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アクション!(ミュージックスタート)
「まてぇい!!!」
「「「だ、誰だ!!!」」」
「悪の蓮花の咲くところ、正義の華蝶の姿あり!か弱き華を護るため、華蝶の連者」
「……ただいま」
「………惨、状」
仮面をつけた謎の三人組が、太陽を背にして建物の上に姿を現す。
その場にいる者たち全員の視線が三人に注目する。
「ちょっとまて」
そのとき、三人組の一人がそういって、他の二人を引っ張って、建物の屋根の陰に隠れてしまう。
「……なんだ、今の?」
「あれ?あんた知らないのか?この街じゃもう知らない人なんていないよ」
「そうなのか?」
「ああ、華蝶仮面っていって最近現れた謎の正義の味方でね。きっとこの騒ぎもすぐに終わらせてくれるさ」
「正義の味方、ねぇ。引っ込んじゃったけど?」
「そうだねぇ。いままでこんなことなかったんだけど、何かあったのかなぁ?」
「あ、アニキ。奴ですぜ!引っ込んじゃいましたけど、どうしますか?」
「うろたえるな!奴は逃げ帰るようなタマじゃねぇ。必ず出てくるから少し待ってろ!」
「きょ、今日こそは、返り討ちなんだな」
いきなり現れて、いきなり引っ込んだ謎の三人組に、路上の人間達は呆然とする。
暴れていた男達には、何か変な信頼のされ方をしていた。
誰もが大人しく華蝶仮面の再登場を待つ。
「なんだ一華蝶、名乗りの途中で待ったをかけるなど、空気を読め」
「すまん。それでもどうしても無視できないことなんだ。俺たち華蝶仮面だよな」
「今さら何をいう。当然ではないか」
「これ(ヒナの仮面)のどこに華蝶仮面とのつながりがあるんだよ!!!」
「………仮面、なとこ、ろ」
「それだけかよ!!!第一、そんな仮面どこから持ってきたんだよ!?」
「………五胡の兵士の、支給、品」
「……一刀。真面目にやれ。次に邪魔をしたらいくら温厚な私でも怒るぞ?」
「……ごめんなさい」
一華蝶(一刀)は星華蝶(星)に叱られて、それ以上の抗議をあきらめた。
仕切りなおし。
「まてぇい!!!」
「「「戻ってきたぞ!!!」」」
「悪の蓮花の咲くところ、正義の華蝶の姿あり!」
「星華蝶!」
「一華蝶……」
「………ハクオ○華、蝶」
「か弱き華を護るため!」
「華蝶の連者、三人揃って」
「………ただい、ま」
「参上!」
「参上」
「………さんじょ、う」
名乗り終了
「天下の往来でこのような真似をしては、善良な庶人たちに迷惑であろう!場をわきまえろ!」
星華蝶が男達に向かって叱咤する。
「出やがったな、クソガキ共!相変わらず小馬鹿にした格好しやがって!今日こそぶっ潰してやる!」
「誰かと思えばまた貴様達か。全く何度やられれば懲りるのだ?今度は簀巻きにして川に放り込む程度では済まさんぞ?」
「うるせぇ!俺たちは何度でも蘇るさ!この世に光がある限り、闇もまたなくなることはねぇんだよ!」
「ならば、次は二度と蘇れぬよう、はらわたを引き摺り出し、メンマ漬けにしてくらい尽くしてくれよう!」
「やれるもんならやってみろ!散っていった仲間達の無念、今日こそ晴らしてやる!!!」
「残念だが、そんな日は永遠に来ない!!貴様もものいわぬ骸と成り果てるがいい!!!」
「……えーっと、華蝶仮面って正義の味方じゃなかったっけ?」
「………細かいことは、気にしちゃだ、め」
なにやらどこか親しげにすら思えてしまうやりとりをする星華蝶と暴漢(アニキ)を眺めながら、一刀は一歩ひいている。
そして、互いの前口上が終わったのか、星華蝶が屋根から飛び降りた。
「とうっ!」
「……え、俺も飛び降りるの?結構高いんだけど、ここ」
「………いけるいけ、る」
華蝶仮面たちは男たちの輪の中に舞い降り、アニキと対峙する。
その時アニキが、嫌な笑みを浮かべた。
「かかったな、おいてめぇら!出番だ!!」
「わかりやした!」
「おう!」
「イー!!」
「ぎー!!」
アニキの合図と共に、争っていた男達はピタリッと争うのをやめ、華蝶仮面を取り囲む。
さらに、どこからともなく、多くの黒覆面の男達が現れる。
「なっ、まさか我らをおびき出すための罠だったというのか……」
「………でたな、○ョッ、カー」
「ちょっ、なにこれ。どうなってるの!?」
「………一刀がいない間に、色々、あった」
