No.1094440

大きいことはいいことだ

砥茨遵牙さん

ら◯まニブンノイチが元ネタの怪しい薬を飲んだ4様が女体化する話。
坊っちゃんセコム発動。全て燃やす。
イラストはどちらも女体化していますがこの話で女体化しているのは4様だけです。

ルカ(クロ)も出てるためルカ主表記です。

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2022-06-09 17:10:11 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:558   閲覧ユーザー数:553

朝のムツゴロウ城。ラスがシーツを洗濯に行ったため手持ち無沙汰なリオンが鍛練でもするかと重い腰を上げて訓練所に向かっていると、石板前でヒエンに呼び止められた。そこにはルックと昨日不在だったシーナの姿が。

「リオンさんおはようございまーす!きのうはおたのしみでしたねっ。」

「やかましい。」

「あだっ!!」

笑顔でお決まりの台詞を言うヒエンにゴインッと拳骨する。

「いたーい!ひどいですー!みんなの可愛い後輩系アイドルな僕を殴るなんてー!!」

「お約束すぎる。」

「宿貸してる身としてはお決まりの台詞言わなきゃダメでしょー!?」

ヒエンが泣き真似していると、たんこぶが出来たその頭をシーナがよしよしと撫でた。話題はもちろん、昨日のリオン女体化の件である。

「なんだよリオンお前昨日女になってたのかよー。見たかったな、見たかったな!シーナさんも見たかったな!」

「でもシーナさん、リオンさん見た目も身長も声も変わってなかったよー。」

「この人の胸に小玉メロン詰めただけだった。」

「マジかよ。じゃあメロン二個持ってくるから詰めて。」

「爆ぜろ。」

「うあっちいぃいッ!!」

リオンの烈火の紋章によりシーナの尻に火がつく。なんで俺だけー!!ヒエンヘルプミー!!と涙目でぴょんぴょん飛び跳ねた。ヒエンが流水の紋章を発動させて火を消して、焦げた跡はあるものの服は無事だ。

