No.1066015

ゴブスレ世界にミレシアンが流れ着いたようです

ネメシスさん

これはゴブリンスレイヤーの世界に、ミレシアンが行く話。
そこでミレシアンはどのような冒険をし、どこへ進んでいくのか。

2021-07-07 00:32:16 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:680   閲覧ユーザー数:680

冒険者。

一獲千金を夢見る者、純粋に世界の平和を願う者、それ以外に働く術がなく仕方なくなるという者、より強い力を求める者等々。

様々な想いを胸に、彼らは日夜活動している。

 

種族も思想も年齢もバラバラではあるが、彼らに共通しているのは、世界に蔓延るモンスターとの戦いを生業としているということ。

そのため冒険者の死亡率は、他の職業と比べてもかなり高い。

特に駆け出しが命の危機に瀕することが多いのは間違いないが、ベテランと呼ばれる者でも少しのミスで簡単に命を落とす。

 

しかしそれでもなお、冒険者を目指す者は後を絶たない。

たとえどれほど危険があろうとも、己が欲する物を手にするために。

今日もまた、冒険者ギルドの扉は開かれる。

 

 

 

 

 

「初めまして、ここは冒険者ギルドです。本日はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」

 

とある辺境の街の冒険者ギルド。

その受付に立つ受付嬢は、いつものように愛想笑いを浮かべて来客の対応にあたる。

例えどんな相手でも、来客に対しては最低限の礼儀を持って応じるのが受付嬢のポリシーであった。

……たとえ、相手がどんなに怪しい見た目だったとしても。

 

(うわぁ、怪しい! 何この人、すっごく怪しい!)

 

それが受付嬢が、その者に抱いた感想であった。

自分の頭2つぶんほど高い身長のその者は、体全体をローブで包み、顔はフードで目元まで隠されてよく見えない。

ローブの両腰あたりには二本の剣が取り付けられており、その背には弓と沢山の矢が詰め込まれた矢筒を背負っている。

それら身に着けている物のほとんどが、黒で統一されていた。

名前は聞いてないが、「暗殺者です」と言われても受付嬢は驚かないだろう。

「不審者です」でも同じだ。

もちろんそんな考えは内側にとどめ、表に出すことはない。

そこそこ長くこの仕事に従事し、身に着けた経験に裏付けられた鉄壁の愛想笑いは、ちょっとやそっとの事で崩れるほど軟ではないのだ。

怪しいローブを着た者は、小さく口を開いてゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「冒険者になりたい」

 

それは予想していたよりも低い男性の声だった。

併設された酒場で屯している冒険者たちの喧騒の中で、その声は些か小さ過ぎるように思われたが、なぜかはっきりと受付嬢の耳に届いた。

 

(うーん、30代くらいかな?)

 

その身長と声の低さから、おおよそそれくらいの齢かとあたりを付ける。

 

「はい、ギルドへの加入手続きですね。ではこれから書類に必要事項を記入していただきますが、文字は書けますか? 代筆もできますが」

 

「いや、代筆で頼む……代筆に金銭はかかるか?」

 

「代筆になりますと、代筆料として銀貨5枚頂くことになります」

 

「……銀貨……生憎、今手持ちがないのだが」

 

「でしたら今は構いません。今後、お受けされる依頼の達成報酬から、今回の代筆料を天引きさせていただきます。それでよろしいですか?」

 

「あぁ、それで頼む」

 

「かしこまりました。では、少々お待ちください」

 

受付嬢は作業をしながら、チラッと男の様子をうかがう。

 

「あのぉ、出来ればフードを外して、素顔を拝見しても構わないでしょうか?」

 

「……わかった」

 

たまに犯罪者が素性を隠して冒険者になろうとすることもある。

なので顔の確認のため、男にフードを取ってもらうように頼んだ。

決して、その怪しい見た目で「こいつ犯罪者なんじゃね?」と受付嬢が思ったわけではない、これは顔を隠してくる者たち全員にしている確認事項というだけのこと。

男は気分を害した様子もなく小さく返答をした後、何のためらいもなくフードを外した。

フードの下から出てきたのは、端正な顔つきで傷一つない綺麗な白い肌。

その目は少し眠たげというかボンヤリしているような感じで、これから冒険者になり命がけの荒事をするような人には見えない。

受付嬢は30代と思っていたが、これなら20代、なんなら10代後半という線もあり得る。

顔の次に目が向いたのは、頭に付けている装備。

それは頭周りと後頭部を守るような形になっていて、左右に鳥の羽根を思わせるちょっとした装飾のある、綺麗な黒いヘルメットだ。

フードを外す時に見えた手も同じく黒いガントレットを付けているようで、もしかしたらローブの中も黒い装備で統一されているのかもしれない。

どれだけ黒が好きなのだろうと、受付嬢は苦笑いしそうになるのを懸命に堪えた。

 

(というかあれ、頭動かし難くないのかなぁ)

