蔡文姫「ちょっと、武器に手をかけないでよ」
警戒されていることに少し不機嫌な様子。
一刀「・・・・・・」
その言葉を聞きいれることなく、一刀は刀から手を離さなかった。
むしろ、離すことが出来なかった。
蔡文姫「ふぅ・・・・別にあなたをどうこうしようって訳ではないんだから、そこまで警戒しなくてもいいじゃない」
一刀の反応になおさら機嫌が悪くなる。
一刀「あなたを信用する理由が全く見当たりませんから」
その言葉に蔡文姫はため息をついた。
蔡文姫「まぁいいわ、一応初対面なんだし。でも、女性に剣を向けようとする姿勢、わたしはないと思うんだけど」
一刀「・・・・・・・」
再三の要求に一刀も折れ、刀にかけていた手を下ろす。
蔡文姫「はい、それでよろしい」
目の前の女性のそのマイペースな態度にさすがの一刀もため息をつく。
蔡文姫「一刀君!女性にたいしてため息はいかがなものかと思うわよ」
一刀「はぁ、すみません」
蔡文姫「わかればいいのよ」
一刀の反応が少しやわらかくなったことで機嫌も少しは良くなったようだ。
一刀「あの、質問しても良いですか」
蔡文姫「ん?いいわよ」
一刀「あなたは――――――」
蔡文姫「文姫で良いわよ」
あなたといわれることが気に入らなかった様子で一刀の呼び方はすぐさま訂正した。
一刀「・・・・・文姫さんはいったい何者なんですか?」
蔡文姫「わたし?そうね、まぁ、左慈くんと同じかな」
一刀「左慈?」
当たり前にように文姫が言うその名前に一刀は聞き覚えが無かった。
蔡文姫「えぇ?知らないの」
一刀「はい、こちらでは・・・・いえ、全く聞いたことがありません」
後漢時代の方士という知識はあったが、こちらの世界ではあったこともその名を聞いたことも無い。
だから、自分の失言を訂正せざるを得なかった。
蔡文姫「??・・・・・そっか、彼、あなたに名乗ってないのね」
一刀「はい?」
一刀の様子から何かをひらめいた。
蔡文姫「左慈ってのはね、あなたをこの世界に連れてきた人のことよ」
一刀「・・・・・・えっ」
蔡文姫「それに、わたしは彼の仲間・・・・う~ん、仲間って言うより知り合い?ってな感じだから。それに元の世界のことを私には話しても全然大丈夫よ」
一刀「はい?いや、えっと・・・・」
突然のことで何がなにやら分からなくなってしまった。
自分をこちらに連れてきた男の名前が左慈で、その仲間らしい蔡文姫という女性。
なぜ。自分の前にこの人が現れたのか、何が目的でこの女性はここにいるのか、一刀は訳がわからなかった。
蔡文姫「さぁ、わたしは質問に答えてあげたんだから、今度はわたしの質問に答えてよね」
一刀「えっ?」
まだ自分の中で情報の整理が出来ていないのに・・・と一刀は思った。
蔡文姫「一刀君ってさ、どんな人なの?」
その顔は妖艶な笑みを浮かべていた。
一刀「はい?」
唐突で意味不明な質問に、一層困惑するばかりであった。
蔡文姫「わたし、一刀君がこの外史にいたときのこと知らないし、それに君のことを聞いても誰も教えてくれないし」
一刀「教えてくれないって、誰に?」
蔡文姫「えっ、そりゃぁ、わたしの知り合いにだよ」
一刀「はぁ・・・(当然のように言われても・・・)」
蔡文姫「だから、どんな人なのよ」
一刀「いや、どんな人といわれても・・・・・俺が自分自身を説明するのって無理じゃないですか?」
蔡文姫「どうして?」
その反応を見ながら楽しそうに聞きなおしてきた。
一刀「どうしてって言われても・・・・」
目の前の女性の反応に四苦八苦する一刀。
どう説明すれば、分かってもらえるかを考えるが一向によい答えが浮かんでこない。
一刀「(なんて言えばいいんだ・・・・・・ぜんぜん分からん)」