「オレの桃尻に何すんだ!やだもうオレお嫁にいけないっ!」

「そもそも貰い手がいないだろ。」

「すまきにして返されるのがオチだね。」

「ひっでえ!いいもん優しい師匠に第ニ夫人でもらってもらうもん!」

「殺すぞ。」

リオンが黒いオーラを放ち地獄の底から出てきたような重低音ボイスで吐き捨て、シーナの胸ぐらを掴んで持ち上げる。

「ぐえぇ…。嘘です冗談ですごめんなさいガチトーンやめてぇ…。」

降参のポーズでシーナが謝るとパッと手を離した。ドサッと床に落ちてゲホゲホ咳き込み、ひどい目にあったーと涙目になりながら立ち上がる。

「第一、あんたが父さんを師匠って呼ばないでくれる?父さんの美貌が損なわれる。」

「ルックの言う通りだぞ。ラスの評価下げるな。」

「お前らオレに容赦なさすぎ!!」

「三人とも仲良いですねー。」

「やめろ虫酸が走る。」

「こいつと一括りにしないでくれる?」

「ひどいっ!ひどいわっ!あたしたち仲間じゃないっ。」

ぶりっ子しながら高めの声で泣き真似するシーナに、うへぇ、と三人が嫌悪感満載の顔をした。

「キモッ。」

「寄るな。」

「シーナさん可愛くないですぅー。」

「ヒエンお前もか!てかこの軍オレに厳しくない!?」

実は昨日リドリー指導の軍事訓練に強制参加させられていたシーナ。リドリーに首根っこ掴まれてずるずる引きずられていったのは記憶に新しい。

「えー、それは仕方ないですよー。アップル先生の頼みだもん。」

「アップルなの!?親父じゃなくて!?」

「もちろんレパント大統領もですー。リドリーさん張り切ってビシバシしてたでしょ?」

「してたけどー!オレ一応大統領の息子よ!?」

「うるっさい。そもそも第一印象最悪でしょあんた。」

「…ヒエン、こいつ何やった?」

「えっとですねー。」

ヒエンがかくかくしかじかまるまるうしうしとシーナがアニマル軍に現れた時のことを話すと、リオンがげんなりした呆れた顔をした。

「いっぺん死んで来い。」

「なんで!?」

「アップルの気を引きたい意図が見え見えだ。リドリー将軍のような立派な武将に悪印象植え付けてトランの品位を下げおって。」

「だって久しぶりに見たアップル可愛かったんだもん!」

「何かしたらアイリーンに言うからね。」

「待ってルックお袋は勘弁!!」

「アイリーンに心配かけるな馬鹿。」

「お前らお袋の味方かよ!!」

「当たり前だろ。」

「当たり前でしょ。」

「ついでに僕も大統領に言いつけちゃいまーっす!」

「ヒエンも!?オレの味方ゼロ!?いいもんっ、師匠に優しくしてもらうもんっ。」

「ラスに甘えるな。」

「穢れるから父さんに近寄るな。」

「辛辣っ!」

四人が談笑していたその時。誰かが転移してくる気配を感じてルックとリオンが二人同時にある方向に目を向けた。シーナとヒエンも首を傾げながら同じ方向を向いてみる。

 

 

 

転移して現れたのは、栗色の髪、蒼い瞳、黒い服、赤いバンダナと、どこか既視感を感じる格好をした美しい女性だった。何より注目すべきはその胸。たゆんと揺れる大玉の西瓜より大きい膨らみが二つ。タートルネックで素肌が見えない分ムチムチとした肉感が強調され何とも言えない色気を醸し出している。ウエストもキュッと締まり、尻もプリっと丸みを帯びて大きい。ボンッキュッボンとはまさにこのこと。頭から水を被ったらしく、ぽたぽたと水滴を髪から垂らす姿はまさに水も滴るいい女。

 

 

突然現れた美女に皆が口をあんぐり開ける中、作画がド○ゴンボ○ル風に変わったシーナ。

美女スカウター、オン!!と心の中で叫んでスカウターを装備し、目の前の水も滴る美女を計ってみる。

美女力二万、二万二千、バカな、まだ上がり続けている……ッ!?

ボンッとスカウターが壊れた。スカウターが壊れるなんてジーンさん以来だ。逃すわけにはいかない!ボンッキュッボンエロチックナイスバディ美女!いやまて、まずは師匠を見習って、紳士的に、優しく接しよう。下心オフ!

作画が戻ったシーナがガバッと上着を脱ぎ、美女に近寄る。

「お姉さんっ。」

「えっ…。」

おっほ、戸惑う声も色っぽい。思わず鼻の下伸びるとこだった。しかしこの人、オレと身長あんまり変わらない。170以上はある。高身長美女、いいな!屈まなくていいし目線合わせやすい!

「水を被るなんて災難でしたね。よければオレの上着をタオル代わりにお使いください。」

キラキラとしたエフェクトを出しながら上着を差し出す。

後ろから誰おま。という目を向けられてるが気にしない!

「えっと…、大丈夫だよ。君の服が濡れてしまう。気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう。」

柔らかく微笑んだ美女は、差し出した上着をやんわりとシーナの方へ押し戻した。

うあああ!自分のことよりオレの服の心配してくれるの!?この他者を気遣う姿勢!奥ゆかしさ!最高じゃん!!もしかしてイケる!?イケちゃう!?

「いいえっ、お姉さんのような綺麗な人に風邪を引かせるわけにはいきませんっ!」

上着を押し戻した美女の手をガシッと掴むと、ボッと尻に火がついた。

「うぁちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!!!!ヒエンー!ヒエンヘルプミー!」

「へあっ?あっ、はいはーい!」

美女から手を離してぴょんぴょん飛び跳ねるシーナの声にぽかんとしていたヒエンが正気に戻り、流水の紋章を使って火を消した。その間に、シーナから美女を守るようにリオンが立ち塞がる。

「何すんだよリオン!下心オフだったろ!?ていうかナンパの邪魔すんなし!!」

「やかましい。貴様の邪な手でラスに触れるな。」

「邪ってお前なー!……ん?」

今、何て言った?この美女を何て呼んだ?

