No.110744

Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)一巻の5

4続きです。一巻がこれ終了などで、これまで読んでくれた人は有難う御座いました。
次回は、すぐ載せるつもりなので、これを期に、また、つきあってください。

2009-12-06 01:54:27 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:628   閲覧ユーザー数:591

初めての課外授業 後編

 

 

前線が奮闘しているとき建物の裏では、サブとジークが黒服たちを倒し、一休みをしていた。

「・・・最近のシークレットサービスって、魔法使うのか?」

「そんなシークレットサービスいないと思うよ」

と、ジークは苦笑いを浮かべて、突っ込みをいれた。

「それにしてもサブ、派手に暴れてたけど、この人たち殺してないよね?」

ジークは周りに倒れている黒服の人たちを見ながら、サブに訊いた。

 その問いにサブは微笑する。

「ちゃんと急所は外してるぜ。なんたって『鳳凰流は活人の剣であり、殺人の剣ではない』 って、サク姉から何回(なんべん)も聞かされたから、いやでも思い出しちまう」

と答えると、ジークは苦笑いを浮かべた。

そんなやり取りをしているといきなり、大きな爆発が起きた。

爆発が起きたのは屋敷。

 サブとジークはすぐにそちらの方へ視線を向けると、屋敷から黒い煙が上がっている。

「・・・おい。なんか激しすぎねぇか?」

と、サブは真剣な表情を浮かべて、隣に居るジークに尋ねた。

 ジークはすぐに無線機を使い。

「こちらα4・・・だめだ。ノイズしか聞こえてこない」

と、サブの方を向いて言った。

「電波妨害みたいだね。リリとメグミさんと合流した方が良さそうだな」

と、サブはジークに言うと、ジークは「うん」と返事を返した。

そして、二人はリリとメグミの居る方へ駆け出した。

 

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 屋敷の中のとある部屋では、目つきの悪く威圧感のある男性が、足を組んで椅子に腰掛けて、タバコを吸っていた。

すると、その部屋に黒服の男が入って来る。

「ん? どうかしたか?」

「フェン隊長。何者かが屋敷内―――ッ!」

黒服の男は椅子の横の床に倒れているものを見て驚愕した。

 フェンと呼ばれた男は「どうかしたか?」と言って、男の見ている方を目で追うと「ああ」

と気付くなり、

「鬱陶しいから殺した」

とそれが当たり前かのように教えた。

 男は恐怖で凍りついたように固まった。

 だが、フェンはいつまで経っても報告を再開しないので聞き返す。

「・・・で、侵入がどうした?」

その声で男は我に帰り、報告を再開した。

「は! 侵入したのは一人で。今、一階のフロアーで交戦中です」

「一人だぁ?」

フェンは男の報告に「おもしれぇ」と呟き、楽しそうな笑みを浮かべた。

 そして、男に向かって、

「何もたついてんだ? さっさと消して来いよ」

と言うと、男は「はっ!」と言って、部屋を飛び出して行った。

誰もいないくなった部屋で、フェンは声を殺しながら笑う。

「ここまで来いよ。俺にその面拝ませろ」

その笑い声は黒かった。

 

 

