No.1082151

恋姫英雄譚 鎮魂の修羅37

Seigouさん

煩雑の修羅

2022-01-12 18:09:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1496   閲覧ユーザー数:1332

反董卓連合が結成されて半日が経とうとしていた

 

最初の失敗から学んだのか、各諸侯はもう一度作戦会議を開くこととなった

 

開始早々コテンパンにされてしまったため、各諸侯も相手の実力を見直し、同じ轍を二度踏まないようそれぞれの役割に徹し、邪魔をし合わないことを徹底する方針とした

 

なにせ一刀の苛烈なお説教を経験したため、もう二度と同じ経験はしたくないのだ

 

傍から一刀のお説教を見ていた者達も、同じ経験はしたくない為、この方針に同意した

 

そして、汜水関の攻略に戻る

 

今度は連合側が汜水関に攻めかかり、通常の攻城戦と同じ攻め方で突破を試みる

 

しかし、流石に首都洛陽を守る要の関である

 

攻城兵器を駆使するも、重厚な門はびくともせず、矢の嵐を射かけても盾で防がれ矢の無駄使いが目立つ始末

 

一回目は、各諸侯が協力し合い一回ずつ攻めることにしたが、だれも大した戦果を挙げることなく終わった

 

だが、それぞれの役目に徹する方針にしたお陰か、大した被害を出すことはなく、一刀の天幕に担ぎ込む怪我人も少数で済んだ

 

董卓側はそれ以上に被害がなかったが、一日目は両者ともに痛み分けの形で終了することとなった

 

そして、汜水関攻略二日目

 

 

 

炎蓮「ううぅ~~~ん、ただ攻めるだけじゃ、捻りがねぇな」

 

桃香「えっと、何を捻るんですか?」

 

一周回って、孫堅軍と劉備軍に順番が回って来た

 

しかし、関の前で足踏みをするばかりで攻めかかろうとはしなかった

 

炎蓮「昨日と同じ事してたんじゃ全く進展がねぇ、ここいらで別の事しとかねぇと、いつまで経っても同じことが続くぞ」

 

冥琳「そうですね、向こうの糧食にも寄りますが、もし何か月、何年もの備蓄があったのでは、先に干上がるのはこちらです」

 

雪蓮「えぇ~~、こんな所で何か月何年も過ごしたくないわよ・・・・・」

 

鈴々「なのだ、こんな所に何年も居たら息が詰まっちゃうのだ・・・・・」

 

朱里「流石に、何年というのは言い過ぎと思いますが・・・・・」

 

雛里「でも、何か月という想定はしておいた方がいいと思いましゅ」

 

愛紗「では、具体的にどうするというのです?」

 

炎蓮「そうだな・・・・・いっちょ呼び掛けてみっか♪」

 

祭「堅殿、まさかまた挑発をするつもりか?」

 

粋怜「もう通用しないと思うわよ」

 

炎蓮「んなしょぼいことするか・・・・・世間話しに行くんだよ♪」

 

明命「あ、あれ、大殿様、どちらに行くんですか!?」

 

炎蓮「ちょっくら相手と話してくるぜ、一緒に来たい奴は来な♪」

 

梨晏「あ、なら私も行きます!」

 

鈴々「鈴々も行くのだ♪」

 

愛紗「あ、おい鈴々!・・・・・ああもうっ!」

 

桃香「愛紗ちゃん、出来ればでいいんだけど、風鈴先生の事も聞いて来てくれない!?」

 

愛紗「承知いたしました!」

 

そして、汜水関に炎蓮、梨晏、鈴々、愛紗が向かうこととなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楼杏「・・・・・ん?誰か来るわね」

 

氷環「また攻めてきましたか?」

 

楼杏「いいえ、たったの四人だから、攻めてくるという感じではないようね・・・・・」

 

炉青「あれは・・・・・孫堅どす!!?」

 

霞「ありゃ関羽やないかい!?」

 

いきなり大物が雁首揃えて関に近寄ってきたため董卓側は何事かと思ってしまった

 

風鈴「他には誰も来ていないわね、罠ということはないみたいだけど・・・・・」

 

傾「それにしたって不注意もいい所だな、矢の雨でも受ければいちころだぞ」

 

霞「いんや、あいつらは矢の雨の一つや二つじゃびくともせえへん猛者どもや」

 

雅「だな、射たところで無駄に矢を使うだけだ、止めておこう」

 

そして、四人は汜水関の目と鼻の先まで来た

 

炎蓮「おいこら華雄、ちょっち面貸せや!!!」

 

雅「ん?」

 

いきなり大声でご指名され、また挑発しにでも来たのかと関から顔を覗かせた

 

炎蓮「よう華雄、昨日は世話になったな」

 

雅「一体何をしに来たのだ?」

 

炎蓮「いやなに、ちょっくら世間話でもしないかって誘いに来たんだ・・・・・そんなとこじゃ話しにくいだろ、降りてきやがれ」

 

雅「・・・・・一体何を企んでいる?」

 

炎蓮「何も企んでなんかねぇ、文字通りの世間話だ・・・・・なんなら、そっちも何人か連れてきていいぜ♪」

 

雅「・・・・・いいだろう」

 

董卓側も数人の将達が汜水関の扉を開け、出迎えた

 

楼杏「まったく、噂通り豪胆な御人のようですね・・・・・」

 

霞「豪胆過ぎんやろ、葵のばっちゃんとええ勝負やで・・・・・」

 

炎蓮「そいつは誉め言葉と受け取っておくぜ・・・・・よう華雄、昨日は世話になったな♪」

 

雅「挨拶代わりだったんだが、お気に召したか?」

 

炎蓮「おう、盛大な挨拶あんがとよ、こっちは一刀にくそ叱られたぜ、はっはっは~~~♪」

 