必死に解決策を見出そうとする。
一刀「そのですね、文姫さんだって自分を――――」
蔡文姫「・・・・・くっくっくっ・・・・」
話し始めると同時に蔡文姫はうずくまった。
一刀「あの、ぶ、文姫さん?」
うずくまった蔡文姫に声をかけたと同時に。
蔡文姫「あっはっはっはっ」
一刀「うぇ!?」
突然、大声で笑い出した。
蔡文姫「はっはっはっ、いや、ごめんごめん。あんまりにも真剣に考えるもんだからついね」
一刀「ついって言われても。ん?じゃあなんでそんな質問したんですか」
蔡文姫「えっ、そりゃぁ、おもしろそうだったから」
その答えを聞き、呆れている一刀を尻目に目の前の女性は楽しそうに笑っていた。
一刀「文姫さんがどんな人かちょっと分かった気がします」
蔡文姫「わたしは一刀君がおもしろい人だってことがわかったかな」
嫌味を込めた言葉も全く効果が無く、むしろ、笑顔で嫌味を返されたような気分だった。
一刀「はぁ」
蔡文姫「ほらほら、そんなに落ち込まないで。いいことあるってば」
励ましの言葉のはずが、その言葉には好意を持てそうにはなかった。
一刀「全く、誰のせいでこうなったと思ってるんだよ」
蔡文姫「えっ?なに」
一刀「いえ、何でもありません」
自分の言葉がこの女性の心には届きそうにないと感じるばかりだった。
蔡文姫「でもさ、君も変わってるよね」
一刀「何がですか?」
蔡文姫「いやぁ、そりゃぁ―――――」
何かを言いかけたが彼女は、突然、口をつぐんだ。
一刀「文姫さん?」
蔡文姫「・・・・・ちょっとまずいな」
一刀「えっ?」
笑顔が無くなり、真剣な表情になる蔡文姫。
蔡文姫「さすがに、こんなところを見られるのは一刀君的にもわたし的にもまずいからもう行くね」
一刀「はい?」
蔡文姫「じゃあね一刀君、また今度お話しようね」
一刀「いや、あの!―――――」
一刀の言葉を聞かず、蔡文姫は手鏡を取り出した。。
そして、突如、彼女は光りに包まれた。
一刀「うっ」
光りが消えるのを感じ、ゆっくりと目を開けた。
一刀「・・・・・あれ?」
しかし、目の前にいた女性はすでに跡形もなく消えていた。
一刀「・・・・・・なんだったんだあの人・・・・・・」
突然、目の前に現れた女性は、突然に目の前からいなくなった。
ただ、呆然としていた一刀ではあったが分かったことが一つだけあった。
あの人は、確実に意地悪であるということが・・・・・・
一刀「全く、台風のような人だな」
そうこう考えていた一刀の耳に誰かの足音が聞こえた。
一刀「(誰だろう・・・・・)」
階段を上ってくる足音は確実に近づいてきていた。
???「誰かいるの?」
階段を上り終えたその人物は、月の光りに照らされ、その顔が際立った。
一刀「!」
その聞き覚えのある声とその顔を、一刀は瞬時に理解した。
一刀「曹操様」
華琳「あら、あなただったの?」
一刀「はい」
華琳「こんなところで何をしているの?」
一刀「いや、ちょっと眠れなかったので気分転換を」
華琳「そう。で誰かと話していたの?声が聞こえたけど」
一刀「(うっ・・・・そりゃ聞こえるか・・・・)」
先ほどの蔡文姫の大きな笑い声を思い出していた。
一刀「それはですね・・・・」
何とかこの場をごまかすために頭をフル回転させる。
そして、苦し紛れに・・・・。
一刀「塀の上にいたねこに話しかけていたのですよ」
偶然にも、塀の上にいたねこを指差した。
にゃー。
華琳「・・・・・・・」
一刀「・・・・・・・」
華琳「・・・・・ねこ?」
一刀「・・・はい」
華琳「な、何でまた」
一刀「いや、ちょうどいたので話でも聞いてもらおうかなと思いまして・・・・」
華琳「・・・・・」
