私が人間界に、お兄ちゃんの傍で一緒に、ずっと一緒にいられるようになってから暫くたって…
今HR中の黒板にはあることが書かれてる。
”宿泊学習”
バーベナ学園には三学年合同で、他学年、他クラスとの交流を深めるって目的の旅行がある。
亜沙やカレハ、三年生の修学旅行みたいに自由な時間がたくさんあるわけじゃないけど…
私は、凄く楽しみ。
言ったことの無い場所にいけて、やった事の無いことを、
お兄ちゃんと、お姉ちゃんたちと、それから、新しく出来たクラスの友達と一緒に出来る。
初めてづくしだけど、だからこそ楽しみ。
それから暫く時間が過ぎて、HR終了後…
「ねぇねぇ、枕は持参可ってことだけど、何か持っていく?」
クラスの半分くらいが教室に残って宿泊学習のことで話し、私もそれに混ざってる。
今の話題は枕について。
ゲームとか漫画とか学習とあんまり関係の無いものの持込はダメだけど、枕は大丈夫みたい。
枕が代わると寝つきが良くなくなるって人は意外と多いみたいで、
話を聞くと皆いろんな枕を持ってくるみたい。
普通のだけどいつも自分の家で使ってる枕、低反発枕、抱き枕、中にはぬいぐるみが枕って子もいる。
「リムちゃんはどんな枕?」
「私?私は…」
言われてから考える。
人間界に来て間もない頃、私は楓おねえちゃんの家で用意された部屋で寝た。
お姉ちゃんが用意してくれたふかふかの布団と枕。
研究所のと違ってやわらかくて暖かったな~。
時々ネリネの家やシアの家に泊まった事もあるけど、枕が変わっても特に眠れないってことはなかった。
時々、いつの間にかソファーで寝ちゃってた、って時もあるけど特に問題なし。
それから、時々、最近はよくお兄ちゃんと一緒に…
………///!?
だ、ダメ!こ、こんなこと言えない!
あぁ、胸が凄くどきどきして顔も熱いぃ!
必死に今の考えを振り払おうとするけど、
気付いたら、そんな私を友達が?って顔で私のことを見てた。
「…リムちゃん?何でいきなり顔を赤くしちゃったの?」
「な、なんでもないよ!///」
「そう誤魔化すのは絶対に何かある証拠。あやし~な~」(ニヤニヤ
あ~もぅ、私のバカ!言う通り、これじゃあ自分で白状してるものだよ。
「これは…聞き出さなくちゃね。
取り調べセット、設置!」
「「「ラジャー!」」」
私は椅子に押さえられて、その周りで皆がてきぱきと動く。
あっという間に保健室とか会議室で使われるような仕切り台で囲まれて、
勉強机がスチール製の机に置き換えられて、ライトスタンドが私ぬ向けて照らされ、
食堂のカツ丼が置かれた。
刑事ドラマとかでよく見る取調べ現場が完成。対象は…私。
「さぁ…キリキリはいてもらいましょうか?」
うわぁ…私の前に座る友達含めて、囲いの中にいる皆すっごいニヤニヤしてる。
「十分前…私達は宿泊学習にもって行くMy枕のことを話し合っていました」
「そして、重要参考被告人である貴女、プリムラさんは御自分の枕のことを考え…」
「あることを考え付き顔を赤らめました」
淡々とさっきの状況を述べられていく。う~…特にこれといって特別なことが無いのに、
何故か不安になっちゃう…これが取調室の雰囲気なんだ…
「状況から察するに、プリムラさん。貴女は以上の理由から顔を赤くしなとだと我々は考えます」
「A:我々が想像を絶するほどに乙女チックな枕
B:我々が想像を絶するほどにアダルトな枕
C:惚気が多分に含まれ自分も聞いている我々も赤面してしまうような枕
D:そもそも枕なんて使ってない」
「さあ、以上挙げた4つのうちどれですか?」
「…って、4つ以外の答えは?」
「ふっふっふ、愚問ですね。我々は同じ女性。
同姓の考えていることなんて容易に予想できます」
「更に、今の発言からも4つの中に答えがあると自分から言っているようなもの」
「さぁ…」
「「「どれですか?」」」
う…皆の視線とにやけ顔が怖い。
雰囲気を出すためなのか、始終口調がいつもと全然違う。
答えとしたら…ある意味D以外全部に当てはまっちゃうんだよね。
どうしよう…
でも、本当のことは…や、やっぱり言えない///
ガラガラガラ
「プリムラ、いるかー?」
この声は…
「お兄ちゃん!?」
私が大声を上げると周りの皆が突然の大声に驚いてた。
「ん?なんだこの仕切りは?お~いプリムラ?」
「お兄ちゃん、ここ、仕切りの中」
「…なんでこんな所に、入っていいのか?」
「うn「いえ、土見先輩。今ちょ~っと取り込み中ですので」え?」
私の返事を遮ってお兄ちゃんを入場拒否された。
「プリムラ以外に誰かいるのか?」
「はい。私達リムちゃんの友達で~ッス」
「今ちょっと宿泊学習のことについて話し合ってるところなので、
それも男の方にはあまり聞かれたくない乙女の話です」
「え、ただのまk「っし、リムちゃんはちょっと喋らないで(小声で)」ん~っ、ん~!?」
口を塞がれて喋れない…ここまでする?
