1月25日
今年の冬は超あったかい。
でも、スズさまの服のコンセプトは「冬の妖精♡」なんだよね~。
真っ白の薄衣にフワフワ羽織を着せて、所々に水色のビーズをあしらってみた☆
う~ん、超愛されスタイル!
殿下にも気に入ってもらえたみたいで、昼餉夕餉以外は、あたしたちはお部屋に入れてもらえなかった…(泣)。
ちょっと、愛しすぎじゃね!?
部屋の掃除をさせてくれい!!
2月12日
今日のスズさまは「大人顔!女っぷりをアップする基本ブラック」。
全て濃黒で統一、帯と襟元に金色の唐草模様のふちどりが超ゴージャス☆
肌触りのいい絹にうっとり、お着せするときにこっそり触るスズさまの肌にうっとりしちゃう。
いいよな~。殿下は四六時中触ってんだものな~。
「スズは何を着ても似合ってしまう」
すっげー。愛しのボンバー発言。
いや、そのとおりなんだけど。
色白いしさ。肌もきれいだしさ。
そのまま殿下は自分の膝に乗せて、スズさまの口に朝餉を箸で運び始めた。
人間って、何でも慣れるもんだよね。
最初は驚き桃の木山椒の木だったあたしたちも、何にも思わなくなっちゃったもん。
でもさ、殿下さ。
スズさまがこぼしたからって、朝っぱらから首に舌を這わせるのはどうよ。
3月10日
春もすぐそこで「やっほー」とかいってんのに、めちゃくちゃ寒かった。
スズさまは寒さに弱い。
やっぱ、ネコだから?
お目覚めの時間になって、部屋に入ると殿下は頭を蒲団に突っ込んで格闘していた。
行っちゃったか!?
とうとう、あっちの世界に行っちゃったか!?
「おはようございます、殿下」
OH!さすが能面婆さん!
こんな時でも動じない!
「おはよう、キムザ。今日は寒いね」
蒲団からいったん、顔を出して爽やかに挨拶した殿下(でも頭はボサボサ)は、また布団に潜り込んだ。
「こら、スズ!朝だよ、もう出てきなさい…痛!」
怒ったような鳴き声がしたと思ったら、殿下の悲鳴が上がった。
すげえ。
あの殿下に悲鳴を上げさすなんて。
超笑える。横の女官も笑いを我慢して変な顔になっていた。
「そうか、分かった」
鼻を鳴らして殿下が蒲団から出てきた。
「そんなに寒くてここから出たくないのなら、今日はずっとここにいなさい。お前の飯はわたしが全部食べてやろう」
途端にスズさまがぽっこりと蒲団から顔を出した。
慌てたみたいに何かを鳴いている。
「よしよし、まずは顔を洗ってからだよ」
殿下が笑ってその体を抱きしめる。
はい、今日の勝負。殿下の「食いもんで釣る」作戦勝ちー☆
4月16日
本日のお二人は、お花畑にピクニック。
季節は春真っ盛り、殿下とスズさまはいつも春真っ盛り。
スズさまのお召しものにだって手は抜かないZE!
春の最強タッグ空色の衣にピンクの羽織。焦げ茶の兵児帯を前に垂らしてみた。
ううん、超可愛い!!
あたし、空色とピンクと茶色の組み合わせって大好きなんだよね~。
殿下は「これはいい。すぐに帯を解くことができる」。
おい!頭の中はそっちのことでいっぱいか!
美少女がきれいな服を着て、花の中に埋もれているなんて、こりゃもう無敵じゃんよ。
だけどさ、スズさま。
美少女が花をブチブチ引きちぎって遊んでるのはないと思うんだよね…。
5月5日
いつの間にか枯れ木に緑がわんさか生える季節になってきた。
そうなればスズさま服だって初夏仕様になってくる。
さあ、何を着てもらおうか!
能面婆さん以下、あたしたち女官はそれが楽しみなんだな。
「萌黄と黄緑の組み合わせは?」
「色が呆けてしまいますわ。今日は涼しいので羽織物は必要でしょう」
「イクさまの所の姫さま、見た?ギンギラギンで目が痛くなっちゃったわよ」
「見た見た~。あれ最悪~。足していけばいいものじゃないよね~」
「あいつら腕悪すぎ。得意げになって着ている姫さんも頭悪すぎ」
「そんなもの、どうだっていいでしょう。スズさまのお召しものに集中なさい」
あの、キムザさま。
私語をしていたあたしたちも悪いけど、一国の姫を「そんなもの」と切り捨てたあなたもどうかと思う。
「今日は中々決まらないな」
寝台の中から、クスクスと笑い声が聞こえる。
お召しものは当日の気温やご本人の御気分によって決めるものだけど、その間は殿下とスズさまは待ちぼうけを食らっている。
まあ、あのお二人は裸でいちゃついているだけだけど。
6月1日
今年の夏は、ガラスの簪(かんざし)が爆発的ヒット!
てゆうか、流行らしたのはあたしたちだ!イエーイ☆
西国の商人が見せてくれたたくさんの簪の中でも、ひときわ目を引いたそれは、華奢で小さな玉が連なっていて揺れるときれいな音を立てた。
見た目も涼しげで、大分値が張ったものの即座にお買い上げした。
あたしたち、殿下の経費をどんだけスズさまにつぎ込んでいるんだろう(汗)。
でもいいや、そんな事、殿下は気にしなーい。
スズさまのたっぷりした髪の毛を高く結いあげて、ガラスの簪を目立つように一つだけ付ける。
うわー。うなじが超色っぽーい。
もっと目立たせるように襟もいつもより多く広げた。
ちょっとこれは鼻血ブーものじゃない!?
「ああ、今日のスズは一段と色っぽい」
そのまま殿下はスズさまを寝台に押し倒した。
あたしたちのスズさまになんてことするんだ、馬鹿王子!!
結局、殿下はあたしたちの総スカンを食らって、苦笑していた。
その後、お二人は手をつないで庭園に向かったらしい。
翌日から道行くたびに、他所の女官に簪のことを聞かれて、その度に得意になっちゃった。
自分の選んだものを主に身に付けてもらえて、なおかつ大勢の他人に認められる。
あたしがこの仕事が大好きだと思うのは、こういう時だ。
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「ネコとわたし」番外編。
名もない女官の日々を綴った記録。
たまには目先の変わったものを書いてみようかと。
通勤電車でぼけっと女性誌の広告を見ている時に思いつきました。