No.107353

新たなる外史の道 20 日は未だ昇らず、去れど暁は忘れず

タナトスさん

恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。

2009-11-16 02:04:50 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8449   閲覧ユーザー数:6055

この大陸は混沌を極めようとしていた・・・

 

 

この混沌は何処に向かうの・・・

 

 

誰も解らない・・・

 

 

蜀の政府では正に蜂の巣を突付いて穿り回して蹴飛ばした様な大混乱に陥っていた・・・

 

それはもう見るも無残な状況だ・・・

 

ここまで来れば哀れさすら感じられる。

 

その原因は、自分達の責任なのだが・・・・・・

 

経済不況、北郷 一刀の人質未遂、報道機関や関係省庁のもみ消しなど最悪な事態を乱発させてしまった。

 

国民は怒り狂い、城門に石を投げる者がいる始末・・・

 

城内では主だった文官、武官が集まり緊急会議が執り行われていた。

 

朱里がその重たい口を開く。やつれて見るも無残な姿だ。

 

「事態は私達に最悪の方向に傾いています・・・最早、国が持っているのが不思議なくらいです・・・」

 

雛里も口を開く。此方もカナリやつれている。

 

「北郷さんの情報が偽情報で私達は北郷さんとの交渉を破綻させる為に嘘をつきました・・・それが不味かったんです・・・」

 

「本当は国よりも民の事を考えていたのですが北郷さんと手を組みたくない、でも利益は欲しい・・・そんな時に偽情報です・・・私達の行動は全て裏目に出ています・・・」

 

朱里は無念そうに呟いた。

 

「北郷さんは誰よりもこの世界の為を想い、真剣に私達に手を差し伸べてくれた・・・でも・・・私達はその手を払いのけたばかりか、あんな事を・・・」

 

全てが自分達の情報収集能力の無さが招いた原因である事を朱里と雛里は頭を下げて詫びた。

 

「私達は・・・踊らされていたのか・・・第三者に・・・」

 

愛紗は悲痛の思いで唸る。

 

「それだけじゃ無いんです・・・蒼の極秘書類が魏と蜀に流れたんです・・・」

 

朱里の言葉に全員が驚く。

 

「本当か!? それは!?」

 

愛紗は立ち上がり、怒鳴る。

 

「はい・・・その極秘書類の中には北郷さんが開発した製鉄精錬技術や、無煙火薬の精製方法、小銃や大砲技術にいたるまで・・・蒼の極秘とも言える技術なんです・・・」

 

それを聞いた瞬間、誰もが驚く。

 

それもそのはず、蒼が、いや、北郷が、隠し通した機密が、蒼の力の秘密が白日の下に曝されたのだ。

 

「では、これで蒼と対等な力が・・・」

 

「いえ・・・そうはなりません・・・」

 

愛紗の興奮に朱里が水をさす。

「何故だ!?」

 

愛紗の疑問は将全員の気持ちを体現していた。

 

「それは私達が小国だからです・・・」

 

「この技術は鉄鉱石の採掘技術、加工技術、火薬の大量生産、補給の確保など課題が山済みなんです・・・それを攻略しないと使い物になりません・・・私達の様な小国では予算も取れない、技術が足りない、例えこれ等を攻略できても、此方は如何しても手作り、蒼は大量生産・・・圧倒的物量に飲み込まれてしまうんです・・・」

 

朱里、雛里の言葉に全員意気消沈する。

 

「・・・それでは全くもって意味が無い・・・宝の持ち腐れか・・・」

 

焔耶は鼻を鳴らし呟いた。

 

「結局私達は、北郷さんとの交渉失敗で手詰まりになってしまったんです・・・北郷さんを人質にし、自分達に有利な条件で交渉する・・・しかし、私達は北郷さんを何処か舐めていました・・・北郷さんはお妃である北郷 愛紗さんほど力は無いと何処か高を括っていました・・・」

 

「更に私達は不況からか、思考が硬直し今考えたら愚かしい事をしてしまいました・・・」

 

朱里、雛里は自分達の愚かさを今更嘆いた。

 

人間追い詰められ過ぎると以外、思考が冷静に働く。正に蜀首脳陣がソレだ。

 