屋敷の方から爆発音が響いた。

メグミは少し怒りの表情を浮かべていた。

「目立てとはいっても、ちょっとやりすぎよ! リキアもなんで止めないのよ! まったく」

と愚痴をこぼすと、無線機のボタンを押し、

「こちらα1。α2、α3、少しやり・・・・・ん?」

文句を言おうと思ったがノイズしか聞こえず、「何かおかしい」と異変に気付くと、顔色が変わった。

メグミの異変に気付くと、リリもすぐに無線機を確認する。

「・・・ダメ! 全然繋がらない! メグミさん! すぐにみんなとご―――」

「リリ! 援護!」

メグミは剣を抜き、構えると、リリが言い終わる前に言葉を被せた。

リリは「え?」と呟き、前に視線を向けると、前方から小型の兵器がこちらに向かってきていた。

数は五体。

メグミはすぐさま草むらから飛び出すと、兵器に突っ込む。

すると、二体の兵器はそれに反応して、載せている小型のビーム砲を向かって来るメグミ

に放つ。

それをメグミは、左右にうまくかわし、間合いを詰めると、二体の兵器を一瞬にして斬り壊した。

メグミから少し離れたところ、残り三体の兵器がリリ向かって攻撃をしてきた。

その攻撃をリリは、シールド魔法《聖(アイ)盾(ギス)》を自分前に展開してとめると、すぐさま違う魔法を詠唱し、自分の周りに数個の光の玉を出現させた。

そして、光属性の攻撃魔法《ホーリーショット》放った。リリの攻撃は吸い込まれるように当たり、兵器は爆発すると辺りに破片を飛び散らした。

二人は兵器を全滅すると、次は二つの影が近づいてきた。

二人はその影の方に向かって構える。

だが、その影はサブとジークだった。

それを確認すると、メグミは構えを崩し、ホッとした表情を浮かべた。

「やっぱりあんた達は大丈夫だったみたいね」

「『やっぱし』って少しは心配してくれよな」

サブはジト目でメグミを見ると、メグミは「だって、あんた殺しても死なないでしょ」と呆れた表情で返した。

 そんな二人のやり取りを、ジークは苦笑いを浮かべながら、

「二人も大丈夫そうで何よりです。通信機が使えなくなったから心配しました」

「あんた達が来たってことは、あとの二人も―――」

―――来る、と、メグミが言おうとした瞬間、屋敷の方から大きな爆発が起きた。

「―――わけないわね。正面に行くわよ。これから二人の援護に向かう!」

と三人に言うと、三人は返事を返し、みんなは駆け出した。

 

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四人は正面に回ると、辺りは怖いほど静かだった。

四人は辺りを見渡すと、大勢の黒服たちが倒れている野が目に写る。

そのとき、黒服たちが倒れている中で、見知った男が混じっていた。

メグミはそれに気付くと「リキア!」と叫び、すぐに駆け寄り、リキアを抱き起こした。

だが、リキアの首は力なくうな垂れ、息をもちろんしていなかった。

「・・・なんで・・・こんな・・・」

そんな姿を見て、リリは気が動転した。そして、リリは「あ!」と何かに気付き声を上げると地面に、黒く焦げている物体を拾い上げた。

それはリョウが着けていたチョーカーだった。

次の瞬間、屋敷から大きな爆発が起き、ガラスが大きな音をたてて割れた。

「まさか・・・リョウ君。一人で・・・」

リリは屋敷の方を見ながら呟くと、魔法で自分の体を浮かすと、そのまま屋敷に向かって飛んでいった。

その行動にジークは驚き「リリさん!」と呼び止めるが、リリは止まらない。

サブは「《飛行(フライ)》! あのバカ」と悪態をつくと、すぐに駆け出し、リリを追う。

「あ、サブ!・・・メグミさん!」

と、ジークはリキアの亡骸を抱いて、俯いているメグミに呼びかけた。

それに反応したのかメグミは、ゆっくりリキアを地面に置き、目を擦ると、

「・・・わたしたちも追うわよ!」

と指示をだすと、二人は屋敷の方へ駆け出した。

 

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また、屋敷内で爆発が起きた。

フェンは二本目のタバコに火を点けた。

(だんだん近づいてるみてぇだな。さあ、ここまでたどり着けるかな?)

フェンは心の中で呟き、暗闇を見つめながら逸る気持ちを必死に抑える。

だが、口元から笑みがこぼれた。

「「うあぁぁぁぁ!・・・・」」

目の前の扉の向こうから部下の叫び声が聞こえてきた。そして、辺りが静かになると足音がフェンの方へと近づいてくる。

「来たか!」

フェンは暗闇の方へ嬉しそうに言った。

そして、椅子から立ち上がると、横に立てかけていた剣を鞘から抜くと、鞘を横に投げ捨て、暗闇を見つめた。

暗闇から靴音がどんどん近づいてくる。

そこから、二点の赤い光が浮き上がってきた。

 