愛紗「笑い事ではありません!」

 

鈴々「そうなのだ、おかげで鈴々達は全滅しかけたのだ!」

 

雅「なんだ、誘ってきたのはそちらであろう、こちらはそれに応えただけだ・・・・・まさか自分達に都合が悪くなった途端に文句を言うのではあるまいな?」

 

愛紗「う、ぐ・・・・・」

 

鈴々「ぐぬぬぬ、なのだ・・・・・」

 

余りのド正論に何も言い返せなかった

 

雅「久方ぶりだな、梨晏よ、元気にしていたか?」

 

梨晏「あ、うん・・・・・雅は、元気そうだね」

 

雅「お陰様でな、今の私があるのは一刀のお陰だ、感謝してもしきれん」

 

もし一刀と出会っていなかったなら、雅は今でも猪武者を卒業しきれていなかっただろう

 

そうなれば、昨日の挑発に容易く乗っていただろうし、味方全体に多大な迷惑をかけていただろう

 

梨晏「ねぇ、雅・・・・・本当に董卓は・・・・・月は、洛陽で暴政をしているの?」

 

一刀と共に天水を訪れ、月とも真名を預け合っている仲なので、今回の連合には梨晏も疑問が多々あった

 

月の可憐ぶりは梨晏も周知の為、暴政という言葉そのものが余りにかけ離れたもので、想像が付かないのだ

 

雅「・・・・・その質問には答えられん」

 

梨晏「どうして!?真名を預け合った私にも教えられないの!?」

 

雅「こちらにも色々と事情があるのだ・・・・・悪いとは思っているが、沈黙で返させてもらう・・・・・すまぬ」

 

梨晏「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「では、こちらの質問に答えてもらおう・・・・・風鈴殿、盧植殿は、ここに居るのか?」

 

楼杏「ええ、私の副官兼全軍の軍師としてここにいますが、それが何か?」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「お姉ちゃんの、見間違いじゃなかったのだ・・・・・」

 

確定してしまった、ここに桃香の恩師がいることが

 

洛陽で知り合い、桃香の恩師であることもそうだが、その人柄に触れて、愛紗、鈴々共に真名を預けているため、彼女が暴君と言われている董卓と結託するような人とはとても思えなかった

 

愛紗「どうして、あなた方は董卓の様な暴君に協力しているのですか!?」

 

鈴々「そうなのだ、董卓が悪いことをしているなら、どうしてやっつけないのだ!?」

 

楼杏「華雄も言ったでしょう、その質問には沈黙で返させてもらうわ」

 

愛紗「それでは何も分かりませぬ!!」

 

鈴々「言ってくれないと分からないのだ!!」

 

楼杏「それも言ったでしょう、色々と事情があると・・・・・もはやあなた方と話すことはありません、お引き取り下さい」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「・・・・・・・・・・」

 

炎蓮「分かった・・・・・沈黙で返すってことは肯定と受け取っていいってことだよな?」

 

霞「どう受けとってもらってもかまへん」

 

雅「ああ、是非など問わず」

 

梨晏「・・・・・分かったよ、こっちも手は抜かないからね」

 

雅「それこそ望むところなり」

 

そして、両者共に踵を返し、それぞれの陣営に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「あ、愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!風鈴先生は居たの!?」

 

鈴々「・・・・・うん、居たのだ」

 

愛紗「向こうの軍師として付いている模様です・・・・・」

 

桃香「ああ・・・・・そんな・・・・・・・・・・」

 

朱里「ああ、桃香しゃま!!」

 

雛里「お気を確かに」

 

その場で膝から崩れ去り、気を失ってしまった桃香を朱里と雛里が支える

 

雪蓮「向こうは、なんて言っていたの?」

 

冥琳「ああ、有力な情報は手に入れたか?」

 

梨晏「ううん、こっちの質問には何も答えてくれなかったよ・・・・・」

 

粋怜「答えなかったって、言い訳もなかったっていうの?」

 

梨晏「・・・・・うん」

 

祭「ますます持ってきな臭いのう・・・・・」

 

粋怜「この何も情報を与えない徹底ぶり、異常としか言えないわね」

 

雪蓮「沈黙という行為そのものが、一番の情報とも言えるけどね」

 

冥琳「とは言っても、様々な解釈が出来てしまうぞ、肯定とも否定とも受け取れる」

 

炎蓮「だな、向こうもどう受け取っても構わないと言っていたんだ、なら肯定としておくとしようぜ♪」

 

粋怜「楽観し過ぎと思えるけどね・・・・・」

 

祭「うむ、早まった判断は身を亡ぼす結果にも繋がりますぞ、堅殿」

 

炎蓮「こんなにも情報が入ってこない状況でどうするってんだ・・・・・なら、あとは伸るか反るかよ、後のことはその時になって考えるぜ♪」

 

余りにギャンブルが過ぎると思うが、確かに今の状況ではそれ以外に道は無い

 

その後、気絶してしまった桃香率いる劉備軍は使い物にならなくなったため、孫堅軍だけで汜水関に攻めかかった

 

しかし、やはりびくともせずいたずらに時間だけが過ぎる

 

そして、次に順番が回って来たのは袁術軍、曹操軍だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「さて、次は私達の番ね・・・・・何か策はあるかしら?」

 

桂花「今のところは、通常の攻城戦をするしか手はないかと」

 

風「右に同じですね~」

 

稟「はい、あそこまで堅実な籠城をされては・・・・・」

 

彩香「こちらも出来ることは限られますね」

 

秋蘭「確かに、あれほどの堅さではそれしかないか」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

華琳「春蘭、一応聞いておくけど、貴方は他に提案はある?」

 

春蘭「・・・・・私は、さっき孫堅がしたことが気になります」

 

