No.107455

【百合注意?】魔王父娘の魔獣狩り――女魔王は魔獣をも虜にする?

「魔王父娘の魔獣狩り――ブダペスト郊外にて」
http://www.tinami.com/view/105894 )の続きです。
ヘタリア二次創作で現代パラレル+ローファンタジーです。
原作を知らなくても読めるかと思います。
前作を読んでからこの作品を読むことを強く推奨します。

続きを表示

2009-11-16 23:12:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:862   閲覧ユーザー数:810

「魔王父娘の魔獣狩り」シリーズ共通注意書き

 

 オリジナルキャラクターが出ます。

 原作で登場した人物はエリザベータのみです。

 CP要素は基本的にありません。しかし、魔獣絡みで微妙にそうとも言い切れない場合もありますので注意してください。

 まだ原作では未登場のマジャールがモデルのエリザベータの父(イシュトヴァーン)が出てきます。

 全年齢ぎりぎりかもしれません。

 一応エリザベータが女性ベース両性具有設定なので注意してください(ただしこの小説は全年齢なのであまり影響はないと思います)。

 全年齢の範囲ですがバトルものなのでバイオレンスなシーンを含みます。

 なおこの話はフィクションです。

 

 ※この話の説明

 

 今回はエリザベータとイシュトヴァーンに加え、オリジナルキャラクターの庭師が出ます。

 今回エリザベータが、戦う相手の女性体グレイっぽいメデューサに百合な意味で襲われるシーン(というかキスされるだけですが)がありますので注意してください。

 (あえて言うならばメデューサ→エリザベータ?)

 

 次のページから本文です。

   魔王父娘の魔獣狩り――女魔王は魔獣をも虜にする?

 

 エリザベータは時計を見つめていた。一時間ほど前にちょっと庭を散歩してくる、と言って出ていった父イシュトヴァーンが帰ってこないのだ。

 ヘーデルヴァーリ家の庭は一般家庭に比べたらかなりの広さを誇るとはいえ、三十分もあれば一周できるほどの距離である。

 彼女は直感で、何かあると感じていた。

 時々魔王の血をひく者の家に魔獣がこっそりと潜み、襲い掛かるということもあるからだ。

 エリザベータは愛用のサーベルを装備し、イシュトヴァーンが何も武器を持っていかなかったのでバスタードソードも装備して急ぎ足で庭へ出て行った。

 