リオン、と美女に呼ばれてリオンが振り返る。

「どうかな?この姿。まだ鏡を見てないんだけど、シーナのお眼鏡にかなったってことはそれなりにいい姿なのかな?」

「それなりどころじゃない。すごく、綺麗。もしかして、あの薬の残り飲んだのか?」

「うん。薬の出所がはっきりしていたし、害が無いのも分かったから試してみようかと。」

「出所?」

「あれ作ったの、レックナートだった。」

「レックナート様が?道理で何の後遺症も無いと思った…。いつ飲んだ?」

「洗濯に行く前。」

「そんなに経ってないか。良かった…。」

美女とリオンの会話に、もそもそと上着を着たシーナとヒエンが顔を見合せる。

「……あのー?もしかして、そちらの美女はまさか、師匠?」

「へっ?うそっ!?ラスさん!?」

おそるおそる手を上げてシーナが疑問を切り出すと、美女がふわりと柔らかな笑みを浮かべる。

「ふふっ、そうだよ。」

「どっシエーッ!!!?」

「シエーッ!!?」

シーナとヒエンが驚きのあまりシエーッのポーズで固まった。

美女…ラス曰く、ヨシノを手伝って洗濯していたら、替えの水を持って飛んできたチャコが突風でバランスを崩してバケツから手を離してしまい、落ちてきたバケツの水がヨシノにかかりそうだったため彼女を庇って水を被ったそうな。チャコは申し訳なさそうに謝っていたが、女になったラスを間近で見てぽーっと頬を赤らめていた。

本当は皆の前で少量の水を被って驚かせようとしていたらしく、その前に濡れるのは完全に予想外だったそうな。

「ルックの風で乾かしてもらおうと思ってここに来たんだけど……。」

あんぐり口を開けて固まったままだったルックへラスが目を向ける。ハッと気づいたルックがンンッと咳払いして、仕方ないね、と旋風の紋章で水を吹き飛ばし服も乾かした。

「ありがとう、ルック。」

「……ん。」

何故かルックは頑なにラスと目を合わせようとしない。ラスが首を傾げつつ、ルックへ目線を合わせるように身を屈めても別の方向を向いて距離を取る。心なしか顔が赤いルックにリオンがピンときた。

「もしかしてルック、お前照れてるな?」

「……うるさいよ。」

「…ハッ!そうだルック!お父さんのラスさんが女性になったから、ママじゃん!!」

「はあ!?」

シエーッのポーズから立ち直ったヒエンが言った言葉にルックが驚く。シーナもシエーッのポーズから立ち直ってなるほどと手を叩いた。

「ほら、昨日言ってたじゃん?親はラスさんだけだって。今ラスさん女性だからママって呼べるじゃん!」

「ということは、女体化師匠ママ属性?このボディで?ヤバくね!?クウゥー!推せる!!」

「あのねえ、いくら性別が変わったからってそんな簡単に呼べるわけ……」

ヒエンとシーナの会話に呆れたルックがラスを見ると。

「ルック。」

慈愛に満ちた柔らかな微笑みを浮かべて、色っぽくも優しい声で名を呼ばれる。その溢れる母性を一心に浴びたルックが顔を真っ赤にしたままビシッと固まった。

「ルック。おいで。」

ラスに両手を広げてそう言われたら、幼い頃からの習性で逆らう術は無い。ギクシャクと手と足を同時に出す固い動きで近づいて、目の前で立ち止まる。普段なら抱きつくところだが今のラスは女性。しかも胸がとっても大きい。ちょっとした動作でたゆんと揺れるそれを出来るだけ見ないように、女性になっても自分より背が高いラスをちらりと見上げる。

「えっと、……その、………………母さん。」

流石にママと呼ぶのは恥ずかしい。ぽそっとラスに聞こえる程度の小さい声で呼ぶと。

「ルック…!」

「わぷっ!ちょ、くるし…!!」

上目遣いの息子が可愛すぎて母性を爆発させたラスが感極まってムギュッとルックを抱きしめた。柔らかく大きな胸の谷間に顔を挟まれてしまい、未知の柔らかさと息苦しさでわたわた慌てるルック。その拍子にむにゅっと手が胸に触れてしまい。

「ルック?どうしたんだい?」

「……ラス、ルックが気絶してる。」

「えっ!?」

柔らか巨乳耐性が無いためキャパオーバーし、顔を真っ赤にしたまま気絶してしまった。リオンがルックの首根っこを掴んでラスから剥がすと、わずかにたらりと鼻から血が出ていて。

ギャルゲーの主人公かよ!ルックうらやまッ!と心の中で叫んで、シーナがギリィッと指を咥えて悔しがる。

ラスがルックを抱えようとするのをリオンが止めた。このまま運んだらすれ違う人がラスの美しさとメロメロボディの虜になってしまう。そう判断したリオンはここにいて、動かないでと念押しして、ルックを俵担ぎしダッシュで医務室へと向かっていった。

