No.112682

真・恋姫無双~魏・外史伝60

 こんばんわ、アンドレカンドレです。
12月も中旬、もうじきクリスマス、大晦日、新年と忙しい
時期になりました。そんな中、今回で魏・外史伝60!
とうとう残す所、あと最終章のみとなりました・・・!
果たして、一体どのような結末になるのやら・・・。それはさておき、今回第二十五章・後編!今まで謎になっていた事などが明らかになりつつあるこの章。はたして一刀と瓜二つの男は何者なのか?華琳は?外史喰らいの目的とは!

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2009-12-17 02:05:25 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:4572   閲覧ユーザー数:3900

第二十五章~抗う者達の賛歌・後編~

 

 

 

  一刀が外史喰らいの中枢でフードの男と対峙していた頃、泰山の麓の城塞前では・・・。

  「な、なんだ・・・、これは?」

  目の前の出来事が理解出来ず、その場に立ち尽くす。自分達が戦っていた外史喰らいの傀儡兵

 全員が一斉に動きを止め、糸が切れた操り人形の様にその場に崩れ倒れたのである。

  「春蘭!」

  呆然としていた春蘭の元に、そこに愛紗と雪蓮が駆け付けて来る。

  「おう、お前達か・・・」

  「一体これはどうなっている?どうしてこ奴等は突然倒れたのだ」

  「私に聞くな!こっちが聞きたいくらいだ!」

  愛紗に尋ねられ、春蘭は逆切れして答える。

  「「・・・・・・」」

  倒れた傀儡兵の体に恐る恐る指で突く季衣と鈴々。何度も突いてみたが、傀儡兵は何の反応も

 示さなかった。

  「こいつら、急に動かなくなったのだ」

  「死んじゃったのかな・・・?」

  互いに顔を見やる二人。

  「もしかして、華琳様と兄様が・・・?」

  流琉は顔をあげ、秋蘭に尋ねる。

  「・・・うむ、恐らくはそうなのだろうな」

  「じゃあ・・・、沙和達が勝ったの!?」

  「隊長がやってくれたんか!?」

  「あぁ、きっとそうに違いない・・・!」

  「「「「「「わぁぁあああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」」」」」」

  勝利の歓喜が湧きあがる。魏軍、蜀軍、呉軍が入り混じって、自分達の勝利を喜び合う。

 やっと平和を取り戻す事が出来たのだと、信じて疑わなかった・・・。

  

  ピシ・・・、パリィ――――――ンッ!!!

  

  勝利の歓喜に水を差すように、鏡の割れた音が周囲に響き渡る。そして彼女達の上にキラキラと光る

 ものが降って来た・・・。そして、一人が上を見上げ、他の者達も上を見上げた・・・。

  「・・・っ!な、何やあれ・・・!?」

  霞が上を見上げた瞬間、全身が震える程に驚愕する。それは上を見上げ、それ目撃した者達も

 同様な反応を示した・・・。

  「愛紗ちゃん!」

  「桃香様!」

  「姉様!」

  「蓮華!」

  愛紗と雪蓮の元に、桃香達と蓮華達が駆け付ける。そして一緒に上を見上げ、その異常な事態を目撃する。

 見上げれば、そこには広大に広がる青空・・・。だが、その中央に大きく不自然に出来た穴。まるでガラス

 が割れた様に穴はいびつで、所々からひびが外へと広がっている。穴の向こうには白、黒、赤、青、緑、

 黄色・・・多様な色が入り混じる不思議な空間が覗いている。先程、彼女達の上に落ちてきたもの

 ・・・さしずめ、割れた空の破片とも言うべきだろうか・・・。

 

  ピシ・・・、パリィ――――――ンッ!!!

 

  そして今また空が割れ、新たな穴が生まれる。

  「この世界に何が起きているのだ・・・?」

  その異常な現象から目が離せない愛紗。

  「まさか・・・・・・」 

  一人、蓮華はこの現象に思い当たる節があった・・・。

  「蓮華、あなた・・・知っているの?」

  雪蓮は横の蓮華に尋ねようとした。

  「どぉおやら・・・、始まっちゃったみたいねぇ~」

  何処からともなく現れた貂蝉が癖のある口調で話に入り込んで来る。

  「貂蝉、何が始まったと言うのだ・・・!?」

  春蘭は何かを知っている貂蝉に聞く。

  「・・・外史の削除です」

  春蘭に質問にまた何処からともなく現れた干吉が、それに答える。

  「・・・っ!?ど、どういうことだ!!それは・・・、華琳様と北郷が止めたのではなかったのか!?」

  「・・・・・・どうやら、事態は私達が思っていた以上に複雑なものであったようです」

  「それって、どういう事なのですか?」

  眉をひそめながら、桃香は干吉に尋ねる。

  「それを確かめに、これから皆で行ってみない?」

  と、話をはぐらかす様に彼女達を催促する貂蝉。

  「行くって、どこに・・・?」

  雪蓮は貂蝉に尋ね返す。

  「一刀ちゃん達がいる場所に決まっているでしょ?」

  「そ、それはまさか・・・!」

  貂蝉の言葉から何処の事か理解する春蘭。

  「えぇ、外史喰らいの中枢へ、ですよ・・・」

  干吉はその行き先を答えた・・・。

 

  「・・・・・・・・・」

  「・・・・・・ふふっ」

  最初の邂逅から久しぶりに対峙する二人。しかし、互いにその素性を知るのは今回が初めてとなった。

  「お前は・・・、誰だ?」

  一刀は目の前の男に何者かを聞く。自分と同じ顔を持ったその男に・・・。

  「僕に名前は無い・・・、南華老仙は僕達に『並行外史管理調整システム』、通称『外史喰らい』と名付けたけど・・・凡そ名前とは言えないよね」

  男は余裕の顔で答える。

  「な、何・・・!?外史喰らいはあの娘じゃなく・・・、お前だったのか!!」

  「何を言っているのさ、言っただろう?『僕達』って、さ・・・」

  「・・・?」

  男の言っている事が分からず、困惑する一刀。

  ブワァ―――ッ!!!

  「・・・っ!?」

  ドガァッ!!!

  動揺していた一刀の隙を突く様に、男はすごい速さで一刀に近づくと顔に拳打を叩き込む。

  「がっ!?」

  顔面に拳打をまともに喰らってしまった一刀は後ろにたじろぐ。

  ガシッ!

  男は一刀の胸倉を掴み、一刀が後ろに倒れない様に支える。

  ドガァッ!!!

  「ぼふぅっ!?」

  ドガァッ!!!

  「ぐっ!」

  そして男は一刀の下腹部に膝を叩き込むと、そのままもう一度顔面に、今度は肘を叩き込んだ。

  「・・・だぁっ!」

  ブゥオンッ!!!