自分の苦し紛れの言い訳に内心、涙が出てきそうだった。
華琳「・・・ふっ」
一刀「?」
華琳「あっはっはっはっ」
突然、華琳は笑い出した。
一刀「あの~・・・」
華琳「あなた、変わった趣味を持っているのね」
一刀「趣味と言いますか・・・・たまたまといいますか・・・・」
華琳「ふふ、ねこに話しかけるのが好きなら、風と趣味が合うのではないかしら」
一刀「いや、ですから決して趣味では・・は・・・ハックション!!」
こんな夜に薄着だったこともあり、身体が芯から冷え切っていた。
華琳「あら、今後、仕事をしてもらうのに風邪をひかれると困るのだけれど」
一刀「す、すいません・・・・・う~」
身震いをしながら答えた。
華琳「早く部屋に戻りなさい」
そういうと、華琳は階段のほうへと向かった。
一刀「あっ、曹操様」
華琳「なに?」
足を止め一刀の方へ向きなおした。
一刀「食堂と二人のことはどうもありがとうございます」
春蘭に殺されかけた後、一刀は華琳に二日おきに休みを欲しいと進言していた。
はじめはいい顔をされなかったが、南陽で開いていた店を李淵や蒼蓮と共に今後も続けたいという理由を話すと快く承諾してくれたのだ
その上、二人のために部屋を用意もしてくれた。さすがに働かざる者食うべからずにのっとって店を開いていない日は仕事をする条件付きだが。稟や秋蘭いわく人手が足りない場所があったらしくちょうど良かったらしい。
華琳「あぁ、あのこと。あの処置は当たり前よ。もともとあなたたちはお店を開いていたところをこちらに来てもらったのだから。それに、それぐらいしなければ、わざわざついてきてくれた李淵と蒼蓮に悪いじゃない」
一刀「それでも、無理をいったことはたしかですから」
華琳「そう、ならあなたの力を私の下で存分に発揮してくれればいいのよ」
一刀「はい、私の出来うる限りに」
華琳「その意気ね。それじゃあね」
そういい残すと華琳は城の中に消えていった。
一刀「・・・・・ふっ」
華琳の反応が予想通りだったことに笑いがこみ上げてきた。
一刀「三年経っても華琳は健在だな」
先ほどの出来事を忘れさせてくれるほど一刀の心は温かい気持ちで包まれていた。
誇り高く、寂しがりやで少しわがままな覇王に再び出会うことが出来たのだから。
一刀「さて、俺もそろそろ部屋に戻るかな」
そして、華琳を追うように一刀もその場を後にした。
〈 翌 日 〉
桂花「し、親衛隊をあの男に任せるのですか!?」
華琳「えぇ、季衣と流琉にはそれぞれ将軍として隊を率いてもらうつもりでいたから親衛隊を任せるのがちょうど良いでしょう。あの二人よりも頭が切れるようだし」
桂花「し、しかし、新参者に親衛隊を任せるのは実績的にも信用的にも足らないのでは」
魏光のことをまだ納得していない(納得することはないだろうが・・・・)桂花は華琳に抗議をしていた。
稟「その点は大丈夫でしょう」
桂花「な、何でよ!」
稟「まず、実績に関しては風と霞の件で十分でしょう。信用の面においては私自身では判断は出来かねますが、あの二人が太鼓判を押すのです、問題は無いでしょう。それに、流琉と季衣ももう仲が良いようですし」
それは、親衛隊を任せる理由としては十分なものだった。しかし、その程度で引き下がる桂花ではなかった。
桂花「でも、あの二人を助けたのも一度きり、それがまぐれだって可能性だってあるでしょう」
真桜「往生際悪いで~桂花は」
沙和「ほんとなの~、桂花ちゃんどう見ても見苦しいの~」
凪「こら、桂花様にその言い方は失礼だろう」
少しはなれたところで、その様子を三人娘は傍観していた。
真桜「失礼ゆうてもなぁ」
沙和「ねぇ~なの」
二人は顔を見合わせ。