「何がどうなればこうなるんだよ!?」
華蝶連者が結成された初期は一刀も一緒にやっていたのだが、一刀が桔梗たちの手伝いをするようになってからは、一刀は忙しく、華蝶連者をやっていなかったのだが、その間も星たちは活動を続けていたらしい。
普通に適応している星華蝶とハクオ○華蝶とは裏腹に、一華蝶だけ置いてけぼりである。
物語の序盤でリタイヤした仲間は後半で復帰しても、たいがい役に立たないのである。
「見苦しいぞ一華蝶!うろたえるな。正義は必ず勝つ!」
「………あきらめよう、一華蝶。こうなった星華蝶は止められな、い(クスッ)」
「いやいやいやいや、まって、やめて。これ以上、俺をおかしな世界に引きずり込まないで」
一刀達は完全に包囲されていた。
「後悔してももう遅せえ!やっちまえ!!!」
「おおおーーーっ!」
「ちっ、来るぞ。一華蝶!ハクオ○華蝶!背中は任せた!」
「………まかせ、ろ」
「ごめんね、朱里。心のどこかで、他人事のように、困ってる君を見て微笑ましく笑ってたけど、本当に大変だったんだね……。次にあえたら、俺たちはきっと前よりもっと分かり合える。だから、お願いします。俺を助けてください。どうすればこの異世界から抜け出せますか?俺はどこで道を間違えましたか?誰でもいいから誰か助けて……」
星は苦々しく呟き、ヒナはノリノリである。状況についていけない一刀は自我を保つことで精一杯だった。
そして、華蝶仮面と悪の組織の戦いが始まった。
「くそっ。こやつら、倒しても倒しても、いくらでも沸いてくる……っ!」
「……ちょっと、本気で劣勢な気がするのは俺の気のせいかな?お約束ってやつなら、そろそろ本気を出してほしいんだけど」
「………やらせだと思ったら、大間違、い」
「……それ、つまりほんとにやばいってことだよな?」
「………きゃつら、め。いったいいつのまに、これほどの、力、を」
「……ねぇ、本当に何があったの?俺がいない数ヶ月の間になにがあったの?」
星華蝶達は互いの死角を補いながら戦っていたのだが、数にものを言わせて襲い掛かってくる暴漢達にやがて分断されてしまった。
「一華蝶、こっちだ!」
「わかってる、けど。こう数が多くちゃ……」
「………合流しないと、つら、い」
「そうはいくか!いくぞチビ!デク!天地人三位一体攻撃だ!」
「わかりやした!!」
「わ、わかったんだな!」
華蝶仮面ちるどれんが分断されたのを好機と見たのか、それまで指示を出すだけで、戦闘に参加していなかったアニキ、チビ、デク、の暴漢達の司令塔と思しき者達が動き出した。
男達に囲まれて、何とか一華蝶達と合流しようと苦心している星華蝶に狙いをさだめ、襲い掛かる。
「だりゃぁああああああああ!!!」
「こんなものっ!……くっ」
ガキィン!
「ひゃっはぁ!!!」
「――なっ!?仲間を踏み台にしただと!?だが――」
ピッ!!
「も、もらったんだな!!!」
「しまっ……ぐうっ!!!」
ドガッ!!!
不意をついて襲い掛かってきた、意外に鋭いアニキの攻撃を受け止めた星華蝶。
しかし即座にアニキの背を蹴ってチビが飛び掛った。アニキをいなしながら上体を流してその攻撃をやり過ごす。
体勢を崩したところに、間髪いれずデクが突進してきた。かわし切れないと判断した星華蝶はギリギリで槍を間に入れて防御するが、デクの巨体に羽飛ばされてしまう。
星華蝶は、音もなく着地。だが、ダメージが大きかったのか、苦しげに膝を突いてみせる。
「ちっ、今ので倒れないとは、しぶとい奴だ!だが、これで終わりだ!いくぞチビ!デク!」
「わかりやした!!華蝶仮面!覚悟しろ!」
「わ、わかったんだな!ついに、悲願を果す時、なんだな!」
星華蝶と交差し、そのまますれ違った三兄弟は、今度こそ星華蝶を仕留めようとして、再度同じ陣形を組む。
「なあ、大丈夫だよな!?あれは演技だよな!?」
「………星華蝶、っ」
「ねえ、何でそんな悲痛な顔してるのヒナ!?ちょっと!!」
一華蝶は知らなかった。
一華蝶がいない間に、華蝶仮面とごろつき達との間に繰り広げられた熾烈な戦いを。
何度も何度も敗北を味わわされた、アニキ達の苦渋を。
アニキたちは、いつの日か華蝶仮面を倒そうと、仲間を集め、一大組織を創り上げ、また自らも熾烈な修行を潜り抜け、仙人たちが住むという秘境に足を踏み入れ、自らの魂を代償に力を手に入れたのだ。
そう!