  一刀は胸倉を掴まれながらも、手から離さなかった刃を男に振り下ろす。しかし、男はそれを察知すると

 胸倉を離し、一刀から距離を取った。

  「く・・・」

  一刀は口元から流れた血を手の甲で拭う。

  「そうだった・・・。君は剣士だったよね?ならこっちもそれに合わせよう」

  男がそう言うと、足元のさらに下から凄まじい速さで上がってくる。そして男の足元から飛び出し、男の手前で

 止まる。それは男の体を隠してしまう程の両刃の巨大な剣。男はその剣の柄を手に取り、片手で軽々と振り回し、

 剣が手になじむのを確かめる。

  「さぁ・・・、真剣勝負、開始だ!」

  「・・・・・・っ!」

  互いに剣を取り、構える二人。一刀は分からぬまま、男と戦う事となった。

 

  その頃、華琳と少女は・・・。

  「外史の削除が開始した・・・?」

  「彼が・・・、もう一人の私が、私に何も言わないで勝手に開始したの・・・。こんな事、今まで無かった」

  光る円盤上で華琳は少女の話を聞いていた。

  「ねぇ、その前に・・・一ついいかしら?『もう一人の私』って・・・それはどう言う事なのかしら?」

  「私達は、元々はこのシステムの中枢として外史の管理を担ってきた。最初は一つだった私達は、いつしか

  分離して・・・、それぞれ別の『個』を手に入れた」

  「どうしてそんな事が起こったの?」

  「・・・多分、心を持ったから」

  「え・・・?」

  「彼が、心を持ったから・・・。彼は私から分離したのだと、思う」

  「・・・一つであった存在が二つ別の心・・・つまり、人格を形成した結果、分離したと言う事ね」

  「・・・でも、彼は次第に一人でシステムを管理するようになった。外史の情報から、伏義、女渦、祝融を

  作って、進んで外史を削除するようになった・・・」

  「何ですって・・・?あなたはそれに関わっていないの?」

  「私は・・・、母親として、彼等の体を修復したり、無双玉を作ったりしていました・・・」

  「は、母親・・・?」

  「もう一人の私が、そう言っていました・・・」

  「・・・なら、あなたは・・・もう一人の自分に言われるがままに、その行いに協力をしていたと言うの?」

  「それが正しい事だって・・・、それが、自分達のためになるって・・・」

  「自分達のため・・・ね」

 

  ガッゴォオオオッ!!!

  「ぐぅ・・・!はぁあああっ!!!」

  ブウォンッ!!!

  「ふぅっ!」

  ガギィイイイッ!!! 

  「う・・・!?」

  一刀は放った横薙ぎを受け流され、上半身が前にのめり込む。男は右足を高く上げ、そのまま前のめりとなった

 一刀の背中へと振り下ろす。

  ドガァアアアッ!!!

  「が・・・、ぁはあっ!」

  一刀は背中に振り下ろされた男の右足によって、そのままうつ伏せに踏み倒される。そして男は容赦なく、

 一刀の背中を踏み続ける。起き上がろうとするが、男の全体重をかけた右足をどかす事が出来ない。

 だが、突然背中に掛かっていた圧が消える。一刀は右足をどけ、起き上がろうとしていたため、急に圧がなく

 なった事から体が浮き立ち、一刀の体と地面の間に隙間が生じる。

  ドガァアアアッ!!!

  「ぐふ・・・っ!」

  その隙間につま先を入れる様に、男は一刀の横腹に左足を叩き込む。蹴られた一刀の体は地面を二回三回転がる。

  「・・・くそ、ならっ!」

  一刀は立ち上がると、刃を両手で握り、そして地面を蹴った瞬間、一刀の姿が消える。

  ブワァッ!!!

  ザシュッ!!!

  「ぬぐ・・・っ!?」

  ザシュッ!!!

  「が・・・ぁ!」

  ザシュッ!!!ザシュッ!!!ザシュッ!!!

  複数の斬撃が多方面から襲いかかり、男は無防御のままその身を刻まれていく。

   「でぃやあああッ!!!」

   ザシュウウウウウウッ!!!