 エリザベータが庭に出て行くと庭師のラヨシュが慌てふためいていた。やはり何かあったようだ。

「どうしたのです」

「お嬢様、旦那様がメデューサに不意打ちになってしまいました。あいにく、私は魔王の血をひくとはいえあまり力もありませんし、メデューサに対抗できません」

 ラヨシュは答える。メデューサというのは地球外生命体系統の魔獣の一つで、女性型グレイのような体を持ち、頭に無数の毒蛇を有している魔獣だ。

 毒は死には至らしめないものの身体を麻痺させる作用がある。また、その両目にしばらくの間見つめられると身体が動かなくなってしまう。

 しかし唯一の救いは、女性に対する効果はほとんど無いことだ。

 メデューサの栄養源の一つは男性の生き血だ。

 そのため、メデューサは男性の魔王(時には普通の人間)を好んで襲う。そのためラヨシュもうかつに手を出すことができなかった。

「お父様はどこにいるのです」

「すぐあそこです」

 エリザベータがラヨシュに示された方向へ走っていくと、イシュトヴァーンは百七十センチほど背丈(エリザベータより少しだけ高い)のメデューサの毒蛇に咬まれていた。

 そして彼は意識を失っていて、着ていた衣類はぼろぼろに破れていた。ところどころ血がにじんでいる箇所もあった。

 メデューサの肌の色はアクアマリン色で、スタイルの良い人間の女性のような身体つきをしていた。

 いかにも毒々しい蛇が頭にあり、目は人間の数倍はあるのではないかと思われる大きさだった。

「お父様、大丈夫ですか!」

 意識を失っていたため、エリザベータが呼びかけてもイシュトヴァーンは返事をしない。

 エリザベータはバスタードソードを手にしてイシュトヴァーンに咬み付いていた毒蛇を切り落としていく。

「お前がこやつの娘か。なかなか美しい。私は男より娘が好きなものでね、たっぷり楽しめそうだ」

 メデューサはエリザベータを見つめるとそう楽しげに言った。その声は見た目に似合わず、聞くものを眠気に誘いそうな魅惑的な声だった。

 魔獣の中には異性を襲った方が益になるにもかかわらず、このメデューサと同じように同性を好んで襲うものも存在する。

 エリザベータは歯を食いしばる。厄介な敵に当たってしまった、と。

「何ですって!」

 エリザベータは光の球体を形成すると、メデューサを目掛けて投げつける。

 球体は物凄い速さで雷鳴のような轟音をたてながらメデューサに命中した。メデューサは一瞬よろけたが、体勢を立て直した。

 エリザベータは再びバスタードソードを両手で構え、切りつける。メデューサはひらりとエリザベータの攻撃をかわしていく。

「娘よ」

 眠くなるような魅惑的な声でメデューサは言う。

「何です」

 エリザベータも一瞬、その声に惹かれそうになっていた。

「私と一緒に暮らさないか」

 このメデューサは実に娘を好んでいた。最近ハンガリーで起きた原因不明の少女や若い女性に対する暴行事件の大半は、このメデューサが起こしたものであった。

 次のターゲットはどうやらエリザベータだったようだ。

「嫌です!」

 エリザベータはバスタードソードで腹部を突こうとしたが、メデューサは次々とよけていく。

 毒蛇を全て殺してもメデューサにとって大したダメージにならず、生命活動を停止させるためには本体の方を攻撃する必要がある。

(メデューサには固定は効かないし)

 メデューサには魔王の主要な能力である固定魔法や催眠能力が一切効かないため、厄介な魔獣の一種でもある。

 その上回避能力も高いため更に厄介だ。

 エリザベータは呪文を唱え、小さな氷柱をいくつかメデューサめがけて降らせる。しかし氷柱は毒蛇に刺さっただけで肝心の本体には命中しなかった。

 それを見て、エリザベータは何を思ったかバスタードソードを地面に投げ捨てた。そして加速の呪文を唱えると豹のようにメデューサに飛び掛ってつかみかかり、マウントポジションに持っていこうとする。

 絹のようなダークブロンドの髪が風に舞い、エメラルド色の瞳はひどくつりあがっている。

「肉弾戦に持ち込むのか」

「そうよ」

 魔力が弱いエリザベータにとって、肉弾戦の方が得意である。

 エリザベータは呪文を唱えて爪を伸ばし食い込ませ、メデューサを離すまいとする。

「美しい娘が近づくとは光栄だ」

 メデューサはエリザベータに顔を近づけてくる。

「何するつもり? 私は女だから固定は効かないわよ」

 メデューサの固定は女性には効かない。エリザベータは何を馬鹿なことを、と思っていた。

 その直後、メデューサはエリザベータに口づけてきた。

(なっ……! ちょ、ちょっと!)

 信じられなかった。今唇に感じるこの気持ち悪い感触は何なのだろう? 今彼女の目の前には目の前にはメデューサがいる。

(メデューサは女性体しか存在しない。私は女。つまり同性にキスされてしまった……なんてこと! 別に私は同性間のそういう関係は否定しないけど、私は唇を許した人だけと決めていたのに……それ以外は異性だろうと同性だろうと、許しません!)

 エリザベータは今までにない屈辱感を味わっていた。そして怒りを感じていた。

(よくも私のファーストキスを!)