ラスが心配そうに見送っていると、ヒエンがキラキラした眼差しをしながら両手の指を組んだお願いポーズでラスに近寄る。

「ラ~ス~さんっ、今日そのままでレストラン手伝ってくれません?」

「えっ?」

「昨日のお昼の手伝いも途中だったしぃー。」

「……ヒエンくん、女の僕を使ってお客呼ぼうとしてるの見え見えだよ。」

「ばれましたぁ?」

「最初からね。でも、リオンがここにいてと言ったから、その意に反することはしないよ。」

「えーっ。」

ぶーぶーとむくれるヒエンの横から、同じくお願いのポーズをしたシーナがずずいっと近づいた。

「師匠、師匠。お願いがあります。」

「ん?なんだい?」

その場にスッと膝をついて、

「オレもルックみたいにギュッと抱きしめて下さいお願いします。」

床に手をついて頭をギリギリまで近付け、綺麗に土下座した。

うわぁ、とヒエンが引きつった顔をして後退りする。ドン引きである。

「シーナさん下心見え見えー。逮捕して死刑ですぅー。」

「シャラップ!!大事なお願いなの!!ていうかそれで死刑とかどんな独裁政治よ!?」

「だって僕軍主だもんっ。」

きゃるんっという効果音と共に握り拳を顎の下に当てて可愛いポーズをとる。言動は可愛くない。

そして目の前で久しぶりにシーナに土下座されたラスは困ったように苦笑した。

「うーん、流石に下心見え見えなのはね……。」

「お願いします師匠!!オレからは絶対!絶ッッ対触らないって約束しますんで!!いたいけな男の子の夢叶えさせて下さいッッ!!こんなこと頼めるの師匠しかいないんです!!お願いしまあぁあぁす!!」

ガツガツと何度も床に額をぶつけて懇願する。シーナの必死な様子に、自分から触らないって言ってるし年頃の男の子の夢を叶えるくらいなら…とラスが了承しようとすると。

シーナの背中にボッ!と大きな火の玉がついた。

「うあっちぃいぃっ!!」

飛び上がって熱がるシーナの横から棍を手にしたリオンがズンズンと歩いてきて、ラスを守るように立ち塞がる。

「早めに戻ってきて正解だったな。貴様に触れさせてたまるか。」

「あちゃちゃちゃちゃちゃ!!!ヒエンヘルプミー!!」

「もぉー、何回目ですー?まあいいですけどー。」

ヒエンの流水の紋章で火を消してもらったシーナが涙目でリオンをキッと睨む。

「何すんだよリオンー!!ちょっとくらいいいだろ!?」

「いいわけないだろ私のだ。焼くぞ。」

「いたいけな男の子の夢叶えさせてくれよ!!」

「貴様のどこがいたいけな男の子だ、どこが。」

「見てこの曇りなき眼!」

「曇りすぎて邪な感情しか見えん。ラスに近寄るな。」

「チクショーッ!!」

床にダンダンッと拳を叩きつけてシーナが悔しがっていると、入り口からおーいヒエンー、とヒエンを呼ぶ声が聞こえてきた。ヒエンが入り口の方を向くと、ビクトールとクロの姿が。何故かビクトールは上から垂らした紐を持っている。

「クロ~!お帰りぃ~ッ!」

クロを見るなりぱあぁっと笑顔になって走り出し、その勢いのままガバッとクロの首に抱きついた。勢いよく飛び付いて来たヒエンをクロが受け止める。

「…ああ。」

「ったく、朝からラブラブだなお前ら。」

「ビクトールさんもお帰り~。モンスター退治ありがと!」

「おう。」

ビクトールとクロは朝早くから畑を荒らすモンスターを退治しに行っていた。その畑で作られているものがヒエンの好物なため、クロが自ら退治を申し出たのだ。ビクトールの相棒であるフリックも一緒に行ったはずなのだが、その姿が無い。フリックさんは?とヒエンが問うと、ビクトールが自分が持っていた紐の上を指差す。

そこには風船をいくつも付けたフリックがベルトを紐で括られて浮かんでいた。複数のモンスターがフリックにのみロックオンして攻撃してきたとか。おかげで一網打尽に出来たが、クロもビクトールも針を持っていなかったため風船を付けたまま戻ってきたそうな。フリックさんやっぱ運無いねとヒエンが声をかけると、ほっとけ、と上から返事がした。

「ところでヒエン、あの美女はどちら様だ?」

ビクトールも美人に目が無い。見慣れない美女にすぐ気付いた。あれ女性になったラスさんだよ、とヒエンが答えると、ビクトールとフリックがあんぐりと口を開けたまま固まった。クロは驚きはしたようだが、特に変化は無い。