桂花「あの無謀な行為のどこが気になるのよ」

 

春蘭「確かに無謀に見える行為だ・・・・・だが、敢えて別の事をするのも必要なのではないかと思ってな」

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

春蘭「ん、皆してどうした?」

 

桂花「あんた、熱でもあるんじゃないの?」

 

風「はい~、華琳様至上主義の春蘭ちゃんとは思えませんね~」

 

稟「今日は天変地異でも起こるのではないですか?」

 

春蘭「お前たち失礼にもほどがあるぞ!」

 

華琳「ふふふふ♪・・・・・まさか春蘭がそんなことを言い出すとはね♪」

 

春蘭「華琳様まで・・・・・」

 

華琳「いいでしょう、春蘭の意見を採用しましょう」

 

彩香「いいのですか、華琳」

 

華琳「猿真似に見えるでしょうけど、こちらも向こうには用がありますし、何よりこの戦いは情報が少な過ぎるわ」

 

秋蘭「ええ、今のところ相手の捕虜は一人たりとも得られていませんし、我々は相手の事を何一つ知り得ていませんから」

 

華琳「それに、皆で私の事を守ってくれるのでしょう?」

 

春蘭「もちろんです、華琳様の御為なら、この夏侯元譲、火の中水の中です!」

 

桂花「本当でしょうね、華琳様に何かあったらあんたは死罪よ死罪!」

 

春蘭「当たり前だ、華琳様が死ぬ時は、この夏侯元譲が死ぬ時だ!」

 

華琳「ふふふ、頼もしい事ね♪・・・・・それでは、何人か付いて来なさい」

 

そして、華琳を筆頭に数人のお供が汜水関へと堂々と歩み寄っていった

 

七乃「え~~~と、私達はどうしましょうか~・・・・・」

 

巴「まったく、こちらの事は完全に眼中にないようですね・・・・・美羽様、いかがいたしましょう?」

 

美羽「妾達は、このままじゃ」

 

七乃「それでは、余り功は立てられませんよ~」

 

美羽「そんなものどうでもいいのじゃ、妾は一刀の願いを叶えたいのじゃ、であれば余計な争いは避けねばならぬ、下手に動いて被害を出していたら、それこそ一刀の願いと正反対の事になってしまうのじゃ」

 

巴「・・・・・分かりました、一刀の願いを叶えたいのは、私も同じですので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炉青「・・・・・あれ、また誰か来るどすよ」

 

風鈴「曹の旗ということは、曹操ね」

 

傾「ああ、あの大宦官曹騰の孫か」

 

楼杏「とても宦官の孫とは思えないくらいしっかりしていますけどね」

 

氷環「なんでも、相当に宦官を毛嫌いしているとか」

 

風鈴「でも曹騰大宦官は、今の宦官と違って立派に宮中に仕えた、宦官の鏡と言える人でしたから、そこは否定していないようですよ」

 

傾「宦官が皆、曹騰のような人物であれば何も言うことは無いのであるがな・・・・・」

 

楼杏「そういう訳にもいきませんよ、そうでなければ、かつての秦帝国も滅亡することなどなかったでしょうし、私達もこのような所に立ってはいません・・・・・」

 

正確に言えば、曹操は宦官曹騰の養子の子供である

 

宦官である以上、曹騰も去勢を受けた身であるため、曹騰の直径の子孫がいるわけがない

 

今の華琳の人格は、生まれついてのものもあるであろうが、また彼女をとりまく環境が、そうさせたのであろう

 

それぞれが、宦官の在り方について思案を巡らせる

 

そうこうしている間に、華琳達は汜水関の前へと堂々と歩み寄った

 

華琳「汜水関の守将に告げる!!!この曹孟徳と言葉を交わすがいい!!!」

 

霞「なんやいきなり偉そうやな・・・・・」

 

雅「仕方ない、付き合ってやろう・・・・・久しぶりだな、曹孟徳よ」

 

華琳「久しぶりね、華雄、息災だったかしら?」

 

雅「まあな・・・・・それで何用だ?」

 

華雄「孫堅の真似というわけではないのだけど、こちらもあなた達に話したいことがあるのよ、特にあなたと張遼にね・・・・・降りて来てもらえないかしら?」

 

雅「・・・・・らしいが?」

 

霞「・・・・・あんまし気が乗らへんな」

 

雅「では、止めておくか?」

 

霞「・・・・・いんや、曹操には前から興味はあったんや、会っちゃるわ」

 

そして、幾人かの将が再び汜水関を降りる

 

華琳「良く応じてくれたわ、礼を言いましょう」

 

霞「んで、ご指名されるんは光栄やけど、何の用や?」

 

華琳「単刀直入に言いましょう・・・・・張遼、華雄、我が軍門に下りなさい」

 

傾「な!?いきなり勧誘だと!?」

 

楼杏「これは、孫堅や馬騰殿に引けを取らない豪胆さね・・・・・」

 

秋蘭「張遼、華雄よ、我が主、曹孟徳は貴殿達の力を大変買っておられる」

 

春蘭「特に華雄は、以前に我々の前でその実力を証明済みだ、もはや語ることは無い」

 

傾「ぐぬぬ、この何遂高を差し置くとは、いい度胸だ・・・・・」

 

楼杏「それは仕方ありません、実力でいえば、私達はこの二人よりは格下であるのは否定できませんから・・・・・」

 

彩香「何進大将軍と皇甫嵩殿も曹孟徳は気にしておられますが、まだお二人の実力を測りかねておいでです」

 

傾「なるほど、では今ここで見せてやるか、余等の実力を♪」

 

楼杏「傾様、今は戦う時ではないかと存じます・・・・・」

 

華琳「して、張遼、華雄、返答はいかに!?」

 

霞「・・・・・悪いけど、ウチはまだ董卓を裏切るわけにはいかへん」

 