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リョウは前に居るフェンに向かって、

「お前がここのボスか?」

「ああ・・・でもなんだ。獲物にしちゃーちと小せぇが・・・なるほど、アイツラじゃあ、止められねぇわなぁ」

そう言うと、フェンは右手に持っている剣をリョウに向けて、突き出した。

「さあ、殺(や)ろうぜ」

と開戦を告げる。

 その瞬間、リョウは地面を思いっきり蹴り、一瞬で間合いを詰め、刀を左から右へ横一閃に振るう。

それに合わせて、フェンは剣を振り下ろし、刀と剣がものすごい音をたてて、ぶつかった。しかし、リョウの勢いがすごく剣を弾き飛ばし、相手を仰け反らした。フェンは急いで体制を直そうとするが、リョウの追撃は早く、もう一度、反対側から胴体に向かって、横一閃。リョウの刀はフェンの肉を切りつけ、辺りに血が飛び散る。

すると、フェンは怯むことなく、リョウに向かって、剣を振り下ろした。

だが、リョウはその攻撃を飛び退きかわす。そして、間合いを空けると、すぐに構え直

し、目の前のフェンを睨みつける。

 フェンは攻撃を受け、血が滴っているが笑みを浮かべながらリョウを見据える。

「いいねぇ! そう、そうじゃねぇとおもしろくねぇ!」

と口から血を吐きながら、フェンはリョウに告げた。

すると、ポケットから何やら瓶の様な物を取り出すと、それを一気に口に運んだ。

その瓶に入っているものを飲み干すと、空瓶を横に捨て、

「さあ、本番はこれからだ!」

と宣言するなり、フェンは苦みだした。フェンの体はどんどん形を変えていく。

 髪は伸び、口から牙を出し、刀はなした手から爪が伸び、ついには肌の色も変わった。

そして、フェンの唸り声が止むと、そこには、人間ではないまるで人間の形をした獣が立っていた。

(獣人!)

リョウはそれの姿を凝視し、心の中で叫ぶ。

次の瞬間、フェンはリョウを確認すると、ものすごいスピードでリョウに向かって飛び込んで来た。

鋭い爪が襲い掛かってくるが、リョウはかろうじて反応し、刀で防ぐ。だが、その威力はすさまじく、そのまま、後ろの壁まで吹き飛ばされてしまった。

リョウは壁に背中を打ちつけ、意識が飛びかかるが、必死で繋ぎ止めた。

すぐさま、顔を上げ、前に向き直るがフェンはいない。

リョウは(え?)と心の中で呟くと、次の瞬間、フェンが目の前にいきなり現れ、爪を突き出してきた。

リョウは咄嗟に左にかわそうとするが、かわしきれず、左肩につめが突き刺さった。

「ガッ!」

リョウの顔は苦痛で歪む。

「いい声で鳴くじゃねぇか。もっと聞かせてくれよ」

と、フェンは言うと、爪を引き抜き、リョウが怪我を負った横腹を思い切り蹴り、リョウを吹き飛ばした。

リョウは地面に叩きつけられるが、血を吐きながらもなんとか立ち上がろうとする。

その姿をフェンは笑いながら、

「なんだ、もう終わりか? てめぇの力はこの程度か? さっきまでの威勢はどうした?」

と、リョウに向かって罵声を浴びせる。

 リョウはなんとか立ち上がるが、足はふらつき、もう腕を上げる力も残っていなかった。

それを見てフェンは舌打ちをして、

「初はよかったのになぁ・・・まあ、楽しめたよ」

と言い捨てると、リョウに向かって飛び出した。

フェンが近づいてくる。

だが、リョウは動けない。

(動け!・・・動け!・・・動け!・・・)

リョウは何度も自分に向かって叫ぶ。しかし、体はまったく動いてくれない。

もうだめだ、と思った次の瞬間、自分の体大きく鼓動した。

そして、頭の中で懐かしい声が聞こえてくる。

小僧、ナンテ様ダ。ワシト契約シテコノ様トワナ。

(うるさい。てめぇは引っ込んでろ)

この声、間違いない奴だ。

ワシガ力ヲ少シ貸シテヤル。

(もういい。もうあれは繰り返せない)

リョウは必死に拒否をした。

 あの惨劇は二度と起こしてはいけないから。

 心配スルナ。今回ハ少シダケダ。

 その言葉は禁断の木の実の様に感じた。

 オ前ガ死ネバワシモ死ヌカラナ。

(・・・判った。貸せ! てめぇの力を!)

