私が蒼を旅立ち1週間が過ぎた・・・
ようやく魏に到着した・・・
我が居城へと歩みを進める・・・
その足はとても軽く、故郷に帰ってきたことを実感した・・・
私が自分の居城まで足を運ぶと、門兵が私に気付く。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だ!! 入城許可書か身分の証明できるものを見せろ」
どうやらフードのせいで顔が見えないらしい。仕方ない、取るか・・・
私はフードを取り、顔を見せる。
「な!?!? そ、曹操様!!」
「何!? 失礼いたしました!! ご無礼どうぞ平に・・・」
そこまで怯えなくともいいのに・・・
「構わないわ・・・貴方達は職務を果たしたに過ぎない。褒められこそすれ誰も咎めはしないわ」
私がそう言うと門兵が深々と頭を下げ、感謝の言葉と共に開門を命じた。
そういえば皆と会うのは1年ぶりね・・・
如何しているかしら・・・
「華琳さ~ま~!! 何処ですか!? 華~琳~さ~ま~!!」
この声は・・・まさか・・・桂花!!
「華琳さま!? 華琳様は何処だ~~~~~!? おい! そこの! 華琳様を見なかったか!?」
「み、見ていません・・・見ていませんから・・・放してください!! 首がしまって苦しい・・・」
今度は春蘭・・・しかもあの子・・・兵士を締め上げて・・・後でお仕置きね・・・
このままでは兵士があの二人に絞め殺されるわ・・・
「何を騒いでおるか!! 私はここにいる!!」
私は出来る限り大きな声で、それこそ城に響く様に怒鳴る。
暫くして二つの足音が響き渡る。
全く・・・あの二人は落ち着きなさい・・・
「「華琳様!! お帰りなさいませ!!」」
「ええ、ただいま。留守を預かってくれて有難う。感謝しているわ」
私がそう言い二人に頭を下げた。
「おやめください!! 華琳様!! 私達などに頭を下げるなど!!」
「そうです、桂花の言うとおりです!! 華琳様が頭を下げるなど……!!」
私は二人の手を取り、こう言う。
「いいえ、これは魏王としてでは無く私個人の感謝の言葉……だから貴女達も個人としての桂花、春蘭として捉えなさい」
私がそう言うと目を潤ませる二人。
「有難う御座います……華琳様……」
「そのお言葉だけで私達の今までの努力も報われます……」
そして、私は魏の閣僚全員を招集させた。
「皆、私の留守を良く守ってくれた!! 心より感謝する!! そして、これは私個人の想いでもある!! 皆、有難う」
私がそう言うと、目を潤ませながらこう言う。
「お帰りなさいませ、華琳様……」
秋蘭は微笑みながらそう言う。
「お帰り~~~♪ 華琳様~♪」
季衣が嬉しそうにそう言う。
「お帰りなさいませ、華琳様」
流琉もまた礼儀正しくも嬉しそうに言う。
「お帰りなさいませ、華琳様!!」
凪は真面目に答えるが言葉の中に嬉しさが混じっていた。
「お帰りなさいなの~~♪ 華琳様~~~♪」
沙和もまた嬉しそうに言う。
「お帰り、大将」
真桜もそう言う。
「お帰り!! 華琳!! よう帰ってきた」
霞も嬉しそうにそう言う。
ああ……帰ってきたんだ……魏に……みんなの所に・・・
私は嬉しさで胸が一杯になる。
今まで抱かなかった感情、これが帰郷の喜びか・・・・・・
私と春蘭は訓練場の中央に立っていた。
二人ともそれぞれ刃を潰した、得物を持っていた。
「本当によろしいのですか? 華琳様?」
春蘭が構えながらそう言う。
「ええ、構わないわ、全力で来なさい」
そう私は春蘭の実力が何処までなのか試す為、戦っている。
いや・・・私が私の力を試したいんだ・・・我が魏武の頂点にいる春蘭に・・・
「秋蘭、合図を頼むわ」
「解りました」
秋蘭がそう答えて、右腕を天に掲げる。
「それでは……始め!!」
その声で私達の訓練が始まった。
≪春蘭サイド≫
開始の合図が秋蘭の口から告げられ私は踏み込もうとしたが踏み込めなかった。
(隙が・・・全然無い・・・踏み込んだら此方が倒れる!!)
私の武人の本能が告げる。
目の前にいる者は違う!! アレは私達の戦える範疇でない・・・と・・・
この感覚・・・北郷 一刀や北郷 愛紗、及川 佑に感じた感覚に似ている。
どちらかと言えばこの三人は対峙して感じ取れず、後から骨身にしみて理解すると言った感じだ。
だが、華琳様の場合は始まる途端に感じる。
この三人の場合、多分本気では無いと、私達など本気でなくとも叩き潰せるという自信と余裕・・・
かたや華琳様は最初から感じる。
改めて感じさせられる・・・上には上がいる・・・
私は武しか無い・・・その為、剣を振るい続けてきた・・・
解る・・・今の華琳様は呂布より遥かに強い・・・
ええい!! 埒があかん!! このまま突っ込む!!