雅「右に同じなり」

 

華琳「そう、二人のその忠節、確かに見たわ、ますます欲しくなったわよ、覚悟しておきなさい、私は欲しいと思ったものは必ず手に入れる主義よ・・・・・撤収するわよ」

 

そして、決して逃がさないと言わんばかりのオーラを身に纏い、華琳達は去っていった

 

霞「・・・・・噂通りの風格やな」

 

雅「ああ、あれはこの大陸を背負うに足る器であるな、あれだけの人材が付き従っているのも納得できる」

 

傾「ふん!ただの小生意気な小娘であろう!」

 

楼杏「でも、ああいった人物が、今の大陸には求められているのかもしれません・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂花「如何でしたか、華琳様」

 

華琳「確定したわね、麗羽の書簡、あれはでっち上げよ」

 

季衣「それはどういうことですか?」

 

風「董卓さんは、暴政などしていないということですよ~」

 

流琉「どうしてそんなことが分かるんですか?」

 

秋蘭「張遼と華雄のあの忠節、あれは暴君に向けたものではなかった」

 

春蘭「ああ、あれは名君に向けられるものであったな」

 

季衣「それじゃあ、この戦いって何の意味があるんですか!?」

 

華琳「意味などないわね、只の茶番劇よ」

 

流琉「それなら、今すぐに止めるべきなんじゃないですか!?」

 

華琳「確かに茶番ではあるけど、意味のある茶番なら大歓迎よ」

 

季衣「意味のある茶番、よく分からないです・・・・・」

 

流琉「はい、董卓さんが名君なら、今すぐに止めるべきではないのですか?」

 

稟「季衣殿、流琉殿、これは華琳様が大陸を制覇する為の口実、大義名分を得るための戦いということです」

 

桂花「そうよ、董卓にはその生贄となってもらうわ」

 

季衣「そんなの、単なる弱い者虐めじゃないか!」

 

流琉「そうですよ、そんなの間違っています!」

 

彩香「季衣、流琉、この大陸はそのようなことがまかり通る時代に入っているのです」

 

桂花「仮に董卓が暴君でなかったとしても、暴君と呼ばれる様な隙を見せた時点で、そこまでだったということよ」

 

稟「その通りです、兵は軌道なり・・・・・化かし合いの駆け引きに董卓は敗れ去ったのです」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

華琳「季衣、流琉、覚悟を決めなさい、そしてこの事は誰にも言ってはならないわ、たとえ一刀だろうとね」

 

流琉「それは、なぜですか?」

 

華琳「一刀に言ってしまうと、即刻この戦いを止めさせようとするでしょうからね」

 

桂花「はい、あの平和主義馬鹿は華琳様の覇道の障害にしかなり得ません」

 

季衣「・・・・・分かりました」

 

流琉「承知、しました・・・・・」

 

風「お兄さんもしっかり者ではあるんですけどね~・・・・・」

 

稟「一刀殿のしっかりさは、今の時代では合っていません、あれは太平の世でのしっかり者です・・・・・」

 

彩香「本当に、惜しいですね、一刀君なら大陸一の治世の能臣になれたでしょうに・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

一同が、一刀に酷評を呈している中、華琳は思案に耽る

 

華琳「(董卓は暴君ではなかった・・・・・そして一刀は、それを知っている?)」

 

季衣と流琉にはああ言ったが、華琳は一刀の反応からして彼が董卓に関して何等かの情報を持っていることを見抜いていた

 

なにせ、陳留を訪れた華雄は董卓の将である

 

ならば、大陸一周の旅で董卓の治める天水にも足を運んでいるはず

 

であれば、董卓は暴君ではなく名君であることも知っているはず

 

華琳「(しかし、敢えてそれを黙っている、それはなぜ?)

 

あの平和一辺倒な一刀であれば、こんな茶番しかない反董卓連合など即行で解散させそうであるのに

 

華琳「(それが出来ない理由がある・・・・・もし、陛下が洛陽にいないとしたら・・・・・)」

 

麗羽は、霊帝が董卓に人質にされていると言った

 

しかし、もしその情報が誤りだとしたら

 

これらの情報と、一刀の反応から導き出される答えは

 

華琳「・・・・・ここまでにしましょう」

 

この戦いはあくまで茶番ではあるが、これから自分が大陸に覇を唱える大事な戦いでもある

 

余計な詮索をして水を差していては、それこそ自分で自分の覇道を台無しにしてしまいかねない

 

華琳「皆、これ以上余計なことは考えないように、あの書簡の通り董卓は暴君であると思って行動しなさい!」

 

そして、曹操軍も袁術軍と再び汜水関に攻めかかるが、曹操軍の攻撃力を持っても食い破ることが出来ず、次の順番が回って来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「さあ、次は雄々しく、勇ましく、華麗な袁本初の出番ですわよ、お~~~っほっほっほっほっほ♪」

 

真直「麗羽様、私の言葉には絶対服従ですよ、よろしいですね」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

麗羽「わ、分かっていますわ・・・・・」

 

有無など言わせないと言わんばかりの真直の覇気に、麗羽は黙り込むしかなかった

 

斗詩「あれだけのことがあったら、真直ちゃんも人が変わっちゃうよね・・・・・あれは麗羽様が全面的に悪かったもん・・・・・」

 

猪々子「でも、姫は余り成長していない気がするぜ・・・・・」

 

悠「ああ、だからあたしは麗羽に付いているんだ、なにせ面白いしな♪」

 

真直「私は面白くなんてないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傾「・・・・・今度は袁紹か」

 

楼杏「来ましたね、今回の争いの元凶が」

 

風鈴「まったく、しょうがない人ね・・・・・」

 