 ソレデイイ。ソウデナイトオモシロクナイ。

次の瞬間、リョウの体から膨大な魔力が膨れ上った。

フェンは「なに?」と呟き、驚気の表情を浮かべている。

しかし、リョウはそんなこと関係なしに、その魔力を使い、炎刀斬を放った。

フェンはそれにすぐ反応し、右手を突き出すと自分の目の前に防御壁を作り出し、受け止めようとした。だが、その壁をガラスのように割れ、炎刀斬はそのままフェンを斬りつけた。

辺りにフェンの血が飛び散る。

フェンは大きく仰け反り、そのとき目に入ったのは、リョウが目の前で追撃を仕掛ける瞬間だった。

「くそぉぉぉぉぉ!」

リョウはフェンの懐に入るが、スピードを落とさず、九回斬りつけて、そのまま突っ切った。

 それは道場でサクヤが見せたように一瞬にして九回繰り出す斬撃。

《九鬼襲》

「・・・まさか・・・俺・・・が・・・狩られる・・・とはな」

と言い残し、リョウの後ろの影はゆっくりと沈んだ。

 

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リリは屋敷に入ると黒服の人たちが床に倒れていた。

一瞬それに驚くがすぐに辺りを見渡し、リョウを探す。

そして、サブがすぐ後ろから追いつくと周りを見渡し、

「ひでぇな。こいつら生きてんのか?」

と呟くが、リリには聞こえていない。

 するとまた、どこかの部屋で大きな音がした。

それを聞くと、リリは音がする方へ向かった。

それをサブは「リリ!」と呼び止めるが、聞こえていない。そして「たく!」と言葉を吐くとすぐに、リリのあとを追いかけた。

 

リリは音がする方へと行くと一つの部屋の前に着いた。

その部屋からは物音はせず、変に静まり返っていた。

そして、とても嫌な予感がした。

リリは恐る恐る部屋の中に入る。

そして、暗闇の中で小さな影が俯いて立っていた。

すぐにリリは駆け寄ると、

「リョウ君!」

と叫ぶと、それに反応して、リョウは顔をゆっくりと上げた。

だが、リョウの顔には腕から頬にかけて変な模様が浮かび上がっていた。

その姿は一瞬、その顔はあの時と被った。

リリは驚き、一瞬足が止まってしまう。

だが、次の瞬間、リョウは糸が切れたかのようにその場へ崩れ落ちた。

リリはハッと意識を戻すと、すぐにリョウに駆け寄り、抱き起こした。

「リョウ君! リョウ君!」

と涙目になりながら何度も叫びかけた。

だが、リョウはその呼びかけに答えることはなかった。

エピローグ

 

 

 今日は天気が良く。辺りは少し葉桜が見え始め、もう春の終わりを告げようと知っていた。

 リリは花束を抱えて、ある場所に向かっている。

 その建物の前に行くと入り口の前で二人の少年が待っていた。

 それはサブとジーク。

 サブはリリに気付いたのか手を振って合図をしてきた。リリも手を上げて答える。

「ごめんね。遅れちゃって」

「気にしなくてもいいよ。僕たちも今来たところだから」

リリが謝ると、それをジークがやんわりと返した。

「じゃあ、行こうぜ」

サブは言うと、建物の中に入った。

 二人もそのあとについて行く。

 三人が入ったのは魔連御用達の病院。

 

 あの事件の後の検証の結果、やはりあの黒服の人たちはただのシークレットサービスではなく、どこかの機関で訓練を受けた兵士たちだということが判った。

 そして、リョウ君が倒した男性は、今回の作戦を行なっていた隊の隊長であり、時空間で指名手配されている犯罪者でもあった。

 敵の隊の目的は、わたしたちが捕獲しようとしたターゲットの捕獲もしくは抹殺と証拠の抹消であったらしい。

 そして、ミッション中亡くなったリキアさんはその二日後送られた。

 メグミさんは落ち込んでいたが「この道を選んだときからこんなことが起きることは覚悟している」と言って、今は少し立ち直っているが、リキアさんの葬儀のときのさびしそうな横顔はわたしの中で焼きついて離れない。

