No.113096

とある冬のとある雪の日

華詩さん

 雪のマークを天気予報でちらほら見るようになり、とても寒い日が続いています。さてこんな寒い日を彼女達はどのようにして過ごしているのでしょうか。

 なお、今回はイラストレータ如月慎一様の『winters』からインスパイアしてできたお話です。

2009-12-19 17:41:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:993   閲覧ユーザー数:956

「二人とも、寒いでしょう。カーテン閉めてこっちにおいで。」

 

 コタツからガラスドアに引っ付いている弟妹に声をかける。二人はさっきから一生懸命になって外を覗いている。

 

「あとすこし。」

「まだみる。」

 

 そう返事を下だけで二人は見るのを止めようとしない。二人が見ている空を私もコタツからみる。チラチラと雪が舞っている。12月も半ばを過ぎてすっかりと冬らしくなって来た。

 

 今朝は起きたときから雪が降っている。庭の木や石には薄らと積もりはじめていた。たぶんもう少しするとお外で遊んでいい?と言うんだろうな。

 

 そんな事を思っていると玄関のチャイムが鳴った。もしかしてこんな日だけど来たのかな。私が反応するより早く、二人が反応していた。

 

「だれかきた。」

「おにいちゃんだ。」

 

 二人は引っ付いていたガラスドアから離れて玄関にいく。間違いなく彼だと思うけど何もこんな雪の降っている最中じゃなくて止んでからくればいいのに。風邪引いても知らないからと思いつつも、こんな天気でも来てくれた事に嬉しく感じる。

 

 でも、寒い中来てくれたんだし、温かい飲み物でも準備してこようかな。弟妹達の分と自分のも用意しよう。玄関に行くと、彼が肩に乗っていた雪を弟妹に取って渡していた。渡された二人はキャキャと叫びながら楽しんでいた。

 

「いらっしゃい。雪が止んでからでもよかったのに。」

「いいだろ。すごく逢いたかったから。嬉しくない?」

 

 彼はそういってに私の顔をマジマジと見つめる。ときどき、こうやってドキッとさせられる。でも慣れて来たから、今日はカウンター。

 

「ううん、逢いに来てくれて嬉しいよ。寒かったでしょう。熱いお茶入れるから。コタツで待ってて。」

 

 そういって彼の頬を両手で包む。彼の頬はとっても冷たかった。でも彼はあったまったはず。だって頬が赤くなったから。それを確認して頬から手を離すと、彼は弟妹の手を繋いだ。

 

「ありがとう。ほら、寒いからコタツにいくぞ。」

 

 彼はそう言って二人を連れてあがっていく。うん、成功かな。さてと、お茶を入れてこよう。台所にいき、お茶の葉と急須とを戸棚から取り出す。ポットからお湯を急須に注ぎ、温める。四人分の湯のみをとりだし、急須を温めていたお湯を注ぐ。

 

 お茶を準備してリビングに戻ると、三人がガラスドアに引っ付いて雪を見ていた。コタツで待ってていったのにな。

 

「ほら、お茶持って来たよ。おいで。」

 

 声をかけると彼が振り向く。そして二人の手を引いてこっちにやってくる。二人は名残惜しそうに後ろを振り返っている。何だかその姿が可愛くて顔が緩むのを感じた。

 

 コタツの上にお盆をおき、急須から湯のみにお茶をいれる。濃さが一緒になるように少しずつ順番に入れている。弟妹に湯のみを渡そうと隣を見るとそこには彼が座っていた。

 

そして、前を見ると弟妹がちょこんと並んで座っていた。あれ、いつもと違う。いつもだと狭くなるけど私達の間にいるか、どちらかの膝の上に座ろうとするのに。

 

「外が見える場所がいいんだって。」

「そなに雪がきになるのかな。」

「どうなのかな。」

「はい。どうぞ。熱いから気をつけて。」

「おお。」

 

 彼に湯のみを渡す。前に座っている二人には少し小さめの湯のみを渡す。

 

「熱いからね。ふぅーふぅーしながらゆっくり飲むんだよ。」

「「うん。」」

 

 二人は恐る恐る湯のみに触れる。弟は熱かったのかすぐに手を離して耳たぶを掴む。それをみた妹も触っていた湯のみから手を離して同じようにマネをする。熱くなかったらしなくてもいいんだけどな。

 

「それにしても寒いよな。」

「寒気が日本海側から流れて来てるっていってたよ。」

「そっか寒いわけだ。それでさっきから二人は何で外見てたんだ?」

「ふゆしょうぐんをさがしてた。」

「てれびでくるっていってた。」

 

 そう言えばテレビの天気予報でそんなこといってたけな。舞っている雪を見ているとばかり思っていたが、二人は別の物を探していたみたいだ。でもそれは言葉であって目に見える物ではない。なんて説明すればいいのかな。

 

「おにいちゃんはみたことある?」

「ある?どんなの?」

 

 二人ががそういって彼に聞いていた。彼は困った顔をして私を見つめる。えっと私に助けを求められても困るよ。何とかして。そう思って苦笑いをすると彼も苦笑いして何やら考えてこう切り出した。

 

「見た事ないな。どんなだろう。」

 

 期待した眼差しで見ていた二人はがしょんぼりとしていた。どうやら彼の答えはダメだったらしい。それを見た彼が私の手を握る。彼を見るとすごくすまなさそうな顔をしていた。さてどうしよかな、そうだ。

 

「ねぇ、よう君、りょうちゃん、二人は冬将軍がどんな格好していると思うの?」

 

 私が言うと、二人はコタツから出てお絵描き道具を引っ張りだして来た。そしてお絵描き帳を広げようとする。

 

「ちょっと待ってね。湯のみを片付けるね。」

 

 二人の湯のみを自分のところに引寄せてコタツの上のスペースを確保する。そっこにお絵描き帳を置いて弟が描きはじめる。妹はお絵描き帳を膝に抱えて描いているので、何を書いているのかはまだわからない。弟のお絵描き帳には雪だるまが書き込まれていった。

 

「それが冬将軍なの?」

「ちがうよ。これはおとものゆきだるま。ゆきをそふらせる。」

「じゃ、その隣の後ろにいるのか?」

 

 彼がそういって指を指す。そこには人が描かれていて、その周りを葉っぱや雪らしきモノが舞っていた。

 

「ちがうよ、それはともだちのかぜさん。まえにいるのがふゆしょうぐん。」

 

 そういって描かれたのはマントを羽織り、冠をつけた人が描かれていた。

 

「そっかそれが冬将軍なんだ。」

「そうだよ。ぜったいみつける。」

「わたしのはこれ。」

 

 そういって妹はお絵描き帳を私達に見せてくれた。そのお絵描き帳には巨大な雪だるまが描かれていた。

 

「大きな雪だるまだな。」

「じょうず?」

「ああ、上手いな。」

「りょうちゃん、たんさくさいかいだ。」

「うん。」

 

 そう言って二人はまたガラスドアに向かう。もしかしてみつけるまで探すつもりだろうか。そんなことを思っていると彼が湯のみをコタツにおいて私をみる。

 

「さすがだな。」

「なにが。」

「二人への接し方。」

「ううん、お母さんが前に二人にそう言ってたの思い出しただけだよ。」

「そっか。じゃ次があったらがんばるよ。」

 

 彼はそう言って弟妹が空を見上げているのを優しく見つめていた。たぶん彼は次は上手くやれると思う。そして遠い将来にいるはずの私達の子どもにも上手くやってくれるそんな気がした。

 

fin


 
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