秋蘭「―――――――ということなのですが」
華琳「それで良いのではないかしら、どう思う二人は?」
桂花「はい、問題ないかと思います」
稟「わたしもそれでよろしいかと」
華琳「なら、そのことは秋蘭に任せるわ」
秋蘭「はっ、かしこまりました」
城の中では日課の会議が行われていた。
華琳「ではその話は終わりね、桂花!街の工事の件はどうなっているの」
桂花「はっ、それが・・・・人員が思うように集まらず、工事を進めようにも工事に移れない状態で・・・・」
華琳「城の人間と業者の者だけではやはり足らないのね」
桂花「はい、今いる人数で工事自体を始めるだけならば可能なのですが・・・・・やはり人手が足りない状況では・・・・・」
稟「洛陽は人が多いといえどそれぞれの仕事を持っていますからね、仕事がない人間でも仕事は選びますし、人員を集めることは簡単にはいかないでしょう」
華琳「そうね、でもこれはこの街のためになるもの、やらないわけにはいかないわ」
目の前の難題に頭を悩ませている魏の中枢。
すぐにでも案を出さなければいけないが、一向に解決策が浮かんでこない。
???「華琳様~!」
そんなこともつゆ知らず、ハリのある声と共に勢い良く走ってきたのは季衣だった。
秋蘭「こら、季衣。今は会議中だというのに」
桂花「そ、そうよ。びっくりしたじゃない」
季衣「あ、ごめんなさい」
悪びれた様子もなく、笑顔のまま謝罪をした。
桂花「全くもう」
稟「で、どうしたのです」
少し不機嫌そうにしている桂花を気にせず、話を戻した。
季衣「あ、そうそう。風ちゃんと霞ちゃんがもうすぐで到着しますよ」
華琳「あら、ようやく帰ってきたのね」
秋蘭「そうか。しかし、なぜ伝令の兵が来ないのだ?二人が見えたら報告に来るようにと伝えておいたはずだが・・・・・」
流琉「それは季衣の目が異常に良いからですよ」
季衣の後を追ってきた流琉が状況を説明した。
稟「異常にといってもそこまで違いが出るものなのでしょうか」
流琉「はい。それに、もうすぐでそれが証明されますよ」
と笑顔でそう答えた。
稟「?」
桂花「証明?」
流琉の言葉に疑問を抱いたとき、入り口の方から監視兵が入ってきた。
兵士「報告いたします、ただいま南方の方角に張遼様および程昱様らしきお方を確認いたしました」
華琳「あら」
桂花「えっ・・・・」
流琉「ほら、言ったとおりではないですか」
自分のことのように誇らしげにしてみせた。
秋蘭「まぁ、季衣の視力が異常なことは証明されたな」
と少し笑いながら、季衣のほうに目をやった。
季衣「?何の話かよくわかんないけど、そんなことより、お出迎えに行きましょうよ華琳様!」
今にも走り出しそうな感じがひしひしと華琳に伝わってきた。
華琳「そうね、会議も袋小路にはいっていたのだからちょうどいいわ」
秋蘭「はい、それもそうですね」
華琳「あなた、場内にいる武将にこのことを伝えてきて頂戴」
先ほど報告に来た兵に指示を飛ばした。
兵士「はっ!」
華琳「それと、そこまで重要なことではないから、会えた人間だけでいいわ」
兵士「かしこまりました」
その言葉と共に行動に移った。
桂花「ねぇ季衣、霞と風以外にあの魏光って奴は見えたの?」
季衣「ん~、僕が見て分かったのは霞ちゃんと風ちゃんだけだったよ・・・・・」
桂花「そう」
季衣の言葉に安堵をみせた桂花であったが、
季衣「たぶん、もう一人の人がそのギコウ?って人なんじゃないかな」
桂花「えっ・・・・」
そう笑顔で言うと、季衣は一人で入り口の方に走っていった。
桂花「ちょ、ちょっと。それってもう一人いたってこと!?ちょっと季衣!」
走り去っていった季衣を桂花が必死に追いかけていった。
秋蘭「話を聞く限りでは優秀な人物なのでしょうが、本当はどうなのやら」
華琳「さぁ、さすがに会わないことには何とも言えないわ。でも、大丈夫なのではないかしら」
