注・今回、横島のセリフで口調が変わる部分がありますが、設定上の事なのであらかじめご容赦ください。
『な、何でや…何でや!!』
転校する事を告げると夏子は泣きながら聞き返してきた。
『父ちゃんの仕事の都合やからな、仕方ないねん』
『銀ちゃんがおらんようなって、今度は横島かいな。そんなん嫌や!』
『夏子…』
夏子は横島の両腕を掴み、項垂れて泣きじゃくっていた。
『別に外国に行くわけやあらへんのやからまた何時か会えるて…』
『何時かって何時や!私は…私は、横島と…ずっと……一緒に…』
『夏子?』
『…も、もうええわーーいっ!横島なんか何処へでも行ってまえーー、嫌いやーー!うわああーーーん!』
そう言い夏子は泣きながら走り去って行った。
『嫌いか…何かものごっつ胸が痛い言葉やな』
胸に手をやりながらそう呟いた、閉ざされた記憶の底にあるその言葉に胸を痛めながら。
《忠夫なんか大っ嫌い!》
《誰なんやろな?あの子は》
一人残された横島の目から涙が一筋零れた。
第七話「二人で奏でる天使の鐘」
ある日の放課後、教室で帰り支度をしているとクラスの女子がネリネに話しかけて来た。
「ねえねえ、ネリネちゃん。ネリネちゃんの歌って凄く綺麗なんだって?魔族の友達から聞いたんだけど『天使の鐘』って称されるほどの歌声だって」
「そうなの?私も聞きたいな。ねえ、歌ってみてくれない」
(そういえばあの時公園で聞いた歌はとても綺麗だったな)
稟が近くの公園で歌っていたネリネの歌声を思い出し、周りが騒いでいるとネリネは何故か辛そうな顔をしていた。
「どうかしたのネリネちゃん?」
「い、いえ何でもないんです。すみませんが歌は歌えません」
「えー、どうして?」
「ごめんなさい、歌は…嫌いなんです」
そう言うとネリネは一人で教室を出て行った。
「嫌い…か」(本当に嫌っているような顔じゃなかったな)
「忠夫、ちょっといいか?」
「何だ」
(ネリネの事で話がある)
(ネリネちゃんの?分かった)
稟と横島の二人が教室を出ようとすると、
「おや、二人で何処に行くんだい?はっ、もしかしてめくるめく禁断の世界に」
『キャーーーーー♪』
『めくるめく禁断の大霊界に逝けーーー!!』
「ぐはあっ!!」
ガチャアァァンッ
二人に殴り飛ばされた樹は窓ガラスをぶち破り外へ飛ばされた
「うわああぁぁぁぁぁ」
ベシャッ
「な、なんか聞こえてはいけない効果音が聞こえたような…」
「気のせいだ」
「気にするな」
「まあ、小一時間もすれば再生するのですよ」
「そ、そうなんだ」
「あはは…」
そうして二人が教室を後にすると、
(ねえ、どっちが受け?)
(う~ん、土見くんも捨てがたいけど)
(え~、横島くんだよ)
(む~、悩むっス)
(やはりここはリバシなのですよ)
(あ、それいいね)
(じゃあ両方作るって事でどうですか?)