「ら、す、なのか…?」

「む、紫の薔薇の人…、マジか…。」

驚きのあまりビクトールの作画も変わらない。あまりのラスの美女っぷりに二人はぽーっと見とれている。

 

特に見とれている様子の無いクロに、クロはラスさんみたいなナイスバディ美女に興味ない?とヒエンが首を傾げて問いかけると。

「俺はお前にしか興味が無いし、お前にしか勃たん。」

とハッキリキッパリ断言した。

「く…、クロぉ~!僕もクロが大好きぃ~っ!」

直球の殺し文句が嬉しくてハートを飛ばす。

「ねぇねぇクロ。このまま朝ご飯食べに行こっ。」

「…?まだ食ってなかったのか?」

「うんっ。クロと一緒に食べたくて。」

「っ…、そうか。」

「お姫様抱っこしてー。」

「ああ。」

ヒエンが待ってくれていたことに戸惑うと同時に嬉しさがこみ上げて来たクロ。すっかり二人の世界である。そのままヒエンをお姫様抱っこして、レストランへ向かっていったのだった。

 

 

 

ラスが浮かんでるフリックを見上げて優しく微笑み手を振ると、ぽーっと見とれていたフリックがボンっと顔を真っ赤にした。

ラスは相変わらずフリックに甘い。男の時ならまだしも今のラスは女。しかも魅惑のメロメロボディの美女。ただでさえその強さに憧れている人がド級の美女になって自分に優しく微笑んでくれて、青いフリックが赤くならないわけがない。

その様子にピキっと額に青筋を立てて苛立ったリオンがギロッとフリックを睨むと、フリックについてた風船が一瞬で燃えた。

「え。」

当然、浮かんでいたフリックが落ちる。

「ワーッ!!」

「フリック!!」

 

 

 

怪我は免れないと思いきや、ボスンッと何かに受け止められた。予想していた固い床の衝撃が無い。むしろ何か弾力のある柔らかいものが胸板と顎の下に当たっている。フリックがおそるおそる目を開けると。

「大丈夫かい?」

なんと、ラスにお姫様抱っこされていた。

フリックが落下し始めたと同時にラスがたわわに実った胸を揺らして走り出し、フリックをキャッチしたのだ。当然ラスの大きな胸が当たっている。柔らかい感触はラスの胸だと気付いたフリックは、その状況にまたボンっと顔を真っ赤にした。

「へ、へいき、だ。ラスも、重く、ないか?」

「ああ、どうやら腕力はあまり変わってないみたいだ。」

「そ、そっか。」

まずい。喋ると顎が胸にふにふに当たる。そういえば手もなんか柔らかい感触がする、と自分の右手をちらりと見ると、ラスの胸を鷲掴みにしていた。

「っ!?すまん!」

慌ててバッと手を離して謝ると、君に怪我が無くて良かった、と安堵した微笑みを向けられて。憧れていたラスからの善意の微笑みが本人の美しさと相まって眩しい。おまけにこの三年間オデッサ一筋で遊んだことも無いため、柔らか巨乳耐性は無い。フリックはたらり、と鼻から血を垂らした。気絶しないだけ大人だが、なんとも青い男である。

鼻血が出ていることを心配されたが、大丈夫だから降ろしてくれと頼むと、そっと床に立たせてくれた。ふらふらとビクトールの方へ歩いていくフリックにシーナが駆け寄ってベシッと背中を叩く。

「おいおいおいおーい!!お前どこが運無いんだよ!!ラッキーすけべじゃん!!羨ましいぞフリック!!」

「どうだったよ、ラス様のあの乳の感触!」

「……す…、すごかった……」

「オレどんなに頼んでも駄目だったんだぞ!リオンに邪魔され…」

シーナが言いかけたその瞬間。足元の床からゴオッと火柱が立ち上ぼり、フリックを一瞬で黒焦げにした。真っ黒に焦げたフリックがパタリと倒れる。

「フリックぅうぅう!!しっかりしろおぉ!!」

ビクトールがフリックを抱き起こして肩を揺らす。燃やされたのは外側だけで、息はあるようだ。

「ひええ、何今の!?まさか…!?」

シーナがおそるおそる振り返ると、ゴゴゴゴと黒いオーラを纏って真顔で仁王立ちしているリオンの姿が。

間違いない。今のはリオンによる合体魔法、焦土。元は全体技であるその魔法をフリック単体に絞って威力を凝縮したのだ。最近のリオンは右手のソウルイーターを使わない分、相性のいい烈火の紋章と大地の紋章を効率的に使用する。ピンポイント焦土、恐ろしい精度である。

