No.1052215 英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~soranoさん 2021-01-21 23:07:00 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1754 閲覧ユーザー数:1514 |
~ログナー侯爵邸・中庭~
「あ…………」
「お、お館様が姫様に………」
「ひ、姫様!?一体何故お館様を……!」
我に返ったアルフィンは呆けた声を出し、領邦軍は呆けたり困惑の表情でアンゼリカを見つめた。
「父上――――――いや、ゲルハルト・ログナー侯爵閣下。”既にその爵位が剥奪されていながら、ノルティア統括領主を詐称して”ノルティア領邦軍に皇家の許可もなくメンフィル・クロスベル連合軍と戦わせた事で詐欺罪と背任罪の疑いにより拘束させて頂きます。―――――並びに暫定処置としてこの私、アンゼリカ・ログナーが”ログナー侯爵家当主”に就かせてもらう!!―――――暫定ログナー侯爵家当主として皆に命じる――――――直ちに戦闘を中止し、連合軍に降伏せよ!これは私だけでなく、連合との和解を望む為連合に対する侵略行為に対して抵抗するつもりがないアルノール皇家の方々の意思でもある!!」
「――――――アンゼリカ卿の宣言は帝位継承者たるこのセドリック・ライゼ・アルノールが保障します!既に様々な方々の協力を得て兄上―――――オリヴァルト皇子と共にここにいる皆さんを含めたルーレの人々にも伝えたように、この戦争はオズボーン宰相がアルノール皇家に許可も取らずに独断で始めた戦争です!アルノール皇家は元々連合―――――特にメンフィル帝国に対して内戦でエレボニア帝国が犯した許されざる罪に対して責任を取ってメンフィル帝国が求める賠償に対して交渉し、その交渉の末に決まった賠償内容に応じるつもりでした!ですから、これ以上連合軍と戦う事はアルノール皇家も許しません!!」
「ひ、姫様………」
「皇太子殿下まで………」
「や、やっぱり先程の殿下達の演説は嘘ではなかったんですか………」
「ううっ……俺達は何の為に戦ったんだ……?」
「うおおおおおおお………ッ!」
ログナー侯爵を見下ろして宣言したアンゼリカは周囲を見回して堂々と宣言し、アンゼリカに続くようにセドリックも宣言し、二人の宣言を聞いた領邦軍はそれぞれ戦意を失ったり、地面に崩れ落ちて号泣したりし始めた。
「―――――内戦の時と違い、卑劣な手段を取ってしまいましたが……連合との和解を望み、父上を含めて一人でも多くの犠牲を減らしたいという皇太子殿下達アルノール皇家と私の意思で父上を謀らせて頂きました。私の事は幾らでも恨んでも構いませんが、どうかその怒りを皇太子殿下達に向けないようにお願いします、父上。」
「フン……貴様のような不良娘如きにノルティア統括領主たる”ログナー侯爵家当主”を背負えるとはとても思えないが、例えどのような形であろうとも私が貴様に”敗北”した事は事実だ。せめて一人でも多くの侵略者を葬って最後はシュバルツァー男爵の子供達の手にかかって死ぬ事でユーゲント皇帝陛下とシュバルツァー男爵に対しての内戦の件の”償い”にするつもりであったが………皇帝陛下のご子息たる皇太子殿下達が儂に生き恥を晒す事を望んでいるのならば、その望みに応じるのが儂の”償い”であり、”生涯の務め”として認めるしかないようだな…………」
アンゼリカの言葉に対して鼻を鳴らして答えたログナー侯爵はリィンとエリス、セドリック、アルフィンを順番に視線を向けた後肩を落として複雑そうな表情で答えた。