 

あんな装飾のあるヘルメットの上にローブを被るなんて、少し動いただけでもあの羽根のような装飾がローブに引っかかりそうだ。

流石に戦闘になれば外すのかもしれないけど。

 

「もういいか?」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「……別に」

 

そう素っ気なくいうと、男はさっきと同じように目深くフードをかぶる。

気になるところはあったが、少なくとも記憶にある犯罪者リストに該当する男の顔はない。

念のため後でもう一度調べて見ようとは思うが、多分この人は犯罪者ではないだろう。

犯罪者ならここまで素直に顔をさらさないだろうし、と思えばすぐにまた顔を隠してしまったけど。

何か顔を隠しておきたい理由でもあったのだろうか。

例えばどこかの高貴な家柄の者で、何か理由があって冒険者になりに来たとか。

……それにしては文字を書けないことと言い、金銭を持っていないことと言い、いささか不自然ではあるが。

 

(没落したか、もしくは勘当された? って、邪推し過ぎるのは駄目よね。でも、たまにいるのよねぇ、そういう人って)

 

何かの理由で家を出たものの、身分の高い家に生まれて普通の仕事をするのはプライドが許さず、かといって働かなければ生きていけないから、妥協点として冒険者の道を選ぶという輩もいる所にはいるものだ。

冒険者は確かに命掛けの仕事ではあるが、中には富や名声を得て国に認められ、貴族としての位を得た者もいる。

しかしそれはあくまでほんの一握り、数多くいる冒険者の中でも成功をおさめることのできた、本当に一握りの冒険者の話でしかない。

才能が無い者、運のない者は道半ばで力尽きてモンスターの餌食になるのはよくある話だし、人と馴染めずにパーティーを組めない者はソロで活動し、危険を冒さないように近場で出来る依頼を受けて、安い依頼料で細々と日々を過ごす者もいる。

 

そんな生活を送るくらいならば冒険者にならず、下手に高いプライドなんて捨てて地道に働いた方がまだいい生活が出来るというもの。

しかし一握りとはいえ、その成功の事実は一獲千金を夢見る農村出の若者だけでなく、こういった手合いを寄せ付けるだけの魅力はあるのだろう。

この男もそれを目的とした手合いではないかと、密かに受付嬢は思っていた。

 

(……こういう人ほど、あっさり命を落とすことになるんだけどなぁ)

 

一獲千金を夢見る気持ちは受付嬢もわからなくはないが、もう少し地に足の着いた考えをしてほしいというのが本音だった。

担当した冒険者が次の日には帰らぬ人になっている、こんな仕事をしているとそれは日常ともいえるほどによく起こる。

他の同僚たちは割り切っているようだが、生来の人の良さのせいか受付嬢には簡単に割り切るという選択肢を取ることが出来ずにいた。

そんな考えを内に押し込み、受付嬢は男の手続きを済ませていく。

 

「……ミレシアン? あの、すみません。ミレシアンとは、いったい何なのでしょう?」

 

その中で、疑問に思うものが出て男に尋ねる。

都の方でも色々と経験はしてきたが、ミレシアンという単語を聞いたことは一度もなかった。

 

「……改めて説明するのも難しいが……そうだな、地元の人からはこういわれている。“星から来た者”と」

 

「……星から、来た?」

 

男の説明に、よくわからないと言ったように首を傾げる受付嬢。

 

「俺達の種族のようなものだろうか? 伝承にもなっているらしいが……すまない、説明は得意ではないんだ」

 

「あぁ、いえ、構いませんよ」

 

淡々とした中でも、うまく説明できなくて悪いと思ったのか、少し小さくなった声で言う男に、受付嬢は気にしてないと軽く手を振って愛想笑いを浮かべる。

 

(んー、この街の貴族か商人だと思ってたんだけど、もっと辺境の出なのかしら?)

 

確かにここは辺境の街だが、ここよりさらに辺境の地で、一般的に知られていない部族、種族はまだまだいるだろう。

それに男の持つ技能の数々を見て、最初の高貴な人説よりも辺境の村々から来た説の方が真実味を帯びてきた。

 

「鶏の卵取りに麦の刈り取り、薬の調合、料理……色々と経験なさっているんですね。主に使う武器は剣に弓、それに魔法も? 結構、多才なんですねぇ」

 

そう感嘆の声を洩らすが戦闘技能の剣と弓はともかく、魔法に関しては付け焼刃程度か、もしくは見栄を張っているのではと受付嬢は思っていた。

魔法というのは、そう簡単に身に付けられるものではない。

例を挙げるなら“賢者の学院”といった専門機関に身を置き、時間をかけて修めるものなのだ。

人によってはどこにも所属せずに我流で覚える人もいるが、農作業の片手間に覚えられるほど簡単なものではない。

特定の種族が使える特殊な魔法なり、その人がとんでもなく天才だったなら話は別だが。

先程、ミレシアンという聞き覚えのない単語に種族のようなものという説明をされたが、少なくとも受付嬢の目には男が自分と同じ只人にしか見えない。

流石に見た目だけで才能までわかる程の技能も経験もありはしないが、その寝ぼけた様なぼんやりした目付きからは天才らしい風格というものを感じなかった。

 