 そして、リョウ君は・・・

 倒れたあとわたしの呼び声に答えくれることはなかった。

「・・・で、死んでたら感動する話だったんだけどなぁ」

と病院の廊下を歩きながら、サブは隣にいるリリに向かって言った。

リリは恥ずかしさで頬を赤くして、

「だってホントに死んじゃたかと思ったんだよ!」

と必死に言い返した。

 ジークは二人のやり取りに微笑を浮かべる。

三人は目的の部屋に着くと、リリがノックする。

すると、中から返事が返ってくると扉を開けた。

そこに居たのは包帯を巻かれているリョウが、ベッドの上で座っていた。

サブとジークは部屋に入ると各々挨拶すると、リョウは「ああ」と手を上げて応えた。

リリは部屋に入るなり花瓶を持つと「わたし。お花変えてくるね」と言い残して部屋から出て行った。

残った二人は、ジークはベッドの横に立ち、サブは近くにある椅子に座ると、

「で、体の調子は?」

「あと一週間したら退院できるってよ」

と、リョウは質問にぶっきら棒に答えた。

 すると、サブは少し呆れた表情する。

「マジあん時、大変だったんだぜ。まぁ、リリに感謝すんだな。リリの回復魔法がなかったら今頃、おめぇも墓ん中だ」

「・・・あいつには感謝してる」

と、リョウはサブの言葉に顔を見ずに答えた。

「どうせ、本人にそれ言ってねぇんだろ?」

リョウは「ああ」と平然と言うと、サブは呆れたように溜息をついた。

 ジークは苦笑いを浮かべて「リリちゃんも報われないね」と呟いた。

 すると、サブは「でも」と話を変えてきた。

「お前はいいよな。当分入院だから」

その意味が判らず、リョウは「なんでだ?」聞き返すと、その時入り口からリリと一緒に見知った女性が、入ってくるのを見た。

「だってよぉ。あれから、あの鬼教官。訓練内容濃くして、今や地獄のメニューとなったんだぜ。それに―――」

と、サブはそれに気付かず話している。リョウとジークは固まり、それを見つめていた。

「―――まったく。もう少し俺たちのことを―――ん? どうかしたか?」

サブはリョウが後ろを指差して合図をしているのに気付き、ゆっくり振り返る。

そこにはサクヤが青筋立てて、仁王立ちしていた。

「ほぉー。そんなにわたしの作るメニューが嫌か?」

その顔には笑みを浮かんでいるが、それが余計に怖い。

サブは冷や汗を流しながら、

「いやぁー。そんなことあるわけないじゃないか。サク姉の訓練メニューは俺たちにはもったいないほど、ありがたいくらいですよ」

と変な敬語になりながら言った。

「そんな遠慮しないでいいぞ。後で道場で相手してやるからな覚悟しとけ」

そう言われ、サブは目を固まった。

 サクヤはそれから視線を外すと、リョウに向き直った。

「今回のことは本当にすまなかった。完全にこちら魔連側のミスだ」

と言うと、サクヤは頭を下げた。

 それを見たリョウは「もう終わったことだからいい」とぶっきら棒に言った。

 それを聞いて、サクヤは「そうか」と言って、顔を上げると「じゃあ次はこれのことなんだが」と言って、懐から一枚の電子紙をリョウの前に突き出した。

 リョウは「なんだそれ?」と言って、それに目をやった。

「今回の報告書だ。ここにおまえが寝坊したと書いてあるんだが? 何か言うことはあるか?」

もう攻守が逆転しており、リョウは言い訳できず、あきらめて「ない」と答えた。

「退院後、罰を覚悟しとけ。その正念を叩き直してやる」

と、サクヤに見下ろされながら告げられた。

「・・・了解」

と、リョウは言うと、ため息をついた。

 ジークは苦笑いを浮かべて、

「まあ、こればっかりはしょうがないね」

と言うと、リリも苦笑いを浮かべた。

そして、立ち直ったサブが、

「ざまあねぇなリョウ。まぁ、がんばれよ」

と笑いながら言うと、サクヤがサブに向かって、

「言っとくがお前もだぞ。サブ」

「・・・・・まじっスか?」

と、サブはショックを受け、首を落とした。

すると、それを見て、みんなは笑い噴出した。

開けてあった窓から入ってきた気持ちのよい風が、部屋のカーテンを揺らした。

 

                                    To be continued

 


 
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