第20話 ~砂の国の少女~
<カッカラ王国>
姫花(ひめか)「あっ………つ~~~~~い!!!」
程塚(ほどづか)「ははっ…言うと思った…」
遊太「いや、これは確かに…
溶けてスライムになるレベルっすよ…」
名由多(なゆた)「…夏場の野球部の練習よりキツいかも…」
ポポイ「ったく かわい子ちゃんはともかく、
男どもまでだらしねーなー!」
プリム「まあ、この子達のいた世界とは気候が違うから」
ランディ「あはは…じゃあ王様の所に行って話をする前に
どこかのお店で 少し休憩しようか」
<カッカラ王国・食堂「夜明けの三日月亭」>
ギイッ
店主「おっ いらっしゃい」
ランディ「すみません、なるべく涼しい席でお願いできますか」
店主「あはは、お連れさん大分お疲れですねえ。
じゃあ、一番奥の席にどうぞ。今、お冷もってきますから」
姫花「あ、ありがと……ございます……;;」
ガタン
プリム「なかなかいい雰囲気のお店じゃない?
…って、そんなとこ見てる余裕ないかw」
名由多「の……のど渇いた…」
倒れこむように座った一行のテーブルに
砂漠の太陽のような赤い髪をなびかせた、
小さな可愛らしいウェイトレスが 水を運んでくる。
少女「おまたせしました~ お冷でーす!」
名由多「あ、ありが……」
…ジーッ
少女「??」
名由多「…………」
少女「なぁに?」
程塚「名由多君?」
名由多「……あっ、ううん!?お、お水ありがとっ…!」
ゴクゴクッ
遊太「ぷは~っ 生き返るゥゥ!!」
姫花「オヤジか、あんたは…」
少女「ごちゅーもん、お決まりですか~?」
ランディ「えっとじゃあ飲み物と、
何かオススメの 軽く食べられるものを」
少女「かしこまりましたぁ~!」
トタトタ
少女「おじさぁ~ん、オーダー入りましたー!」
店主「リリィ、いつも言ってるだろう?
仕事中は『マスター』」
少女「あっ…えへへへっ♪」
ジーーーッ
程塚(…名由多君…)
姫花「ランディ、ここの王様とも顔見知りなんだっけ?」
ランディ「うん。それに先にジェマが
伝書鳥を飛ばして 事情を説明してくれてるから
スムーズに話が進むはずだよ」
ポポイ「それにオイラ達、
この国の干上がったオアシスを 元に戻してるからな!
オイラ達の頼みごとだったら ぜってー断れねーのさ!」
遊太「その言い方だと何か 弱味握ってるみたいじゃね?w」
姫花「へ~ ホントに世界中に知り合いがいるんだね~」
トタトタ
少女「おまたせしましたぁ!
フルーツジュースと マスターの気まぐれサラダでーす!」
名由多「あっ……あ、ありがと…」
プリム「わ~このサラダ美味しそ!」
少女「えへへ、オススメですよー♪」
パクッ
姫花「…!?お、おいしっ!?」
少女「えへ、マスターとくせーのドレッシングが決め手なんです!
ほかのお客さんにも ひょうばんなんですよ~?」
ポポイ「こりゃうめー!おかわりほしーぞ、おかわり!」
遊太「ちょ、食べるのはやっ!?」
…ジーッ
少女「??」
名由多「……!あっ、ごごごめんっ…!」
慌てて目をそらした名由多の隣に、少女はごく自然に腰をおろす。
少女「ねえねえ!おなまえ なんてゆーの??」
ストン
名由多「えっ!?え、えっと…
名由多 耀助(なゆた ようすけ)」
少女「ヨースケくん??じゃあ、ヨーくんだねっ!」
名由多「よ、ヨーくん!?」
少女「リリィはね、リリィ!9さい!ヨーくん、いくつ?」
名由多「えっと…10歳」
少女「あ~リリィよりお兄さんだ!
でもリリィだって、もうすぐ10さいになるんだよ?」
名由多「そ、そうなんだ…」
リリィ「ねえこの人たち、みーんなヨーくんのおともだち??」
名由多「あ、うん…」
リリィ「すご~い、おともだちいっぱいだねっ!
ねえねえリリィとも おともだちになって!!」
名由多「え、えっ!?え、えと、あの、そのっ…///」
スタスタ
店主「こーらリリィ。お客さん達の邪魔しちゃダメだろう?」
リリィ「え~なんでぇ、マスター!」
ランディ「あはは、僕らは構いませんよ」
程塚「そうそう、名由多君も嬉しそうだしw」
名由多「えええっ!?な、ななななんでっ…!?」
リリィ「ねえねえマスター!
ちょっとヨーくんと あそんできてもいーい?」
名由多「えっ…!?」
店主「こらこら、またそんな勝手に…」
姫花「…名由多君、行ってきたら?
あたし達は もうちょっと休みたいし」
名由多「!?で、でも…」
ポポイ「オイラはこのサラダ、あと2皿食いたいし!」
遊太「2皿も食うんかい!!」
リリィ「おねーちゃんたちは いいって!
ねえマスター、いいでしょ~!?」
チラッ
店主「…いいんですか?」
ランディ「大丈夫ですよ。急ぐわけでもないですし」
店主「仕方ないなあ。
まあ、今は他にお客さんもいないから いいけれど…
すぐに戻るんだぞ?」
リリィ「わぁい、マスターありがと~!