凪「?」
真桜「事実やん」
沙和「事実なの~」
凪「・・・・」
一方、桂花の発言に対して秋蘭が異論を唱えた。
秋蘭「それはどうかな、なぁ姉者」
春蘭「あぁ、私の一撃を受けて生きていたのだ。そんじょそこらの人間とは違うだろう」
桂花「・・・・・あんたには聞いてないわよ」
春蘭「なんだと!?」
華琳「春蘭!」
痺れを切らせ、華琳が口を挟んだ。
春蘭「うっ、だって華琳様~」
華琳「・・・・・・」
春蘭「うぅ~(何もしてないのに・・・・)」
少しのにらみをきかせて、春蘭を黙らせた。
華琳「桂花!はっきり言ってあなたの意見はわがままでしかないわ」
桂花「うっ・・・」
華琳「まぁ、でも親衛隊を任せるにはそれなりに武を見せてもらうが必要はあるわね」
何かを思いついたのか、その顔は楽しそうに見えた。
秋蘭「華琳様?」
華琳「稟、魏光を中庭に呼んでちょうだい」
稟「わかりました」
華琳「それと凪、あなたに頼みたいことがあるのだけれど」
凪「はっ」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
一刀「いきなり呼び出されたけどなんだろう・・・・(今日は街を見てまわるって言ってたのにな)」
中庭に向かいながら、呼び出された理由を考えていた。
一刀「(まさか、怒られるんじゃ・・・・・って俺まだ何もしてないし)」
そうこう考えているうちに中庭に到着。
一刀「曹操様、遅くなりました」
華琳「かまわないわ、むしろ、呼び出して悪かったわね」
一刀「いえ、ですが・・・・・えっと、この顔ぶれは?」
中庭にいる面子を見ればその反応は当たり前である。
魏の将軍がほぼ全員いるのだから、唯一いないのも先ほど街のほうに出て行った霞だけであった。
華琳「まぁ、これだけ集まってしまったのはどうかと思うのだけれど」
そういいながら中庭全体を見渡した。
稟「風、あなたは霞と街に行ったのでは?」
宝譿「こんな楽しそうなことを見逃せないってことだぜ」
風「そういうことですね」
稟「全く・・・・」
秋蘭「お前たちはどうしてここにいるのだ?」
流琉「いえ、私は季衣に・・・・」
季衣「だって、なんだかみんなで楽しそうなことをしてそうだったから」
秋蘭「まぁ、見る分には楽しいかもな」
春蘭「しかし、お前たちは仕事は大丈夫なのか?」
秋蘭「(姉者がそれをいうか・・・・・)」
流琉「えぇ、私は昨日の夜のうちに秋蘭様と大方のものは終わらせてありましたので」
秋蘭「そういうことだ。まぁ、姉者と季衣の仕事でもあったのだが・・・・・」
春蘭&季衣「?」
流琉「(歓迎会のあとにすぐに二人は寝ちゃたし、それに、いてもあまり役には・・・・)」
季衣「流琉、どうかしたの?」
流琉「えっ!?な、なんでもないよ」
季衣「?」
その様子を見ていた秋蘭は思わずため息をついた。
秋蘭「ふぅ・・・・まぁ、だから大丈夫ということだ」
春蘭「そうか」
沙和「凪ちゃん、頑張ってなの~」
真桜「せやで、そない簡単には勝てへんやろうからな」
凪「わかっている」
とみんなそれぞれにくつろいでいるようであったが、一刀はあることに気づいた。
明らかに見たことのあるセットが組みあがっていること。
何かを傍聴するような配置にみんながついていること。
不自然に凪が軽く武装をしていること。
そして、一刀はこの光景を以前に見たことがあった。
一刀「(まさか・・・・・・)」
華琳「魏光。あなたにはこれから凪と手合わせをしてもらうわ」
一刀「(や、やっぱり・・・)」
華琳「少し、あなたの実力を疑う者がいてね」
一刀「(・・・・・絶対、桂花だな)」
悩むことなく正解が浮かび上がる。
