3人の少年が無機質な廊下を進んでいくと、一際大きな扉が現れた。この扉の奥が太陽都市の中枢……環境維持AI『ヴァリス』がいる。
「止まるんだ」
デーキスが扉に近づくと、聞き覚えのある声が響いた。前に会った時のヴァリスと同じ声だ。
「この部屋には私の許可がなければ入れない」
「やあ、ヴァリス。僕はその、話をしに来たんだ」
「ならば、そこから話してくれ。私には十分聞こえている」
慎重に言葉を考える。ヴァリスは他の誰よりもこの太陽都市の事を考えている。だからこそ、彼には嘘偽りなくこちらの思いを伝えなければならない。
「君も知っているだろうけど、今太陽都市はとても大変な状況だ。アンチたちがいろんな場所で暴れていて、たくさんの人が傷ついている」
「ああ」
「それに、超能力者のリーダーであるフライシュハッカーは太陽都市そのものを破壊しようとも考えている。僕たちだけでは力不足で、それを止めることができない。だから、君の力を貸してほしいんだ」
「それは、命令か?」
「ううん、これはただの頼み事だよ。もし、君が力を貸してくれなくても、僕たちは自分たちで出来ることをするだけ」
ウォルターとアラナルドは固唾を飲んで見守っている。
「前に会ったとき話したが、私には太陽都市の居住区域に対して干渉する権限はない。これは他でもない太陽都市の市民たちが決めたことだ」
ウォルターが我慢しきれず口を出そうとするが、アラナルドに制されてなんとか堪えた。
「分かった……それなら僕たちだけで行くよ」
話は終わった。それでも、悲しんでいる時間はない。フライシュハッカーを止めることだけでもしなければならないから。
「それが命令であれば私にはできないと答えるしかない……だが、君は私の自由意思を尊重してくれた」
去ろうとしていたデーキスたちにヴァリスが答える。
「私は君たちの友として、その頼み事を手伝おう」
「それって……」
「人的被害を収めるため、生産エリアの警備ロボットを居住エリアに送り、市民の保護、救助に務めよう」
「ありがとうヴァリス!」
「礼はいらない。本来はこれこそが、前市長が私に求めていたことだったのだろう。人と機械の融和……君たちを手伝い、フェリオ・カーボン氏の理想を私も叶えるために」
デーキスたちは歓喜の声を上げる。ヴァリスが力を貸してくれるなら太陽都市の安全は心配ない。これでフライシュハッカーを止めることに専念できる。
「フライシュハッカーはこの建物の上層にある執政室にいる。彼にこの都市を破壊させないでくれ」
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ようやくヴァリスと再会できたデーキスたち。彼の力を借りるために対話を試みる