「!父上、貴方は……………いや………――――――リィン君、見ての通りログナー侯爵家当主を”詐称”して不当にもノルティア領邦軍を指揮して君達連合軍に対して抵抗していた父上は拘束した。ノルティア州を代表して、ノルティア州は君達連合軍に”降伏”する事を宣言する。…………国際法に基づいてノルティアの民達もそうだが、領邦軍や貴族、そして父上に危害を加えない事を要求させてもらうよ。」
「幾ら連合軍が国際法に加入していないとはいえ、この場には”暫定”とはいえ”ログナー侯爵家当主”のアンちゃんに”カイエン公爵家当主”のミュゼちゃん、今のエレボニアにとって唯一の帝位継承者であられる皇太子殿下、それにA級正遊撃士のアガットさんがいるんだから、アンちゃんのお願いを破れば国際的立場もあるアンちゃん達がその件を他国に訴えればメンフィル帝国とクロスベル帝国は後にゼムリア大陸の全国家、自治州からの信頼を大きく失う事になる可能性に発展する事は十分に考えられるから、その事について連合の上層部の人達に伝える事を絶対に忘れないでね。」
「ふふっ、さりげなく私やリィン少将閣下まで利用するなんて、さすがはあのレン皇女殿下も警戒する紅き翼の”才媛”ですわね。」
ログナー侯爵の言葉を聞いて驚いた後複雑そうな表情でログナー侯爵を見つめて何かを言いかけたアンゼリカだったがすぐに続きを言う事を止めてリィンに近づいて降伏宣言をし、アンゼリカが降伏宣言をするとトワがリィンにある事を伝え、トワの話を聞いたミュゼは苦笑していた。
「フウ……確かにメンフィル帝国とクロスベル帝国は国際法には加入していませんが、降伏した人達もそうですが敵国の市民達に対して危害を加えるような”人道から外れた行為”を行えば軍法会議にかけられて厳しく罰せられますから、そんなことにはならないでしょうけど、一応陛下達には伝えておきます。それとアンゼリカ・ログナー侯爵閣下の降伏宣言と要求をリィン・シュバルツァー少将が連合を代表して了承することをここで宣言します。―――――総員、直ちに戦闘を中止せよ!当初の予定とは違うが、ルーレ占領作戦は成功だ!次の指示があるまで、降伏した領邦軍の見張りを務めてくれ!」
「イエス・コマンダー!!」
一方リィンは溜息を吐いた後元の姿に戻ると共に太刀を鞘に戻した後戦闘終了の宣言してその場にいるメンフィル軍の軍人達に指示をし、リィンの指示に対して軍人達は力強く答えた。
「あ………ッ!」
「へっ、ギリギリだったが何とか届いたようだな。」
その様子を見ていたトワは明るい表情を浮かべ、クロウは口元に笑みを浮かべ
「ハッ、ようやくテメェらの思惑を外してやったぜ、女郎蜘蛛が。」
「クスン……”女郎蜘蛛”なんて酷い言われようですわ。せめて可憐な白百合と呼んでください。」
「貴女にだけは”白百合”という言葉は絶対に似合わないわよ、ミルディーヌ。」
「ええ……むしろ”ジキタリス”あたりがミルディーヌにピッタリよね。」
鼻を鳴らして嘲笑したアッシュの皮肉に対してわざとらしく泣き真似をした後指摘したミュゼの言葉を聞いて冷や汗をかいて脱力したエリスはジト目で、アルフィンは苦笑しながら指摘した。
「人伝で聞いたけど、シュライデン伯爵との一騎打ちに勝利した事、おめでとう、セドリック。」
「アハハ、機体の性能差と多分シュライデン伯爵も手加減してくれたと思うから、僕だけの力で勝てた訳じゃないけど………それでもⅦ組の皆さんに……そして帝位継承者としてエレボニア帝国の役に立てて幸いだよ。」
クルトに賞賛されたセドリックは苦笑した後静かな笑みを浮かべた。
