No.109533

深い闇 05

白亜さん

深い闇5話です。

こういうお話は書くのも考えるのも苦手です。
もう少しこういうのを覚えないといけませんねぇ。
タマモちゃんばかり話してて、シロちゃんが空気ですが

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2009-11-29 11:43:05 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6627   閲覧ユーザー数:6336

 

 

 

 

家に帰ってきて、ドアの前には隊長がいた。

 

「お久しぶりね、横島君」

 

物凄く嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

 

 

「お茶が無いんで、水なんですが」

 

「あら、悪いわね」

 

俺が出した水道水を軽く飲んでから辺りを見回す。

元々出て行くつもりで片付けていたせいかほぼ何も無い

本なども血の涙を流しながら捨てたんだ、辛かったぜ…

でも持ち帰ったら多分おかんに殺されるから

命と本をとって命の方をとった俺はまだ正常だと思う。

 

「本当に何も無いわね……」

 

「あ、いや、入らないもの処分したからっスよ」

 

「それを入れてもほとんど基本的なものが無いのね…」

 

「それ、今更言う事かしら?」

 

タマモが鋭い目つきをしながら隊長を睨んでいる。

 

「そうね…今更だわ。本当に御免なさいね横島君」

 

「隊長が謝る事じゃないっスよ。それに俺が貧乏なのは

俺の自業自得ですし、はっはっは」

 

美神さんの魅力に釣られて250円でも構わないって言ったのは

俺自身だしなぁ…ちょっと辛くて交渉してみたけど255円が限界だったし。

ま、でも。お金云々より俺はあの事務所の雰囲気が好きだったんだ、

美神さんやおキヌちゃん、シロタマと人口幽霊がいるあの場所が。

とと、いかんいかん感傷だな、俺には似合わないって。

 

「それで、一体何の用ですか?」

 

多分美神さん関連だと思うが。

 

「えぇ、まずはこれを手渡しに来たのよ」

 

そう言いつつ取り出したのはGS免許だった。

 

「ランクC、横島忠夫…ってこれ俺の免許じゃないっスか!?」

 

ランクCって事は見習いの仮免許じゃなくて本免許じゃねぇか!

 

「あなたの実力が、適正に評価された結果よ。

本当はもう少し上でもいいと私は思ったけど、上の方はそういう風には

見てくれないからランクCと言う事になったわ」

 

本当は令子が渡すべきなんだけどね、と苦笑する隊長。

まぁ、俺の師匠は美神さんって事になってるからなぁ。

うーん。確かに努力が実ったのは嬉しいんだが、

俺暫くGSの仕事に就くのは控えようと思ってるからなぁ、

いや、持っておくだけは只だし、何かに使えるかもしれんな。

とりあえず、隊長から免許を受け取り、見習いの方の免許を手渡した。

 

「おめでとうでござる先生!

ついに先生も立派なごーすとすいーぱーでござるな!」

 

我が事のように喜ぶシロと、相変わらず訝しげに隊長を見ているタマモ。

 

「で?本題は何よ?」

 

おいおい、ちょっと口調が怖いぞタマモ。

 

 

「そんなに睨まないで頂戴。私は何も連れ戻しにきたわけじゃ無いわ。

貴方達が令子から離れてしまったのは、仕方ないと思っているしね…」

 

「ふぅん。その割には急いで行動したみたいね?

美神の所でダメならば自分の所に貼り付けようとでも思ったの?

わざわざ未練が残るようにこんな免許まで持ってきて」

 

「それは、貴方の思い過ごしよタマモちゃん。

この免許はそんなことに関係なく今日彼に渡すつもりでいたの

彼がここに残るのも残らないのも彼の意思よ」

 

「そうやって、言葉で追い詰めてるのが証拠よ。

横島の情にあやかって美神の所にどうにかして縛りつけたいって言う

魂胆がみえみえだわ」

 

「お、おいタマモ少し落ち着け」

 

「横島はこういう事に馴れて無いんだから少し黙ってて。

こいつの言う事をうんうん聞いてたらまず言い様に利用されるわよ?」

 

其れを隊長に聞こえるように言うなって!