「あ~そっか…それなら仕方ないな。とりあえずこっちの教室で待ってるぞ。
楓たちが宿泊学習の買い物一緒に行こうってことだから。
出来ればなるべく早くな」
「は~い(プリムラの声色で)」
「ん?なんか違ったような…まぁいっか。プリムラ、楽しんでな」
ガラガラガラ
…行っちゃった。
お兄ちゃんが教室から出て行ったのを確認してやっと手を離してくれた。
「も~、皆ひどいよ」
「ゴメンゴメン。でも…今のやり取りで答えが分かっちゃいました」
またさっきの雰囲気に戻った。しかも不吉なことを言いながら…
「ど、どういうこと?」
「質問時の反応、そして先程の土見先輩とのやり取り。これはまだ確定ではありませんが…」
「ズバリ!プリムラさん、貴女の枕とは!」
…え、本当にわかっちゃったの!?
「枕であって枕であらず!枕にしているといったほうが正しい!」
じ、じらしてないでズバッと言っちゃってー!
「リムちゃんが枕にしているものそれは…」
「「「土見先輩です!!」」」
声をそろえて言われたー!?
「さぁ、枕にしてるのは王道の腕?」
「それとも肩?胸?」
「もしかして…リムちゃん自身が布団になって土見先輩に覆いかぶさったり?」
「それとも…リムちゃんが逆に枕や布団にされたり?」
「もっといっちゃって、土見先輩がリムちゃんに覆い被さって布団になったり?」
「さぁ…」
「「「どれ!?」」」
うぅ、皆の頭の中じゃお兄ちゃんを枕にしてるってのは確定なんだ…間違って無いけど…
お兄ちゃんと恋人同士になってから、皆が言ってることは全部体験済み。
あ~…言うのも恥ずかしいけど思い出したらもっと恥ずかしくなってきちゃった~///
「ふむ?顔の赤率がました…ということは」
「全部体験済みと見た!さぁどうだ!」
「………………せ、正解」
もう正直に話しちゃったほうがいいかな?
「っく~!もう、リムちゃんってば、羨まし~!」
「二人が兄妹であり恋人同士なのは分かってるけど…」
「あの土見先輩にそんなことしてもらえるなんて、いいなぁ」
う~、ここにもお兄ちゃんのことが好きな人が…
お兄ちゃんは鈍感だから気付いて無いけど、
こうしてお兄ちゃんの事を見てる人って凄く多いんだよね。
「これはもう、リムちゃんの友達としてその幸せ、分けてもらわなくっちゃね♪」
「……っは?」
「うん、そうよねそうよね。あ、リムちゃんはもういいよ」
「待ってるみたいだから早く土見先輩の所に行ってあげて」
「後は私達で作戦を話し合っておくから」
「ちょ、ちょっと待って。作戦って何の?」
「いいからいいから」
私はそのまま背中を押されて教室から出されちゃった。
振り向いた瞬間ドアが閉まったから入れなかった。
…とりあえずお兄ちゃんのところに行こう。
それから数日たって…
宿泊学習1日目の夜。カバンを開けて寝間着を取り出そうとして私は思った。やっちゃった…
しおりの持ち物欄には”旅館の寝着は数に限りがありますので寝着は持参してください”
ってある。それはいいんだけど…
皆が持ってきた多種多様多色のパジャマを見せ合ってる。
模様付きのパジャマだったりチェニックだったりネグリジェだったり…
私はいつも使ってる寝着を入れてきちゃった…いつも使ってる…
「…ねぇリムちゃん?まさかとは思うけど、それって…」
「土見先輩の…Yシャツ?」
そう、お兄ちゃんのYシャツ…
あ~もう、楓お姉ちゃんのうっかりがうつっちゃったのかな?