稟「えぇ。あの二人が連れてきたのですから、さすがに期待をしていいのではないでしょうか」
華琳「そういうことね」
秋蘭「それもそうですね」
流琉「あのぉ・・・・・・桂花様ですら見えなくなってしまいましたけど・・・・・」
先にいった二人のことを心配して流琉が声をかけてきた。
華琳「そうね、桂花が何をしでかすかわからないから、もう行きましょうか」
三人を出迎えるために、街のほうへと向かった。
一方、一刀たちはすでに洛陽の目の前に着いていた。
李淵「うへ~、ようやく着いたぁ」
霞「こんぐらいでへこたれとったらあかんで、淵っち」
笑いながら、李淵の頭をたたいた。
李淵「なんでそんなに元気かな~、張遼様は・・・・」
宝譿「今は元気だが、明日からはたまった仕事尽くしだがな」
風「こら、ホウケイ。場が沈むようなことを言っては駄目ですよ」
霞「うっ・・・・ほんまやで・・・・・・」
蒼蓮「ふふふ、頑張ってくださいね、張遼様」
一刀「・・・・・・・」
賑やかな四人(と一体)とは裏腹に一刀は洛陽を真剣な目で見つめていた。
風「お兄さんどうかしましたか?」
一刀「えっ、あぁ、いや、さすがに魏の中心だけあって大きいなと思いまして」
霞「まぁ、そりゃそうやろ!なんつっても一番大きいんやから」
自分のことのように誇らしげに笑っていた。
李淵「確かにでかいよなぁ」
蒼蓮「うん、私たちの街がなんだかすごく小さく感じてしまうわ」
風「南陽と比べれば確かに規模で言えば大きいのかもしれませんが、活気では南陽も見劣りしていないと思いますよ」
一刀「そうですか」
李淵「はは、おかみさんがそれを聞いたら喜びそうだよ」
蒼蓮「おかあさんは南陽を誇りに思っているからね」
霞「そないなことは後でも話せるんやから、もう行こや」
風「それもそうですね」
四人が洛陽へと入っていくが、一刀はその場に止まっていた。
一刀「(・・・・ようやく・・・ようやく、ここまで戻ってきたんだ)」
ここまでの道中、極力考えないようにはしてきたが、いざ目の前にしてしまうと感慨深くなってしまうのは仕方がなかった。
あちらでの三年間、洛陽に戻ることだけを考えて過ごしてきたのだから。
知らず知らずのうちに拳を強く握り締めていた
李淵「ちょっと魏光さん何してんのさ~」
霞「さきにいってまうで~」
後ろで止まっている一刀に気づき、声をかけてきた。
一刀「あっ、今行きます」
終わりじゃない、ここから始まってしまうんだ。
喜びに満ちた心を打ち消し、この世界にいる意味を思い出しその足を進めた。
そんな心境を知るわけもなく、奥のほうから砂塵を巻き上げ、何かが近づいてきた。
???「霞ちゃ~ん、風ちゃ~ん!!」
李淵「うぇ!?」
一刀「!」
鉄球を軽々持ちながら、走って来たその姿には懐かしさを感じた。
霞「季衣っち、出迎えに来てくれたんか」
季衣「当たり前だよ」
宝譿「出迎えご苦労だぜ」
風「こら、ホウケイ。こういうときはお礼を言うのですよ」
季衣「風ちゃんと宝譿も相変わらずだなぁ」
風「季衣ちゃん、わたしたちそんなに久しぶりではありませんよ」
霞「せやで、ちょっといなかっただけやん」
季衣「えぇ~、でも毎日会ってたのに数日会わないだけで、なんだか長い間会ってなかった気分になるんだよ」
風「まぁ、ごもっともですね」
蒼蓮「あ、あのぉ~」
蚊帳の外にいた蒼蓮が声をかけた。
霞「ん?あぁ、わるい忘れとったわ」
李淵「むっ」
風「ご紹介します、魏の武将の許緒です」
季衣「よろしく~」
霞「でこっちの二人が李淵と蒼蓮やで」
李淵&蒼蓮「よろしくお願いします」
風「で最後に残ったこの方は――」
???「あぁ!!!」
一刀を紹介しようとした矢先、奇声と共にねこ耳帽子が現れた。
季衣「あっ、桂花だ」
桂花「な、なんであなたたち二人じゃないのよ!」
