No.1100680

【獣機特警K-9IIG】汚染(3・完)【交流】

古淵工機さん

2022-08-21 21:12:30 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:496   閲覧ユーザー数:474

さて、ヘジホッグ峠から市街へ向かって下った先にある開けた大地。

その中の一帯に工場が広がっている。

 

「はて、見る限り化学工場のようですが……」

 

ノワールは遠くからその様子を見ていたのだが、しばらくすると工場の一角から

ダンプトラックが出ていくのが見て取れた。

 

「……どうやら例のダンプの出どころはここのようですね。……ん?」

 

ノワールが工場の入口に目をやると、そこには市街地からきた別のトラックが入っていくのが見て取れた。

積み荷を見るに別の廃棄物のようで、工場に持ち込んで処理しているのだろう。

 

 

工場の中の様子も、建屋の上についている採光窓からちらりと見ることができた。

ノワールは懐から小型スコープを取り出しその様子を眺める。

 

「……ふむ。持ち込んできた廃棄物に特殊金属を含む薬品を混ぜると……」

 

工場内では持ち込まれた廃棄物に薬品が混ぜ込まれ、反応炉に取り込まれているのが見て取れる。

 

「……それで新たなる原料金属を生成しているわけか……。つまり山中に捨てられていたのはその搾りカスということですね」

 

そして残った搾りカスはダンプへと積み込まれ、そのまま外へと出ていく。

 

「それにしてもあの薬品。……毒性の強さゆえに使用禁止になっているはずでは。しかもその生成物の残りを捨てているとなると……」

 

何かを確信した表情のノワールは、そのまま音を立てずどこかへと去っていった。

 

一方その頃、ラミナ市外縁を、サイレンを鳴らし走行しているパトカーがあった。

K-9隊のナインチャリオットだ。

乗っているのはクオン・ココノエとイシス・ミツザワ。

その二人のもとに謎の暗号通信が届く。

 

「これは……暗号通信?」

「変ですね、発信元はいったい……」

 

首をかしげるイシス。しかしクオンはすぐに確信した。

 

「イシスさん……通信開いて」

「え、でも」

「わざわざ『僕らに』暗号通信を送る相手なんて決まってるようなものでしょ」

「確かにそうですね……通信開きます」

 

イシスがコンソールを操作すると、見覚えのある顔が映った。

 

『やあ、K-9隊のクオンさん、イシスさん』

「怪盗ノワール。やはり君か」

『ええ……ラミナ自然保護区で動物が謎の大量死をしているという事件についてはご存じですか?』

「知ってるさ。生活警備課から応援要請があってね。すぐ現場に来てくれということらしい」

『では話が早い。実はその産廃の発生源を突き止めたのですが、とんでもないものでした』

「とんでもない?」

『……今では禁止されている重金属化合物を市内各地の工場で出た金属系廃棄物に混ぜ、それを反応炉で反応させていたのです』

 

その話を聞いたイシスが戦慄する。

「そんな……そんなことって……」

『その処理施設についていくつか資料を盗み調べ上げたのですが……当局の操業許可も取っていませんでした』

「つまりモグリの処理業者ってわけか」

『そういうことです。このまま有毒物質を流せば自然保護区のみならず、人の住んでいる地区も汚染されてしまうでしょう』

「わかった!礼を言うぞ、ノワール!」

『ご武運を』

 

そしてナイン・チャリオットは例の工場に到着した。

「ここですね」

「よし……この工場からはトラックを一台も出させないで。それからミウたちにも連絡を」

「了解!」

 

イシスを工場敷地に残し、クオンは事務棟へ走る!

 

「……警察だ!お宅さんの工場について二、三調べさせてもらうぞ!!」

その後工場に到着した生活警備課の面々も合流し、工場関係者は次々と摘発。

禁止されている有害物質を使用し、それらを含んだ廃棄物を山中に遺棄、さらに工場そのものも無認可操業……。

工場には遺棄した廃棄物の回収と操業禁止の命令が出され、責任者は次々と逮捕されていくことになった。

 

なお回収された廃棄物は、市内にある公営の無害化処理施設で処理されることとなったのである。

廃棄物が捨てられていたヘジホッグ峠は、というと、陸軍が特殊除染車を派遣し浄化処理を行ったということである。

数日後、ラミナ自然保護区ベースキャンプ。ミウとテムナがミランシャたちと話している。

「モグリの工場も産廃の山も片付けられてすっかり一安心ですね」

「ええ、でも一度失われた命は帰ってこない。それに汚染された土壌が元に戻るのにも長い時間がかかるわ」

「陸軍も除染作業をしてくれはったワケですケド……もう今後こないな事件は起きんでほしいですわ」

「まったくだ!テムナ言う通り。ナディもそう思う!そうだよなマイ!」

「ええ。形はどうあれ、動物さんたちや草や木もみんな命を持っているのに、それが奪われちゃうんですから」

「おまけに放っておけば多くの人が死んでいた可能性もあったわけだよ……」

 

小さな身勝手が環境を破壊する。

小さな身勝手が動植物の命を奪い、生態系を壊す。

そして、その小さな身勝手は自らの身にも災いとなって跳ね返ってくるのだ。

それはいくら時代が移っても、住んでいる惑星が違っても、その惑星の住人が肝に銘じなければならないことなのだ。

 

このファンガルドの自然を小さな身勝手で壊してはならない。

ANCFの隊員たちも、プラネットポリスも、改めてそう誓うのであった。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択