他の人の前ではまずいって普通のパジャマを用意してくれてたはずなのに…
「う~、リムちゃん!なんでリムちゃんはそんなに幸せなの!?」
「え、ぇえ!」
「そうだよ!乙女全ての夢と憧れをここまで実現しちゃうなんて!」
「な、なにそれ!?」
「まず第一に!土見先輩という美形で優しく誠実で意外とたくましくどこか母性本能がくすぐられる、
正に私達含めバーベナ学園のほとんどの女生徒にとっての理想の男性を恋人に持ち!」
「第二に!妹というなにをしてもにっこりと笑いながら頭を撫でて許してくれる立場にあり!」
「第三に!腕に止まらず膝、肩、胸と毎晩土見先輩に寄り添い包まれながら安らかに眠れ!」
「そして最後に!寝着にあの土見先輩の着古したYシャツという、
毎晩土見先輩を感じながら眠るという幸福!」
「「「これが羨ましく思わずにいられるかー!!」」」
「ぅう…」
は、反論できない…
というか…改めて、私ってこんなに幸せなんだって思う。うん。
「こうなったら、作戦を実行するしか無いわね」
「ええ…準備は既に整ってるよ」
「後は合図を待つだけ。いつでもいけるよ」
「え?え?作戦って?前枕のことを話した時も言ってたけどなんのこと?」
「ふっふっふ、今に分かるわ。期待してていいよリムちゃん」
期待してって…なんだろう、凄く不安だ…
その不安は、消灯時間まで続いてた。
それから消灯時間間近…
ここは私達の班の部屋。班分けはまず男女に分かれて、
そこからは適当、友達同士好きな子達と一緒。
今部屋には私を含めて5人の女子がいる。そこに…
「…なんで俺はここにいるんだ?」
本当に…なんでお兄ちゃんがいるの!?
「実はですね…リムちゃんが普段どんな枕を使っているのかを聞きまして」
「そうしたら返ってきた答えは…なんと、土見先輩でした!」
「それなら…いつも使っている枕で寝たほうがいいかなって思いまして」
「…皆めちゃくちゃだよ~」
本当に…お兄ちゃんが苦笑いしてるじゃん…
「いや~、名前が書かれた部屋に行っても土見先輩がいなかったから驚きましたよ」
「で、探し回って見つけてみれば…なんと王女様方と一緒にいましたから更に驚きましたよ」
「ぇえ!?お兄ちゃんどういうこと!私そんなの知らなかったよ!」
「あぁ、俺もだ。もうそろそろ寝ようかなって部屋に戻ろうとしたら楓達に引っ張られて。
曰く、「男子生徒だけに囲まれた密室にいては稟君が危険です!」ってことらしい」
…あはは~、なんだか納得。
お姉ちゃんたちがいない逃げ場の無い密室なんてこれ以上に無いチャンスだもんね。
「…そのこと先生は?」
「紅女史なら言わなくても察してくれるんじゃないか?」
「…そうだね」
あのボンッキュッボンの先生、お兄ちゃんのこと凄く気に入ってるもんね…
「ふむふむ…そういうことならこの部屋にいてもいいというわけですね!」
「「え!?」」
「そうそう、むしろその方がいいです!
他の部屋でも男子がいたら危険は同じ。
かといって女王様方の部屋にいたと知られては更に危険なことに」
「ここは、いくらリムちゃんがいようとあまり接する機会のない私達と一緒にいるという、
意外すぎて誰も考え付かないこの部屋がいいですよ!」
…口では巧く言ってるけど、皆お兄ちゃんと一緒に痛いだけなんじゃ…
「あ~、匿ってくれるのはありがたいけど、それは君達に失礼じゃ…」
「いえいえ、リムちゃんの恋人でありお兄さんであるなら大歓迎です♪」
「そ、そうか…てか、改めて言われると流石に恥ずかしいな…」
お兄ちゃんがちょっと目を細めて顔を少しだけ赤くしながら微笑んでくる。
…もう、普段凛々しいのにそんな仕草されちゃったらドキッとしちゃうよ///
って、見ると皆顔を真っ赤にしてた。
ハァ…またお兄ちゃんに堕とされた人が増えちゃった…
『ピンポンパンポン…消灯です。各部屋の電気が消えます。足元にご注意ください。
それではおやすみなさい…ピンポンパンポン』
溜息を付く間に、放送が聞こえて私達は寝ることに。
消灯後の外室は原則禁止、見つかったら紅薔薇先生にオシオキコース。
お兄ちゃんは諦めてここで寝ることになっちゃった。
お兄ちゃんは棚を空けて呼びの布団を取り出した。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「ベッドは全部埋まってるからな。俺は床で寝ることにするよ」
