「ダメな子ね、こんな時期に帰って来て、千(ユキ)ちゃん帰てったよ。アヤさん」と母の言葉。
「何よその言い方、やっと帰って来れたのに。
忙しい娘に言うセリフ?タキさん・・・千ちゃん元気だった?」と私。
「まあ何時も通りかな」
「そっか」
私は昔からユキ・・・ お婆ちゃん子。
ユキちゃんに育てられたと言ってもいい。
昔は家業が忙しく両親は私の世話をする間も無く。
私の隣りには何時もユキちゃんが居た。
私の世話やきか。
お婆ちゃんは歌が好きでいつも何か歌っていた。
シャンソン、イージーリス二ング、民謡、演歌、Jpop、アニソン、ヘビーメタル。
ジャンルを問わづに。
お婆ちゃんの歌声は聞く人の誰もが癒され泣き、笑う人がいた。
只、1曲。
まかないを作る時にお婆ちゃんが必ず口遊んでいた歌。
その歌の名は
夢現
曲名だけユキちゃんは教えてくれていた。
でも。
お婆ちゃんの若い頃に流行った歌でもなく。
誰に聞いても何の歌か知る人はいなかった。
お婆ちゃんに聞いても答えてくれず。
只、笑っていた。
そう笑って泣いていた。
何処か大人の曲の様でいてでも何処か幼いふわふわとした感じもする歌だと思っていた。
教わる事無く諳んじて見せると、ユキちゃんは笑って喜んでくれた。
ユキちゃん歌いすぎ。
一度だけお婆ちゃんはこう言った。
“マコっちゃん歌ってくれるかな”
と。
どんなユキちゃんの言葉よりも深い言葉に聞こえた。
それがユキちゃんの最後の言葉でもあったから。
「あー、アヤ~さ~ん!その瓶取ってー」
お婆ちゃん私、歌手になれたよ。
デビュー曲は。
「これ?エクストラ・ヴァーじん・おいる?」
・・・そう。
「何作るの?中華屋が・・・ああ!」
夢現
「中華3千年の極み」
ユキちゃん解ったよこの歌の意味。
何の歌なのか。
「タキさん何言っ・・・あ」
喜んでくれる?
「ユキさんが作った、当店随一の看板メニュー!!!」
笑ってる?
『っの・・・ユキチャーハーン!!!!』
ユキちゃん。
「最高だよね」
おじいちゃんと歌ってる?
“夢現”
そう。
ふたりだけのLOVE SONG
了
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“君がのぞむパライソ”というイラスト、漫画、ショートショート?ジャンルを限定しないオリジナルシリーズの一作品です