「へっ、”闇の聖女”さんの娘やあの無茶苦茶なメンフィル皇帝の跡継ぎの皇女といい、アンタといい、ディル=リフィーナのお姫さんは全員、戦闘能力がある上凄腕なのが常識なのかよ?」
「アハハ……私達が”特殊な例”であるだけで、私達の世界の”王女”は政略結婚の為に育てられている事が大概ですから、普通は王女に戦闘能力は求められませんわ。」
口元に笑みを浮かべたアガットの指摘に対してメサイアは苦笑しながら答えた。
「フウ……今回は紅き翼には本当に色々と引っ掻き回されたね~。」
「そうですね……―――――最も、リウイ陛下達のヴァイスラント新生軍に対する気遣いがなければ、こんなに上手く行かなかったでしょうけど。」
「……負け惜しみのつもり?」
疲れた表情で溜息を吐いたアメリアの言葉に頷いた後静かな表情で呟いたステラの言葉を聞いたフィーは静かな笑みを浮かべてステラに問いかけた。
「私は”事実”を言っただけです。それに今回はログナー侯爵のご息女が貴女達と共にいた事が”一番の勝因”と言っても過言ではありません。”次”以降は今回のように上手く行くとは思わない方がいいですよ。」
「忠告ついでにもう一つ。”不殺”を貫くのは君達の勝手だけど、”軍人”である僕達から言わせてもらえばそんな甘い考えで”戦争”を終わらせる事なんて”絶対にできないし、その考えが自分達の命を縮める事になるかもしれないよ。”」
「………我らの選んだ道は厳しい道である事は理解している。だが、それでも我らは”第三の風”である”Ⅶ組”として”どちらかが倒れるという事で解決という結末”を可能な限り回避する道を探り続ける。今回のルーレの件のようにな。」
フィーの問いかけに対して静かな表情で呟いたステラは忠告をし、ステラに続くように忠告したフランツの言葉を聞いたラウラは真剣な表情で答えた。
「フウ………ピンチ続きだったとはいえ、今回は何とかなったな……」
「フン、これでエリゼの考えを少しでも変える事ができたのであれば僥倖なのだがな。」
「え…………ユーシスさん、今の話は一体―――――」
マキアスは安堵の表情で溜息を吐き、鼻を鳴らして複雑そうな表情で呟いたユーシスの言葉を聞いたセレーネが呆けた後戸惑いの表情でユーシスに尋ねかけたその時
「――――――ふざけるな!」
突如その場に怒りを纏った様子の声が響いた後一人の領邦軍が憎悪を浮かべた表情でアンゼリカとセドリックを睨んでいた。
「何が”和解”だ!何が”皇家の意思”だ!俺達は故郷を侵略者から守る為に戦っていたのに、どうしてそれを否定されるんだ!」
怒りの声を上げてアンゼリカとセドリックを睨む領邦軍の軍人の足元からは”呪い”による黒い瘴気が噴き出し始めていた。
「そうだ……俺達は誇り高きノルティア領邦軍……ノルティア州を……お館様を守る事が役目だったのに、何故その役目を姫様や皇太子殿下が否定するんだ……!」
「今回の戦いで既に戦死した戦友達の死を無駄になんてできるか……!」
すると他の領邦軍の一部の軍人達の足元からも”呪い”による黒い瘴気が噴き出してアンゼリカやセドリック、リィン達メンフィル軍を睨んだ後得物である銃を構えてアンゼリカとセドリックに向けた。
「俺達ノ誇リヲ汚ス姫様ハ俺達ノ知ル姫様デハナイ!」
「今コソ我ラノルティア領邦軍ノ誇リヲオ館様ニ示ス時ダ……!」
「お、おい……っ!何を考えている……!?」
「正気に戻れ!自分達が今何をしようとしているのかわかっているのか!?」
「な……っ!?これは一体……!?」
「すぐに武器を捨てろ!貴様らは一体誰に武器を向けているのか理解しているのか!?」
