前回のあらすじ
突然暴走したリックを治療する為に、美月の研究所に案内される幸村とその忍び達。
リックの治療している間、彼の正体と自分たちの存在について衝撃的な真実を聞かされた――――。
「私も人間ではありませんが、あなた方も人間ではありません―――――。
だって、この惑星は未来人によって作られた偽りの地球なのですから」
美月から最も衝撃的な発言を聞いた。
「……え……?」
「我々が人ではない……何を言っているんだ!?妖とかでもいうのか?」
「言葉通りです。貴方達…この惑星に住んでいる人は純粋な人間ではありません」
「……はあ……」
自分たちが『人』ではないと断言された――――。
何を言っているんだ?今まで色々聞かされてきたが、もう理解が出来ない。
「そもそも純粋な人間って…なんだ?」
「遺伝子操作をされていない人間です。
貴方達は、リック・アーガストと同じ未来人に創られた人造―――…あ、治療が終わりましたね」
彼女はまだ、最後まで説明が終わっていないのにも関わらず、会話を中断させた。
「これから、この装置の扉を開けます。危険なので離れて下さい」
「……それよりもさっきの我々は人間ではないとは、どういう事かな?創られたって……おかしいじゃないか」
彼女は私の話を無視するように、鋼色の大きなからくりをいじる。
扉の隙間からぷしゅーと音が鳴り最初同様、中から煙が出てきた。
――――なんなんだ彼女は……。
「う、うう……ごほっごぼごぼ……」
すでに起きていたのか、リックは咳き込んでいる。
荒治療だったのが一目でわかるぐらい彼の疲労した状態、
服だけでなく皮膚や髪の毛、まつ毛も凍っていた。
「リックさん、体調はどうですか?」
「ふ、ふざけるなよお前っ!!こんな、意味不明の機械に入れさせられて、体を拘束されて、挙句の果てに謎の液体で凍らせれるとか!何考えてるんだよ!」
リックは激怒しながら、あのからくりの中で何があったのか赤裸々に話してくれた。
「……」
「なんだよ!?俺の顔をガン見して、喧嘩売ってるのか?」
美月はしばらくリックの顔を凝視し、そして柔らかく微笑んだ。
「もう、大丈夫そうですね。調教が成功しました。体も脳も正常です」
「はあ?何処がだよ!何度か心肺停止したぞ!」
「-196℃の液体窒素で貴方の中に入り込んだ、宇宙生命体を調教していたんですよ」
「宇宙生命体!?いやだ!ちゃんと退治してくれたのか?」
「退治ではなく、調教をしました。元々人体には害のない生物です」
「いやいや!害が無くてもさ、体の中に変な生命体が寄生してたら嫌だろ!取ってくれよ!」
「……ですから……」
元気になったリックと美月のやりとりを私たちはのんびり見ていた。
なんだか漫才を見ているようだ。
しかし、彼女から重要な事をまだ聞いていない――――――。
「美月殿、先ほどの言いかけた真実だが……私はまだ最後まで聞いていない」
「……そうですね、ハッキリ申し上げると、貴方たちは人造人間です」
再びこの場が凍り付いた。
しばらく沈黙になったこの場を断ったのがリックだった。
「……人造人間!?じゃあ、オリジナルがこの惑星のどこかに居るのか!?」
「管理者の事でしょうか?」
「そうだよ、人造人間が居るということはそれを管理している人間(オリジナル)がいるはずだろう?」
「……管理者については極秘情報の為、これ以上お話しできません」
「なんでだよー!!?」
リックと美月はまた揉めている、やはり未来から来た人間には彼女が話している内容が理解できるのか。
私は少し恐ろしくなり、羨ましくもなり、嫉妬した。
「……っあ、えーっと……なんて分かりやすく説明したらいいんだろう」
美月の衝撃的すぎる真実に、夢中になりつい真田達を置いて話を進めてしまった。
真田の顔を見ると、不満と悲し気な表情をしていた。
今の彼女の話をどう上手く説明しようか、考える。
この時代にはもちろんまだ人工的に創られた生命など存在しないはず、
それに自分たちが人の手によって創られた存在という事を理解してしまったらきっと国中大混乱になる。
最悪、俺の命も危ないかもしれない……。それに――――――――
この昔の日本を生きていたかつての英雄達なのは変わりはない。
誰であろう何者だろうと、そこはちゃんと敬意を持つべきだ。
俺は一人、決心して不安そうな顔をする真田達に説明しようとした瞬間――――――。
「……!っリックさん!!」
突然、松利の甲高い叫び声が聞こえた。
強い衝撃とコンクリートの土埃が舞い上がったのが見えた。
「ううっなんだ?何が起きたんだ!?」
埃が舞い上がる中、目を凝らすとコンクリートの壁を突き破って何者かが侵入していた。
全身黒ずくめの服を着た者が2人。恐らく松利と那岐と同じ忍びなのだろうか。
「対象はアレか?」
「ああ、速やかに始末しよう」
忍びらしき2人は俺を凝視し、冷たく言い放つ。手に持っているのは苦無とそして……
「ハンドガン……お前たちも持っていたんだな。どこの忍びだ?」
「幸村様、こいつらは俺達が相手をします。今のうちにお逃げください!」
ハンドガンを持っている時点で、自分と同じただ物ではないと考える真田。
そして那岐が険しい表情をしながら避難を促した。
「―――――っ分かった。背後は任せたぞ!」
「はい!お任せください!」
すぐさま、真田は抜刀し研究所の出入り口へと走り出した。
俺は混乱しながらその後を追う、ふと敵の方を見ると……
茫然と佇んでいる美月が居た。
「美月っアンタは逃げないのか!?」
美月はどうやら松利と那岐と共に敵を足止めするようだ。
(武器を所持しているようには見えない、まさか素手で戦うのか!?)
「ここは私の研究所です。重要建築物の破壊行為、不法侵入者を許すわけにはいきません。
幸村様、あの通路を通って逃げるのを推奨します」
「行かせない!」
敵の忍びが俺を逃がさないと、くないを投げつける。
そのくないを那岐が短刀で弾き返した。
「ああ、あそこか……助言を有難う。那岐と松利を頼む!」
「でもっ!美月、流石にアンドロイドでも忍び相手では――――」
「リック、お前はここで死にたいのか!?逃げるのならさっさと走れ!!」
いつまでもウダウダしている俺に痺れを切らしたのか、真田が喝を入れた。
「…に、逃げます!」
(大の苦手だった教官に一瞬激似してて、一気に血の気が引いた……)
「怖……」
すぐに冷静さを取り戻し、急いで真田の後を追った。
松利と那岐が激しく敵と戦いを繰り広げている。
そんな一瞬の間、敵の忍びの一人が美月に問いかけた。
「何故我々の邪魔をする?リック・アーガストは生かしておいてはならない人物だぞ?」
「貴方方はそうかもしれませんが、私の計画には必要な存在なのです」
「……っは、ロボット風情が偉そうに。それでオリジナルを越えたと思っているのか?」
敵は一気に美月に飛び掛かった―――――。
次回に続く
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閲覧有難うございます。
そして新年明けましておめでとうございます。
個人話なのですが、最近体調を壊してしまい投稿するのが遅くなってしまいました。申し訳ありませんでした。
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