いまや彼らはただのチンケシーフに非ず!
数多の苦難と死地を乗り越え、見事チンケシーフLv99へと変貌を遂げたのだ!
その力はもはや、群雄の武将達にも匹敵するものにもなっていた。
真面目に働こうと思えば引く手数多という事実に、彼らは気づいていなかった。
気づいていたとしても、そんな道は選ばないだろう。
全ては"華蝶仮面ちるどれん"を倒すために手に入れたものなのだから!
アニキが持つ剣は闇の剣。
とある異界で師事した男から、もはや自分には必要のないものだから、と譲り受けた魔剣。
"神を汚す華やかなるもの"を意味する名を持つ男はいった。
『欲しいものは力尽くで手に入れろ!それが悪の美学というものだ!』
彼の下で修行を終えたその時、アニキ達は決して折れぬ信念を手に入れた。
もう、脇役だなんていわせない。
華蝶仮面が正義の華というのならば、俺達は悪の華となって咲き誇ろう。
悪の美学を、貫き通そう、と。
ナレーション終了
「華蝶仮面!今日こそお前を手に入れてみせる!」
進化したアニキたちからほとばしる強い気配に、星華蝶は飲まれた。
一体どれほどの経験をすれば、あのような気を放てるようになるのか想像もつかない。
雑魚だと思っていた相手が強敵となっていたことを知り、窮地に追い込まれた星華蝶は自らの敗北を覚悟した。
そのとき、
「なっ……!?」
「「ぎゃーーー!!」」
一列になって星華蝶へと迫る三兄弟の側面から、疾風のように飛び出してきた仮面の男に、デクは吹き飛ばされた。
そのままチビも巻き込んで仮面の男は通りの反対側まで突っ切り、路面に激突する。
その衝撃に、激しい土煙が巻き起こる。
「なっ……何だてめぇは!!!」
アニキが悲痛な叫び声をあげる。
その土煙の向こうから声がした。
「あいにく、雑魚に名乗る名など持ち合わせていなくてな。今だ華蝶仮面!」
突如現れた、謎の仮面の助太刀により、アニキは一人、星華蝶の前に棒立ち状態になる。
「誰かは知らぬが、助太刀感謝する!一華蝶!ハクオ○華蝶!来い!我々も奥技を出すぞ!」
(……誰だよアレ。奥技ってなんですか?)
展開についていけない一華蝶は、もう、流されるまま言われるがままに動く。いつの間にか他のゴロツキたちは皆、倒れていた。さっきまで戦ってたのに……。
「畜生……畜生!!後一歩ってところだったのに……。俺達は所詮脇役なのか?日の当たる舞台に立っちゃいけないっていうのかよぅ……チビ、デク、俺もすぐにそっちに逝く。また、三人で酒でも飲もうや――。だが!ただでは殺られねぇぞ!!!脇役の皆、オレに力をわけてくれ!!うおおおおおぉぉぉ!!!!闇の剣よ!全てを切り裂けえぇえええええええ!!!!!!!」
アニキは、自らの持てる全てを込めて、最強の一撃をもって華蝶仮面に疾った。
「真の三位一体というものを教えてやろう!必殺!!!」
そう叫び、星華蝶もアニキに向かって疾る。ハクオ○華蝶が背中を小突いたので、一華蝶もその後に続く。その後ろにハクオ○華蝶。
そのとき、周りの景色は全て止まって見えた。というか、何故か止まっていた。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「はああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
裂帛の気合を込めた咆哮を上げながら、両者が激突する。
ピッ!
アニキの一撃は星華蝶の頬を裂き――しかしそこまでだった。
「これぞ真の裁き!――華蝶乱舞っ!!!!」
ズドドドドドドドドドドドンドンドンドンドンドンドンドンズシュッズシュッズシュッズシュッガキンガキンガキンガキンキュィーーンビシャァ!!
28HIT!
目にもとまらぬ高速の突きを放ち、薙ぎ払い、衝撃波で相手を宙に舞わせ、落ちてきたところに、残影が残るほどの気を込めた一撃を叩き込み交差する。
アニキは、一撃目を叩き込まれた時の状態で、仰け反ったまま痙攣しつつ硬直している。
「生きてるよね?この人、生きてるよね!!!?」
ビシッ
29HIT!
一刀が本気でアニキの心配をしながら、申し訳程度に青い龍牙で小突いていく。
それでも一撃入れていくのは空気を読める男、一華蝶ならではのこと。
最後はハクオ○華蝶。
「………これはせめてもの手向、け。――超究無双覇斬――
ズガガガガガガザシュッザシュッザシュッザシュッズシュッズシュッズシュッキュピーン!!!ドゴーン!!!!