《異議なし!》
そして男子生徒は教室の隅で震えていた。
『女の子って……』
稟と忠夫は屋上で話をしていた。
「ネリネちゃんが歌っていた?」
「ああ、ネリネとシアが転校してくる前の日だがな家の近くの公園で歌っていた。歌うのが嫌いならあんなに綺麗な歌声は出せないはずだ」
「好きだけど人前で歌えない理由があるって事か」
「おそらくな」
「お前の婚約者だろ、聞いてみたらどうだ?」
「…前にもう一度歌が聴きたいと言った事があるんだがはぐらかされて結局歌ってくれなかったんだ。だから俺でもダメだろう」
「そうか…」
そしてネリネは次の日から学園を休むようになった。
数日後
魔王邸の前ではシアや楓がフォーベシィにネリネの事を聞いていた。
「叔父様、リンちゃんは?」
「ごめんね、まだ具合が良くならないんだよ」
「お見舞いも駄目なんですか」
「…ごめんね」
フォーベシィは少し辛そうな目を伏せて謝った。
「じゃあ、ネリネによろしく。行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
学園に着くと麻弓達がネリネの事を聞いてきた。
「そう、今日も休みなの」
「心配だね」
「ここは一つ俺様が付きっきりで看病を…」
「はいはーい、人界を滅ぼすような危険な発言は控えるように」
麻弓はそう言いながら樹をロープでがんじがらめに括りつけ窓から外へと吊るす。
『あの~、麻弓さん。せめて頭を上に…ああ、頭に血がのぼる』
そんな呟きを無視して窓を閉めると撫子が授業の為にやって来た。
「席に付け、よし全員いるな。授業を始めるぞ」
(何なんだろうな、ネリネちゃんの事ほっとけない気がする)
横島は窓の外を眺めながらそんな事を考えていた。
「お、俺様が…何を……した…」
放課後
「タダくん、帰ろう」
「ゴメン、ちょっと用事が出来た。楓達は先に帰っててくれ」
「用事ですか?…!分かりました、先に帰ってますね」
楓は横島の言う用事の意味に気付いて横島を笑顔で送り出す。
そして自分達とは逆の方向に歩きだした横島に稟は語りかけた。
「忠夫、ネリネを…」
「任せとけ!」
横島もそれに応えて親指を立てて歩き出した。
「分かってたのよね、ヨコシマがこういう人だって事」
そしてタマモは横島に気づかれないように後を付いて行く。
「さてと、何処に居るかな?」
横島はストックしてあった文珠を意識下より取り出し【捜】の文字を刻みこむ。
「え~と、あの丘の上の公園か」
ネリネの居場所を見つけた横島はその丘の上の公園へと歩いて行く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夕陽の中、ネリネは結界を張った公園で一人歌っていた。
「♪~~♪~~♪」
そこに何処からか拍手が聞こえてきた。
「!?」
ネリネが拍手のした方を見てみると、其処には何時の間にか横島が居た。
「やっぱり綺麗な歌声だね」
「横島さま…どうして此処に?人払いの結界を張っていた筈ですが」
「ちょっとした裏技でね」
ネリネが使っていた人払いの結界は人の意識に作用するもので文珠による【捜】には作用しなかったのである。だから文珠に導かれるままに歩いてきた横島は難なく此処に来れたのだ。
「何の御用事でしょう、私は一人で居たいんですが」
「何で歌が嫌い何て言う嘘をつくのかな?」
「嘘じゃありません!私は…」
「嫌いだって言うなら何でわざわざこんな結界まで張って歌うんだよ。嫌いなら歌わなければいいだけだろ」
「…貴方には関係ありません」
「友達が苦しんでいるのにほっとけないじゃないか。それともネリネちゃんにとって俺は友達じゃないのかな?」
何故この人は踏み込んでくるのだろう?
「…この歌は私の物じゃないからです」
「ネリネちゃんの歌じゃない?」
何故私はこの話をするのだろう?
「この歌は、稟さまへの想いは、そして…この命はあの娘の……リコリスの物だからです」
「!!…命が?」
…?何故貴方はそんな悲しそうな顔をするのですか?
「リムちゃんが人工生命体の三号体という話は知っていますね」
「うん」
「二号体は…私のクローンだったんです」
「ネリネ…ちゃんの?」
「はい、人工生命体はある魔法を完成させるために作られた存在です。私は生まれつき強力な魔力を持っていました、でも幼い子供にはその魔力は体を蝕む毒の様なもので私の体は絶えず悲鳴を上げていました。そんな時、人界の技術を取り入れた科学者達は私の体を強化したクローンを作り魔法の研究と並行して私の体の治療の研究を同時にしようとお父様に持ちかけたんです」
「おじさんはその話を」
「受け入れました。そして生まれてきたのがリコリス、私にとっては大事な友達で大事な妹。リムちゃんにとってもたった一人の姉でした、でも科学者達から見れば研究対象でしかありませんでした」
「・・・・・・」
怒っているのでしょうか、横島さまは俯いて手をきつく握りしめています。
「三世界平和宣言のあの日、私もお父様と一緒に参加する筈でしたが私は体調を崩し動ける状態ではなく、私の代わりにリコリスが代役として人界に来たんです。そしてあの娘は出会いました、稟さまに。…魔界に帰って来たリコリスは私に稟さまの事を話してくれて私の名前、nerineの中にrinを見つけてはしゃいでました」
「だから自分の愛称をリンにしたんだ」
「はい、…でもそんなささやかな幸せの時間にも終わりがやってきました」
そう、終わりの時が…
「私の体はとうとう強すぎる魔力に耐えられなくなり、何時死んでもおかしくない状態でしたがリコリスがある提案をしたんです。自分と私との融合を」
「!!ゆ、融合って…じゃあネリネちゃんは…」
コクン
不思議…何で私は稟さまにも話した事がない秘密を話しているのだろう?