「次に黒焦げになりたいのはどいつだ?」

怒り心頭のリオンが地獄の底から出てきたような重低音ボイスで問う。昔よりも更に進化した虫の払い方にビクトールとシーナがサーッと青ざめ、お互いに顔を見合わせてコクッと頷く。黒焦げのフリックをいつの間にか出した担架に乗せてスタコラサッサと逃げていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

辺りをキョロキョロ見回して二人きりになったことを確認すると、リオンはラスに抱きついていい?と聞いてきた。いいよと告げると抱きついて、たわわに実った胸にぽすっと顔を埋める。

「……私のなのに。」

「ん?」

「ラスは私のなのに。私より先に青に触られた。」

それであんなに怒っていたのか、とラスは合点がいった。ルックも触ったけどと言うと、ルックはラスの息子だからいいんだと返ってきて。顔を上げるように促すと、拗ねて不機嫌な顔をしていて。嫉妬するリオンが可愛い。きゅっと抱き締めて、よしよしと頭を撫でる。

「沢山触っていいよ。」

「ん。」

ラスの了承を得ると、手を横乳に添えてムニムニと押して自分の顔を挟んでその感触を堪能する。昨日自分が女になったせいか耐性が出来ていたようだ。

「君は俺の妻なんだから好きに触っていいのに。」

「駄目だ。女性の胸を同意も無しに触れない。」

こういうところは律儀なのが彼らしい。リオンの見た目も相まって、端から見たら百合である。

「ところで、まだ自分の顔を見てないんだけど鏡あるかい?」

「うん。」

リオンは普段から折り畳み式の手鏡を持ち歩いている。ラスの妻として少しでも見映えがいいように訓練後も身だしなみを整えるためである。群島で買った人魚が描かれている手鏡はリオンのお気に入りだ。

ポケットから手鏡を取り出して開き、ラスの顔を写してあげると、ラスが目を見開き驚いた。

「ラス?どうしたんだ?」

「……まさか、ここまで似ているなんて。」

「えっ?」

「…この顔、母にそっくりなんだ。」

「ラスのお母さん?…って、確か…。」

「ここに。」

自分の左手の甲をリオンに向けて、とん、と紋章のある場所を指差す。遺跡から罰の紋章を出して最初に宿したオベル王妃。それがラスとフレアの母だ。

ラスは母と過ごした記憶は無いが、紋章の膨大な記憶の中に王妃の記憶もあった。それのおかげでリノとフレアが血の繋がった家族だと分かったのだ。戦いが終わってオベルで静養していた頃、父であるリノから『ラスは母親似だな』と言われたことは覚えている。幾多といる継承者の中でも、王妃は紋章の中で必ずラスに向けて慈愛に満ちた顔で微笑んでいて。試しに鏡に向かって微笑んでみると、やっぱり記憶の中で見た王妃に似ている。髪が長ければ完璧だ。

「リオン、この顔を覚えていてくれないか?君に俺の家族と会わせることはもう不可能だけど、母はこの中にいるし、擬似的に顔合わせしたようなものだから。」

「うん。……ラスのお母さん、ここにいてくれてありがとう。」

ラスの左手の甲に額を当ててリオンが微笑む。

罰の紋章に命を喰われてしまったのは悲しいことだったが、それが巡り巡ってラスに宿り、本当の家族と引き合わせてくれたのも、永遠を共に生きる伴侶と巡り合えたのも縁なのだろう。悲しいことがあっても、その先に自分達がいるのだから。

 

 

「…でも、母も姉もここまで大きくは無かったんだけど。」

「ラスの胸板厚みがあったからこうなったのかも。」

「そのまま下から支えてくれるかい?結構重いんだこれ。」

「うん。…私も昨日なってから分かったけど、女性ってすごいんだな。」

「そうだね。」

「ラスのメロメロボディにやられる虫が増えるから、早めにお湯被って。」

「メロメロボディって…。」

「男の姿でも虫払うの大変なのに、女の姿だとますます虫が増える。この城を焼け野原にしていいのか?」

「…分かった。部屋の風呂に行こう。」

 

 

そうして部屋に転移して一緒に風呂に入り、お湯を頭から被ってポンッと男に戻ったのであった。

 

 

 

 

終わり。


 
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