李淵「???」
意味の分からないことを言われ、李淵と蒼蓮は驚きと疑問でいっぱいになった。
霞「え?いやこの二人は付き添いみたいなもんやで」
李淵&蒼蓮「ど、どうも」
桂花「あら、どうも・・・じゃなくて!じゃあこの男はなんなの!?」
そういいながら、一刀を指差した。
一刀「むっ(この男って、相変わらずひどい奴だな)」
風「この人が魏光さんですけど、何か」
桂花「な、なんで連れてきたのよ!」
霞「いや、もともとそういう目的やったし、ていうか華琳の命令やで」
桂花「うっ、で、でも――」
???「桂花!そろそろお黙りなさい」
奇声を聞きつけ、後方から続々と魏の重鎮が歩いてきた。
桂花「か、華琳様!?」
霞「おぉ、華琳。帰ったで」
風「ただいまです~」
華琳「えぇ、おかえりなさい」
稟「全く、華琳様のおっしゃったとおりではないか」
秋蘭「まぁ、誰でも思いつきそうなことではあるがな」
流琉「で、でも何もおきていないからよいのではないでしょうか」
予想通りの展開に呆れている二人とフォローを入れる流琉。
華琳はそれを気にせず話を進めた。
華琳「魏光を連れてきたようだけれど・・・・なぜ三人もいるのかしら」
霞「あぁ、それはな――」
風「まぁ、こんなところで話しているのもなんですからお城のほうに帰ってからにしましょう。お話をしなければならないことがいくつかありますので」
霞の言葉をさえぎり、風が城に戻ることを提案した。
華琳「そう、わかったわ」
稟「それでは馬を小屋の方へ」
その場にいた兵士に指示を出した。
兵士「はっ」
霞「長旅やったからよう休ませてやってな」
兵士「かしこまりました」
華琳「それではいきましょうか」
李淵と蒼蓮はよく状況を理解はしていないものの、その場にいる全員と共に城の方へと足を進めた。
一刀「・・・・・・・・・・・」
複雑な心境でその場を見守っていた者もいたが・・・・・・。
〈 城内 〉
風「―――――――――――――ということがあったのですよ」
南陽に向かうまでに起きた襲撃を重点的に説明した。
華琳「・・・・・・・」
稟「旗も掲げていない謎の集団ですか・・・・・」
秋蘭「その集団の情報は他にはないのか」
風「これがまたさっぱりでして」
霞「でもな。そこらへんの野盗って感じやないんやで」
桂花「どういうこと?」
霞「まず、統制が取れすぎとったちゅうのもあるんやけど何よりも持ってたもんがな・・・・・」
秋蘭「もの?」
霞「せや、なんか良いもん使っとったんや」
稟「それは本当なのですか、風?」
風「風は気絶していたのでよくわかりません」
稟「そうでしたね」
華琳「魏光!」
一刀「は、はい」
いきなり呼ばれ、少し声が裏返ってしまった。
華琳「あなたはどう思ったの」
一刀「わ、わたしですか」
華琳「そうよ」
もうすでに魏の人間であるような扱いだった。
一刀「そ、そうですね。わたしも張遼様のおっしゃるとおりだと思います」
華琳「それはなぜ」
一刀「はい、たしかに武器や防具、それに馬の数どれをとっても野盗ではそろえられるようなものではありませんでした。それに」
稟「それに?」
一刀「狙う標的が間違っています」
桂花「標的?」
一刀「相手は逃げる商人には目もくれず張遼様と程昱様に襲い掛かりました。普通ならば金目になりそうなものを持っている人間から奪い取るはずでしょう」
秋蘭「霞や風が身に着けていたものが高価に見えたというのはありえるのではないか」
一刀「たしかにそれも一理ありますが、まずお二人は外套を羽織られていた。その時点で目に見えるものなど高が知れています。それ以前に、遠方のしかも後方より追いかけてきた彼らには判別がつくはずがないのです」
華琳「そうね、あなたの言うことはもっともね。でも、もし、その一味が何も考えずに人を襲うような集団だったとしたら?」