ほら見てみろ、隊長の頭に井桁がついてるぞ!?

 

「そう思われても仕方ないかもしれないわね。

私のやってきた事を見たり聞いたりして、信じられるほうがおかしいもの」

 

「今度は同情を引いて横島の気をひくつもり?

いい加減に本題に入りなさいよ、あんたが何かを隠してる事くらい匂いで

わかるんだから。其処の馬鹿犬はともかく妖狐を舐めない事ね」

 

「拙者は狼でござるー!!」

 

シロが騒ぎ立てる中、隊長は黙ってタマモを見続けている。

タマモはタマモで一歩も引くことなく隊長を睨みつけていた。

隊長が何か隠し事してるって言っても俺にはさっぱりわからないし、

もし何か言ってきても俺は断るつもりでいるんだが、

何がタマモをここまでさせるんだろう。

俺はシロを押さえながら見ていることしか出来ない。

 

 

「ふぅ…ここにタマモちゃんがいたのが敗因ね。

彼だけなら簡単に誘導できると思ったのに」

 

そういうと水を飲んで、あの時と同じ。

俺を逆天号にスパイに行かせた時と同じ表情で語り始めた。

 

「タマモちゃんの言うとおり、私は横島君をここに縛り付けたいと思っているわ。

それが令子の為になるならなんだってさせてもらう」

 

「なっ!?自分の娘の為だけに人の人生を縛り付けるなんて

何を考えているでござるか!!」

 

「落ち着けシロ。まずは話を聞いてからだ」

 

「でも、今回の事はそれ以上に大事な事があるのよ…」

 

その表情は重く冷たく感じ、其れと同時に隊長に似合わない弱さが見えた。

 

「令子が狙われているわ。相手は魔族よ…

規模は不明だけど恐らくメドーサクラスが混じっている可能性は高いわ」

 

「なっ!?それはどういうことっすか!?」

 

「表向きの英雄は令子。こういえば判るかしら」

 

「ふーん、そういう事ね」

 

「もしかして、美神さんが英雄だって理由だけで

その魔族達は美神さんをどうにかしようとしてるって事っスか!?」

 

ふざけるな。美神さんだってようやく隊長と一緒に暮らせるように

なったばかりだって言うのに、何故そんな理不尽な理由で狙われなければいけないんだ!

 

「俺も手伝「ストップ横島!」何でだよタマモ!」

 

「落ち着いて横島。

酷な言い方だけど今の横島と美神は何の関係も無いのよ」

 

「だからって美神さんを見殺しに出来ねぇだろ!?」

 

「だから落ち着きなさいって。

忘れてない横島?アンタが自分から頼んだ事」

 

あ…そうか!

 

「小竜姫さまか!」

 

「??どういうこと横島君?」

 

「実は小竜姫様に頼んでいたんです。

俺はもう美神さんを助けられないから、もし美神さん達が困ってたら

出来る限りでいいので助けてあげて欲しいと」

 

「相手は魔族。それも美神を襲うって事はデタントを崩そうってやつなんでしょ?

なら小竜姫が助けに入るのも可能なはずよね。」

 

その通りだ。今美神さんは世界を救った英雄になっている。

それを殺そうと言う事なら、小竜姫様達も美神さんを助ける事は容易なはずだ。

これで美神さんに万が一のことがあればデタントもおしゃかになるかもしれないからな。

 

「幾ら横島が強いって言っても、人間な以上限界があるわ。

その点、神族や味方の魔族なら戦力的にも十分でしょ?いい加減横島を巻き込まないで

あんた達にあんた達の人生があるように、横島には横島の人生があるのよ。

これ以上巻き込むつもりなら、私もシロも、パピリオだって黙っちゃいないわ」

 

「然り。先生はもう十分に苦労されたでござる、巻き込まないで頂きたい」

 

「…分ったわ。

とりあえず貴方達の言う事を信じてこれから妙神山にコンタクトをとります。

横島君とタマモちゃんが言うなら多分本当の事なんでしょうね」

 