華琳「それに、私もあなたがどれほど出来るのかを見ておきたかったし」
一刀「・・・・・成り行きがよくわからないんですが」
宝譿「おぅおぅ、そんな小さいこと気にしてんじゃねぇーぜ」
風「こらホウケイ、それは言っては駄目ですよ」
真桜「せやで、やれやれ~」
沙和「やれやれ~なの~♪」
外野から小さな野次がちらほら。
一刀「(ていうかあいつら、一応初対面の俺に対して態度悪くないか?)」
秋蘭「まぁ、実力を見せてほしいということだ」
一刀「はぁ、それで楽進様と戦えと」
稟「そういうことです」
一刀「・・・・・わかりました。ご命令とあらば」
華琳「そう。ならもう始めても大丈夫かしら?」
一刀「はい、鍛錬用の装備をつけてくるようにと聞いていましたので」
そういうと一刀は、凪の前方へと歩きだした。
凪「成り行きでこうなってしまいましたが、よろしくお願いします魏光殿」
一刀「こちらこそ、よろしくお願いします」
凪「では、お互いに手加減は無用で」
好意的な笑顔が消え、凪は戦闘態勢にはいった。
一刀「(・・・・まぁ、俺も自分の力がどれくらい通じるのか試したかったからな)」
凪の気迫に飲まれることなく、木刀を構えた。
華琳「いいようね、では・・・・・・双方、はじめ!!」
凪「はぁ・・・・・・ふっ!」
ヒュッ、
華琳の合図と共に凪が動いた。
一刀「!」
地を強く蹴り、高速で自分の間合いまで詰め寄り、その速度を生かしたまま、攻撃に移った。
一刀「くっ!」
蹴り主体の攻撃が続くが、それをギリギリでかわす。
そして、かわした直後に切り返そうと何度も試みるも距離を詰められすぎていて思うように反撃をすることができない。
凪「はぁっ!!」
自分の優勢を感じた凪は攻撃を休めることなく続けた。
一刀「(くっ、相変わらずえげつない所を狙ってくるな)」
一撃一撃に殺気がないとはいえ、的確に急所をついてきていた。
その攻撃を身のこなしと武器で何とか捌く。
一刀「(さすがに強いな、凪は)」
彼女たちはやはり強かった。
この世界にいたときからわかってはいたことだったが、一刀は改めて確認させられた。
一刀「(でも・・・・)」
以前とは違い、一刀は武器を交えることで彼女たちの強さを肌で感じることが出来ていた。
一刀「ふっ」
それだけではあったものの、それが、一刀にはうれしくて仕方がなかった。
だからこそ、劣勢ではあるものの、無意識のうちに笑みがこぼれていた。
凪「?」
一刀の表情を見ていた凪にはその笑みがどこからくるものなのかが分からなかった。
一方、外野サイド―――
季衣「なんだか兄ちゃん楽しそうだね」
秋蘭「そうだな。しかし、あの状況はどう見ても劣勢だろうに」
流琉「攻撃に転じるきっかけを与えない凪さんがさすがなのでしょう」
真桜「せやで、なんといってもうちらの特攻隊長なんやから」
沙和「凪ちゃぁ~ん!いけいけなの~」
秋蘭「全く、もう少し魏光を応援してやっても良いだろうに・・・」
春蘭「秋蘭!」
黙り込んでいた春蘭がいきなり口を開いた。
秋蘭「?なんだ姉者」
春蘭「あの状況で笑っているあいつは・・・・・・馬鹿なのか?」
秋蘭「いや・・・・・その発想はどうなのだ」
桂花「脳みそが筋肉で出来ている奴はいうことが違うわね」
春蘭「なんだと!?」
稟「馬鹿かどうかはさておき、ある程度の余裕があることは確かですね」
秋蘭「そうだな」
華琳「まぁ、あの顔がただ手合わせを楽しんでいるのか、それとも、何か策があるのかのどちらなのでしょうね」
風「たぶん、どちらもなのでしょう」
華琳「どちらも?」
風「えぇ」
そういうと、皆、試合の方に視線を戻した。
一刀「くっ」
凪「はぁぁあ!」
その後も一刀は凪の攻撃をギリギリでかわし続ける。
