姿を見せても今はただの変な格好した人間。
東倣現想境 ~ Coincidence Gather.
もうひとつの境を眺める妖怪による他愛も無い雑談
神社を飾っていた満開の桜も役目を終え、
山も夏らしい緑に染まろうとしている今日この頃。
ふと神社の近くを通りかかると、何やら騒がしい・・・ような気がした。
奏 「ん?今日は真っ直ぐ帰るのでは無かったのかい。」
桜子 「そのはずだったんだけどねー・・・。ちょっと寄っていこうかしら。
誰もいないだろうけど。」
奏 「寄ってくのはいいが、折角魚捕ってきたんだから悪くならんうちに
切り上げとくれ。」
二人は今晩のおかずにと、魚とお酒を調達した帰りであった。
荷物を奏でに持たせて神社に向かったが、予感とは裏腹に神社は静かだった。
桜子 「誰か居そうな気がしたんだけどねぇ。
やっぱり気のせいだったのかしら。」
奏 「誰もいないし、神社も特に変りはないねぇ。ほれ、帰るぞ帰るぞ。」
桜子 「えー。」
桜子 「ほらほら、誰か来たしもうちょっと居たっていいじゃない?」
奏 「あー?」
ふと桜子の指差した方角を見ると、遠くからでもはっきりとわかる派手な格好をした
妖怪がこちらに近づいていた。 菫野件である。
桜子 「って、あんたか。 はぁ。」
件 「いきなり何よ失礼ね!」
奏 「これはこれは、件殿。こんな所で出会うなんて珍しい。」
件 「アイドルの少ない休暇だっていうのに、あんたらもっと喜びなさい!」
桜子 「そういえば、最近はここに来てばっかりだったから見飽きたって訳でも無いのよね。
・・・別に珍しくも無いけど。」
件 「・・・。」
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桜子 「ところで、あんた何でわざわざこんな所に?」
件 「そりゃ噂流したのはあたしなんだから、あたしが興味無いわけ無いでしょー。」
桜子 「にしては、あんたをここで見たの初めてなんだけど。
それに、うちの屋敷の周りで最近怪しい妖怪を見るって
奏が言ってたわ。」
件 「ぎく。 ほ、ほら、また誰か来たわ!」
ふと周りを見渡すと、結構な数の妖怪が集って来ていた。
ほとんどは見慣れた面子ではあるが、これだけの数が
一度に集まるのは珍しい事であった。
奏 「こりゃまあ、集まったもんだねぇ珍しい。」
桜子 「神社は別に普段と変わらないのにねぇ。」
件 「あれ、あんた達が呼んだんじゃ無かったの?
何かいいもの持ってるし・・・」
桜子 「えっ」
奏 「えっ」
周囲の妖怪達の話し声が一瞬ぴたりと止まり、風に揺れる木々のざわめきが聞こえた。
妖怪達の視線は奏が抱えているものに集中している。
それを見るやいなや、妖怪達は懐から次々とお酒や食べ物を取り出し
準備万端といった感じでこちらを見つめていた。
桜子 「ちょ、ちょい待ち! あんたらまさか・・・」
奏 「ほほー、何だかわからんが皆やる気満々ねぇ・・・はぁ。」
桜子 「にしても、不思議ねぇ。
呼んだわけでも無く、何かがあって集ったわけでも無く・・・
それなのに皆目的が同じだなんて・・・」
件 「まー気にする事でも無いでしょー偶然偶然。」
桜子 「あー私の魚!」
奏 「そんな気分の時もあるものだと思っておこう。」
偶然集った妖怪達で行われた突発宴会は、春の花見以来の大宴会となった。
桜子も何か気になる事があって神社に立ち寄ったはずなのだが、
特に変わった所も無く、宴会が始まるとそんな事はすっかり忘れていた。
結局、妖怪達が不自然に集まった事に対して疑問を抱く者も無く
平和なまま宴会はお開きとなった。
奏 「たまには静かに呑もうと思っていたのに、結局こうなるのか。」
桜子 「別にいいじゃない。どうせ静かなのは最初だけなんだから。」
奏 「う~・・・ところで主よ。」
桜子 「何よ。」
奏 「最初からここで呑むつもりで神社に寄ったのでは無いだろうな?」
桜子 「何の事かしら?まあ、静かに呑むのはまた今度ね。」
また今度 ~ Next Tea Time.
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・オリキャラしかいない東方系二次創作のようなものです。