…こういう何気ない優しさが皆に惚れられちゃうんだよね。
ほら。皆暗い中でも分かるくらいにぽ~ってしてるよ…
本当なら私のベッドで一緒に寝ようって言いたいけど、
ここでそれを言っちゃったら皆が入ってきちゃうもんね。
楓お姉ちゃんならともかく、皆がお兄ちゃんと一緒に眠るのはちょっとね…
「…それじゃぁ皆おやすみ」
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
「おっやすみ~」
皆違った口調で返してくる。それから、
「皆お休み。…おやすみ、また明日なプリムラ」
私には私だけに向けて言ってくれて頭も撫でてくれた///
直ぐ傍にいるのに一緒に寝られないのはちょっと残念だったけど、
私は頭に残るお兄ちゃんの温もりを感じながら眠りに入った…
次の日の朝…
「…ぁ…!」「…ゃ~…ぃ」「ぅ…ぁ…」
私はカーテンの隙間から差し込んでくる日差しと、かすかに聞こえてくる皆の声で目を覚ました。
時計を見てみると…時間的にはまだ大丈夫だよね。
私は朝はそこまで強いほうでも無いから、まだ布団のふかふかとぽかぽかが…
もうちょっと寝ようと思って布団をたくし上げ…
「う~ん、土見先輩の寝顔…かわいいね///」
…………お兄ちゃんの寝顔?
「普段カッコいい人って寝顔が格段に可愛いって言うけど」
「うん、もう土見先輩だと、もぅ各段なんてものじゃないね!」
!?そうだっ、お兄ちゃん、昨日の夜は私達の部屋で寝たんだった!
慌てて体を起して横を見てみると…皆がお兄ちゃんを囲んでた。
「う…ぅう~ん、あ、後五分」
「キャー!後五分だって!」
「ベタだけど…土見先輩が言うと可愛さ1000倍って感じぃ!」
うん、お兄ちゃんのこういうところ、本当に可愛いって思えて…
って、ダメ!
「ちょっと皆!お兄ちゃんにくっつき過ぎ!」
私は皆とお兄ちゃんの間に入る。
「あ、リムちゃんおはよう」
「うん、おはよう…ってそうじゃなくて!皆はダメ!
お兄ちゃんの寝顔を見るのは私の特権なの!」
「え~ずるいよリムちゃん!その幸せ、ちょっとだけでも私達にも分けてくれたって」
「だ、ダメーーーー!」
にじり寄る皆を払いのけてお兄ちゃんを庇う。早く起きて~!
「…ぅう~ん…?」
「あ、お兄ちゃん起きた?」
上半身をのそのそと起してきたお兄ちゃんの前に屈んで確認する。
「…あれ…プリムラ?」
「うん、私だよ?お兄ちゃん」
「俺の部屋にプリムラ…いないはずなのに…そうか、夢か」
「夢じゃないよ。昨日の事覚えてないの?」
まだ寝ぼけてるみたい。一応確認を取ってみる。けど…
返って来たのは確認に対する答じゃなくて…お兄ちゃんの抱擁だった。
「夢なら…もう少し寝るか…」
「お、お兄ちゃん!?///」
「「「あーーー!!」」」
み、皆が見てるよぉ!
「リムちゃん…羨ましい…」
「…こんな光景目の前で見せられちゃ、もう我慢できないわ…」
「私達も混ざろう!」
「「「おーーーーー!」」」
お兄ちゃん、早く起きてーーーーー!
結局、遅いからって紅薔薇先生が起しに来るまで、
皆してお兄ちゃんを枕にして二度寝しちゃった。
その後怒られちゃったのはいうまでも無いこと…
~あとがき~
『リムちゃんのスリーピングスタイル』いかがでしたでしょうか?
狼シリーズを書いていて、ネタを集めようとSHUFFLE!Essence+をプレイして、
その中でプリムラのYシャツ(稟の)を見てふと思いつき、書きたくなってしまいました。
狼シリーズでシリアスまっしぐらだったので、
自分で書いて、その光景を想像して、自分で癒されましたね。
普通ならありえないこんな光景、こいつらなら実現しちゃうでしょう。
ではこの辺で…
いいもんだな…妹キャラのYシャツ姿…
そう感じてしまう俺は人としてどうなのだろう…
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え~…狼シリーズとは全く関係の無い小ネタです。
いや、あっちでシリアスばっかりだったので、
たまには癒し要素でも書こうと…
まぁとにかく、これを読んでほのぼのしていただけたら幸いです
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