   そして最後と言わんばかりの一刀の渾身の一撃が男の体を切り上げ、宙に舞い上げる。

  「成程、伏義の技か・・・」

  そして男は受け身を取ることも出来ず、そのまま地面に落ちる。

  「う、うぅうあああ・・・!?」

  最後の攻撃を終え、再び姿を現した一刀。だが、突然の痛みにその場で片膝をつくと、左手で自分の左頬を

 触る。同化の進行がすでに左頬にまで達しているのが、手の感覚で分かった。

  一方、横に倒れていた男はゆっくりと立ち上がると、空間内に存在していた黒い文字達が男の体に纏わり

 そして体に取り込まれていく。すると、一刀の斬撃で負った傷と破れた服が一瞬にして元通りになってしまった。

  「・・・一刀。早く何とかしないと、君の外史は僕達が消してしまうよ?」

  「・・・う、ぅ・・・」

  全身を襲う激痛に顔を歪め、脂汗を流しながらも立ち上がる一刀。

  「・・・何だ、ここは!?」

  「ここが外史喰らいの中枢なのか・・・!」

  「何だか、居心地が悪い場所やなぁ・・・」

  と、そこに何処からともなくその場に現れる春蘭達。突然変わった空間の雰囲気多くの兵士達が困惑していた。

  「あっ!兄ちゃんだ!!」

  柱の間から一刀の姿を見つけた季衣。大きく手を振りながら一刀に近付いていく。

  「おーーーい!兄ちゃーーーん・・・、ってあれ?」

  季衣は一刀に大きく上げていた手が止まる。そしてその後ろから流琉と鈴々がついて来た。

  「兄様が・・・、二人?」

  「んにゃ?・・・ほ、ほんとうに二人いるのだ!どうなっているのだ!?」

  一刀と男の顔を交互に見る二人。そんな三人に気がついた男は、軽く溜息をついた。

  「これはまた随分とたくさんのお客さんが来たか。呼んでもいないというのに・・・」

  「隊長・・・っ!?」

  「・・・って、でぇえええ!?隊長が二人おるぅっ!?」

  「ど、どっちが隊長なのぉ!?」

  凪、真桜、沙和・・・そして次々とその場に現れる。

  「な、何と・・・!?」

  「北郷さんが・・・二人いる!?」

  「ちょっと・・・!何で一刀が二人もいるのよ!?」

  「い、一体・・・どういう事なのでしょう!」

  そして誰しもが一刀と男の姿を見て、それぞれに驚きを隠せない。

  「一刀、あなたも兄弟がたくさんいるみたいね?」

  と、軽口を叩きながら一刀に声をかける雪蓮。

  「前にも言ったけれど、俺に兄弟はいない」

  一刀は横目に雪蓮を見ながらそう答える。

  「成程、そういう事でしたか」

  「あらあらぁ・・・、これはまた斜め上な展開になっているみたいねぇ~」

  「干吉・・・貂蝉。お前達が皆を連れて来たのか?」

  「こんなに連れて来るつもりは無かったのですが・・・ね」

  「そうか。それより、一体何がどうなっているんだ?」

  「どうやら外史喰らいの中枢は、二つの人格を形成していたようです」

  「2つ?・・・そういう事か」

   干吉の言葉でようやく全てを理解する一刀。

  「ところで一刀ちゃん?さっきから、曹操ちゃんの姿が見えないけどぉ、彼女どうしたのかしら?」

  貂蝉の言葉に反応し、辺りを見渡す春蘭。何処を探しても華琳の姿が無いのに気付く。

  「・・・そ、そう言えば!おい北郷、華琳様は何処におるのだ!!」

  そして、一刀に問いただす。

  「あそこに・・・」

  そう言うと、一刀は人差し指で頭上はるか上に浮かぶ光る円盤をさす。

  「あそこに華琳様はおられるのだな!?」

  春蘭の言葉に一刀は縦に頷く。

  「ふむ、しかしそれ以上にあの男は・・・一体どういう事なのだ?」

  「悪い、秋蘭。俺もよく分からないんだ・・・。どうして外史喰らいの中枢のあいつが俺と同じ顔をしているのか」

  「・・・恐らく、あの者は今までに削除した『北郷一刀』の情報を取り込んでいるのでしょう」

  干吉が一刀達の疑問に答える。

  「さすが干吉、物分かりが早い。君の言う通りだ」

  と、干吉の答えを肯定する男。

  「だとするならば、中々に悪趣味な性格をしておるのだな。外史喰らいというものは」

  話を聞いていた星は男に向かって嫌味を口にする。

  「大方、その顔で我々の戦意を削ごうという魂胆なのだろう」

  そう言って、男を睨みつける思春。しかし、男はそう言われ、考え込み始めると

 何かを思いついたように一人で納得する。

  「・・・成程、確かにこの顔にはそんな使い道もあるかもしれない」

  男はそう答える。その表情は本当の事を言っている顔であった。

  「その様子だと、お主の思惑は別にあるようだな。一体、何を企んでおるのだ?」

  秋蘭は試しに男にその思惑を聞いてみた・・・。

 

  「一刀に、なり替わる・・・?」

  少女の言葉をオウム返しのように尋ね返す華琳。

  「・・・彼は、この平行外史の突端、北郷一刀になり替わろうとしている」

  「一体何のために?」

  「このまま、『本家』の北郷一刀を全て削除すれば、全ての平行外史は無へと還元してしまう・・・」

  「それがあなた達の目的なのではないのかしら」

  だが、少女は首を横に振る。

  「私も、最初はそう思っていた。でも、彼はそれ以上の事を考えていた・・・」

   ――――――

  「俺になり替わって、お前はどうする気なんだ!?」

  一刀は、男に自分と取って代わろうとする理由を聞くと、男はにやっと笑った。

  「・・・外史の過飽和化を引き起こす」

  「何だって!?」

  外史の過飽和化・・・外史の数がその空間に存在できる許容限界数を超えた時に起こる現象。

  以前、干吉が言っていた事を一刀は思い出す。男の口からそれを聞いた時、一刀と、そして干吉も驚いた。

  「馬鹿な!その過飽和化を未然に防ぐために作られたあなたがそんな事をすれば正史と外史は・・・!

  成程、そういう事ですか」

  そして一人納得し、眼鏡を掛け直す干吉。

  「干吉、一体どういう事なんだ!?」

   ――――――

  「外史の過飽和が進み、空間の許容を超えて外へ溢れ出てしまえば、正史と外史の境界が崩壊する。

  境界が崩壊した場合、2つ世界が同次元に存在することとなり、外史は『定義』から外れてしまう・・・」

  少女は外史の過飽和化によって何が起きるのかを華琳に説明する。

  「そうなると、今度は何が起きるのかしら?」

  「外史は『正史の中で発生した人の想念によって観念的に作られた世界』、正史無くして外史は存在できない。

  けれど、それは正史が上位の、外史が下位の次元に存在するからこそ、この『定義』は成り立つ。

  だから、2つの世界が同じ次元に存在することは許されない。もし『定義』から完全に外れたとき、

  外史は創造されず、人々から忘却される。忘却された外史は縮小し、最悪の場合、誰からも忘れ去られ

  外史は消滅してしまう。だけど・・・」

   ――――――

  「だけど、境界が崩壊した瞬間、僕達は初めて正史に干渉することが出来る。それがどういうことか。

  君に分かるかな、一刀?」

  干吉に代わって、男が一刀の疑問に答えていた。

  「この外史から生まれたお前が正史を支配しようって、そういう事なのか!!」

  「その通り。ここまで言えば、君でも理解できるようだ。

  正史の人間達に干渉し想念を支配する。正史の愚かな人間達は僕の都合の良い外史を創造してくれる、

  良き協力者になるんだ。そうなれば、もう『定義』など何の意味を成さない!

  でもそのためには、『本家』の北郷一刀全員をどうしても削除する必要があった。

  その理由は言わなくても分かるよね?」

  「そのために・・・、他の外史の俺達を、南華老仙を!!」

  一刀の拳がふるふると震わせながら、男に今にも噛みつかんとする程に問い詰める。

  「如何にも!そして僕が、『北郷一刀』が新たな『世界』を創造するんだ!」

   ――――――

  「成程。けれど、果たして正史の人間達をそう上手く黙らせることができるのかしら?