自分達の仕える主の娘のアンゼリカや祖国の皇太子に銃を向けるという呪いの影響を受けた領邦軍の一部の軍人達による凶行を目にした他の領邦軍が驚いている中ログナー侯爵は困惑の表情で声を上げ、守備隊の隊長は厳しい表情で声を上げて制止しようとしていた。
「おい、アレは――――――!」
「闘争に駆り立てさせる”巨イナル黄昏”の”呪い”………!」
「チッ、よりにもよってこのタイミングで起こるなんて……!」
「ど、どうすれば………!」
「くっ……!――――――みんな、落ち着いて私達の話を聞いてくれ!!」
一方黒い瘴気を纏った領邦軍の一部の軍人達の様子を見てすぐに状況を悟った仲間達と共に血相を変えたアッシュとエマ、セリーヌは厳しい表情で声を上げ、トワが不安そうな表情で呟いて対処方法を考え込み始め、唇を噛みしめたアンゼリカが呪いの影響を受けた領邦軍の一部の軍人達を見つめて声を上げたその時
「――――――大丈夫、私に任せて。」
「アイドス!?一体何を……」
アイドスがリィンの傍に現れた後神剣(スティルヴァーレ)を異空間から取り出して構え、アイドスの登場に驚いたリィンが戸惑いの表情でアイドスの行動を見つめたその時
「星の輝きよ、呪われし者達に救いの光を――――――ハアッ!!」
アイドスは神剣に自身の神力を纏わせた後神剣を地面に突き刺した。すると地面に突き刺した神剣の切っ先が神々しい光が輝いた後光は瞬く間に辺り一帯に広がり、光は呪いの影響を受けている軍人達を纏っている黒い瘴気を一瞬で吹き飛ばした!
「あれ………?」
「俺達は一体何を……?」
「どうやら正気に戻ったみたいだね。」
「ああ。アイドス殿が剣を地面に突き刺した瞬間に起こった光が彼らを正気に戻したようだが……」
黒い瘴気を吹き飛ばされた事で呪いの影響から解放された軍人達は武器を下ろして困惑の表情で周囲を見回し、その様子を見たフィーとラウラは驚きの表情で呟いてアイドスを見つめ
「セリーヌ、アイドスさんは一体何をしたのかしら……?」
「……恐らくだけど自身の神力を込めた神剣を地面に突き刺す事でこの辺り一帯を限定して”巨イナル黄昏”による呪いの影響を受けた霊脈を浄化すると共に領邦軍の呪いも浄化したんだと思うわ。」
「領邦軍の連中だけじゃなく、”この場所ごと呪いを消し飛ばす”とか化物かよ……」
「クスクス、アイドス様は”化物”ではなく”女神”ですわよ、アッシュさん♪」
「ひ、非常識な……」
「フン、そもそもあの女自身が”女神”なのだから、あのくらいはできてもおかしくないだろうが。」
戸惑いの表情を浮かべているエマの疑問に答えたセリーヌの推測を聞いたアッシュは表情を引き攣らせてアイドスを見つめ、アッシュの言葉に対してミュゼは微笑みながら指摘し、ジト目でアイドスを見つめて呟いたマキアスにユーシスは呆れた表情で答えた。
「彼らを正気に戻してくれてありがとう、アイドスさん……!」
「ふふっ、気にしないで。私はリィンの為にも彼らを正気に戻しただけだから。」
「俺の為に……?それは一体どういう事だ、アイドス。」
頭を深く下げて感謝の言葉を口にしたアンゼリカに対して苦笑しながら答えたアイドスの答えが気になったリィンは不思議そうな表情で訊ねた。
「彼らはアンゼリカ達の話を聞かずにアンゼリカ達を撃つ事は明白だったわ。だけどリィンの事だから、あのまま放った置いたらエリス達もそうだけど、アンゼリカ達を守る為にも自分が泥を被ってでも彼らを”斬るつもりだった”でしょう?――――――トリスタを占領したあの日の夜の”彼女”を”救った”時のように。」
「!!………………」
(”トリスタを占領したあの日の夜の彼女を救った時のように”………?一体何の事を言っているんだろう……?)