どん底の状態で見出せる境地でもある状態に首脳陣は今至っている。

 

だがやはりどん底はどん底、いくら冷静になっても手詰まりをどうにか出来るほど朱里も雛里も神様ではない。

 

 

そんな時だった・・・

 

「お悩みのご様子ですな・・・お嬢様方・・・」

 

突如、会議室に皺嗄れた声が木霊した・・・

 

「な!? 誰だ!?」

 

愛紗が辺りを見回すが気配が無い。

 

「ココだ・・・若いの・・・」

 

全員が声の方向に振り向く。

 

そこには白髪交じりの黒髪をオールバックにした、身長180センチくらいの40代の男が立っていた。

「貴様・・・何者だ!?」

 

愛紗が警戒しながら素性を問う。

 

「私か? 私は・・・そうだな・・・通りすがりの不法侵入紳士だ・・・」

 

「自分から怪しいと認めた!? しかも紳士!? 訳解らない!?」

 

翠が唖然としながら叫ぶ。

 

「ふざけるな!! 質問に答えろ!!」

 

愛紗はイライラしながら怒鳴る。

 

「やかましいお嬢さんだ・・・綺麗な顔が台無しだぞ」

 

紳士はヤレヤレと言わんばかりに肩を竦めながら言う。

 

「大きなお世話だ!!」

 

愛紗もそれに反応し怒鳴る。

 

「御紳士、門番はどうなされた?」

 

桔梗がまだ来ぬ、会議室の外を守る門番について質問した。

 

「お答えしよう、麗しき御婦人。気持ちよくノビている」

 

「そうか・・・」

 

桔梗はその回答からこの老体は只者ではない事を悟る。彼女とて将、同じ失態は繰り返さないよう精進はする。

「オッサン・・・余り舐めるな」

 

焔耶がドスの利いた声で紳士を脅しに掛かる。

 

「若いの、威勢が良いのは結構、が、相手との力量差が見抜けないのでは二流だな」

 

そういい紳士も返す。

 

「ふざけるな!!!!」

 

そう叫び、焔耶は鈍砕骨を紳士目掛け振り下ろす。が・・・

 

紳士はソレを綺麗にかわし、足払いを焔耶にかける。

 

モロにソレを喰らいハデにすっころぶ焔耶。

 

「グフ!?!?!?!?!?」

 

「猪突猛進は戒めるべきじゃなお嬢さん」

 

そういい紳士は手を差し伸べた。

 

「ふざけるな!!!!」

 

そう叫び焔耶は鈍砕骨を転んだ体制から振ろうとするが、自分の得物が無い事に気付く。

 

「お探しの物はこれかな」

 

紳士の手に鈍砕骨が握られていた。

 

「鈴々・・・アレ・・・見えたか・・・」

 

「見えなかったのだ・・・」

 

翠と鈴々は唖然としながら呟く。

 

ここにいる武将全員が悟る。“この男は私達より強い”と・・・

 

「さて・・・劉備殿はおれれるか?」

 

紳士は桃香を呼んだ。

 

「・・・何でしょうか?」

 

桃香は警戒しながら問いかける。

 

「同盟に迷っているな・・・曹操と手を組むべきか・・・北郷に非礼を詫びて国交を正常化するか・・・」

 

桃香は心臓を鷲掴みにされた感覚を覚える。

 

紳士の目は鋭く桃香を捕らえた。その目は嘘偽りは効かない目だった・・・

 

「・・・はい・・・」

 

桃香は素直に答えた。いや、素直に答えなければならないという感覚に捕らわれたといったほうが正しい・・・

 

「ならばこの紳士が助言をしよう・・・

ソレは・・・嘗て自分が何の為にその剣を取ったのか・・・・・・

だ・・・

迷った時は原点に返る・・・ソレが一番の近道だ・・・

そして、何事にも諦めない事、何事にも逃げださない事、そして・・・これが一番重要・・・自分の仲間と信念を信じる事・・・だ」

 

桃香はその言葉に打ちのめされた・・・

 

自分は諦めかけていた・・・この状況から・・・

 

