No.1064589

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 91

風猫さん

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。


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2021-06-17 22:18:05 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:584   閲覧ユーザー数:567

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

 俺はふらつきながらも水場へ向かう。

 

「……え?」

 

 だが、そこに映ったのは俺ではなかった。

 

「これ、は……?」

 

 髪が伸び、白髪(はくはつ)になり、犬歯が牙のようになっていた。

 

「俺は、一体……?」

「玄輝、なのか?」

 

 翠の一言で振り返ると、彼女は一度だけ体を震わせる。

 

「翠……」

「玄輝、なんだよな……?」

 

 そう言いながら彼女は俺に近づいて、頬に触れた。

 

「大丈夫、か?」

「あ、ああ。正直、まだちょっと熱が残ってる感じはするが」

「そ、そっか……」

 

 だが、まだ不安なのか顔を撫でまわしてくる。

 

「…………………」

「……いや、何かあるなら言ってくれないか?」

「へっ!? あ、ああごめんっ!」

 

 顔を赤くしながら慌てて手を離してはなれる翠。

 

「たく、何がしたかったんだよ……」

「い、いや、その、ごめん……」

 

 彼女も何を言ったらいいのか分からないのか、そこで黙ってしまう。しかし、ふと周りを見て気が付いたことを口にした。

 

「って、何であたしこんなところにいるんだ?」

「……あ~、そっか」

 

 犬神に操られてここまで来たことを覚えていないんだな。

 

「実はな……」

 

 俺はさっきまでの事を話すと彼女は頭に手を当てて情けないと言わんばかりのため息を吐いた。

 

「……敵に操られてたって、情けない」

「翠ほどの人間を操れるだけの力を持ってたんだ。情けないなんてことは無いさ」

「……………」

 

 だが、彼女の顔はそれで晴れてくれることは無い。

 

(……やるか)

 

 色々と邪魔は入ったが当初の目的を果たそう。で、その前に……

 

「師匠、ちょっと悪いけど一回ここから外してくれないか」

「あん? お前師匠に向かって」

「……お願いします」

 

 俺は面と向かって頭を下げる。それを見た師匠は“ふんっ”と鼻を鳴らして木々の上へ飛びあがった。

 

「一応、あんまり長々いるんじゃねぇぞ」

 

 そして、木々の闇の中へ消えていった。

 

(……ありがとう)

 

 心の中で礼を言って、俺は翠と向き合い口を開いた。

 

「……なぁ、翠。無理してないか?」

「へっ!?」

「いつからあの犬神に憑りつかれていたかは定かじゃないが、それを抜きにしても最近のお前はやつれているように思えてな」

「……………」

 

 俺の言葉に翠は気まずそうに顔を逸らした。

 

(やっぱりな)

 

 だが、ここでするのは言葉を吐き出させることではない。

 

「……ちょいとそこらへん歩かねぇか?」

 

 俺の誘いに少し戸惑いを見せる翠だが、小さく頷いて二人で水場の近くをゆっくり歩く。

「“…………………”」

 

 無言の時間。だが、それを延々と続けたところで意味はない。

 

「……翠」

「……なんだよ」

「正直、人を率いるのって苦手なんだよ」

「……いや、藪から棒に何言ってんだ?」

 

 うむ。確かにそうだとは思うが、気にしたら負けだ。気にしたら口が止まる。

 

「まぁ、聞いてくれ。最初は一人で戦うのが当たり前の生活だったからさ。最初隊を率いることになった時なんか初陣みてぇになってたよ」

「そうは見えないけどな……」

「だからこそ人を率いようと思い、行動する人間を俺は凄いと思う。自分の采配次第で多数の死者を出してしまう恐怖に戦いながらも、皆を導かなければならないんだから」

 

 でも、と俺は翠を真正面に捉えて続きを口にした。

 

「翠。俺がそう考えられるようになったのはお前たちの所に来てからだ」

「え?」

「お前、前に言ってたよな? “いつまでたっても母様に追いつけないんだ”ってさ。でも、俺はそうは思っていない」

 

 俺の言葉に翠の表情に怒りが見えたが、彼女が口を開くよりも早く話をつづけた。

 