優し気な微笑みを浮かべたアイドスの指摘に対して目を見開いたリィンは複雑そうな表情で黙り込み、二人の会話内容が気になったトワは不思議そうな表情でリィンとアイドスを見つめた。
「リィンさん、これで作戦は終了したのですからレン皇女殿下達への報告もそうですが、ベアトリースさん達への連絡もした方がいいのでは?」
「そうだな…………来い、ベルフェゴール!戦闘の最中に通信をするのは危険だから二人で手分けしてベアトリースとエリゼ達に作戦が終了した事を伝えに行ってくれ、アイドス、ベルフェゴール。」
「わかったわ。」
「了解♪」
その時ステラがリィンに話しかけて指摘し、ステラの指摘に頷いたリィンはベルフェゴールを召喚した後アイドスとベルフェゴールに指示を出し、リィンの指示に頷いた二人はそれぞれ転移魔術を発動してその場から消えた。
~ルーレ市内~
一方その頃トマス達とベアトリースの戦闘は決着がつこうとしていた。
「天の眷属たる女神の僕よ、悪しき者達に裁きを与えんがため、今こそ来たれ!其は光にして騎士、七耀の守護者なり、今こそ我らに力を!貫け――――――ヘブンベンジェンス!!
Sクラフトを発動したロジーヌの祈りによって戦場に具現化した幻影の戦乙女は弓矢を構えてベアトリース目掛けて極太の光の矢を放った。
「連接剣の真髄、見せてやろう――――――暗礁回転剣武!!」
自身に襲い掛かる極太の光の矢に対してベアトリースは闇の力で数十倍の大きさに巨大化した連接剣を回転させながら伸長させ、伸長した闇の刃は回転する事によって闇の渦と化して光の矢を呑み込むと共にロジーヌの祈りによって顕現された幻影の戦乙女やロジーヌを呑み込んだ!
「え――――――キャアアアアアアアアア―――――ッ!?あぐっ!?」
自分の最大技が無効化されると共に襲い掛かる闇の渦に一瞬呆けたロジーヌは闇の渦に巻き込まれると悲鳴をあげながら大ダメージを受けると共に吹っ飛ばされ、吹っ飛ばされたロジーヌは近くの壁に叩きつけられて呻き声を上げた後気絶した。
「ロジーヌ君!?」
ロジーヌの様子を見たトマスは思わず声を上げてロジーヌに視線を向けてベアトリースに対する警戒を一瞬解いてしまい
「フン、飛天魔である私相手に他人の心配をしているような余裕があると思うのか!?」
「しま―――――」
「雷よ――――――電撃剣!!」
その隙を突いたベアトリースは高速飛行によって一瞬でトマスに詰め寄って魔力の雷を宿した連接剣で斬撃を放った!
「ぐああああああ……っ!?くっ……ここまで……です……か………」
ベアトリースの斬撃を受けて斬られた部分から大量の血を出血させたトマスは思わず悲鳴を上げた。すると今までの戦闘の疲労によるものなのかトマスが背中に顕現させた”聖痕(スティグマ)”は消えると共にトマスも意識を失って地面に倒れた!
「トマス教官!?ロジーヌも……!」
「今回復を……!」
ベアトリースにやられた様子の二人に気づいたアリサは悲鳴を上げ、エリオットは真剣な表情で声を上げた。
「あんた達も他人の心配をするような余裕があると思っているのかい!?――――――烈震斬!!」
「ぁ―――――」
そこにパティルナが跳躍して自身の得物をアリサとエリオット目掛けて叩きつけようとし、パティルナの強襲に反応が遅れたアリサが呆けた声を出したその時シャロンが二人の前に飛び込んで自分の前に鋼糸(ワイヤー)による盾を素早く作ってパティルナの攻撃を受け止めた!