 エリザベータは必死にメデューサの口を離そうとした。しかしメデューサは離そうとするどころか、そのままエリザベータの口腔内に舌を差し込んだ後、弄っていく。

 絹のようなダークブロンドの髪が離れようともがくたびに揺れる。

 泥を弄るようなぴちゃぴちゃというかぐちゃぐちゃした唾液の音が嫌でも聞こえてくる。

 エメラルド色の瞳には涙が浮かんでいた。どうしてこんな屈辱にあわなければいけないのかと。

 もう力を解放してしまいたい。そして暴走してメデューサの生命活動を一気に奪いたい。

 一方、ラヨシュはそんな状況をただ唖然と見ていることしかできなかった。

 メデューサは男の魔王にとって非常な驚異である。当主のイシュトヴァーンでさえやられてしまったのだから。

 その上、予想だにしなかったある意味さらに驚異的な光景がラヨシュの目の前で繰り広げられていた。

 自分の仕えている主人の愛娘の口腔がメデューサによって汚されてしまったのだ。

 信じられなかった。いや、信じたくなかった。

 悲劇が二度この庭園で起きた。最初は仕えている主人が血を吸われた。次には主人の愛娘がとてつもない屈辱を味わった。

 ラヨシュはこの時、魔力が弱い自分をこれほど呪ったことはないと感じていた。

 

 力を解放してしまったら暴走して、必要のない魔獣をまで呼び寄せてしまう。でもこの屈辱はエリザベータにとって何事にもかえられなかった。

 エリザベータはふと遠くにラヨシュの姿を見つけた。ラヨシュに何かジェスチャーを送る。

 ジェスチャーを受け取ったラヨシュは屋敷の中に入っていく。

 

 エリザベータは怒りに任せてメデューサの脛を思い切り蹴りつけようとした。しかし今の状況は不意打ちできるまたとないチャンスであった。

(すごい、屈辱……でも、我慢しないと……我慢を、しないと!)

 まだ魔獣だから我慢できる。相手は人間ではない、獣だ。そう思うことによって屈辱に耐えていく。

 しかしメデューサは相変わらずエリザベータの口内を弄っている。

(ラヨシュ、早く来なさいよ)

 毒蛇がエリザベータの腕に咬み付く。彼女は目を吊り上げ、震えそうになりながらも耐え忍ぶ。

 ラヨシュがやってきて青色のエメラルドのような石に向かって呪文を唱えると、エリザベータは青い光に包まれた。

 その後、石は音を立てて粉々になる。その石は未熟なものが力を解放しても暴走しないようにするためのものだ。

(許さない!)

 エリザベータの角はヤギのように大きくなり、エメラルド色の瞳の片方が青色に変わる。腕に咬みついていた毒蛇を素手で次々と粉砕していく。

「本気を出したか」

 メデューサは巨大な光の球体を作りエリザベータに向かって投げつける。隕石のように球体はエリザベータに轟音を立てて襲い掛かる。

「無効」

 エリザベータがそう呟くとガラスの割れたような音が響き、球体が消えた。

「大気中の水よ、巨大な氷の刃となれ!」

 三本の巨大な氷柱がメデューサに襲い掛かる。メデューサはかわしていくが、そのうちの一本が左腿に突き刺さった。

 エリザベータは即座に地面に捨てたバスタードソードを拾い上げると、メデューサの腹に思いきり差し込んだ。

「氷の刃よ、もう一度我に従え!」

 メデューサの腿に刺さっていた氷柱が抜け、上昇した後メデューサの心臓に向かって急降下した。

 氷柱はメデューサの心臓をえぐり、青色の血を撒き散らしていく。

 メデューサの生命活動は停止した。

「お嬢様、大丈夫ですか」

 ラヨシュが急ぎ足でエリザベータの元へかけつけてきた。

「それよりラヨシュ、お父様に毒消し剤を! それからマッチもお願い!」

 ラヨシュはダッシュで屋敷の中へ入っていく。エリザベータはメデューサの腹部に刺さっていたバスタードソードを抜いた後、イシュトヴァーンの元へ向かう。

 イシュトヴァーンの服はぼろぼろに破れ、身体は毒蛇に咬まれた痕が沢山あった。

「ああ、なんてこと!」

 父親は傷だらけで、自分は口内を汚されてしまった。

 おまけに庭はメデューサの残骸ですさまじい状態になっている。

 エリザベータは思わずひざを突いた。そして声を殺して大量の涙を流した。

 