「確かに、武の話で行ったらそうかもしれない。でも、当主としてなら炎鶯さんにも引けを取らないと思う」

「そんなのっ!」

「じゃあ、なんで800人も残ってるんだよ?」

「800人もじゃないだろっ! 800人しか、」

「いいやっ! 800人もだっ!」

「っ!」

 

 俺は、それだけは絶対に否定させるつもりはない。

 

「いいか、落ち伸びた兵が800人も離れないで、しかも3週間もついて来ているのは上出来だっ! それはお前の力だっ! お前の人徳なんだよっ!」

「でもっ!」

「ついでに言えば、800人しかってさっき言ったが、そいつは今ついて来ている奴らに対する侮辱だっ!」

「そ、そんなわけないだろっ!」

「だったら尚たちが悪いっ! 今いる800人はお前に、錦馬超について来てくれているんだぞっ! 命がけで西涼の馬超ではなく、お前一個人にだっ! そんなあいつらに“しか”ってのはおかしいだろっ!」

 

 俺の一言で、翠の表情が変わった。

 

「そんなに自信が持てないって言うのなら、俺が言ってやるっ! お前はっ」

 

 一呼吸おいて俺は言葉を心へ届くよう願い、叩きつけた。

 

「お前は、西涼を継ぐ者としてちゃんとやれてるっ!」

「っ!」

 

 だが、その言葉も彼女は首を横に振ってしまう。

 

「違うっ! 母様ならっ!」

「お前は炎鶯さんじゃないっ!」

「でも、私は母様にならないとっ!」

「違うっ! お前はお前の道を探さなきゃいけないんだっ!」

「え?」

 

 そこで、彼女の顔から憑き物が落ちた気がした。

 

「あたしの、道?」

「そうだっ! 憧れる人がいるのはいいさっ! 追いつきたいと思うのもいいさっ! だが、その人になろうとするのは違うっ! その人になるってことは今までの生きた足跡も消すってことだっ! お前が積み上げてきた、翠って女が今まで積み上げてきたすべてを捨てるなんてできるわけがないだろうがっ!」

 

 俺は翠の両肩を掴む。

 

「ひゃっ!?」

「積み上げたものを信じられないってんなら、お前を信じている俺を信じろっ!」

「え、えっ?」

「お前が自分自身を信じられるまで俺が信じてやるっ! だから、俺を信じろっ!」

「わ、分かったっ! 分かったからっ! ち、近いっ!」

 

 そこで我に返った。

 

「わ、悪いっ!」

 

 慌てて手を肩から離すと、翠は顔を背けてしまう。

 

「…………」

「……その、さっきは本心だからな」

 

 勢いで色々言っちまった部分はあるが、それだけは間違いじゃない。

 

「……じる…な」

「へ?」

「し、信じるからなっ! 責任取れよっ! バーカっ!」

 

 翠はそれだけ言い残すと脱兎のごとくみんなの所へと戻っていってしまった。

 

「……やっちまったか?」

 

 もしや、また星にからかわれるネタを作ってしまったのかと不安になったが……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「………杞憂だったのかね」

 

 次の日。翠は元気そうで、何なら西涼を逃げる前よりも元気に思えた。

 

「あっ」

 

 ただ、顔を見合わせると気まずそうに逸らされるようになってしまったが。

 

「……まぁ、元気そうならいいか」

 

 目的は達成できたのだ。それで良しとしよう。そう思っていた時だった。

 

「大変よぉんっ!!!!!!!」

 

 肉ダルマ状態の小町が慌てた様子でやってきた。

 

「なんだよ。予備のブーメランでもカラスに盗られたか?」

「冗談抜きで緊急事態よっ! 徐州が曹操に落とされたわんっ!」

 

 あたまが、しろくなった。

 

「……なに、言ってんだ? アイツらが、そんな」

「さっき、近くを通っていた行商人の話を聞いたのよんっ!」

 

 じゃあ、じゃあみんなは……!

 

「愛紗たちはっ!?」

「……分からないわ。でも、少なくとも討たれたどうの話は聞いてないわん」

「……くそっ!」

 

 思わず近くにあった木を殴る。

 

「玄輝……」

「…………もう一度確認するが、討たれたって類の話は聞いてないんだよな?」

「ええ」

 

 なら、ここであれこれ妄想したところで意味はない。

 

(考えろ。アイツらが生きているならば、どんな手を取る?)