氷環「あの人のせいで、隊長様は」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

炉青「あに様の怨敵どす、あいつは」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

どうやら氷環と炉青の中で、麗羽は張譲と同じく殺すべき第一目標となってしまったようだ

 

自分達が敬愛する一刀をここまで苦しめることに加担しているのではそうなっても仕方ない

 

知らなかっただの、騙されていただけだのと言った言い訳は、彼女達の耳には届くまい

 

霞「氷環、炉青、気持ちは痛いほど分かる、せやけど殺したら元も子もあらへんで」

 

雅「分かっているとは思うが、陛下のお命がかかっているのだ、殺す事まかりならんぞ」

 

氷環「・・・・・分かっております」

 

炉青「くぅ、それさえなければ、今すぐにでも燃やし尽くしてやるのに・・・・・」

 

殺したくても殺せない、そのじれったさが二人のストレスをこれ以上なく高めていた

 

傾「・・・・・であれば、氷環と炉青の気を多少なりとも紛らわせてやるか」

 

氷環「え?」

 

炉青「何をする気どすか、傾様」

 

そして、近付いてきた袁紹軍に対して、傾は大声で呼びかけた

 

傾「袁紹に告ぐ!!!この何遂高と弁ずる気概はあるか!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「まあ、なんという高慢ちきなのでしょう、親の顔が見てみたいですわ!」

 

猪々子「確か、元は肉屋だとか・・・・・」

 

悠「それが大将軍にまでなってるんだから、すげえよな♪」

 

麗羽「あそこまで言われては、黙ってなどいられませんわ!真直さん、よろしいですわね!」

 

真直「・・・・・仕方ありませんね、今回だけですよ」

 

斗詩「なんだかんだ言って、真直ちゃんって麗羽様に甘いよね」

 

今は舌戦に応じるべき時なのもそうであるが、やはり真直にとって麗羽は仕えるべき主なのであろう

 

この、今回だけですよ、というセリフをこれまで何度聞いてきたことか

 

そうこうしている間に、麗羽はお供を引き連れて、汜水関の前へと進み出た

 

傾「よくぞ逃げずに余の前に立った、褒めて遣わそう!」

 

麗羽「大将軍の風上にも置けないですわよ、何進!あなたのような輩が大将軍の地位を賜るなど、以ての外ですわ!」

 

傾「ほう、であれば誰が大将軍の地位に相応しいのでるか!?」

 

麗羽「そんなもの決まっていますわ、わ・た・く・し、袁本初こそが、大将軍に相応しいのですわよ♪」

 

そこには、かつての黄巾の乱の報酬を傾に蹴られた腹いせもあるのであろう

 

私怨をここぞとばかりに捩じり込んでくる辺り、相当根に持っているのであろう

 

傾「ふん、貴様に譲るくらいなら、道端に群がる蟻の一匹にでもくれてやった方がまだましよ!」

 

麗羽「んな、この袁本初が蟻の一匹にも劣るというですの!?」

 

傾「その通り、貴様が大将軍になどなってみろ、問題ばかりを引き起こす国にとっての厄介者でしかなくなるわ!」

 

猪々子「う~~~ん、姫には悪いけど、全く否定できないな・・・・・」

 

斗詩「そんな未来しか思い浮かばないね・・・・・」

 

悠「そうか?あたしは面白いからいいと思うけどな♪」

 

真直「悠は少し黙っていなさい」

 

麗羽「むき~~~~、言わせておけば!!そういうあなたこそ、今すぐに大将軍の座を降りるべきですわ、やはり肉屋などが大将軍になること自体が間違っているのですわ!!」

 

傾「肉屋だからなんだ、肉屋の何進が大将軍を名乗るならともかく、愚か者の袁紹が大将軍を名乗るなど烏滸がましいわ!!」

 

麗羽「なんですって~~~~!!陛下を人質にしている分際でよくもそのようなことが言えましたわね、今すぐにあなたをひっ捕らえて、陛下の前で処刑して差し上げますわ、あなたが泣き叫び許しを請う姿が嫌でも想像できますわよ、お~~~っほっほっほっほっほ♪♪」

 

傾「哀れなり袁紹・・・・・己の愚かさにも気づかず、威勢だけは達者とは、余りに哀れなり!!」

 

麗羽「な、何を言っていますの!?」

 

傾「そんな哀れな貴様には、きついお仕置きをせねばならんな・・・・・覚悟いたせ!!」

 

弁舌はこれまでといった風に、傾は汜水関に引っ込んだ

 

真直「下がってください麗羽様、また総攻撃が来ますよ!!」

 

麗羽「そ、そうですわね、もう二度と同じ手は食いませんわよ!」

 

そして総攻撃に備え、麗羽達も急いで下がり防御態勢を整える

 

しかし、いくら待っても扉は開かず、汜水関は静まり返っていた

 

麗羽「な、なんなんですの、何も起きないではありませんか・・・・・」

 

斗詩「はったり、だったのかな・・・・・」

 

猪々子「な~~んだ、警戒して損した」

 

悠「おいおい、拍子抜けだな、面白くないぜ・・・・・」

 

麗羽「思わせぶりなことを言い放っておいて何もしてこないなど、大将軍とは思えない腰抜けぶりですこと、やはり私ことが大将軍に相応しいのですわ、お~~っほっほっほっほっほ♪♪」

 

真直「・・・・・本当に、はったりなのかしら」

 

さっきの傾の口ぶりは、けっして伊達や酔狂ではなかった

 

もしかして、自分は致命的な見落としをしているのでは

 

そんな気がしてやまない真直であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傾「くくくく、これで真相を知った時のあ奴の顔が目に浮かぶわ♪」

 

氷環「なるほど、あの人を徹底的に追い落とすのですね♪」

 

炉青「楽しみどす、あの顔が絶望に染まるところが♪」

 