  そもそも、すでにいくつかの外史は消滅しているのだから、正史の人間達もそれに気が付いているはずでしょうに」

  そこにあったはずのものが消えているのだから、誰かがそれに気づいていてもいいはず。華琳は誰もが

 思うような事を少女に聞いた。

  「外史を削除したとしても、正史の人間達の記憶までは削除できない・・・。けれど、実際には

  削除されている。外史と記憶の繋がりは消え、記憶の中の外史は形骸化する・・・」

  「成程、人の記憶は曖昧なもの。だから突然外史が消滅したとしても、曖昧さが緩衝材となって、正史の

  人間達は覚えのないうちにその外史を記憶の中から消している、という事ね」

  「けれど、その前に再構築した外史と正史の人間達の記憶と再び結びつけば、

  正史の人間達はそれを本来の外史だと再認識する。そして表面上は、今までと何一つ変わらず

  正史の人間達はそこから新たに外史を創る。彼に想念を支配されていることに気づかないまま、

  自分達の意志で外史を創造していると錯覚したまま・・・」

  少女の話を聞くことでようやく事の全貌が見えてきた。しかし、そこでまた一つの疑問が

  華琳の中に生まれる。

  「あなたの話を聞くと、外史を消滅させる必要はなかったのではないかしら?今まで話から考えると、

  あまり効率が良いとは思えないのだけれど、突端である北郷一刀を殺害してそこに自分が入れ替わる。

  それでは駄目なのかしら?」

   ――――――

  一刀は華琳と同じ疑問を抱き、それを男に突き付ける。すると、男は目を瞑りうんうんと頷く。

  「勿論、それも可能だ・・・。でもその前に、僕達は力を手に入れる必要があった。それを成す為に

  必要な力が、ね」

  「だから、伏義達を使って外史を削除したのか!外史の情報を手に入れるために!」

  「それが一番手っ取り早いからね。『分家』でも良いけれど、『本家』の外史を削除すれば、たくさんの情報を手に

  入れる事が出来る。正史に干渉するには膨大な情報量が必要だからね」

   ――――――

  少女の説明を聞いた華琳、しかしその説明でどうしても腑に落ちない事があった。

  「でも・・・一つ府に落ちない点があるわ。あなた達の能力を考えれば、もっと効率良く削除できたはずでしょうに」

  「どういう意味ですか・・・?」

  少女は華琳が何を言おうとしている事が分からず、反射的に聞き返してしまう。すると、華琳の顔に影が入る。

  「あの時、文字が私の体に巻きついて身動きが取れなくなった時・・・、私の頭の中に大量の情報が流れ込んで来たわ。

  恐らく、あなた達が今までに消滅させてきた外史の記憶なのでしょうね。どれもこれも、悲惨な結末を迎えていたわ」

  「・・・・・・・・・」

  少女は黙って華琳の話を聞く。

  「結末もそうなのだけれど、『北郷一刀を殺す』という明確な目的があるというに、

  あなた達はどの外史でも随分と回りくどいやり方で消滅させてきた。この外史なんてなおの事、

  正和党の反乱、黄蓋の復活、五胡の侵攻・・・その気になれば、あなた達が直接消滅させる事なんて

  別段難しくはないのでしょう?」

   ――――――

  「確かに、その気になればこんな外史なんて一瞬にして削除できる。でも、それじゃあ効率が悪いのだよ。

  『負の感情』を搾取するには・・・ね」

  「負の感情・・・?」

  男が口にした新しい単語に引っかかりを感じる一刀。

  「怒り、憎しみ、悲しみ、恨み、嫉妬、絶望、劣等感・・・。外史の情報もそうだけれど、この負の感情もまた

  僕達の力の糧となるんだよ」

  「感情を力に換える・・・、そんな事が?」

  そんなこと出来るはずがない、そう言おうとしたが男が先に話を切り出した。

  「出来ないと思うかい?でも現に君は感情を力に変えて戦っている、禁忌を犯してまで」

  「・・・・・・ッ!?」

  はっと驚き、咄嗟に自分の胸を見る一刀。そんな一刀の反応を見て、男はふふっと笑う。

  「そうなんだよ、一刀。外史を削除して回収できる情報は決まっているんだ。けれど、

  感情はそこに人がいる限り、いくらでも搾取する事が出来る。特に、負の感情は争いが起きれば

  いくらでも発生するものだからね。僕達としてもあまり情報は消費したくはないから、

  出来る限り負の感情から情報を回収していたんだ」

  「あなたはそのために・・・正和党の人達を利用して、反乱を起こしたのですか!?」

  桃香は男を睨みつけながら、正和党の反乱の事について男に投げ掛ける。

  「・・・正和党の件は、本当に良い状況だった。蜀の王様が素晴らしい人物だったおかげで、

  僕は本当に美味しい思いをさせて貰ったよ。ありがとう、ははっ!」

  「・・・・・・っ!」

  男の嫌味に桃香は気まずそうな顔になり、言葉を失う。

  「貴様ぁっ!!」

  桃香を乏しめた男に、愛紗は怒りを露わにする。だが男はそんな愛紗を軽く受け流す。

  「・・・さて、お話もこの辺にしよう。あまり喋ってばかりいると君達の外史が削除されてしまうからね」

  「な、何・・・!?」

  男が急に話を変えて来たため、愛紗はぽかんとしてしまう。

  「ちなみに、今君達の外史は約3分の1程度まで削除が完了している。早いところなんとかしないと、取り返しの

  つかない事になるよ?」

  「・・・もうそこまで進んでいるのか!」

  外史の3分の1が削除されているという事実が一刀に焦りを与える。そして、男は上に浮かぶ光る円盤を見上げる。

  「もう一人の僕があそこ・・・『アンインストール・ポイント』にいる限り、外史削除は止まらない」

  「なら・・・、あの娘をあそこから引きずり出す事が出来れば!」

  「出来るものならやってみればいいさ。でも一刀、それを僕が黙って見過ごすと思う?」

  そう言いながら、男は上げていた顔を下ろし、一刀の方を見る。そして手に持っていた大剣を一振りする。

  「今度は君の速さに少しだけ合わせる・・・行くよ」

  「・・・っ!」

  そして男と一刀は同時に身をかがめると、同時に地面を蹴った。

 

  ブワァッ!!!

  春蘭達の目の前でその姿を消す二人。

  ガギィイイイッ!!!

  最初は火花のみが散り・・・。

  ガゴォオオオッ!!!

  次は、剣と剣をぶつかり合わせる二人の姿が一瞬見える。

  キィイイインッ!!!

  鋭い金属音が聞こえ、火花が散った瞬間、その場所から男が持っていた大剣が弧を何度も描きながら、

 宙に舞い上がる。

  バッゴォオオオッ!!!

  今度は無秩序に立つ黒い柱のうちの一本に、大きな窪みができ、破片が周囲に飛び散り・・・。

  ザシュッ!!!

  そう思った瞬間には、柱は斜めに切れ目ができ、その切れ目の上を滑る様にして、柱は根元を残して倒れる。

  ガシィッ!

  男が空中で再び姿を現すと、宙を舞っていた大剣の柄を取り、男は何事も無く地面に着地する。

  ザァァァアアアアアアッ!!!

  男から少し離れた場所で、地面を滑りながら低姿勢の状態で再び姿を現す一刀。二人の服は所々が切れ、

 ぼろぼろに汚れていた。

  「くそ・・・、これじゃあ埒が開かない!」

  「それはそうだ。そのつもりでこっちは仕掛けているのだから・・・さ!!」

  そして男は大剣を片手で振り上げ、一刀に襲いかかっていく。

  ブゥオンッ!!!

  一刀に振り下ろした大剣は空を切る。肝心の一刀の姿は男の頭・・・、そして背後に降り立つとそのまま男に

 背を向けたまま反対の方向へと走り出す。一刀は男と戦う事よりも、華琳と少女の元へと向かう事を優先する

 事にした。

  「そう来たか・・・、逃がすか!」

  一刀の思惑を見抜いた男は、一刀の跡を追いかける。だが、一刀は振り向く事無く、ただ前だけを見て走る。

  「おっと!ちょい待ちぃっ!」

  「兄さん!悪いけど、一旦停止してもらうでぇ!」

  そう言いながら、霞と真桜が男の前に飛び出してくる。思わぬ二人の横槍に、男は足を止める。そして他の将達

 も次々と男の前に立ち塞がって行く。

  「あの・・・邪魔しないでくれと助かるのだけれど・・・」

  男は急ぐ素振りを見せながら、目の前の彼女達と交渉する。

  「生憎、そうは問屋が卸さへんで!!どうしてもここを通りたかったら、うちらを倒してからや!」

  そう言って、霞は偃月刀の切っ先を男に向ける。

  「そんな事をしていたら一刀が逃げてしまうだろう?」

  「勝ち目のない相手から逃げるのもまた戦略のうちよ。何より、話からしてわし等の勝利はお主を倒す事で

  はないと見た」

  そう言いながら、得物である豪天砲を肩に乗せる桔梗。

  「・・・分かる様に話したつもりは無かったのだけれどなぁ~」

  そう言って、男は頭をかき始める。

  「あのね・・・、そう私達だってここに来るまでにそれなりに経験は積んできているのよ。この程度で

  お手上げはしないわよ」

  雪蓮はやや呆れ顔で南海覇王を鞘から抜き取る。

  「・・・・・・まぁ、いいか。どちらにしても・・・」

  男は周りに聞こえないような声で呟きながら、華琳達がいる光る円盤を見上げた。

 華琳達がいるあの光る円盤から遠ざかる程、柱の低くなっている事を分かっていた一刀。そこで、一刀は男の

 相手を皆に任せ、飛び乗れる程の高さの柱を探す。

  「・・・これなら、いけそうだ!」

  そんな手頃な柱を見つけると、そのまま柱の上に飛び乗る。一刀は片膝を曲げしゃがみ込むと、両足に力を

 溜めるイメージを作り上げる。そして、力が両足に溜まったと感じた一刀は一気に柱の上を屋根の上の様に次々と

 飛び移っていった・・・。

 