「私の命はリコリスの犠牲の上に成り立っているんです。確かにそれしか方法は無かったし、クローンであるリコリスにもあまり寿命が残されていませんでした。でもリコリスとの融合はあの娘から全ての物を奪ってしまった、命も、歌声も…一番大事に、心の中にしまっていた思い出さえも…ううっ……私は知らなかった…リコリスが、あれ程までに稟さまを好きだった事を…ううう…グスッ」
あの頃の私には何も出来なかった、目を覚ました時には全てが終わっていた、そこにはもうリコリスはいなかった。
「そして私はリコリスになろうと思いました。リコリスになって、リコリスの出来なかった事をしようと、でも歌は…楽しそうに歌っていた歌だけは……」
「……でも、それは…間違っているよ。きっとリコリスちゃんは犠牲になったなんて思ってない。リコリスちゃんになろうだなんて…間違っている」
…何を、何を言ってるのだろうこの人は…何も、何も知らないくせに…
「貴方に…貴方なんかに何が解るんですか!!知ったような事を言わないでください!!」
私は彼を思いっきり睨みつけて思いっきり怒鳴った。生まれて初めての事だった。
でも彼は困ったような顔をしていながら右手を前に出した。
その右手が光ったと思ったら手の中に緑色の玉があり、その玉には【開】という文字が刻まれていた。今度はその玉を左手にあるブレスレットの丸い窪みにはめ込むと彼の体が光に包まれていき光が収まると其処には…
「よ、横島さま…その姿は…」
膝裏まである艶やかな黒髪は風になびき、
体は丸みを帯び、その胸も存在を主張し、
背中には薄緑色の一対の翼があり、
その瞳は高位魔族の証である深紅に染まっていた。
『これが今の私の本当の姿』
それは彼の声ではなく、何故か二人の女性の声が重なっているように聞こえた。
「本当の?」
『うん、ネリネちゃんの中にリコリスちゃんが居るように、私の中にも…ルシオラが居る』
「!!横島さまの…中に?」
そして彼は語り始めた。
『私は一度死んでいるの、その私を自らの命と引き換えに助けてくれたのが魔族の女性、ルシオラ』
「・・・・」
『私が居た世界は神魔が争ってるって言ったよね。数ヶ月前にある闘いが起こったの、『魔神大戦』と呼ばれる闘いが』
「魔神大戦…ですか、それはどのような?」
『魔界六魔王の一柱が人界に攻め込んできたの。その名はアシュタロス』
その名前に私は愕然とした。
「ソ、ソロモン七十二柱の一柱。でもそれはただの物語で実在したという記録は何処にも…」
『此処では物語かもしれないけど私達の世界には実在したの。アシュタロスはまず108ある冥界のチャンネルを破壊して最上級神魔を人界に来れなくした。その為アシュタロスとは人間と僅かに人界に残っていた神魔が闘わなくてはならなくなった。そんな中で私は出会った、アシュタロスに作られたルシオラ、ベスパ、パピリオの三姉妹に』
話を聞きながら私はさっきまでの怒りが消えている事に気がついた。
たぶん、彼の瞳から流れる悲しいまでに澄んだ涙を見たから。