黒い感情が湧き出てくるのを、氷環と炉青は抑えきれなかった

 

それほどまでに、麗羽はこの二人にとっての仇敵となり果てていた

 

風鈴「しかし、傾様のお陰で向こうの士気に迷いが生じ始めましたね」

 

傾「ん、それはどういうことだ?」

 

風鈴「おそらく、さっき袁紹さんに付いていた者達の中に、軍師がいたのでしょう」

 

楼杏「ええ、傾様の弁舌のお陰で向こうの軍師が何かを感じ取り、これでいいのかと思い始めたのでしょう」

 

傾「ふむ、余はあ奴が苦しむ様を見たいが故にやったのだがな・・・・・だが、余のお陰なら感謝するがよい、はっはっはーーー♪♪」

 

霞「んな先の事より、今の方が大事ちゃうか?」

 

雅「ああ、まずはここを生き延びねばその先もないからな」

 

 

 

 

 

そして、袁紹軍は汜水関に攻めかかる

 

連合の中で一番の兵力を誇るため、物量を生かした人海戦術に打って出る

 

しかし、袁紹軍の迷いを見抜いた董卓軍はものの見事にそれを跳ね返す

 

おまけに、わざわざ打って出て敵の先鋒を切り崩すなどといった離れ業もやってのけた

 

そのせいで、袁紹軍の指揮には更に迷いが出始め、攻めるべきか守るべきかの判断に鋭さがなくなって来た

 

これを好機と見た董卓軍は、汜水関の門を開け閉めすることで突撃を匂わせ、フェイントをかけまくり、数で勝る袁紹軍を前後左右に揺らす

 

時にはフェイントを使わず、そのまま総攻撃を仕掛け、大打撃を与えるにまで至った

 

お蔭で袁紹軍は汜水関に近寄ることも出来ず、いたずらに死者ばかりが出る始末となってしまっていた

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「ああもう、真直さん何をやっていますの!!?」

 

斗詩「なんだか、いつもの真直ちゃんらしくないよ・・・・・」

 

悠「ああ、いつもの切れがないぜ」

 

真直「ごめん、なさい・・・・・どうにも引っかかることが多くて・・・・・」

 

猪々子「引っかかるだ?喉に何か引っ掛かってるのか?ならあたいが背中を叩いてやる♪」

 

真直「そういう意味じゃないわよ、馬鹿にしないで!」

 

斗詩「じゃあ、何が引っ掛かっているの?」

 

真直「なんだか・・・・・この戦いに大義があるのか、それが疑問で・・・・・」

 

麗羽「な~~~にを言っていますの!!?この連合は、暴君董卓から陛下をお助けする為に集った大義の軍勢、これが大義でなくて何だというのですか!!?」

 

真直「そうなんですけど・・・・・その前提条件が誤りだとしたら・・・・・」

 

麗羽「誤り?何が誤っているというんですの?」

 

真直「・・・・・言いたくありませんけど・・・・・董卓が暴君でなかったとしたら・・・・・」

 

麗羽「それこそ誤りですわ!そもそもこの情報は、十常侍である張譲さんがもたらしたものですわよ!」

 

真直「その情報が、誤りだったら・・・・・」

 

麗羽「なんということでしょう、長年陛下にお仕えしてきた張譲さんの言葉が誤りだなんて、見損ないましたわ!」

 

真直「麗羽様は人の言葉を鵜呑みにし過ぎです!相手が十常侍であろうと・・・・・いえ、だからこそ疑いを持たなくてはならない時もあるんですよ!」

 

麗羽「もういいですわ、真直さんには失望しました・・・・・いつまで経ってもあの関を抜けもしないどころかやられっ放しではないですか、しばらく頭を冷やしなさい」

 

真直「・・・・・・・・・・」

 

斗詩「真直ちゃん、真直ちゃんの言っていることも的を射ていないわけじゃないと思うけど、今は言う通りにしよう・・・・・」

 

猪々子「ああ、しばらくはあたい達に任せておきなって♪」

 

悠「早く目的地に着く為には、迂回することも必要だぜ♪」

 

真直「・・・・・分かったわ」

 

そして、真直を下げ、軍師無しで汜水関に攻めかかる袁紹軍であったが、結果は変わらなかった

 

それどころか、真直が指揮していた時よりも更に酷い被害を出すだけの結果となってしまい、すぐさま真直を呼び戻すこととなってしまったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星「・・・・・最後の怪我人の治療は終わりましたな」

 

白蓮「しかし、当初と比べると、だいぶ減ったな」

 

菖蒲「減ったというよりは、死者の方が多くなったと言った方がいいでしょう」

 

一刀「~~~~~~~っ!!」

 

悔しさが募るばかりである

 

犠牲を出さないように医療に従事しているはずなのに、これでは何の意味もない

 

恐らく向こうは、自分がこっちにいることを想定して確実に相手に止めを刺しにきているのだろう

 

自分の五斗米道の詳しい情報は、氷環と炉青に伝えてしまっているため、こちらに治療をさせない為であろう

 

因みに、公孫軍は今のところ一度も汜水関を攻めてはいなかった

 

いかに一刀の治療術が規格外とはいえ、一刀が出来るのはあくまで治療のみ

 

患者を運んだり、治療後に運び去ったりと言ったことが必要な為、どうしても人手が必要であり、公孫軍総出で医療に従事しているのだ

 

しかし、ここまで患者が減ってしまえば、公孫軍は只の幽兵と扱われてしまいかねない

 

星「そのうち、我らも関を攻める様に言われそうですな・・・・・」

 

菖蒲「はい、こちらもいたずらに兵を遊ばせておく余裕は無いはずですから・・・・・」

 

白蓮「物凄く気が引けるな、悪でないと分かり切っている相手を攻めるっていうのは・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