隊長はそういうと立ち上がって俺を見ていた。

 

「御免なさいね、横島君。

多分私はこれからも貴方の邪魔になると思う…令子の為に

許して欲しいとは言わないわ、だから好きなだけ敵対してちょうだいね

今回の事ありがとう。令子を救う算段が出来たわ、それじゃ」

 

そのまま隊長は帰っていった。

それを見送るとタマモはふっと力を使い果たしたように俺に倒れこんできた。

 

 

「た、タマモ?大丈夫なのか?」

 

「はっきり言えば大丈夫じゃないわね…

アイツのプレッシャーに耐えながら切り返すのは結構堪えるわ。

でも、これで暫くは時間が稼げるでしょ。早めに日本を出たほうがいいわ」

 

「しかし、美神さんが…自分で小竜姫様のことを言っておいてなんだが

命の危険なら手伝ったほうがいいだろうし」

 

道を違えたとはいえ、

美神さんとおキヌちゃんが大事な人たちと言う事には変わりは無い。

其れを自分の都合で助けないと言うのはあまりにも勝手すぎる。

 

「そうね。普通なら助けに行くのが人情ってもんでしょうし、これがシロとか

おキヌちゃんとかアンタなら私だって助けに行くわ」

 

「でも、美神殿は危険ということでござるな?なんとなく判るでござる」

 

「美知恵…あの女は今回の事も多分横島を引き込むエサでしかないでしょうね。

あいつくらい頭が良ければ、神族に頼るって手も初めからあるはずよコネがあるんだし。

他にも美神クラスの奴だって手伝うでしょ?神父とか、其れなのにはじめにこっちに来た、

わざわざ免許すら作ってきてね。今回の件で横島を美神から離さないようにしているのが

あからさま過ぎるほど理解できたわ」

 

そう言われて見ればそうだ、俺なんかよりエミさんや神父。

冥子ちゃんには六道のバックアップだってあるし、アシュタロスと戦うわけじゃないんだから

それだけでも過剰な戦力だろう。隊長なら、小竜姫様達も見捨てるわけにはいかんだろうし。

でも…

 

「でも、俺は美神さんを見捨てたくない…」

 

嫌いじゃない。大好きだから別れるんだ。

それなのに、助けに行かないのはおかしいだろう。

 

「先生…」

 

「横島…ごめん。我慢して…私だってこれが最善だって思ってるわけじゃないわ、

美神もおキヌちゃんも、嫌いなわけ無いじゃない。でも、罠なのよこれは。

アンタを縛り付けるための。罠だって判りきっててそれでも行くなんて無謀でしか無いわ!

言ってたでしょ、傷つけてしまうかもしれないって、これでもし破綻したら、

横島が何のために離れることにしたか判らないじゃない!」

 

俺は…

俺はどうすればいいんだろう。

 

 

「こんな所かしらね…」

 

なんて無様…

これで昔は正義のヒーローになりたかったっていうんだから笑わせるわね。

とりあえず、これで彼の心に楔は入った。彼の性格なら多分令子を助けてくれるわ。

そうすれば彼を縛り付けるのは容易。

 

「令子の所を離れる事にしたのは良い選択だったかもしれないけど

私がそれをさせないわ、六道家にも渡しはしない。」

 

彼の才能、彼の能力、彼の人脈。

そのどれを置いても一級品、正に令子のためにあるようなもの。

それを手に入れるためならばどんな事でもするし、どんな卑怯な手でも使うわ。

それで令子が幸せになるのなら、この身が例えどうなろうと構わない。

 

「私の理想は壊れてしまった。私の心は壊れてしまった…

だからせめて、救えなかった娘の心だけは護りたい。許してもらえないでしょうね

恨まれるでしょうね、そして…殺されるでしょうね」

 

でも、それでいい。

私はどうせ許されない、なら堕ちる所まで堕ちても構わない。

それであの子が幸せになれるなら。

 

「……西条君、私よ。至急妙神山まで向います。それとプランはCで行く事にします」

 

正義のヒーローか……

今の私には何処までも遠い言葉ね…

 

 

 

 

 


 
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