「せい!!!!」
私は剣を上段から全力で振り下ろす。
しかし、華琳様はそれを軽くかわした。
(な!? 私の全力の斬撃を!?!?)
≪秋蘭サイド≫
開始して早々、姉者の顔つきが変わった・・・?
あれは!? 姉者の本気の顔!?
戦場でしか見せない顔をしている・・・
確かに姉者の頭はアレだが武にかんしては信頼できる・・・
その姉者が本気・・・
それほどまでに華琳様がお強くなられたのか?
姉者が冷や汗を流しながら本気で対峙しなければならないほど・・・
「せい!!!!」
姉者が全力で剣を振るう。
私ですら目で追えない斬撃を華琳様は何事も無かったかの様に軽くかわした。
そして、絶の柄で姉者の鳩尾を強かに衝く。
「ぐふっ!?!?」
苦しそうに悶絶する姉者に華琳様は絶を巧みに動かし、姉者の左脇に絶を通し、斜めの状態の柄を右肩に押し当て、足払いをし、崩れた状態から地に叩き付けた。
「がはっ!?!?!?!?」
姉者は空気を求めて呻く。
あれは・・・北郷が以前見せたCQCに似ている・・・
「大丈夫? 春蘭?」
「はい・・・大丈夫です・・・華琳様・・・」
私の問いかけに呻きながら呟く春蘭。
どうやら、大丈夫そうだ。
「しかし・・・強くなりましたね・・・華琳様・・・」
その言葉に私は答える。
「私は強くなっていないわ、春蘭・・・私は成長しただけ・・・唯それだけなのよ・・・」
そうだ・・・
私は強くなど無い・・・それはあの1年間で嫌というほど思い知らされた・・・
あの四人からしたら、私達3人など団栗の背比べでしかない・・・
それを理解した時、私は辛かった・・・
今まで信じてきたものが音をたてて崩れ去った。
力無くば何もする事など出来ないそう思っていたが、私より遥かに力も頭も権力もあるあの四人でさえ無理な事があるそう改めて思い知らされた。
世界は広い・・・
この大陸は彼らを押し込めておくには些か狭すぎるみたいだ・・・
そう感じずにはいられない四人だった・・・
私は追い越せるだろうか・・・あの四人を・・・
おまけ
「強くなられましたね、華琳様・・・」
秋蘭がそう私に語りかけてきた。
「強くなったんじゃないわ・・・唯成長しただけ・・・それだけよ・・・」
「・・・そうですか・・・」
「ところで華琳様、どうやって強くなったの?」
季衣がそう質問してきた。
「それはね・・・朝5時位に叩き起こされ、眠いと文句言うと全力で拳骨を頭に叩きこまれ、床にめり込み、10貫背負って、三里全力疾走で走らされ、朝の訓練で死ぬ一歩手前まで訓練して、昼には巻物1万本処理したら強くなったわ」
私は爽やかな笑顔でそう言う。
「何ですか!? その拷問!? 良く今まで生きて来れましたね!?」
凪の突っ込みが炸裂する。
「人間中々死ねないものね、綺麗なお花畑と綺麗な川の向こう側でお母様が手を振っていたのを何度も見たわ」
私は爽やかな笑顔でそう言う。
(それは、三途の川では!?!? それに向こう岸に死者!? 爽やかに笑いながら言ってるけど、明らかに死にかけてる~~~~~~~~~~~~~~~~!!)
華琳以外の全員はそんな事を思った。
「そうね・・・貴女達弱すぎるし、業務は非効率的だわ、兵達も強くしないと・・・私が鍛えてあげるわ。大丈夫、師匠たちみたいなこと言わないから」
私は爽やかな微笑でそう言う。
「ちなみに北郷達はなんと・・・?」
あら秋蘭、何、汗をかいているのかしら?
今は涼しいくらいなのに・・・
「『弟子には人権なんて無いもんね~~~~~~~~~~!!』だそうよ~~~大丈夫♪ 貴女達や兵達には人権くらいあげるわ♪ だって・・・貴女達は私の可愛い所有物ですものクスクス」
(微笑みながらそんなこと言わないで~~~~~~~~~~~~~!!)
またまた、華琳以外は心の中でそう叫んだ。
暫くして魏の練兵場からは・・・
『ぎやああああああああああああああああああ!!』
とか・・・
『あへへへへへへへへへへへ~~~~~~~~~!!』
とか・・・
『微笑が!! 微笑が襲ってくる~~~~~~~~~~~!!』
とかの奇声が響き渡った。
魏の城内では・・・
『ほ、微笑みの華琳様が・・・微笑みの華琳様が~~~~~~~~!!』
とか・・・
『逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ!・・・』
とか・・・
『やなの~~~~~~~~~~~~~~~!! 死にたくないの~~~~~~~~~~~!!』
とかの奇声が響き渡った。
この怪奇現象の原因は『微笑みの華琳サマ』が現れたと人々は噂するようになった・・・
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恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。
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