どうしてこうなってしまったのか、事の原因はやはり、大陸一周の旅で洛陽に寄った時に十常侍を罰しなかったことであろう

 

あの時自分に、もっと思い切りがあったのであれば、この様な結果にはならなかったであろう

 

もう一度やり直せるなら、是非ともそうしたい

 

そもそもやり直しは効くはずである、でなければなぜ自分がここに存在しているかが分からない

 

こんなタイムトラベル的なことが起こっているのだから、ちょっと過去に戻ることだってできるはずなのに

 

どうにも自分がこの時代に来た原理が分からなく、なんとかこの原理を解明してコントロールできないものかと、思考を巡らせていると

 

季衣「あ、兄ちゃん・・・・・」

 

流琉「兄様・・・・・」

 

曹操親衛隊の隊長二人が天幕に入って来た

 

一刀「・・・・・久しぶりだな、季衣、流琉」

 

季衣「うん、久しぶり、兄ちゃん・・・・・」

 

流琉「大丈夫ですか?何か作りましょうか?」

 

一刀「いや、今はいい・・・・・それよりすまない・・・・・こんなことになってしまって・・・・・」

 

季衣「謝らないでよ、兄ちゃん・・・・・」

 

流琉「はい、兄様は私達の為によくやってくれました、むしろ謝らないといけないのは私達の方です・・・・・」

 

季衣「そうだよ、兄ちゃんは何も悪い事なんてしてないんだから・・・・・」

 

寧ろ悪いのは自分達の方、そう言おうとした矢先

 

稟「季衣殿、流琉殿、そこまでにしてください」

 

風「まったく、季衣ちゃんも流琉ちゃんも良い子過ぎます~・・・・・」

 

今度は、曹操軍軍師コンビ、かつて共に旅をした二人がやって来た

 

稟「突然コソコソと陣営を出ていったかと思えば、付いて来て正解でした」

 

風「良い子なのもほどほどにしておかないと、後でとんでもないしっぺ返しを食らいますよ~、お兄さんみたいに~」

 

季衣「でも、こんなの絶対おかしいよ!」

 

流琉「そうですよ、風さんも稟さんも、兄様がこんなことになって悔しくないんですか!?」

 

稟「これも乱世の理です、物事に是非を問えるような時代ではもはやないのです」

 

風「悲しいことですが、これも運命というものです~、もっともお兄さんは、そんなもの少しも信じていないようですけど~」

 

一刀「ああ、運命なんて、言い訳以外の何物でもない・・・・・」

 

稟「では、そのまま精々抗い続けてください、あなたの無駄な努力は、見ていて反吐が出ます」

 

星「稟よ、その台詞はいかがなものかと思うぞ」

 

稟「では星はおかしいと思わないのですか、一刀殿の言動を!?」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

稟「この方の言動は、完全に常軌を逸しています、そのような誇大妄想に付き合っている星も、どうかしているとしか言いようがありません!」

 

風「季衣ちゃん、流琉ちゃん、あんまり良い人ぶっていたら、お兄さんみたいになってしまいますよ~、お兄さんの良い人ぶりがこんな結果になってしまっているんですから~」

 

季衣「でも・・・・・」

 

流琉「うん、こんなのないです・・・・・」

 

稟「自業自得というものです、季衣殿も流琉殿も、この様な人間になってはなりませんよ」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

そして、引きずられる様に、季衣と流琉は稟と風に連れていかれていった

 

星「稟、風よ、お主達も分かっているであろう、自分達のしている事とて常軌を逸していることを・・・・・」

 

白蓮「言いたい放題言っていくな・・・・・」

 

菖蒲「一刀様が常軌を逸しているなど、絶対にありません」

 

太平の理と乱世の理、この相反する二つのせめぎ合い

 

この決して交わることのない二つの理

 

果たして、どちらの理が正しいのか

 

蓮華「一刀、失礼するわ」

 

小蓮「大丈夫、一刀?」

 

粋怜「失礼するわね、一刀君」

 

祭「息災・・・・・ではなさそうじゃな・・・・・」

 

今度は、呉の重鎮達が入って来た

 

四人とも、猫背で椅子に座っている一刀を見ると、何とも言えない気持ちになってくる

 

一刀「蓮華、シャオ・・・・・すまない、こんなことになってしまって・・・・・」

 

蓮華「謝らないで、一刀・・・・・」

 

小蓮「そうだよ、なんで一刀が謝らないといけないの?」

 

一刀「この戦いは、起こることが分かっていたのに、結局止められなかった・・・・・」

 

蓮華「もういいのよ一刀、無理をしないで・・・・・」

 

小蓮「こんなの一刀のせいじゃないよ、ここにいるみんなの責任なんだから・・・・・」

 

粋怜「一刀君、そこまでにしておいた方がいいわよ・・・・・」

 

祭「そうじゃ、お主一人がどんなに抗おうとも、時代の波は止められんのじゃ・・・・・」

 

一刀「そんなもの、只の言い訳でしかありませんよ・・・・・」

 

そもそも乱世とは、極僅かな権力者が己の力を過信して起こす究極のエゴイズムである

 

そのエゴのとばっちりを受ける人々こそが、一番の被害者なのだから

 

祭「どう足掻いても、運命に逆らうことは止めんか・・・・・」

 

一刀「運命なんて、それこそ言い訳そのものですよ・・・・・」

 

粋怜「まったく、ここまで頑固だと、取り付く島もないわね・・・・・」

 

蓮華「一刀・・・・・」

 

小蓮「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺は、この戦いが終わったら、もう一度やり直す・・・・・今度は失敗しない、きっとこの国を良くしてみせる・・・・・」

 

その良くする、という感覚が今の時代の人間の価値観とかけ離れているのであるが、ここでその意識改革をしなければ、後の世は確実に地獄しか待っていない

 