じゃあヨーくん、いこっ!」
急に手を握られ、名由多は慌てふためく。
名由多(!!わっ、わわわっ…///)
リリィ「ほらぁ、はやくはやくっ!」
名由多「ちょ、ちょちょっと待って…!!」
トタトタトタッ ギィッ トタトタ
姫花「あははっ、名由多君ってば
真っ赤になっちゃって、かわい~w」
程塚「ったく、わかり易い奴だな…」
プリム「一目惚れってやつかしらねw」
ランディ「あはは、可愛い子だったもんね」
ポポイ「ん?何の話だ?」
遊太「ポポイはお子様っすなあ…」
店主「すみませんねえ…
オアシスが干からびた時に、
この国からどんどん人が出ていったせいで
あの子と同い年くらいの子が ほとんどいないものですから」
プリム「そっか。それであんなに懐いてたのね」
店主「ええ…
それにあの子、両親がいないんですよ」
プリム「えっ!?」
店主「数年前に母親と2人で この国に流れ着いてきたんですが
無理をして砂漠を渡ってきたせいか、
すぐに母親は亡くなってしまって…
父親はよくわかりませんが、元々いなかったらしくて」
姫花「…そんな風に全然みえないよね…」
遊太「だよねえ、滅茶苦茶明るい子なのに」
店主「あの子なりに 周りに気を遣ってるのでしょう…
それからずっと 私が引き取って面倒を見てるんですが
表に出さないだけで、本当は寂しいのかもしれません」
ランディ「……」
店主「…おっと!すみません、変な話をしてしまって。
どうぞごゆっくり」
スタスタ
プリム「…強い子なのね」
姫花「うん。まだ あんなちっちゃいのにね…」
ポポイ「あ、おーいおっちゃん!サラダのお代わりなー!」
遊太「いやちょっとは空気読もうよ!?」
ランディ(……両親がいない、か…)
<カッカラ王国・オアシスの側>
タタタタタッ
リリィ「あーもう、またまけた~!」
名由多「はあはあ…リ、リリィちゃん ちょっと休憩しない?」
リリィ「ねえねえヨーくんって なんでそんな走るのはやいの~?」
名由多「あ、それは…野球部で鍛えてるからかな」
リリィ「やきゅーぶ??なぁにそれ?」
名由多「えっと、何て言えばいいかなあ…あ、こんな感じの」
名由多は目についた木の実と、木の棒を拾いあげる。
名由多「こんな丸いボールみたいなのを
こういう棒みたいので 打ったりするんだ」
リリィ「えーなにそれ!?おもしろそー!!
ねえねえ、ヨーくん ちょっとやってみせて!!」
名由多「え!?い、今!?」
ヒョイ
リリィ「この木の実、なげたらいーのー?」
名由多「あ、うん…じゃあ、投げてみて」
リリィ「よぉ~し、いっくよ~??」
ポーイ パッカン!
リリィ「わー!すごいすっごい、ヨーくんカッコいー!!」
名由多「えっ…!?か、カッコいいかな…///」
リリィ「やきゅーぶたのしそー!リリィにも できるかなぁ?」
名由多「うん、きっと出来るよ。
今度パパか誰かと 一緒にやってみたら?」
リリィ「……」
名由多「?リリィちゃん?」
リリィ「あっ、リリィね。パパもママもいないんだ」
名由多「えっ!?そ、そうなの!!?」
リリィ「うん。リリィがちっちゃいときに ママしんじゃって。
パパはもっとちっちゃいときに どっかいっちゃったんだ」
名由多「…ご、ごめんっ!!」
リリィ「?なんでヨーくんあやまるの??」
名由多「だ、だって…悲しいこと思い出させちゃって…」
リリィ「ううん、リリィさみしくないよ?
おじさん すっごくやさしいし、それに今は…」
キュッ
名由多(あっ…)
リリィ「ヨーくんもいるし!えへへへっ♪」
名由多「(ドキン)……リリィちゃん…」
グイッ
リリィ「ねえねえヨーくん!町からでて ちょっといったとこにね、
リリィのひみつのばしょあるの!
あっまくておいしい くだものなってるんだ~!」
名由多「そ、そうなんだ」
リリィ「うん、だれにもナイショなんだけどね~
ヨーくんにだけ おしえたげる!」
名由多「あ、でも…お店のおじさん、早く帰ってきなさいって」
リリィ「だいじょーぶだよ!
夜になるまで、お店いっつもヒマなんだもん!
ねえほら、はやくいこー!!」
グイグイッ
名由多「…う、うん!じゃあ行こ!」
トタトタトタッ
<カッカラ王国・アムール3世の家>
ポポイ「いや~マジであのサラダ美味かったな!」
遊太「いやポポイ、5皿は食いすぎ…」
姫花「名由多君ってば、全然帰ってこないから
先に王様のとこ来ちゃったけど…大丈夫かなあ?」
程塚「店主さんに伝言頼んできたし、問題ないだろ。
せっかくのデートを 邪魔するのもヤボだしなw」
ランディ「え、もう調べ始めてくださってるんですか!?」
アムール3世「うむ、ジェマ殿からの手紙に
詳しく書いてあったからの。
ただ異世界についてはともかく、
剣の方は 実物を見せてもらいたかったんじゃが」
プリム「すみません、今本人が外してて…」
ポポイ「その辺に少年クンがいないか
もっかい見てきたらいーんじゃねーの?
ちっさい国なんだしさ、すぐ探せそうじゃん」
アムール3世「ち、ちっさくて悪かったのお!?」
姫花「ぽ、ポポイってば失礼すぎるからぁ!」
ランディ「そうだね。そろそろ戻ってきてるかもしれないし」
ザワザワ ザワザワッ
程塚「ん?何か、外が騒がしくねえか」
ランディ「!!あ、あれは…!」
(続く)
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※全90話程度。オリキャラ・独自設定多数。
聖剣2の世界観・キャラを使った、オリジナルストーリーに近いです。
聖剣シリーズ以外の要素も、度々登場します。
※pixivにて完結済の、同タイトルの作品の再掲です(ごく一部に修正点あり)。
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