティアナは兎も角、スバルは元気なんじゃねーの? つうか、アイツ等のコンビは何時見ても面白れー」
「確かに・・・あいつ等のコンビは危なっかしいが見ていて面白い・・・」
俺は苦笑しながらそう言う。
彼女達と知り合ったのは1年前、陸士訓練校との合同演習の時だった・・・
アイツ等のペアーと俺達のペアーが組んで訓練形式の試合で優勝したのがはじまりだった・・・
俺は過去を思い出しながら車を走らせた。久しぶりの再会を楽しみにしながら。
車は6課の隊舎に到着した。
俺とゼーレは車から降り、エントランスまで歩く。
暫く待っていると、人形みたいな小さな人が飛んできた。
「アルベルト二等空士とゼーレ二等空士ですね? お待たせです~♪ 私の名前はリインフォースⅡというです~。階級は空曹長です~よろしくです~♪」
「初めまして! お噂はかねがね、自分は特殊機動部隊SeeD第一空挺部隊、α小隊所属、アルベルト・ライヒです」
「初めまして、自分は、同部隊所属、ゼーレ・ハインリッヒです」
敬礼をしながら俺はそう言う。
「はい~♪ お話はジンから常々聞いてるです~何でも優秀で骨のあるヤツが二人入ってきたとか~ジンも嬉しそうでした」
あの師匠が俺達を褒める!? アリエナイ!?
どうやらゼーレも同じ思いらしい・・・
リイン曹長の案内でホールまで歩く。
そこにはスバルとティアナがいた。
懐かしい・・・変わってないな・・・あいつ等・・・
「あ!! アルベルトとゼーレだ!! お~い! アル! ゼイ!」
俺達のニックネームを呼びながら近づいてきた。
「久しぶりだな、スバル。ティアナも元気にしてたか?」
俺の質問にスバルは元気良く、ティアナは普通に答えた。
「元気! 元気!」
「私は何時も通りね」
暫く昔話に花を咲かせていると10歳位の男の子と女の子が俺達の前に歩みよってきた。
「あの・・・フォアードの部隊の方々ですか?」
「そうだが・・・君達は?」
少年は元気良く答え、少女は遠慮しがちに答える。
「エリオ・モンディアル三等陸士です! よろしくお願いします!」
「キャロ・ル・ルシエ三等陸士・・・よろしくお願いします・・・」
俺はこの小さい同僚達ににこやかに挨拶をする。
「俺はアルベルト・ライヒだよろしくな」
ゼーレもにこやかに挨拶をする。
「俺はゼーレ・ハインリッヒだ、よろしくな、エリオ、キャロ」
「「はい!!」」
二人は元気良く答えた。
「私の名前はスバル・ナカジマ、よろしくね! エリオ、キャロ」
「私はティアナ・ランスターよ、よろしくね、二人とも」
「「はい!!」」
俺達6人は親睦を深めていた時、八神隊長が挨拶を行うという号令がかかった。
俺はこの部隊で旨くやっていけそうだそんな事を感じていた。
Tweet |
|
|
14
|
0
|
追加するフォルダを選択
この作品はオリジナル主人公がリリカルなのはを引っ掻き回すお話です。
作者の妄想が生んだ産物とオリジナルが多く含みます。
気を付けて読んでください。