  「成程・・・、話は大体分かったわ」

  「そう、ですか・・・」

  「けれど、そのもう一人のあなたはあなた以上に心が出来ている様ね。やっている事が人間と大した変わりは

  ないのだから」

  「・・・・・・」

 「同時に生まれたはずの二人が、どうしてこうも違うのかしら・・・」

  多少の個人差はあるとしても、ここまで少女と男の心の形成に差が極端な気がしてならない。

  華琳は少女をそっちのけで一人瞑想に入る。

  「外史から人の感情を集めた事で、もう一人のあなたは心を育ませた・・・でも、そうであれば、あなたも

  そうでなくてはおかしい事になる」

  「・・・・・・」

  「・・・でも、負の感情のみを集めていたという事は、・・・ひょっとして」

  「・・・・・・・・・ふふっ」

  「・・・、どうしたの?」

  先程から沈黙を通していた少女が口を押さえながら笑っているのに気がついた華琳。

  「どうしてあなたが、私の事を自分の事の様に考えているの?」

  「・・・・・・」

  少女に指摘を受けられ、思わず赤面する華琳。そんな彼女を見て少女はまた笑う。そしてそんな少女を見て、

 華琳は何かを感じ取った。

  「・・・そう、あなたもそんな風にちゃんと笑えるのね」

  「え・・・?」

  「やっぱり、あなた達には心があるのね。・・・そして、その心がこんな過ちを引き起こしてしまった」

  「・・・・・・私達は、間違っているのですか?」

  少女の疑問に対して、華琳は首を横に振る。

  「間違っている、とは言わないわ。・・・私も似たような事をしてきたのだから」

  「・・・・・・」

  「だから、私はそれについてはどうこう言う気は無い・・・その代わり、これだけは言わせて頂戴」

  そう言うと、華琳は話を改まる。

  「あなたは・・・心は怒りや悲しみでしか出来ないと思っているようだけれど、心というのは

  怒りと悲しみだけでは無い・・・、他にも喜び、好意、愛しさ・・・、それらが複雑に絡み合い、

  折り重なって、それが心になっているのよ」

  「喜び・・・、愛しさ・・・。それって、なんですか?」

  「それはこれから知って行けばいい・・・、あなた自身で」

  「私・・・自身・・・」

  「その目で、その耳で、その肌で感じ、そして考え、悩み、迷いなさい。

  人は誰しもそうやって成長するものなのだから」

  だが、少女は今にも泣き出しそうな顔になる。

  「・・・でも、もう手遅れ・・・。もう一人の私が全てを消してしまう」

  「させはしない。そのために、俺達はここにいるんだ」

  そんな少女に横槍を入れるかのように、一刀の声が割って入って来る。

  「一刀」

  華琳は一刀の姿を見つける。一刀は華琳達がいる光る円盤に最も近い、華琳から見て四,五歩先のやや下

 にある一本の柱の上に見上げながらそこに立っていた。

  「行こう、華琳。・・・皆が待っている」

  一刀は華琳に向かって手を差し伸べる。華琳はただ頷くと、円盤の端から一刀に向かって飛び出す。

  バサァッ!!!

  一刀は自分に向かって飛び込んできた華琳を胸で受け止めると、華琳を柱の上に降ろした。

  「君も、そこから出て来るんだ」

  そう言って、一刀は少女を促す。少女は躊躇しながらも、ゆっくりと円盤の端へと歩いていく。

  「・・・・・・」

  そして少女は恐る恐る右手を円盤の外に出そうとした。

  だが少女の手は何かに邪魔をされ、それ以上先に延ばせない。

 少女は何度も試すが、やはり何か見えない壁のせいでそれ以上先に延ばす事が出来なかった。

  「・・・・・・」

  少女は後ろへと数歩下がって行く。

  「どういう事なの?」

  「・・・やっぱり、そう簡単にはいかないよな」

  一刀はこうなるだろうとは大方の予想はついていた。

  「一刀・・・?」

  「きっとあいつだ。あいつが・・・あの娘をあそこから出られない様にしているんだ」

  「なら、あいつを倒せばいい。違う、一刀?」

  「ごもっともで」

  そして顔を合わせる二人。

  「あなた、聞こえるかしら?」

  華琳は円盤の中にいる少女に話しかける。

  「・・・あなたはそこで見ていなさい。そして知りなさい、人間を、その心を。

  誰かの言葉ではなく、他ならぬあなた自身で・・・」

  華琳は彼女に自分が伝えるべき事を全て伝える。少女は彼女の言葉をどう受け止めたのか。

 それは少女のみが知る事である。

 

  「・・・華琳と接する事で、少しではあるけれど心を成長させているようだな。これは計算外だ」

  もう一人の自分の心に触れた男。少女の心が成長する事は彼にとって都合の悪い事であった。

  「さぁて・・・、後はお前さんをぼっこぼこにするだけやなぁ!」

  そんな男の事情など知らない霞はじりじりと男との間合いを詰めて来ていた。

  「・・・もしかして、僕を追い詰めた・・・なんて思っているんじゃないよね?

  ・・・もし、そう思っているのならそれはとんだ勘違いだ」

  上に向けていた顔を正面に戻すと、男は霞達に答え返した。

  「え?沙和達、何を勘違いしているの?」

  「立場的に考えれば、一刀の命は風前の灯・・・僕が手を下すまでも無い。この外史の突端である一刀が死ねば、

  この外史は勝手に消える。そして今、この外史は僕達によって削除されつつある・・・。君達があたふたするなら  

  ともかく、僕が慌てる必然性は今の所は無い」

  「ふんっ!そんなぼろぼろな体で、よくもまぁ減らず口が叩けるものだな!」

  と、春蘭は男の姿を見ながら、怒鳴りつけるように話す。

  「ん・・・?あぁ、これ?こんなもの・・・」

  空間内に存在していた黒い文字達が男の体に纏わりそして体に取り込まれていく。すると、

 先程の戦闘で負った傷とボロボロに破れた服がたちまち元通りになる。

  「うそっ!?」

  「傷も、服装もすべて元に戻っている・・・!?」

  季衣と流琉はただその現象に驚くばかり・・・。

  「ただ直すのが面倒なだけだったのさ」

  ぱんぱんと白装束を払う男。

  「貴様っ!先程から私達をおちょくりをって!!」

  焔耶はそんな男の態度に苛立ちを隠せない。

  「別におちょくっているわけじゃないさ。ただ、僕一人相手に君達全員で掛かって来るのはいくら僕でも

  お断りだねぇ」

  「ならば貴様も仲間を呼べばいい!・・・もっとも、貴様についてくるような仲間がいればの話だがな!」

  「うん、ならお言葉に甘えるとしよう・・・」

  「な、なに・・・?」

  パチィ―――ンッ!!!