『最初は唯の敵同士だった、でもスパイとして彼女達の中に潜り込んで行動を共にしているうちにいつの間にか好きあうようになっていた。だから私は決心した、アシュタロスを倒して彼女達を解放すると。…詳しい経緯は省くけど一旦は奴を退けて暫くの間は平穏な日々が続いた、でも結局闘いは再び始まってしまった。彼女を庇って攻撃を受けた私は霊気構造の殆んどを破壊された、ルシオラはそんな私の失われた霊気構造を自分ので補い、そしてルシオラは消えていった…私の代わりに…』
私と同じ…
『笑い話にもならないわ、助けたつもりが逆に命を奪う結果になったんだから…』
いえ、私なんかよりずっと…
『助ける方法はあった、でもそれには途方もない犠牲が必要で彼女もそれを望まなかった。ルシオラは何よりも夕陽が好きだった、昼と夜の間の一瞬の隙間に見れる幻想的な風景が。……約束…したんだよ…もう一度一緒に見ようって…』
「横島さま…だからあの時…」
『ルシオラの魂は私の中で眠っていた、本当は私の子供として転生するはずだった。でもルシオラから譲り受けた霊気構造に含まれていた魔族因子の暴走で私の体は魔族化を始め崩壊し始めた。知り合いの神族から神族因子を注入する事で事なきを得たけど神・魔・人、それぞれの因子を同時に持つ事で私は三界で唯一の存在『神魔人』になった、これがその姿。そしてルシオラと私の魂も融合してしまい、今生でのルシオラの転生は不可能になった、だから今度会えるのは生まれ変わった来世』
「そうなの…ですか…」
『最初はただ泣いてばかりいた、一人で後悔ばかりしていた、心配してくれてる皆の事なんか考えもしなかった』
「私も、そうでした」
『でも気付いた、ルシオラはそんな事望んでないって、ルシオラが望んでたのは私が私で居ることだって。ねえネリネちゃん、リコリスちゃんもそうだったんじゃない?』
私は雷に打たれた様な気がした。その通りだ、リコリスは…あの娘は…
「リコリス、リコリス…私は…」
私はただ泣いた、瞳からは熱い涙が止めどなく流れていた。
横島さまはそんな私の肩を優しく抱いてくれた。
『もう大丈夫だね』
彼は再び緑色の玉を取りだした、刻まれている文字は【封】そして同じようにブレスレットの窪みにはめ込むと光と共に元の姿に戻っていた。
「横島さま…あの…」
「この事は皆に内緒にしといてね」
「はい、ありがとうございます横島さま。もう迷いません」
「うん、じゃあ俺は先に帰るね」
横島さまは背を向け手を振りながら帰って行った。
あの人はどれだけ悲しかったのだろう。愛する人を失い、その命で生き長らえた事が。
あの人はどれだけ辛かったのだろう。愛する人と会えなくなった事が。
それでもあの人は笑っている。それでもあの人は歩いている、前に向かって。
なら私も笑おう、そして私も歩こう、皆と、あの人と。
いいよね、リコリス。
そう、心の中で思うと何処からか懐かしい声が聞こえて来た。
クスッ、いいよ
「…えっ?」
リンが幸せなら私も幸せなんだから
「あ、ああ、居たんだ、こんな所に、こんなに近くに…」
やっと気付いた?
「ごめんね…ごめんね、リコリス、私」
いいってば、稟くんへの想いは私の想い
だからリンの想いはリンの想い、大事にしなくちゃ
「ありがとう、リコリス」
それより歌おう、久しぶりに!