 

 こういったときに主立って考えるのは桃香、北郷、朱里、雛里だろう。その四人ならばどうするか。

 

(戦った可能性は、多分ないだろう。いくら曹操とはいえ、西涼へ攻め込んでからの時間を考えて、一カ月程度で徐州を完全に落とせるとは思えない)

 

 俺たちの所にいた将の面々や兵力を考えれば、一カ月以上は絶対に戦えるはずだ。負けることが前提になるが。

 

(だが、んな馬鹿なことを選ぶ奴らはいない。特に、桃香なら絶対に反対する)

 

 戦う時間が延びるという事はその分だけ民に負担がかかる。それを彼女が良しとするわけがない。

 

(なら、考えられるのは……)

 

 一瞬、思い浮かんだことを否定しかけるが、桃香ならすると信じられた。

 

(多分、逃げる。それが民に一番負担がかからない方法だからな)

 

 それに、攻め込んだのが曹操だから、というのもある。どこぞの名も知らないところから攻め込まれたのであれば話は変わるが、曹操であれば民に暴力を振るうというはありえない。それを見越して考えたならば、十分にあり得る話だ。

 

(じゃあ、どこに逃げる?)

 

 北には逃げようがない。かと言え、南は孫策。全く交流がない陣営に身を寄せられるわけもない。となると……

 

(……ちっ! 裏目に出たってことか)

 

 桃香の性格、いや、彼女たちの目指している頂、そして、状況から考えると目指す場所は……

 

「……益州だな」

「何? 益州がどうかしたのん?」

「桃香たちが向かう先だ。もしも、逃げ延びているとしたら、あいつらなら益州へ向かうはず」

「根拠は?」

「確か、益州は領主が無能で内乱が起きかけてんだよな?」

「……それに乗じるのでは、ってことねん?」

「ああ。それに、領主が無能ってことはその分民が苦しんでいるってことだ。そんな人たちを見過ごすわけがないだろう」

 

 まぁ、取って付けたような理由に思われてしまうかもしれないが、その評価よりもあいつは人助けを選ぶだろうしな。

 

「小町。俺は翠に益州行きを進言してくる。でだ」

「あらん? もしかして頼み事かしらん?」

「ああ。できれば桃香たちの足跡を追ってもらいたい」

「まぁ、そのぐらいなら問題ないでしょう」

 

 バチコーンっ! とウィンクをかまして小町は森から飛び出していった。

 

『何かあったら伝書鳩で知らせるわぁ………』

 

 空に小町の言葉が木霊し、消えたのを確認してから俺は翠の所へ向かった。

 

(……頼む、みんな無事でいてくれ)

 

 ただ、皆の無事を祈って。

 

 

はいどうも、おはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

一か月ぶりの更新になってしまいましたが、皆さんお元気でしたか?

 

さて、前にコメントしていたルーンファクトリー5が届いたので、この一カ月ずっとやっていたんですが……

 

うーむ、という感じですね。いや、悪くはないんですが、めんどいバグがあったり、途中で強制終了したりとか、ボスモンスターのドロップが激渋だったり、農作業のカメラワークが鬱陶しかったりと、前作に比べると微妙かなぁという感じです。

 

でも、いいところもあります。まず、ルーシー可愛い。あるシーンのイラストが可愛すぎて……。あと、相変わらずの結婚できないバグがひどいw みささぎさんは結婚できてもええやろっ! とか、いやそれ完全ヒロインポジやんっ! という前作の結婚できないメインヒロイン(ドラゴン)を彷彿させるのがいたり……。 あと、3Dキャラもやっぱりいいですね。4の時のキャラデザでも良いといえばいいのですが、やっぱり3Dもいいですね。

 

……ただ、どーせ3Dにするなら、CEROをもう一つか二つぐらい上げてキャラデザをもっとよくしてほしかったなとは思いましたが。

 

とまぁ、ゲーム自体はなかなか楽しめました。

 

さて、今回はここらでまた次回。

 

いつものように何かありましたらコメントにお願いします。

 

ではではっ!

 

 

 


 
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