一刀「そのような統率の取れていない集団には見えませんでしたが、もしそうだったとしても、たかが三人を襲うために二百人も引き連れてはいかないでしょう」
流琉「でも、相手ははじめから霞様や風様がいると知っていたら、その人数をつぎ込むのは普通なんじゃ」
一刀「野盗のような人間が世に名をはせている武将を狙うほどの強さと度胸はないでしょう。ああいう人たちはいかに危険が伴わずおいしい思いができるかというのを基本としていますし」
華琳「・・・・・・・・」
一刀「それに、あれははじめからお二人を狙っての襲撃だったのでしょう」
・・・・・・・・・・
一刀が説明を終えるとその場は静寂した。
一刀「ええっ~と、以上ですが・・・・・」
気まずそうにしている一刀であったが、華琳が話し出した。
華琳「風」
風「なんですかぁ」
華琳「あなたは魏光を武官、それとも文官のどちらとして連れてきたの」
風「そうですね、風は実際に戦っているところを見たわけではないので強さというのは聞いただけになりますのでなんともいえませんが、このお兄さんの頭の良さなら文官としてで良いのではないでしょうか」
華琳「霞、あなたはどうなの」
霞「うち?うちはなぁ、一緒に戦って案外できるっちゅうんを知ってるからなぁ・・・武官でええんとちゃうん?」
桂花「なによそれ、なんとなく連れてきただけじゃないそれじゃ」
霞「まっ、できる奴やってことはわかっとるんやで」
華琳「そう、なら稟、あなたはどう見る?」
稟「そうですね、状況の把握と分析力は十分あるようですし、知将としての才能もあるのではないでしょうか。将軍として隊を任せられるかどうかは現段階ではわかりませんが、霞様がお認めになられているほどの実力なら問題ないかと」
華琳「そう、秋蘭はどう?」
秋蘭「わたしとしては稟と同意見ですね。ただ、あとは信用に足るかどうかではないでしょうか」
華琳「だそうよ」
信用できるのかしら、といわんばかりに不適な笑みを向けてきた。
一刀「(・・・・・そんなこと言われてもなぁ・・・・)」
いきなり目の前に現れた人間にはどうしようもない問題を突きつけられた。
しかし、長い間、一緒にいた一刀には自分が試されているのだというのが分かっていた。
一刀「今の段階で信じていただこうというのは天地がひっくり返っても無理な話です。程昱様や張遼様ですら数日しか共にしていないのですから。だから、信用に足るかどうかを曹操様たちに決めていただければと思っています。その間は監視なり、規制なりをかけていただいてもかまいません」
稟「それは、もっともな話ですが・・・・・」
華琳「では、最初はあなたを必要としたけれど、途中であなたを不必要だとわたしが判断したらどうするの?」
一刀「そのときはそのときです。それに、わたしに利用価値がなくったのならば、それはわたしの責任なのでしょう。そのときは曹操様の判断で捨ててもらってもかまいません」
華琳「!」
【???「―――なら、俺に利用価値があるうちは、せいぜい上手く使ってくれ」】
華琳の脳裏にはいつであったか誰かとの会話が頭をよぎっていた。
一刀「ど、どうでしょうか」
自分では大きなことを言ってみたものの、自信が微塵も感じられない様子だった。
華琳「・・・・・・」
秋蘭「華琳様?」
黙り込んだ華琳を心配して、秋蘭が声をかけた。
華琳「あぁ、ごめんなさい」
秋蘭「はぁ・・・」
華琳「いいでしょう。魏光、ならばその力、我が魏のために役立てて頂戴」
一刀「は、はい」
一部始終を見守っていた、李淵や蒼蓮、霞は安心をしたのか表情が緩んでいた。
風はというと・・・・・・すでに夢の世界へと入り込んでいる。
華琳「そうだわ、まだあなたの真名を聞いていなかったわね。教えてくれるかしら」
一刀「うっ・・・・」
霞「あちゃー・・・・」