自分は逃げかけていた・・・この現実から・・・

 

自分は疑いかけていた・・・自分の理想と大切な仲間達を・・・

 

「その助言・・・ありがたく頂きます・・・」

 

桃香は立ち上がり、紳士に頭を下げた。

 

「では・・・さらばだ・・・若人よ・・・」

 

そういい紳士は消えた。

「朱里ちゃん、蒼に使いを、内容は会談での陳謝と正式な同盟の再検討を行う為に私自ら其方に御伺いいたしますと」

 

「・・・桃香・・・様・・・」

 

桃香は何処か張り詰めたモノが切れ、あの時の、蜀を建国する前の桃香に戻っていた。

 

「いそいで」

 

「御意です」

 

朱里もまたやつれた顔は無くなりその顔に力強さが戻る。

 

蜀の首脳陣もまた、桃香に触発された様にその顔から精気が漲る。

 

そこに先ほどまでの悲壮感は無い。

 

全員がこのどん底から這い上がろうともがいていた。

 

だが、彼女達の顔には悲壮感は無かった。

 

むしろ力強ささえ感じられた。

 

それが蜀の真の力なのか、最後の残り火なのかは解らない。

 

だが彼女達の顔は先ほどの絶望を塗り固めた顔から・・・

 

力強くも美しい顔になっていた。

 

 

その様子を城壁から見ていた先ほどの老人と白髪交じりのロングの黒髪を束ねた40代くらいの美しい婦人が見ていた。

 

「・・・貂蝉か?」

 

老人の呼びかけに貂蝉が現れる。

 

「あ~~~らあ、ひさしぶりね~、随分見ない間にナイスミドルになったじゃない・・・」

 

貂蝉は腰をクネクネさせながら答える。

 

「キモイから止めろそれ・・・」

 

「『ご主人様』のイケズ・・・」

 

貂蝉は更に腰をクネらせながらいう。

 

「ソレにな貂蝉・・・一つだけ断っておく・・・」

 

「何かしら?」

 

「『俺達』はもうその名は名乗っていない・・・

 

外史の肯定者・・・『天悟』と『地悟』だ・・・」

 

「ソレは失礼・・・『天悟』様・・・」

 

「『天悟』様・・・『ゼロ』と『テン』はどう動くでしょうか?」

 

「『地悟』・・・我々は北郷 一刀と北郷 愛紗に悟られぬよう彼らを支援する事だ・・・後の事は彼らの決断しだいだ・・・ソレに我等は制約で表立って動けない・・・」

 

「懐かしいのですか・・・それとも口惜しいのですか・・・あの中に自分がいない事が・・・」

 

「・・・いいや・・・“道”は彼らが作るものだ。我々外の者が手を出すべきでない・・・だからさ・・・『ゼロ』と『テン』の『計画』を阻もうとしているのは・・・」

 

貂蝉は二人の会話を遮る。

 

「お話中悪いんだけど・・・私はいくわね・・・また会いましょう・・・『天悟』様、『地悟』ちゃん」

 

そう言い貂蝉は城壁から消える。

 

 

おまけ

 

「ところで『天悟』様・・・・・・この木箱なんですか・・・?」

 

『地悟』は至極疑問といった面持ちで質問する。

 

「『地悟』・・・・・・・・・」

 

「はい?」

 

「認めたく無いものだな・・・若さゆえの過ちというものは・・・」

 

「はぁ・・・被ったんですね・・・木箱・・・」

 

「年甲斐も無くハシャイでしてしまった・・・やはり木箱はいいものだ・・・敵の目を欺く最高の偽装だ・・・正に人類の確信だな・・・木箱は・・・」

 

「・・・貴方というひとは・・・」

 

頭を抱えて唸る『地悟』

 

「あと若い頃を思い出した・・・」

 

そう言い『天悟』は『地悟』に接吻をする。

 

お互いの唇が離れる。

 

「続きは帰ってからです・・・『天悟』様・・・」

 

そういい、『地悟』は『天悟』の唇に人差し指を置いた。

 

「それは実に楽しみだ・・・」

 

そう言い2人は城壁から消えた。

 


 
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