「うん、歌おう、思いっきり!」
横島が丘の上へと続いている石段を下りていると再びネリネの歌声が聞こえて来た。
~♪』
「ん?」
~~♪~~♪~~♪』
その歌声に耳を傾けているとタマモが抱き付いて来た。
「おつかれさま」
「覗きとは悪趣味だな」
「何言ってるのよ。、それなら美神のシャワーを覗いていたあんたは何なのよ?」
「そ、それは…」
「はいはい、さあ帰りましょ」
タマモは横島の腕にしがみつき、引っ張るように歩いて行く。
(ネリネが元気になったのはいいけど…まずいわね、おそらく…多分…絶対…)
魔王邸
「パパ」
「ああ、聞こえるね」
神王邸
「お父さん!」
「何年ぶりかな」
芙蓉邸
「ネリネ…リコリスお姉ちゃん……」
「綺麗…」
(やったな、忠夫)
その日、久しぶりに鐘は鳴り響いた。
夕陽に染まる街に、二人が奏でる天使の鐘が…
翌日
「お早う、稟くん、みんな」
「ああ、お早う」
「お早う、シアちゃん」
「お早うございます」
「お早う」
「お早う、どうでもいいけど私達はついでっぽいわね」
「あはは…」
そんな風に朝の挨拶を交わしていると後ろから声が聞こえて来た。
「お、お早う、ございます…」
みんなが振り向くと其処にはネリネが申し訳なさそうな顔をして立っていた。
「ネリネちゃんお早う!もう具合はいいの?」
「はい、心配をおかけしてすみません」
「リンちゃーーーーーーーーん!!」
ネリネの顔を見たシアは涙を浮かべながらネリネに抱きついた。
「シ、シアちゃん」
「心配したんだよ、とーーても心配したんだよ」
「御免なさい、もう大丈夫です」
「ネリネ」
プリムラがネリネの服を引っ張る。
「リムちゃん?」
「リコリスお姉ちゃんとの歌、綺麗だった」
「ありがとう、リムちゃん」
ネリネが笑顔でプリムラの頭を撫でていると近づいて来た横島がネリネに挨拶をする。
「お早う、ネリネちゃん」
「はい、おはy・・・・・・・
「ネリネちゃん?」
何やら固まってしまったネリネの顔を横島が覗き込むと…
ボフンッ!!
横島の顔を見たとたん固まっていたネリネだが、覗き込んでいる横島に気付くとすぐに顔は耳まで真っ赤になり頭からは湯気を出していた。
「ピクッ」
と、楓は反応し、
「えっ?」
と、シアは何があったのかと首を傾げ、
「おお」ポンッ
とプリムラは手を撃ち、
「はあ、やっぱり」
と、タマモは溜息を付き、
「なるほどな」
と、稟は状況を理解する。
自分の事は鈍感だが、他人の事には敏感らしい。
「え~と、ネリネちゃん?」
「は、はひっ!おはやうございましゅ!た、忠夫さま///」
「た、忠夫さま?」
ポン
肩を叩かれた横島が振り向いてみると、
「お早う、忠夫ちゃん♪」
満面の笑みを浮かべたフォーベシイとネリネの母親セージが居た。
「お、お早う、おじさん…」
「やだなーー、そんな他人行儀な。さあ、遠慮なくパパとお呼び!」
「じゃあ、私はママで♪」
「……えええーーーー!?」
「…こうなる気がしたのよ」
楓は驚きの声を上げ、タマモは諦めの境地に居た。
「リンちゃん」
「シアちゃん、私…」
ネリネは申し訳なさそうな顔をしていたがシアはにこやかに笑いながら言った。
「それがリンちゃんの気持ちなら私から言う事は何も無いよ。私は応援するよ」
「ありがとう、シアちゃん」
笑顔で手を握り合う二人ではあったが……
(よしっ!!敵(胸)が一人減った!)