李淵&蒼蓮「あっ・・・・」
その場にいた四人に気まずい空気が流れた。
風「おぉ、なにやら睡魔にも勝る、気まずい雰囲気がただよってきました」
その雰囲気を察知した風はいきなり目を覚ました。
秋蘭「?どうしたのだ」
霞「いや、なぁ」
稟「?」
黙ったままでは拉致があかないと思い、一刀自身が話し始めた。
一刀「曹操様といえど、我が真名をお教えすることができません」
桂花「は、はぁ?」
華琳「わたしが信用に足らないと」
桂花「なっ!?」
一刀「い、いえ。けしてそういうわけでは」
緊迫しそうな雰囲気を抑えるのがやっとの発言だった。
華琳「ではなぜ?」
一刀「はい、それは我が一族の掟なのです。真名を他人に教えることを許さず、その真名を許すときはそのものの最後のときだと」
秋蘭「最後?」
稟「死期を悟ったときとでも言うのですか?」
一刀「いえ、それは人によって様々です。ですので、真名を教えるときもその人間次第・・・・・」
と俯いてしまった
華琳「あなたたちも魏光の真名を知らないの?」
魏光と共に行動していた四人に問いかけた。
霞「うちらも聞いとらんで。うちは、うちだけでも真名で呼んでくれたらええのにってゆうたんやけどな、預けれんもんはもらうわけにはいかんってゆわれてな、うちらも魏光って呼んどんねん」
風もその言葉に首を縦に振った。
李淵「俺たちも張遼様とおんなじです」
蒼蓮「それに、わたしたちだけ真名を呼び合うのも嫌なので魏光さんと同じようにしてるんです」
二人も、華琳の前ではあったが精一杯の解答をした。
華琳「・・・・・」
一刀「曹操様には恥をかかせるようですが、これも掟。ご了承していただけないとき・・・・・・」
華琳「いいわ、真名はそのときまでとっておきなさい」
一刀「えっ?」
桂花「か、華琳様!?」
華琳の器の大きさを知っていたとはいえ、ここまであっけなくお許しをもらえるとは思っていなかった。
華琳「みんなもそういうことで他のものにも説明をして頂戴」
その言葉に安心をして気を抜いた一刀であったが、
華琳「でも、わたしにも真名を許せないというのは少し腹が立つわね」
一刀「えっ?」
何かを企んでいるその笑顔に、一刀は恐怖しか感じ取れなかった。
華琳「そうね・・・・・なら、あなたの武器をわたしに突きつけてもらおうかしら」
一刀「はいっ!?!?」
秋蘭「全く華琳様は・・・・」
一刀「ちょ、ちょっと待ってください、今からお使えしようとされている方に刃をむけることなんて・・・」
稟「傍から見れば立派な反逆ですね」
その冷静な分析がなおさら一刀を困惑させる。
華琳「なら、刃が出ていない状態でも良いわ」
鞘にしまったまま突きつけろといわれたことに意味が分からずなおさら困惑していく。
一刀「いや、えっ?で、でも・・・・」
霞「もうあきらめぇや光っち。華琳は見ため以上に頑固なんやで」
風「がんばってくださいねお兄さん」
流琉「ええっと、魏光様がんばってください」
一刀「くっ(お前ら、自分のことじゃないからって・・・・・)」
外野から聞こえる声援も、この状況を楽しんでいるようにしか見えなかった。
一刀は意を決して、鞘に収めたまま華琳に刀を突きつけた。
一刀「うぅ・・・・」
華琳「ちょうどいいときに来たわね」
一刀「はい?」
刀を突きつけたと同時に華琳が楽しそうに何かを見つけた。
???「華琳様~!!霞と風が帰ってきたと――――」
季衣「あぁ、春蘭様」
一刀「(しゅ、春蘭!?)」
その様子を見て、桂花はあからさまに楽しそうな顔を浮かべた。
桂花「そのまま殺されると良いわ」
稟「さぁ、お手並み拝見させていただきましょう」
流琉「魏光様、が、がんばって」
宝譿「今日がにいちゃんの命日になるとはな」
風「こらホウケイ、まだ死んではいませんよ」
李淵&蒼蓮「???」
霞「光っち、気張りや」
秋蘭「まぁ、そういうことだ」