試合開始からこれといって一刀は攻撃をさせてもらっていない。しかし、凪の攻撃が当たることもなかった。
凪自身も考えていた、優勢にもかかわらず攻撃すべてを捌ききられていることを。
凪「(・・・・・・・・この方はお強い、私の間合いにいるというのに攻撃があたらない)」
拳闘での近距離は確実に優位に立てている。
しかし、その状況で攻撃があたらないということは相手が強い証拠。その強いはずの相手が攻撃に転じてこないことが凪に違和感と警戒心を生じさせていた。
一刀「うっ」
そう考えていた刹那、凪の怒濤の攻撃を避けていた一刀が、不意なことで少しバランスを崩してしまう。
その一瞬を見逃さず凪は攻撃を続けた。
凪「はぁ」
体勢の崩れたところに凪の回し蹴りが強襲する。
一刀「くっ」
蹴りを避けるために何とか後方へと逃れたが、体勢の悪い状態での回避ではいっそうバランスを崩してしまう。
案の定、その場で膝をついてしまった。
春蘭「終わったか」
真桜「凪の勝ちやな!」
二人が、凪の勝利を確信した。
風「・・・・・それはどうでしょう」
しかし、その言葉を否定するように風が言った。
流琉「風ちゃん?」
秋蘭「それは、まだ終わってはいないということか」
風「さぁ」
風は笑顔のままそう答えた。
隙を逃さず、凪が間合いをつめる。
その凪が攻撃を仕掛けた瞬間だった。
ヒュッ!!
その場に響いたのは空を切り裂く音。
全員「!!」
宙をまっていた木の葉が切り裂かれ、ひらひらと落ちていった。
一刀「ふぅぅ・・・」
凪が突っ込んできた瞬間、一刀の剣の軌道は確実に凪をとらえた・・・・はずだった。
しかし、攻撃を仕掛けたはずの凪は間一髪、後方へと避けていた。
一刀「むぅ・・・よけられるとは思っていなかったんですが」
凪「えぇ、私も普通なら突っ込んでいたはずなのですが、どうしてもあなたの戦い方に違和感を感じていたので」
笑みを浮かべながら、凪は自分の考察を述べた。
一刀「いや、これでも一杯一杯だったんですけどね」
攻撃をかわされたことも含め、一刀は苦笑した。
先ほど、一刀は体勢を崩したのではなく、体勢を崩したかのように見せかけたのだ。
それは、隙を作り相手に自分への決定的な攻撃を仕掛けさせるためだった。
後方へ飛び、膝をついてしまったのも、攻撃を避けることが目的ではなく、居合いをするための姿勢を作るための布石だったのだ。
華琳「全く、戦いに策を入れ込んでくるなんていい度胸ね」
傍観していた華琳は苦笑していた。
季衣「策ですか?」
華琳「ええ、あの攻撃を仕掛けるためにわざと体勢を崩したふりをしたのよ」
季衣「?・・・・なんでですか?」
華琳「・・・・・」
その発言に少しため息をついた。
流琉「季衣、敵に隙が出来たらあなたはそこを攻撃するでしょう」
季衣「そんなの当たり前じゃん、流琉」
流琉「なら、その敵が故意的に隙を作って、そこに攻撃を誘導させていたとしたら?」
季衣「?」
流琉「・・・・・はぁ。そしたら相手がどこに攻撃をしてくるかが分かるじゃない。自分に隙が出来ている場所を自分で作ったわけなんだから」
季衣「なるほど」
稟「あとはそれが予想通りの攻撃ならば、それに対して有効な攻撃をするだけですね」
春蘭&真桜&沙和「(なるほど)」
桂花「あそこにも馬鹿が三人いるわ・・・・」
華琳「(・・・・・・でも、それをするためには凪の攻撃の特徴を知っておく必要があるわ。魏光は、それをあの数分で理解したというの?)」
秋蘭「華琳様」
華琳「えぇ、これは予想以上の人材かもしれないわ」
凪が構えを取り直した。
凪「手を抜いていたわけではないのですが、次は本気でいかせていただきます」
