「さて、残ったファイターは……」
ベルは、魂を感知する能力を使って捕まっているファイターを察知した。
彼女の頭の中に、ファイターの情報が入っていく。
「金髪……女……獣人……釣り竿……」
ベルはファイターの特徴をぶつぶつと呟く。
りょうはそれを聞いて、何となくだが捕まっているファイターの正体を推測する。
「もしかして、そのファイターって……」
「……はっ!」
精神集中を終えたベルは意識を取り戻す。
「ベルベル! ファイターが分かったの!?」
「ええ。釣り竿を持った、金髪の女の獣人がここから遠くに捕まっているわ。でも、ここからじゃ遠いし、何より山が邪魔しているし……」
このままでは、ファイターの下に辿り着く事ができない。
ベル達が困っていると、スピリッツボールの中からうんてんしゅのスピリッツが飛び出してきた。
『おめぇら、困ってらが?』
「か、じゃなくてうんてんしゅさん!」
『山が邪魔だら、オラのバスさ是非乗ってくんろ。安心するだ、ゆったりのんびりだべ』
「ありがとう。でも、全員乗れるのかしら?」
「これで空間を広げればいい」
ベルの疑問に対しては、シャドウがカオスエメラルドを取り出す事で解決した。
『んだ、出発進行だ~!』
「きゅうりの糠漬け~!」
こうして、スマッシュブラザーズはかっぺい、もというんてんしゅが運転するバスに乗り、ファイターがいる場所に向かうのだった。
「ちょっとバスが揺れているね」
『だがら、ゆったりのんびりだべ。そごまで心配する必要はねぇ。このバスには敵は来ねーがらな』
カービィ、ランス、リュカなどの子供組は、ワイワイと楽しそうに窓を見ている。
うんてんしゅは話しかけられながらもしっかりと集中してバスを運転している。
「……」
「相変わらず無口だね、シャドウは」
マールは、何も喋らないシャドウをじっと見つめている。
一方、りょうはファイターが誰なのかを想像していた。
(僕が知ってる女の獣人は、彼女しかいないな。いや、どうぶつって言った方がいいのかな……? 十中八九彼女しかいないと思うけど……)
『ほい、着いたべよ』
「ありがとうございます!」
こうして、うんてんしゅの力を借りて、スマッシュブラザーズはファイターが捕まっている場所に辿り着いた。
「あっ、いたよ~ベルベル!」
「一体、どんなファイターかしら……あっ!」
一行が奥に進むと、黄色い体色をしたシーズーの女性が光の鎖で束縛されていた。
ベルが感知した特徴と、全く同じだった。
その女性は、りょうに見覚えがある人物だった。
「しずえ……!」
そう、彼女はりょうの秘書、しずえだったのだ。
彼女の穏やかな表情は成りを潜めており、一行を殺意がこもった赤い瞳で睨みつけていた。
「キーラサマニサカラウナラバ、アナタタチヲケシサリマス」
「……まずは鎖から解放するぞ」
そう言って、リンクはしずえを拘束している光の鎖をマスターソードで切り裂く。
解放されたしずえは、釣り竿を構えて一行に襲い掛かってきた。
「来るぞ!」
「ええ、行くわよ、みんな!」
「おうっ!」
「待っててね、しずえ……必ず、僕が助けるよ!」
ベル、りょう、リンク、ファルコン、ドクター、ロックマンは、操られたしずえを助けるため、彼女と戦った。
「せいっ!」
リンクはマスターソードを抜き、しずえを斬りつける。
しずえはりょうにフェイントをかけ、惑わせる。
その間に、しずえを覆う光がドクターを打ち据えてダメージを与えた。
「あいたたた……やるじゃないか、しずえ君」
「フフフフフ……」
しずえは傘をロックマンに向けて振り下ろす。
攻撃はロックマンにギリギリで当たり、ロックマンは軽く仰け反る。
「ファルコンキック!」
ファルコンは屈んでしずえを炎を纏った蹴りをぶちかます。
ロックマンはファルコンに続いて溜めたロックバスターを放ち、追撃した。
「今のしずえ君の攻撃は見た目以上に強力みたいだ。みんな、気を引き締めていくよ」
「うん……!」
りょうは気を引き締めて、キーラに操られたしずえに向き直った。
しずえは赤い瞳で、支援するはずのりょうを睨みつけていた。
「ファルコン……パンチ!」
「ブーメラン!」
ファルコンの渾身の一撃を、しずえはシールドを張り攻撃をシールドブレイクギリギリで防ぐ。
リンクはしずえにブーメランを投げるが、彼女はシールドを解除し緊急回避でかわす。
「ぐあっ!」
さらに、彼女を包む光のオーラがリンクとファルコンに反撃した。
「随分強い光ね……でも、私の闇には敵わないわよ!」
「キャアァァァ!」
ベルはしずえに近づき、大鎌で彼女を一閃した。
「凄いね、ベル」
「まだまだよ!」
続いてベルは大鎌から闇の双刃を放ち、しずえを包む光のオーラを切り裂いた。
「アア、アアアア」
「! 元に戻るんだ!」
慌てふためくしずえに、りょうは頭上からボウリングの球を落とした。
ボウリングの球に潰されたしずえは、しばらく動けなくなった。
「いくわよ!」
ベルは闇の双刃をしずえに向けて放ち、続いてファルコンがしずえを肘打ちで攻撃する。
りょうはパチンコで光のオーラが薄い部分を狙って撃つ。
「はいよっ!」
「クッ!」
「そらっ!」
ベルの大鎌をしずえは上手くかわすが、かわした先にはリンクがいて、マスターソードで斬りつけられる。
しずえは道路標識でリンクに反撃するも、リンクは盾で彼女の攻撃を防いだ。
「……」
「今だ、りょう! 彼女を解放しろ!」
「おっけー! しずえ、僕のところに戻ってこーーーーい!!」
リンクの掛け声で、りょうは斧を構えてしずえに突っ込んでいった。
そして、りょうの斧がしずえの光のオーラに命中すると、光のオーラは音を立てて砕け散り、しずえも場外に吹っ飛ばされた。
「しずえ……無事かなあ……」
キーラに操られた反動で、しずえはしばらくの間、気を失っていた。
りょうは倒れたしずえを心配の目で見ている。
そんな彼を見たリンクは優しくりょうの肩に手を置いた。
「大丈夫だ。もう少ししたら目が覚める」
「そう、だよね。ありがとう、リンク」
数分後、正気に戻ったしずえが目を開けて起き上がった。
しずえは、きょろきょろと辺りを見渡す。
「あれ? わ、わたしは一体、何をしてたんですか? ……あ、りょうさん!」
「しずえ!」
秘書の犬と再会したりょうが、喜びからお互いに抱きしめ合う。
「よかったぁ。ずっと離れ離れだと思いましたけど、また会えてとっても嬉しいです」
「それは僕も同じだよ。スマッシュブラザーズの絆は永遠だもんね」
「本当にありがとうございます! りょうさん、皆さん、これからもずっと、わたしの傍から離れないでくださいね」
「約束は守るよ、しずえ。だから、泣かないでね」
涙目になるしずえの頭を、りょうは村長として優しく撫でた。
人間と獣人、種族の差を超えた絆を、一行はしみじみと感じ取った。
こうして、スマッシュブラザーズは、光の呪縛からしずえを解放し、新たな仲間に加えるのだった。
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40話目はあの女性キャラを救出します。