ちょっと黒いシアであった。
楓とタマモは、
(ネリネちゃんが元気になったのは嬉しいです)
(ネリネは大切な友達だしダメって訳でもないわ)
(でも)
(でも)
《あの胸だけは敵よ(です)!》
二つの意味での巨大な敵の誕生を恐れていた。
ポン
そんな中、神王は稟の肩を叩きながら言った。
「いや~、お互いにいい後継者ができたな!」
「へ?」
「そうだね、お互いにいい老後が迎えられそうだね」
「な、何じゃそりゃ?」
「おや?忠夫ちゃんはネリネちゃんじゃ不服なのかい」
「そ、そうなんですか忠夫さま?」
ネリネは瞳を潤ませながら横島を見つめている。
「いや、そういう訳じゃなく」
「ちなみにネリネちゃんと結婚すれば魔王の座だけじゃなくこのネリネちゃんの豊満なバストも忠夫ちゃんの物だよ」
「い、いやですわ、お父様ったら…でも、忠夫さまなら///」
「マ、マジッスかっ!?」
横島は憤ったが、
ポン
肩を叩かれ振り向いて見ると
「ちょっと向こうでOHANASIしましょうか?」<●><●>←|あの(・・)眼。
病楓(ヤエデ)が降臨してました。
「カ、カエデサン…」
「さあ、逝きましょう」
「いやーー!堪忍やーー!ただの出来心なんやーー!」
「いいから来なさい」
「稟ーー!助けんかーい!」
横島は病楓とタマモに引きずられながら稟に助けを求めるが、稟はそれに答えずただ胸で十字を切っていた。
「おーぼーえーてーろーよー」
病楓(ヤエデ)とタマモに引きずられた横島は芙蓉邸の扉の向こう側に消えて行った。
「さあ、急がないと遅刻だぞ」
「そ、そっスね……」
「忠夫さまは大丈夫なんですか?」
「大丈夫、多分死なない」
「た、多分って…」
その日、バーベナ学園は紅く染まったという。RRRの血の涙によって…
同時刻、GS世界の横島の部屋では小隆…もとい、小竜姫やおキヌ達の手によって巨乳物のお宝は炎の中へと消えていったといふ。
続く
キャラ設定4
横島忠夫(神魔人形体1)
横島は物語の中での説明通りに三種族の因子を同時に持つ事で三界に唯一の存在、神魔人(しんまじん)になった。外見のイメージとしては単行本36巻リポート6「マイ・フェア・レディ!!」で女性化した時の姿に翼を加えた感じ。今回は魔力封じの宝具の力を一時的に弱めて姿だけを解放した。この状態では女性の言葉遣いになるが中身は横島のままだが、口調だけは女性の物になってしまう。
精神も若干女性寄りになり、女性の体を利用しての覗きやセクハラなどはしようとしない。
ちなみにバストのサイズはネリネ並み。
神魔人形体での女性化にはきちんとした理由があり、決して“乱の趣味”だけが理由ではありません。
ネリネ
魔界の王、フォーベシィの一人娘であり魔界の姫。
生まれついての強力な魔力の為体が弱く、幼い頃よりほぼベットの中で過ごしていた。
自分のクローンであるリコリスとは実の姉妹同然に仲良くしていた。
自分の代わりに人界に行って帰って来た時に稟と遊んだ話を聞いていて、その後彼女との融合の際に稟への想いを知り彼女の代わりに稟を愛する事を決めた。
(ネリネ自身にも稟に対する淡い想いがあったのは確か)
自分より遥かに辛く、苦しい思いをしている横島がそれでも笑い、前に歩こうとしている姿を見て横島を強く想うようになる。
横島への呼び方は「横島さま」→「忠夫さま」(稟へは稟さまのまま)
リコリス
蘇生魔法の研究の為に生み出された人工生命体の二号体でネリネのクローン。
ネリネの代わりに人界に行った際、稟に出会い彼に恋をする。
nerineの名前の中にrinを見つけてネリネの事をリンと呼び、自分の寿命が尽きかけている時遂にネリネの体が限界を超え、自分との融合で彼女の命を救う決心をする。
完全に消えたわけではなく、残留思念の形で今もネリネと共に居る。
フォーベシィ
ネリネの父親で魔界の王。神界の王ユーストマとは子供の頃からの大心友。(誤字にあらず)何よりもネリネが大事でそっけない態度を取られただけでもこの世の終わりのように泣きじゃくる。ネリネの想いが横島に変わっても慌てる事無く横島を後継者として認める。
愛称は「まー坊」個人的には「フォっちゃん」
横島への呼び方は「忠夫ちゃん」
セージはまた今度
《次回予告》
バーベナ名物のクラス対抗祭、我がクラスは喫茶店。
生半可な企画では勝利は掴めない。
でも、心配は御無用。何故なら我がクラスには天使が居る。
そう、「天使」が…これが勝利の鍵だ!
次回・第七話「二人の天使が舞い降りる」
こらー、そこの二人!逃げても無駄なのですよ!
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何でもGS美神のパチスロがあるそうで。
やってみたいな。
それとアシュタロス編のアニメ化希望!
何故やってくれないんだろう?
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