44HIT!
ハクオ○華蝶は遠慮がなかった。
天高くアニキは舞い上がり、その体が地に落ち――
「……甘、い」
――え?
……交わらざりし生命に ――チガ チヲコバム ココロガ ココロヲクダク――
49HIT
ハクオ○華蝶の口から、謳う様に言の葉が紡がれる。
……今もたらされん刹那の奇跡 ――キセキハオトズレナイ――
54HIT
それは抜く手も見せぬ光速の斬撃。
アニキの体は、風に舞う木の葉のように、宙を踊り狂う。
……時を経て…… ――ユメナド……――
59HIT
「もうやめてくれ!!!アニキのHPはとっくに0だ!!!」
一華蝶が泣きながらハクオ○華蝶に抱きつき、とめようとする。
しかし、ハクオ○華蝶はやめようとしない。
……ここに融合せし未来への胎動! ――ソコニハソンザイシナイノダカラ――
64HIT
「………どい、てオニイチャン。そいつ、殺せな、い」
「殺しちゃダメだってば!!!!」
……夢想剣! ――アラガウカ!――
69HIT
ハクオ○華蝶は一華蝶を無視して、連続技を放とうとするが、一華蝶がアニキを庇う様に間に割り込んだ。
……私には……無理 ――ムダダ! サカラエヌサダメガアル……――
それ以上の攻撃は、なかった。
「………くっ、後一歩という、ところ、で」
「後一歩でどうなってたんだよ!!!うっ、ぐすっ……ううぅ……」
ハクオ○華蝶は苦しげに膝を折り、地に手をつく。
一華蝶は、緊張によるものか、安堵によるものか。地面にへたり込んで半泣きだった。
「………一刀、あなたが、この世界とは違う世界から来たのは知って、る。あなたの優しさは尊いも、の。けれど、この世界ではそれは甘さでしかな、い。そんな甘い考え、じゃ、この世界では生きていけな、い」
「……俺は怒ればいいのか?それとも泣けばいいのか?むしろ笑うところなのか?お願いだから元の世界に返してください」
慰めるように、諭す様にヒナが一刀に語りかける。
一刀は何だか、自分の大切な人が侮辱されたような気分になってむかついたが、ただ自分の無力に嘆くことしか出来なかった。
そしてアニキが地に落ちた。
星華蝶が初撃を叩き込んで、今に至るまで、アニキはずっと同じ体勢で硬直していた。
「ぐあああああああああああぁぁぁーーーー!!!」
そして、時は動き出す。
盛大に断末魔の叫び声を響かせながら、アニキは地に倒れ伏す。
しかし驚いたことにアニキにはまだ息があった。
「ぐ、ぐふっ……。見事だ、華蝶仮面……。だが、俺を倒しても、いずれ第二、第三のアニキが、お前達の前に立ち塞がるだろう……覚悟するんだな、は、ははははははははは……――ガクッ」
ガッツであの鬼畜な猛攻を乗り切ったようだったが、ハクオ○華蝶の攻撃には毒効果があったらしく、不気味な捨て台詞を残して、アニキは力尽きた。
「強敵だった……。敵ながら見事な散り様、来世では別の出会い方をしたいものだ」
「………アニキ、無茶しやがっ、て」
「……ぐぅ」
星華蝶は空を見上げて、死者の魂をおくる様に独り言ををいう。
ハクオ○華蝶は散っていった英霊を想い、悔しそうにうつむく。
一華蝶は現実逃避をしていた。
こうして、幼き華蝶仮面たちは危機を乗り越えた。
しかし、アニキの不気味な予言と共に、その行く末に大きな不安が残ることとなった。
だが、華蝶仮面は負けない。
その身が滅びるそのときまで、街の平和を護るため、彼女たちは戦い続ける。
いけいけ、僕らの華蝶仮面!負けるな、僕らの華蝶仮面!すごいぞ、僕らの華蝶仮面!
続きは、『なごみ文庫』の『御門智』著『恋姫†無双外伝:紫電一閃!華蝶仮面』全四巻をご覧下さい。
(注:この作品とは何のつながりもありません)
後悔書き
華蝶仮面。
……真夜中の自分の異常なテンションに、正直ひきました。
意味不明すぎです。穴があったら入りたい。そんな一品です。
他に書くことなんてありませんww
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※注
これは華蝶連者ショーです。本編とはあまり関係ありませんので興味のない方は見ないほうが精神衛生上いいです。
この作品自体崩壊しがちですが、ここからは完全に異世界です。ご注意ください。
本編からもご都合主義的に切り離してお考え下さい。