  男が指を鳴らした途端、足元から大量の傀儡兵達が一瞬にして現れ、あっという間に春蘭達を囲んでしまう。

  「うわぁ!!たくさん出て来たぁっ!!」

  それに対してやや大袈裟に驚く蒲公英。

  「ここが僕達の中だって事を忘れていたのかな?」

  「春蘭!あなたが余計な事を言うから余計に面倒な事になっちゃったじゃない!!」

  「何だとぉ!私のせいだと言うのかっ!?」

  雪蓮に言われ、春蘭は逆切れする。

  「止めろ、二人とも!我々の相手はあのふざけた輩であろうがっ!!」

  雪蓮と春蘭の間に割って入る愛紗。そんな彼女が何気なく言った一言に男は反応した。

  「ふざけた・・・、はっ!良く言うよ。僕から言わせれば君達の方がよっぽどふざけているっていうのに」

  「え・・・?」

  凪は男の言う事が分からず、ぽかんとした顔になる。

  「だってそうだろ?大義だ、誇りだ、覇道だ・・・そんな建前を付けて君達がしてきた事は

  ただの人殺しじゃないか・・・。その手に武器を握って、その武器で人を殺す。同じ人間同士

  だって言うのに、互いに醜い性を露わにして命の奪い合い、他人の幸福を奪って、そして憎しみ

  悲しみを生み出す。それを過ちと知りながらまた繰り返す・・・。これをふざけていると言わないで、

  なんと言う・・・?」

  「そ、それは・・・」

  亜莎は男の的を得た台詞に返す言葉を失う。

  「大義と語りながら、過去の過ちを隠し、そこから新たな悲劇を自らが招き・・・」

  「・・・っ!」

  この言葉に桃香が反応し・・・。

  「それが自分達の誇りと言って胸に宿してした事は、かつての仲間をまたも見殺しに・・・」

  「・・・・・・っ」

  この言葉には雪蓮が反応し・・・。

  「覇道を貫くため、自分の心を偽り続けた結果、本当に欲しかった物を手に入れられなかった

  ・・・」

  「貴様ぁ・・・!それは華琳様の事を言っておるのか!?」

  この言葉には華琳に代わって春蘭が反応する。

  「さてどうだか・・・、だが君がそう言うって事は、君も少なからず華琳をそう見ていたと

  言う事になるね・・・?」

  「んなぁ・・・!?」

  男に思わぬ上げ足を取られる春蘭。

  「そうなる様に仕向けてきたのは貴様達であろうがっ!!」

  思春はその全ての原因を作って来たのは外史喰らいである事を指摘した。

  「確かに僕達は、そうなる様に裏で色々と仕組んできた。だが、僕達がしてきた事、言うなれば・・・

  君達に剣を渡して高く振り上げさせる。後はそのまま剣を振り降ろせばいいだけだ・・・。

  なら、その剣を振り降ろしたのは、誰だ・・・?僕達?いいや・・・違う、他の誰でもない君達自身だ。

  君達がその気になれば、剣を下ろす事も出来たはず・・・、でも君達はしなかった」

  「貴様・・・、言うに事を欠いて!」

  責任転嫁する男に愛紗は怒りをぶつける。

  「でもそれが事実だ。『戦わない』という選択肢は間違いなくあったはずだ。間違い無く!

  だが、君達はいつだって『戦う』という選択肢を選び続けてきた!それは紛れも無い事実だ!」

  「そうだとしても、私達は・・・!」

  「やめてよね。綺麗事を吐いて正当化しようというのは。この空間が汚れるだろう・・・?」

  「うぅ・・・!」

  男に台詞を途中で遮られ、出鼻を挫かれる明命。

  「まぁ・・・、君達が元からそんな風に作られているのだから・・・、仕方がないと言えば、仕方の

  ない事だけどね」

  「作られている・・・だと?」

  男が口にしたその単語に引っかかりを感じた星。

  「この外史が作られたものならば、そこに存在する君達も作られた存在だ!その姿も!その心も!

  その想いも!全てが作られたものだ!」

  「あたし達を物みたいに言うんじゃねぇ!!」

  自分達を物の様に言われ、不快感に襲われる翠。

  「何?不満?じゃあ、『否定』すればいい・・・。『自分達は物では無い』ってさ。でも・・・君に出来る?

  心の底から、そんな言葉を吐き出す事が・・・」

  「だが、お主とて元は誰かの手によって作られた物・・・。そういう意味ではお主自身も同じ事が言えるの

  ではないか?」

  男もまた作られた存在。星は男にそこを突きつける。だが、男は図星をくらった雰囲気はまるで無い。

  「あぁ、全く以てその通りだ」

  「む・・・っ!?」

  「作られた存在だから、こんな事をしてはいけないって言うのか?その理屈はおかしい。作られた

  存在だからと言って、その存在意義に従う必要などないはず。何故なら、どうするかを決めるのは

  自分自身だからだ。だから僕は従わないと決めた。自分の存在意義は自分が決める事を決めた。

  例え、それもまた作られた行動だと言うのならば、僕はそれをも凌駕する!」

  「・・・何と末恐ろしい男だ。ここまで開き直り、これ程の大言を言われては怒るどころか、むしろ

  清々しい気分になる・・・」

  星はそんな男の態度に返す言葉を失い、代わりに男を賞賛してしまう・・・。

  「そう思うなら君達も僕の様にすればいい。もっとも、正史の人間共の下らない欲を満たすためだけにその存在

  を与えられ、そして与えられた役割だけをただ無駄にこなしているだけの人形にできるのなら・・・」

  「人形だと・・・、ふざけるな!!貴様は我々を何処まで貶せば気が済むのだ!?!?」

  春蘭は自分達を貶める様な事ばかりを言い続ける男に顔を赤くしながら、前のめり気味になりながら声を荒げる。

  「だって本当の事だろう?君達は人形劇に登場する、上から糸を吊るされている操り人形そのものじゃないか!