言葉を言い終えると、凪が集中し始めた。
一刀「(凪、氣を使う気だな・・・・)」
異常なほどの闘気の高まりから一刀は肌で感じ取った。
一刀「(・・・・・・・・ホントはさっきのに賭けてたんだけどな。ていうか、どう考えても勝てる手が思い浮かばないな)」
自分の力では凪に勝つことが出来そうにないと悟った。
一刀「(・・・・・・・まぁ、意地だな。ラストは)」
覚悟を決め、一刀も構えを取った。
華琳「・・・・これで決まるわね」
二人の様子を見て、華琳は次の攻防で決着がつくと感じ取った。
凪「・・・・・・」
一刀「・・・・・・」
秋蘭「(・・・動くきっかけがないのだな)」
お互いが静止したまま数秒、
パキッ
その場に木の枝が折れる音が響いた。
ドンッ!!
その音と共に凪が動いた。
しかし、その速さは先ほどまでとはスピードが段違いだった。
一刀「くっ」
紙一重で攻撃をかわしたが、かすった防具には亀裂が入る。
凪「はぁっ!!」
初撃をかわすのが精一杯だった一刀に追撃をかわす余裕はなかった。
バキッ!!
追撃の拳は木刀を粉砕し、一刀の身体を捉えた。
ドゴォ゛!!
一刀「かはっ!」
鈍い音とともに一刀は吹き飛ばされ、壁にうちつけられた。
一刀「ぐっ」
すぐに立ち上がろうとするも、足が振るえ身体がいうことをきかなかった。
一刀「(・・・・・もう無理か)」
そして、膝をついたまま、凪の方を向き、
一刀「ま、参りました」
降参を告げた。
華琳「双方、それまで!!」
華琳の合図で試合の終了を告げた。
試合には負けたが持てる力をすべて出し切った一刀は、苦痛を浮かべながらも満足した表情だった。
一刀「やっぱ・・・・だめだったか」
そして、うれしそうにそう呟いた。
一方、凪はというと―――――
凪「・・・・・・・」
沙和「お疲れ様なの~」
真桜「お疲れさんって、凪どないしたん」
凪の表情が少し悔しそうな表情であることに真桜が気づいた。
凪「今の戦い・・・・・」
真桜「まぁ、光ちんも頑張ったけど、凪の勝ちやな」
凪「・・・・・いや、本当の戦場だったらどうだったか・・・・」
沙和「?」
真桜「どういう意味や?」
言葉の意味が理解できない二人。
そこに、華琳が入ってきた。
華琳「あれが、木刀ではなく真剣だったら――――ということでしょう」
凪「華琳様!」
華琳「たしかに、あの状況で真剣を殴っていたら貴方が危なかったわね」
凪「はい」
その会話を聞いていた二人の頭の上には?が飛び交っていた。
沙和「ぜ、全然何がなんだか分からないの~」
真桜「せやで凪、もうちょい分かるように説明したってや」
凪は先ほどの状況を説明しだした。
凪「最後の一瞬・・・・・私は渾身の一撃を放った。しかし、魏光殿はよけることが出来ないとわかるやいなや、私の拳に木刀を垂直に合わしてきたのだ」
そう言いながら、赤くなった自分の指を見つめる。
真桜「それがどないしたん、凪は木刀を粉砕したやないか」
凪「そう、私は木刀を粉砕したのだ。しかし、もしあれが真剣だったら・・・・」
華琳「あなたの腕が真っ二つになっていたわね」
沙和「でもでも、あれは木刀だったんだから凪ちゃんの勝ちなの~」
凪「それはそうだが・・・・」
秋蘭「そうだぞ、凪」
凪「秋蘭様!?」
華琳「凪、戦場だったらという仮定をもつのはいいことだけれど、今のは殺し合いではなく模擬戦闘なのよ。その模擬戦闘においてあなたの勝ちは間違いないわ」
凪「・・・・・・・・」
華琳「それでも、納得がいかないのであればその悔しさと経験を今後に生かしなさい」
凪「・・・・はい」
納得まではいかないものの、現実を受け止めこの試合を忘れまいと心に刻む。
華琳「みんな、魏光に親衛隊を任せることに依存は?」