皆は落ち着いているが、それはこの場にもともといた人間だからだ。
春蘭「か、華琳様!?き、貴様ぁぁぁぁ!!」
一刀「へっ?」
普通はこの状況を見れば誰でも一刀が華琳を殺そうとしているようにしか見えなかった。
剣を抜く音と共に、数メートルはあったであろう距離を一瞬のうちに詰め寄った。
春蘭「はぁぁぁぁ!!」
鬼神のごとく放たれた一撃。
その一撃を、この場にいる誰もが止められるとは思えなかった。
一刀「くっ」
その一撃をよけるには体勢が悪かった一刀は、華琳に構えていた刀を引き戻し、刀の柄で春蘭の大剣を受けた。
霞&秋蘭「!?」
轟音と共に一刀の身体は吹き飛ばされた。
一刀「ぐぁ」
見事に着地は出来たものの、手がしびれてまともに刀を持てそうにはなかった。
一刀「(な、なんちゅう攻撃して来るんだよ、春蘭。まじで死ぬかと思ったわ)」
春蘭「さすがに華琳様を殺そうとしているだけはあるということか」
渾身の一撃を受けられ、春蘭の気が一層高まった。
春蘭「次ははずさん」
もう一度構え、一刀の方を向きなおした。
一刀「ちょ、ま、待って―――」
春蘭「はぁ・・・・」
一刀の静止も聞かず、春蘭が再び地面を蹴った。
華琳「そこまでよ、春蘭!」
春蘭「!?」
一刀「!?」
一刀を斬るや否やの瞬間、その大剣が一刀の目の前で静止した。
大剣を受けるために構えてはいたものの、その手には力がなく小刻みに震えていた。
春蘭「か、華琳様?なぜです、この者は華琳様を・・・・」
華琳「その者の武器をよく見なさい」
春蘭「はい?」
華琳の命令どおり、一刀の刀身が出ていない刀を見つめた。
一刀「・・・・・・・」
春蘭「刃がでてない?」
華琳「そう、別にわたしを殺そうとしていたわけではなくわたしの命令でその武器を構えていたのよ」
秋蘭は華琳以外にも、周りの者を見渡した。
季衣「春蘭様、早とちりしすぎだよ~」
秋蘭「そういうことだ、姉者」
桂花「そのまま殺してくれてもよかったのに」
周りの反応を見るや否や、
春蘭「なんだそういうことか」
先ほどまでの気迫はどこへやら、笑いながら得物をしまった。
カラン、
一刀は緊張の糸が切れ、刀をその場に落とした。
一刀「はは、ははは」
李淵「ぎ、魏光さん?!大丈夫?」
蒼蓮「大丈夫ですか、ど、どこか痛いところは?」
流琉「大丈夫ですか、魏光様」
一刀の心配をしてくれたのはこの三人だけだった。
一刀「うん、大丈夫?かな。なんていうか生きてるし」
その様子を見て霞が近寄ってきた。
霞「光っち、あんたやるやんか!あんの春蘭の一撃を受けたんやから」
一刀「はは、受けたというか、ただ運が良かったというか・・・」
流琉「そんなことはないですよ、あんな一撃わたしは受ける自信が・・・・・」
一刀「いえ、大丈夫ですよ。普通はあの一撃を受けることなんてないですから」
霞「せやなぁ」
楽しそうに笑う霞とは裏腹に、一刀はいまだに笑顔が引きつっていた。
秋蘭「華琳様」
華琳「えぇ、力量、瞬時の判断力と度胸、観察力と分析力どれも、合格点ね」
秋蘭「さすがに、姉者のあの一撃をあの体勢から受け止めれるとは思いませんでしたが」
稟「そうですね、隊を任せても問題はない力量ではないでしょうか」
桂花「ふん」
華琳「そうね、まぁその話はまた今度にしましょう。今日は魏光を迎えてあげる日なのだから」
秋蘭「それもそうですね」
春蘭「華琳様~」
魏光を殺そうとした張本人が駆け寄ってきた。
華琳「何かしら」
春蘭「あの者は誰なのです?」
その言葉を聞き、その場にいる者全員が呆れ返った。
桂花「全く、この猪は」
華琳「あなたはねぇ・・・・もうちょっと状況を見て自分で判断できるようになりなさい」
春蘭「そ、そんなぁ~」
華琳「はぁ、秋蘭」
秋蘭「姉者あの者はな―――――」
こうして、一刀は無事?魏の一員として認められたのであった。