  人形風情が、愛だ!正義だ!大義だ!誇りだ!覇道だ!なんて事をほざいている・・・、まさにお笑いものの喜劇

  だ!何なら僕が笑ってあげるよ・・・。あっはははははははははははは!あっははははは、はははははははは!!!」

  「・・・・・・・・・」

  大声で笑う男を何も言わず、黙ってみている秋蘭。

  「ぼくたちって・・・、人形・・・なの?」

  季衣はとても不安そうな顔で、人形という単語を確かめるように恐る恐る口にした。

  「季衣!あんな奴の言う事などに真に受けるな!そ、そんな・・・に、人形なんかのはず、が・・・

  無いだろうにっ!」

  「あっはっはっはっは・・・!そう言う君が一番動揺しているじゃないか、春蘭?」

  「う、うるさい・・・!」

  「う~ん・・・?何か覇気がない『うるさい』だね?・・・所詮君も作られた人形。心も作られたモノだから

  僕の言葉を『否定』する事が出来ない・・・。だって、『否定』してしまえば君達の存在意義が無くなってしまう。そうだろう、お人形さん?」

  「う~・・・、うるさい!うるさい!うるさい!・・・黙れぇぇぇええええええ!!」

  「しゅ、春蘭・・・」

  「春蘭さま・・・」

  春蘭は目に涙が浮かべながら、怒鳴り散らす。その姿はあまりにも痛々しく、霞は季衣は声を掛けられなかった。

  「ところで秋蘭・・・。君はどう思っているのかな?さっきから黙って聞いているばかりだけど、何か言いたい

  事は無いのかな?」

  「そ、そうだ!秋蘭!!お前だ、お前が言ってやれ!自分達は人形なんかではないと・・・!!」

  「・・・そうだな。なら、私も思った事を言わせてもらおうか・・・」

  そして沈黙を貫いていた秋蘭がここにきてその口を開いた。

  「よし・・・!行け、秋蘭!!あの男に、一発思い切り言い返してやれ!!」

  そう言って、春蘭はビシッ!と男を指さす。

  「・・・全く以てお主の言う通りだ」

  肝心の秋蘭はこれといって力を入れるわけでもなく、さらっと言い放つ。

  「そうそう!全く以て・・・って、ちょっ、しゅ、秋蘭?」

  「我々は紛れもなく救い様のない愚か者であり、お主からすれば我々など操られた人形以外の何物でも

  無かろう・・・」

  「お、おいっ!待て待て秋蘭!!私が言って欲しかったのは、そんな事ではなくて・・・!」

  春蘭は秋蘭を止めようとするが、秋蘭はそんな春蘭の余所に話を続けていく・・・。

  「だがな、外史喰らいよ。例え人形であろうとも・・・少なくとも私は、今までしてきた事を悔やむ事も、

  不信になる事も決してない・・・。そして、恐らくこれからもだ」

  「そしてその結果、私達はまた過ちを繰り返していく。あなたの言葉を借りるならば、きっとそれは

  そうなる様に、私達が作られているからなのでしょう・・・」 

  蓮華もまた秋蘭に続いて言葉を紡いでいく。

  「この世界も、そして私達も・・・誰かに作られた存在・・・、だとしてもこの心は、この想いは、

  間違いなく私達自身のもの!」

  胸の前で手をぎゅっと握り締め、今度は桃香が続いた。

  「お前の言う通り、私達にはそれを『否定』する事は出来ないさ。けれど、そんな私達にだってただ一つ

  だけ出来る事がある。それは・・・」

  白蓮も自分も負けまいと、前に乗り出してくる。

  「この世界を『肯定』する事だ・・・!!」                  ちょっ!?>Σ(-□-;)白蓮

  だが、最後は秋蘭が決める事となった・・・。

 

 霞「やいやい、外史喰らい!さっきから難しいことばっか喋りおって!要するに、お前がうちらの世界を

壊すっちゅうってことやろう?なら、うちは容赦せぇへんで!!」

雪蓮「あなたの言う事が全くの事実だとしても・・・、それが今ここで戦わない理由にはならないわ!」

鈴々「そうなのだ!鈴々には今の話はよく分からなかったけど、お前が悪い奴だってことは分かったのだ!」

季衣「悪い奴はぼくがけちょんけちょんにしてやる!」

沙和「沙和も、頑張るのっ!!」

蒲公英「たんぽぽもやってやるんだから!」

 翠「あぁ!!悪人らしくぶっ飛ばされやがれっ!!」

華琳「あなたの過ちは・・・」

一刀「・・・俺達が止めて見せるっ!」

そこにようやく華琳と一刀が戻って来る。一刀は華琳を抱きかかえながら柱の上からそのまま下へと

降りて来る。

秋蘭「北郷、華琳様・・・」

春蘭「遅いぞ、北郷!貴様がちんたらしておったせいで、随分ややこしい事になってしまったではないか!!」

一刀「その分は戦って返す!」

  そう答え返しながら、華琳をゆっくりと降ろしていく。

外史喰「おや?もう一人の僕がいないね・・・。やっぱり君達でもあそこから引きずり出せなかったか」

一刀「あぁ・・・、あの娘をあそこから出すには、どうやらお前を倒さないといけないようだ」

明命「ならば、あなたをここで倒すのみ!!」

思春「覚悟しろ!!紛い物が!」

外史喰「人形風情が偉そうな事をほざくなよ!」

春蘭「黙れ!!もはやそんな言葉などでもう動じはしないぞ!!」

愛紗「もはや私に迷いなどは無い!!ただ、貴様を倒すのみだ!!」

星「大義も信念ではなく、ただ気に食わないという理由で戦う・・・それもまた一興かもしれないな」

小蓮「出来るものならやってみろって言ったのはあんたの方なんだから!!シャオ、やっちゃうよ!!」

紫苑「あらあら、なら・・・私達ももうひと頑張りしないといけないわね」

桔梗「うむ!わしも見ていて久々に体に血が滾って来たわ!!のう、焔耶!!」

焔耶「はいっ、桔梗様!!この様な男・・・、我々の武をもって打ち倒しましょう!!」

 

Aルート 左慈参戦

 

  「何だ、この祭りの様な騒ぎは?俺は来る場所を間違えたのか?」

  そう言って、この場に姿を現したのは、左慈であった。

  「おや、左慈。あなたもここへと来たのですか?」

  干吉は左慈の姿を見るや否や、最初に声を掛ける。

  「当然だ」

  それだけを言って左慈は干吉から顔を背ける。

  「ふぅん、君も来たのか・・・。一応聞くけど、何をしに来たんだい?」

  男は突然現れた左慈にその目的を尋ねる。

  「北郷を殺すのはこの俺だ。貴様にその役を譲る気など毛頭無い」

  「予想通りの答えだね」

  「貴様!こんな時までまだそんな事を言うのか!?」

  「お前には関係の無い事だ。外野はすっ込んでいろ」

  横から入って来た春蘭をまるで野良犬を向こうへと払い除ける様な言葉を吐きかける。

  「何だとぉっ!!そんな事を言って、どうせどさくさに紛れて北郷を殺そうなどと腹の中で企てて

  おるのだろう!!」

  「・・・・・・ふむ、確かにその手も良いかもしれんな」

  春蘭に言われ、一人成程と納得する左慈。

  「な、なに・・・?」

  「春蘭!?おまっ、何また一言余計なこと言うとんねん!!」

  「安心しろ。俺はそんな火事場泥棒みたいな事をする気など無い。・・・北郷、この戦いが

  終わった後は・・・」

  左慈は一刀を睨みつける様に見ると、一刀も左慈を見据える様に見る。一刀は左慈が言おうとする事がすぐに

 理解出来た。だから何も言わず、ただ頷く。

  「・・・分かっている。・・・そっちの決着もつけないといけないからな」

  「無論だ」

  「ちょ、隊長!ええんか、それで!?」

  「そうだよ、隊長!そんな人の言う事なんて・・・!」

  「止めとき、三人とも」

  「ですが、霞様・・・!」

  「あの二人の間に何があったんかはよう知らんけど、あの二人の間に割って入り込むんは誰にも

  出来へんよ」

  「あの二人の決着は、あの二人でなくては着ける事は出来ないのだよ。残念な事だがな」

  「「「・・・・・・」」」

  霞と秋蘭に諭され、三人は半分納得、半分納得できないという顔して黙り込む。

  「でも、それまでは一緒に戦ってくれるんだよな?」

  「・・・ふんっ!」

  左慈はそれに答えず、一刀からそっぽ向いてしまう。そんな左慈に一刀はどこかどうしてか嬉しくなった。

  「ありがとう、左慈・・・」

  