「お嬢様、毒消し剤を持ってきました」

 ラヨシュは息を切らしてペットボトルを抱えていた。

「お父様を見てください。服はぼろぼろで、咬まれた後が大量にあります。なんてひどいんでしょう!」

「お嬢様こそ、大丈夫ですか?」

 エリザベータの服もまたぼろぼろに破れ、咬まれた痕もたくさんあった。

「お父様に早く毒消し剤を与えてください」

 ラヨシュはペットボトルの蓋をあけてイシュトヴァーンに毒消し剤を与える。

「旦那様、起きてください!」

「メデューサは、メデューサはどこだ?」

 イシュトヴァーンは意識を失っていて、エリザベータが戦っていた時の記憶は全くなかった。

 彼の目の前には看病をしている庭師のラヨシュと、涙を流している愛娘のエリザベータがいた。

「お嬢様が倒しました」

 ふと見てみると後ろには氷柱が刺さり、青色の血に塗れたメデューサがいた。

「エリザベータ、お前こそ大丈夫なのか」

 傷だらけになり、涙を流しているエリザベータにイシュトヴァーンは問う。

「お父様こそ、これからはどこへ行くときも武器を装備していてくださいよ! 私、メデューサに、今回、口ではとっても……いえっ……いえっ、う、うっ……」

 今度は耐えられず、エリザベータは声をあげて号泣してしまった。

「ラヨシュ、エリザベータに何があったのだ!」

「メデューサにキスされてしまったのです。それも濃厚なのを。私はそれをただ見ていることしかできませんでした。お詫びはしっかりといたしますから、どうか許してください!」

「メデューサは男しか襲わんはずだが」

 イシュトヴァーンは激怒するどころか状況が飲み込めないようだった。

「同性を狙う類の魔獣だったようで。お嬢様は美しいですからねぇ」

「ああ、そういう類か。女性体魔獣だからといって女魔王も油断できんものだな」

「ラヨシュ、マッチを頂戴!」

「はい」

 エリザベータは素手でメデューサの心臓に突き刺さっていた氷柱を引き抜いてその場に捨てた後、マッチで火をつけると呪文で火力を増大させ、メデューサの残骸を燃やしていく。

「エリザベータ、お前の美しさは同性の魔獣をも虜にするということだ。逆に誇りに思うんだ」

「ラヨシュ、水をください! 口がとても耐えられる状態じゃありません! 水道水でかまいませんから」

 ラヨシュはダッシュする。イシュトヴァーンに与えた毒消し剤を入れていたボトルに、水を入れてきてエリザベータに渡す。

 エリザベータは水を口に含むと、吐き捨て、また水を口に含み、吐き捨てるという行為を繰り返す。

「ある意味私より娘の方が重症だ。ラヨシュ、頼んだぞ」

「分かりました」

 口の浄化を終えたあと、エリザベータは消化の呪文を唱えて火を消した。その後彼女はどうにか号泣したいのを堪えながら一目散に屋敷の中へ走り去っていった。

「男性体魔獣が男の魔王にそういうことをするのは聞いたことがあるが、逆の報告は聞いたことがないのだが。いや、あったか?」

「普通の人間の世界でもそういう報告があったらすごく珍しいって皆言うじゃないですか。それと同じです。お嬢様は同性から狙われてもおかしくない美しさですからねぇ」

 その後、エリザベータは暴走を抑えられたにもかかわらず二十時間以上ベッドにこもり続けたという。


 
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