さきほどの試合を見たせいか、反対していた桂花ですら異論をあげようとはしなかった。
華琳「ないようね。魏光!」
一刀「は、はい」
痛む身体を引きずりながら華琳の元へと向かう。
こうして、天の身遣い兼種馬は親衛隊隊長へと就任(昇格)したのであった。
・ ・ ・ 雑 談 ・ ・ ・
お、お久しぶりです・・・・
・・・・・・・・・
なんといいますか、
話を書く→読みなおす→気になるところを直す→書き進める→読みなおす→気になるところが再び・・・・
的な感じを繰り返していましたら、こんなに日にちが・・・・・
話自体を書き終えたのは2週間ぐらい前のような(笑
まぁ、なんど読み直しても、おかしなところが見つかるのでもう諦めて投稿したわけです(´Д`)
決して手を抜いたわけではございませんのであしからず(汗
まぁ、蔡文姫さんのお話を、
一刀君に近づいてきた文姫さんですが、その思惑は・・・・・
皆さんがどう感じたかは分からないのですが、
あの方はああいう方なのです。楽しければいい!たぶんこれが彼女の思想なのでしょう(笑
まぁ、文姫さんのことを話しますと彼女もこの話の中ではどこかの外史の管理者・・・でした。
もともと管理者として楽しく過ごしていたのですが、自分の外史が終焉したので今は管理者として過ごすのではなく放浪者のように自由気ままにいろんなところに行っているわけです。
そういう点では、左慈君と干吉君も今は同じような状態です。
左慈君はどうかわかりませんが、干吉君はまじめなのでどこかの外史を管理するために行動をしていたり、いなかったり・・・・・
(私の設定ではありますが)管理者はそんな感じで自分の管理する外史がないときはのびのびとしていられるのです。
そういえば、一刀君が負けてしまいました!!
今まで負けなしだったのに負けてしまうなんて・・・・・
凪さんとの勝負・・・・・本当は一刀君を・・・・・・
当初から勝たせる気なんて全くなかったんで、今回の負け方はかなり良い方でしょう!
最初は少しやりあって「ギブアップ!」ってな感じにしようとしていたときもあったほどです。
それでは、さすがに帰ってきた一刀君の面目がつぶれてしまうので負けたけど善戦した感じにしました。
まぁ、そりゃそうでしょう!
3年で彼女らに追いつけるはずはありません!しかも、もとの世界でなんてもってのほか!
どっかの人みたいに怒りがきっかけで髪が金髪になって強くなったり、額に紋章が出て爆発的に強くなるみたいな主人公的な設定がない限り彼女たちを抜くことは出来ないでしょうハハハ。
・・・・・・
いや、でも彼は主人公ですけどね(笑
そういえば、皆さんオリキャラって好きですか?
私の話にもメインとして李淵君、蒼蓮ちゃん、蔡文姫さんが出てきたのですが大丈夫でしょうか?
今後も少しぐらいは出てくるはずなのですが、
なんだかオリキャラは少ない(いない)方がいい派の友人がいましてね(汗
まぁ、私自身オリキャラをだして、話がこんがらがるのもいやなのでもともとの登場人物主体でいきたいと思っているのですが、皆さんはどうお考えなのかと思いまして、
よかったら、コメでも良いですから皆様のお考えをば、教えてくださいな(`・ω・´)キリッ
それでは、
いつも、支援、コメント、閲覧してくださってる方ありがとうございます!!
それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ
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harutoです。
言い訳は雑談で!!
熱読してもらえれば光栄です^^