その夜、
城壁で一人、星を見上げていた。
一刀「はぁ」
今日一日の出来事を思い出すとため息しか出てこなかった。
一刀「まさか、洛陽についた初日に殺されかけるなんて・・・・・・最初に来たときと一緒じゃないか」
この世界に落ちてきた日、華琳たちに尋問を受けているときに春蘭に剣を突きつけられたことを思い出していた。
一刀「全く、ぜんぜん変わってないんだからな、華琳も春蘭も・・・・・皆も・・・・」
あのあと、魏の武将が全員集まり、改まって自己紹介をさせられた。
その場にいた、凪、真桜、沙和たちには熱烈な歓迎をされていた。
一刀「ったく、あいつらももう将軍なんだからもうちょっと変わってても良いだろうに・・・・・・」
変わっていなかったことに呆れて、そして嬉しくて・・・・・
一刀「・・・・・・みんな・・・・ただいま・・・・・・」
その頬に一筋の涙を流し、愛する人たちに言うことのできない言葉を呟いた。
???「涙なんか流しちゃって、絵になってるじゃない」
と不意に声をかけられた。
突然のことに驚き、涙をぬぐってから声のするほうを振り向いた。
そこには、見覚えのない女性が立っていた。
一刀「あなたは?」
全く見覚えのないその女性、美しく、好意を持てそうなその表情に、なぜか警戒心が解けなかった。
???「そんなに、警戒されるとさすがに傷つくなぁ」
一刀「あっ、いえ、その・・・・」
???「まぁ、いいわ。初対面なんだし」
月光りが綺麗に当たり、その女性をなお美しく魅せていた。
一刀「・・・・・そういってもらえると助かります」
蔡文姫「そんなに警戒しないでよ。あっそうそう、自己紹介をしてなかったね。はじめまして、わたしは蔡文姫」
一刀「えっと、こちらこそはじめまして、わたしは―――」
蔡文姫「いやいいのよ君は」
と自己紹介をしようとしたところを不敵な笑みで止められてしまった。
一刀「?」
蔡文姫「ふふ、よろしくね北郷一刀君♪」
一刀「!?」
誰も知るはずのない本当の名前。
誰にも知られてはいけない本当の名前。
一刀「あなたはいったい・・・・・」
蔡文姫「ふふ」
敵意ないの笑顔を向けられていたが、一刀は無意識のうちに刀に手をかけていた。
・ ・ ・ 雑 談 ・ ・ ・
みなさん、ちわっす!
ようやく、11を更新ですけど、
なんだか、gdgdな展開のような・・・・・
いや、否!これがわたしの限界なのです!!(笑汗
まぁ、そんなことはおいといて、
ようやく魏に到着!!
今日から一刀君もようやく魏の仲間に入れてもらえたようです。
よかったよかった(^―^)
話を書き進めて思ったのが、
ただ登場しただけで空気な子が多い気が!?
いや、それなりにお話させようと思っていたんですが、
幾分、メンツが多い者で・・・・・
今回だけでも、
華琳さん、秋蘭さん、春蘭さん、稟さん、桂花さん、風さん、霞さん、流琉ちゃん、季衣ちゃん、李淵くん、蒼蓮ちゃん、いちお一刀君、あとは最後に蔡文姫さん。
わたしには捌ききれな~い!!
だから、ご了承ください(_ _)
話の進展は、これといってお話しすることはありませんね。
たぶん、予想通りでしょうし(゜~゜)
まぁ、そんなこんななのです!!
いつも、支援、コメント、閲覧してくださってる方ありがとうございます!!
それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ
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harutoです。
お久しぶりです!
あえて多くを(全く)語らずお話にどうぞww
熱読してもらえれば光栄です^^
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