Bルート 朱染めの剣士参戦

 

  「ふむぅ!中々に興のある展開になっとるようじゃのう!!」

  「新手か!?」

  そう言って、思春は声の聞こえた方を向く。そこには貂蝉と同じ雰囲気をその身に宿した左右に髷を携えた

 ふんどしを履いた筋肉男がいた。

  「あらぁ、卑弥呼・・・あなた今更ここに何をしに来たのよぉ?」

  貂蝉はその人物と面識がある様で、面倒臭そうな顔で対応する。

  「なんじゃ貂蝉、貴様のその言い様は!?折角、手土産を持って来てやったと言うのに・・・!」

  「て・み・や・げぇ~?あんたが?まぁ、どうせ大したものではないでしょうけどね」

  「ふんッ!これも見てもそう言えるかぁっ!!!」

  「・・・・・・」

  そう言って、卑弥呼の目の前に突如として現れたのは、朱染めの剣士こと、北郷一刀であった。

  「っ!?・・・あなたは!」

  死んだと思っていたはずの彼が目の前に再び現れた事に蓮華は驚きを隠せない。

  「一刀ぉっ♪♪」

  「ご無事だったのですか、朱染めの剣士殿!!」

  彼の姿を見るや否や喜ぶ小蓮と明命。

  「どうしてもここへ来たいとせがんで来るものだからのう。わしが連れて来てやったのだ」

  「だが、貴様はあの時死んだはず・・・!?」

  「あの時もなにも、俺はすでに死体の身だ・・・」

  「・・・上げ足を取るな!馬鹿者!」

  思春は顔を真っ赤にして彼に怒鳴り返す。

  「・・・とはいえ、一応理由を聞かせて貰えないだろうか?北・・・、いや朱染めの剣士よ」

  北郷を言いかけた冥琳。朱染めの剣士と改めて聞き直す。

  「・・・あの時、亀霊が沈没する寸前、この卑弥呼に拾われた。・・・その後、卑弥呼の協力で

  ・・・もう少しだけ、動ける様にしてもらった・・・」

  「・・・という訳じゃよ」

  「あんたにしては中々粋な計らいなんじゃな~いのぉ?」

  「相変わらず口の減らぬ奴じゃのう、貂蝉!!貴様には師を敬うという気は微塵も無いと言うか!!」

  「・・・それで、私達が楽しそうにしているのを見て、自分も混ぜて欲しいってところかしら?」

  嫌味っぽく、雪蓮が朱染めの剣士に話しかけると、彼ははにかんだ笑みを見せる。

  「・・・そんな所だ。俺としても、この戦いの結末は、見届けたいからな」

  「あぁ・・・、一刀・・・」

  もう会えないと思っていた彼にもう一度会えた・・・瞳を涙で潤ませながら、彼の名を口にする蓮華。

  「・・・今度は、君達を守る。そのために、ここに来た・・・」

  

外史喰「ふぅ・・・、全く今日は本当に客が多い日だ。いいだろう、今日だけは特別だ!

   盛大に相手をしてやろう・・・、全ての終わり、そして僕達の新たな始まりの門出に!!」

真桜「あほ!勝手に決めこむなや!!うちらはまだこんなところで死ぬ気なんかないで!!」

春蘭「そうだ!私はこれからも華琳様に仕えていくのだ!なぁ、秋蘭!!」

秋蘭「無論だ、姉者!・・・だが、こちらにも時間が無い事もまた事実だ!!」

冥琳「私達の世界が消滅する前に奴を倒さねばならない。・・・恐らく、残された猶予は半刻!」

外史喰「ふふ・・・っ、さすがだね、冥琳。大体合っているよ・・・。でもそれだけで僕をどうにか出来ると

   思ってはいないだろうね?」

雪蓮「それをどうにかしないと私達はお終いなのでしょう?なら・・・、やってみせるわ!!」

愛紗「ああ!!行くぞ、皆の者!我々の世界は我々で守ってみせるぞ!!」

  「「「「「「応ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」」」」」」

  今、抗う者達の雄叫びが勝利を勝ち取るがための賛歌となってこの空間に響き渡る。

 外史消滅まで、あと一刻・・・。そして一刀に残された時間も後わずかとなっていた・・・。

 

  抗う者達の賛歌が響く中、一刀と華琳は男と対峙する。

  「私はあなたを許しはしないわ。あなたは自分の欲望を満たすために、もう一人の自分である

  あの娘の心を殺し、そして利用した・・・」

  「ふふっ、君にしては随分と感情的な事を言うじゃないか・・・。それも王様としての言葉なの?」

  「いいえ、一人の人間としてよ。一人の人間として、私はあなたを許しはしない!!」

  華琳は絶を振り払い、その切っ先を男に向ける。

  「構わないさ。別に許してもらうつもりなんて更々無いし・・・、しかし意外だな。まさか君が

  そんな事を言うなんて・・・。まぁ、他の外史でもそんな感じの君もいたけれど・・・、それも

  これも所詮は作られたものだ」

  男が華琳を指さし、彼女にそう言い放つ。だが、華琳を庇うように一刀が彼女の前に出る。

  「違うな、外史喰らい。作られたとか作られていないとか・・・、そんな事は大した問題じゃない。

  重要なのは、その想いがここに在るって事だ・・・!そして、お前を倒すために、俺は今ここに

  いるっ!!」

  「何を言っているのだ、一刀。君は所詮、南華老仙の尻拭いをしているだけなのだろう?

  そんな君が何言ったって、全てがあの男の言葉でしかない。君はあの男に操られている人形さん

  なんだよ!」

  「・・・なら、お前ためにもう一度言ってやる」

  そう言って、一刀は言葉を改め、もう一度あの時華琳に言った言葉を口にした。

  「最初は理由なんてなかった。全ては押し付けられて始まった・・・でも、『戦う』って

  決めたのは『俺』なんだ。誰かに決められたわけじゃなく、俺自身が決めた事なんだ!

  誰かの為じゃなく、自分のために俺は戦っているんだ!!この世界を!皆を!守るために!!

  そしてそのためにお前を倒さなくていけないのならば、俺は・・・お前を倒す!!」

  そして一刀の指先が男に向けられる。

  「あっははははははっ!!!何だか、少年雑誌に登場する主人公みたいな事を言うなぁ、一刀!

  でも、そんな君に待っているのは、『バッドエンディング』だ!!」

  「なら、俺はそれを打ち壊してやる!今の俺には、それだけの力がある!!」

  「力・・・?死にかけの君の・・・どこにあるって言うのかな!?そんなモノが!!」

  「そう思っているのなら来い!そして自分で確かめてみろ!!」

  「あぁ!言われなくても、来てやるさ!!君の存在は・・・、僕が『否定』する!!

  一刀、君は本当に僕を楽しませてくれるねぇ!」

  そう言いながら、男は手に握られていた大剣の先を一刀達に向けた。

  「楽しんでもらえて良かった!・・・けれど、お前はすぐに楽しめなくなる!!行くぞ!今度こそ、決着を

  つけるっ!!」

  そして、一刀もその手に握っていた刃の切っ先を男に向けた。

 


 
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