(んー、あんまり誇張が過ぎるようなら、監督官さんに来てもらった方がいいかしら)

 

同僚の監督官は看破(センス・ライ)という奇跡が使える。

それを使ってもらえば、この男が言ってる事の真偽を確かめることが出来るのだ。

確か今は暇してるはずだから、呼べばすぐ来てくれるだろうけど……。

 

「……それほどでもない」

 

先程の形式的とは言え受付嬢が発した褒め言葉に、男は照れている様子はなく、やはり淡々とした口調で返してくる。

必要なことを、必要なだけしか言葉にしないような目の前の男に、受付嬢はやり辛さを感じるとともに、不思議と微笑ましくも感じていた。

 

(ふふ。こういう所、ちょっとだけ“彼”に似てるかも)

 

そう、この男の相手をしていて、どこか“彼”に似た感覚を受付嬢は感じていた。

“彼”は不愛想ではあるが、仕事はしっかりこなすし嘘を言うような人ではない。

そんな“彼”と似た感覚を受けたこの男が、多少の誇張はあっても依頼に支障をきたすような嘘を言うとは思えなかった。

 

「はい、これで冒険者登録は完了しました。これであなたも冒険者の仲間入りです。とは言え、まだ入ったばかりですので一番下の白磁等級ではありますが」

 

「……白磁、等級?」

 

「冒険者にはその実力に応じて、等級分けがされています。一番最初は誰でも同じ白磁等級から始まります。そこから黒曜、鋼鉄、青玉、翠玉、紅玉、銅、銀、金、白金と等級が上がっていきます」

 

「……なるほど」

 

「まぁ、とはいえです。銅等級からは実力だけでなく、信用がものを言う等級になってきますので、そう簡単に昇級することはできないでしょう。貴方もより上の等級に進みたいのならば、普段からの素行にも十分に注意を払うよう、ご忠告します」

 

できれば、その怪しいフードも外してくれたらいいのだが、男の様子からあまり顔をさらしたくないのかもしれないことを考えると無理も言えない。

実際、“彼”のように常にフルプレートヘルムで顔を隠していたり、周囲の評判がいささか悪かったとしても銀等級にまで行くことができた例もあるわけで、多少のことなら日々のギルドへの貢献度で何とでもなる。

それでも“彼”やこの男に限った話ではないが、所属する冒険者には出来るだけ評判を下げない努力をしてほしいというのが、受付嬢だけでなくギルド全体の意見だった。

個人の問題で済めばいいが、さいあくギルドの印象まで貶めることになりかねないのだから。

 

「……わかった、注意はしておく」

 

「はい、よろしくお願いします。では、こちらが白磁等級の認識標になります。冒険の最中、“何かあった”際に身元を証明する物にもなりますので、無くさないようにしてください」

 

「あぁ」

 

男が小さく頷いたのを確認し、受付嬢は黒い紐の付いた白磁等級の認識標をカウンターに置いた。

少し含みのある物言いの受付嬢の言葉を気にしてないのか、認識標を手に取り少し見た後、男はローブの中に仕舞った。

その下で何やらごそごそとやっていて、多分どこかに括り付けているのだろう。

出来れば見える所に付けてほしいのだけどと思いながら、受付嬢はコホンと一つ咳ばらいし、最後に新たな冒険者となった男に言葉を送る。

 

「それでは今後の御活躍に期待しています。白磁等級、新米冒険者のミレシアンさん」

 

「……ミレ? ……あぁ」

 

こうして新たに1人の男、ミレシアンが新米冒険者として誕生した。

 

(あとがき)

思い出したころに、マビノギとか昔のゲームに舞い戻ってプレイしています。

こんなことしてるから、全然小説とか書けないんでしょうねぇ……。

でも、なんか昔やってたゲームがいまだに続いてるって少し感動です。

当時まだ学生だった頃、寝る間も惜しんでやり込んでいたのを思い出します。

まぁ、全然強くなんてなれませんでしたけど(汗)

主に楽器とかで、その頃にはやっていた曲を何とか四苦八苦して演奏させたりするのが好きでしたね。

後料理とか、ほんと色々と出来るゲームです。

ちなみに、当作に出てくるミレシアンの装備、黒いローブは実際にプレイしていた私のお気に入り。

いろんな服も作れるのですが、ティルコネイルで買えるローブがなぜか気に入ってずっと付けていました。

……こんなことしてるから強くなれなかったのか(遠い目)

これを見て少しでもマビノギを懐かしいなぁ、またやってみたいなぁと思ってくれる人が1人でもいてくれたら嬉しいです。

 

 


 
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