それを分かっているが故の言動なのであるが、どうしてもこの時代の人間にはそれが伝わらない

 

いっその事、自分が知っているこの乱世の行く末を詳しく話した方がいいかとも思うが、果たしてそれも意味があるか

 

詳しく話したとて、単なる作り話と一蹴されてしまうのが関の山であろう

 

実際、歴史そのものが変化を拒んでいるかのように、こうして反董卓連合が結成されてしまったのだ

 

自分が挑んでいるものが、どれだけ巨大で抗い難いものか、それを認識させられそうになりながら、呉の重鎮達は去っていき、入れ替わりで入って来たのは

 

愛紗「失礼します、一刀様」

 

鈴々「にゃ~、久しぶりなのだ、お兄ちゃん」

 

桃園の姉妹達だった

 

愛紗「一刀様、遅まきながら我が将兵の治療の謝礼にきました・・・・・ありがとうございます」

 

鈴々「ありがとうなのだ・・・・・」

 

一刀「それはいい、俺から言い出したことだからな・・・・・それより、他に言いたいことがあるんじゃないのか・・・・・」

 

愛紗「そうですね、では僭越ながら・・・・・董卓軍に、桃香様の恩師である風鈴殿が在席しているのです・・・・・」

 

鈴々「うん、そのことでお姉ちゃんが気を失っちゃったのだ・・・・・」

 

白蓮「風鈴先生が、向こうに居るのか・・・・・」

 

愛紗「はい、白蓮殿も風鈴殿の教え子でしたね・・・・・」

 

白蓮「ああ、桃香とは同じ学び舎で育った同期だからな・・・・・」

 

愛紗「一刀様、白蓮殿、どうして風鈴殿が董卓に与しているのか、何か心当たりはございますか?」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

白蓮「・・・・・・・・・・」

 

答えは決まっているが、それを言ってしまえば、最悪劉備軍は董卓軍に寝返りそうである

 

空丹と白湯の事も話せば、そのようなことはしないであろうが、この情報はとてもデリケートなものである

 

下手に広めれば、それこそ情報漏洩の可能性が高くなり、空丹と白湯の命が危うくなる

 

今は、公孫軍の内のみにしまっておくのが得策である

 

一刀「・・・・・すまない、風鈴さんの考えは俺にも分からない」

 

白蓮「私も、どうして先生がそんなことをしているのか、まるで心当たりがない・・・・・」

 

愛紗「そう、ですか・・・・・」

 

鈴々「分かったのだ・・・・・」

 

白蓮「すまないな、力になれなくて・・・・・」

 

一刀「・・・・・それで、他には何かないか?」

 

愛紗「いいえ、聞きたいことはそれだけです・・・・・失礼します・・・・・」

 

鈴々「またなのだ・・・・・」

 

そして、トボトボと桃園姉妹は去っていった

 

白蓮「そうか、風鈴先生が居るのか・・・・・」

 

一刀「すまない、先に言っておくべきだった・・・・・」

 

白蓮「いや、先生は漢の将軍職に就いているからな、なんとなく分かっていた・・・・・」

 

今回の件の一番の被害者でしかない月に義理立てているからだ

 

風鈴の教えを受けた身である白蓮は、風鈴の考えを嫌というほど分かっている

 

なにせ今の自分の人格を形成するにあたって、一番の影響を与えているのは、外ならぬ風鈴だからだ

 

彼女の教えが、自分をここまでの地位に引っ張ってくれたというのは紛れもない事実であろう

 

そんな彼女がどう行動するかは、彼女の教えを受けた身である自分が一番よく分かる

 

白蓮「やっぱり一刀の言う通り、董卓は善なる者なんだな・・・・・」

 

一刀「ああ・・・・・」

 

白蓮「なら、今回の件は受け止めるさ」

 

一刀「すまない・・・・・」

 

白蓮「もう一刀は謝るのは無しだ・・・・・星も菖蒲も、たとえ風鈴先生が相手でも手加減はいらないからな」

 

星「よろしいので?」

 

菖蒲「白蓮様の恩師なのでしょう?最悪、その人を殺すことになりかねませんよ」

 

白蓮「先生の実力は、私と桃香が一番知っている、将軍職を任されるくらいだからな、自慢の先生だよ・・・・・下手に手心を加えようものなら死ぬのはこっちだ、私は星や菖蒲に私の個我で死んでほしくないからな」

 

星「伯珪殿・・・・・委細承知した」

 

菖蒲「分かりました、生き残ることを優先します」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

本当に、複雑な事情に膨れ上がってしまった

 

この戦いが終わったら、何としてでもこの複雑に絡み合った結び目をほどいていかなければならない

 

そんな気が滅入りそうな心情の中、戦いは三日目に突入したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Seigouです

 

新年一発目の投稿です

 

年末は色々と忙しかったので、なかなかキーボードと向かい合うことが出来ませんでした

 

本当なら、二週間に一話を目標にしたいとは思っているんですけどね

 

こういった纏まった休日にこそ執筆を進めないといけないとは思うのですが、如何せんリアルが優先されるため、ここが自分の限界です

 

今年の自分の目標は、この鎮魂の修羅だけでも簡潔に導くこと、と言いたいんですけど、前にも言ったように阿修羅伝と並行して書かないといけないので、なるべく同時に完結に導きたいと思っているのです

 

それを達成する為には、一か月に四話くらいのペースを維持しなければならないと思うので、これがかなりきつい作業となるのは明白です

 

ですから、確実に今年中に完結させるのは言えないのが現状です

 

戦国恋姫EXのこともありますし、かなりの不安材料が待っていそうです

 

さて、まだまだこの外史のスリラーは始まったばかりです

 

待て、次回・・・・・


 
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