「あぐ……ッ!」
「シャロン――――――!」
パティルナの攻撃を受け止めようとしたシャロンだったがパティルナの強襲攻撃の威力は凄まじく、鋼糸の盾は易々と切り裂かれると共に身体の一部が切り裂かれると共に大量の血を出血し、それを見たアリサは悲鳴を上げた。
「こいつで決着だ!行くよ――――――」
「させるか!頼む、ゼオ!!」
「ピューイ!!」
「おっと!!」
パティルナはシャロンに更なる追撃をしようとしたがガイウスの指示によって強襲してきた鷹の突進に気づくと追撃を中断して回避した。
「ハァ……ハァ……お二人とも………ご無事ですか……?」
「は、はい……!シャロンさんのお陰で……!でも、シャロンさんが……!」
「――――――バカ!今は私達の事より自分の事を心配しなさいよ!!」
今までの戦闘の疲労が蓄積しているシャロンは満身創痍の状態で二人に話しかけ、話しかけられたエリオットは戸惑いの表情で答え、アリサは心配そうな表情で声を上げた。
「私の方は終わったが加勢は必要か?」
「余計な手出しは無用さ!だからアンタは先に行っていていいよ!」
「そうか。ならば私はリィン様の元に―――――」
自分に近づいて話しかけたベアトリースの言葉に対してパティルナが答え、パティルナの答えを聞いたベアトリースがログナー侯爵邸に向かおうとしたその時
「あらら、戦闘を中断させる以前にもうほとんど終わっていたみたいね~。」
「ベルフェゴール……!」
「ま、まさかパティルナ将軍達の加勢に……!?」
ベルフェゴールが転移魔術でその場に現れ、ベルフェゴールの登場を見たガイウスは真剣な表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情で問いかけた。
「違うわよ。屋敷での戦いは終わったから、ご主人様からベアトリースに戦闘を中断させることを伝えるために来たのよ。………まあ、ベアトリース以外にもアリサ達を抑えていた人物がいたのはちょっと以外だったけど。」
「や、”屋敷での戦いは終わった”ってまさか…………!?」
ベルフェゴールの話を聞いてある事を察したエリオットは不安そうな表情を浮かべた。
「残念ながらご主人様は敵将を討ち取る前に敵将が貴方達の仲間に捕らえられたから、貴方達の望み通りの展開よ。」
「何……ッ!?」
「あ………」
「と言う事はアンゼリカ先輩達は間に合ったのか……!」
「よ、よかった~。」
苦笑しながら答えたベルフェゴールの答えを聞いたベアトリースは驚き、アリサは呆けた声を出し、ガイウスは口元に笑みを浮かべ、エリオットは安堵の溜息を吐いた。
「という訳だからベアトリースは一旦私と共にご主人様の元に向かうわよ。」
「………了解した。Ⅶ組と言ったか………まさかお前たち如きが私やリィン様達を出し抜くとは思いもしなかったが………結果は結果だ。リィン様程ではないにしても有象無象の人間達と違う事は認めてやる。」
ベルフェゴールに話しかけられたベアトリースは気を取り直して静かな表情で答えた後アリサ達に視線を向けてアリサ達に対する賞賛の言葉を口にした後ベルフェゴールと共にログナー侯爵邸へと飛行で向かい始め
「あ~あ、せっかくエル姉の説教を覚悟で抜け出してガイウス達の相手をしていたっていうのに、もう終わりか~。ま、今回の戦で台無しにされた分は取り返したからいいかな♪」
二人が飛び去るとパティルナは武器を収めて若干残念そうな表情を浮かべたがすぐに気を取り直した。
「――――――そうですか。でしたら後は私の説教を聞くだけですね。」
「え”。」
しかしすぐに聞こえてきた自分にとって聞き覚えのある女性の声を聞いたパティルナが表情を引き攣らせて声が聞こえた方向に視線を向けるとそこにはクロスベル帝国軍を率いたエルミナが顔に青筋を立てて口元をピクピクさせながらパティルナを見つめていた。
「エルミナさん………」
「エ、エル姉……何でここに……?戦後処理をしていたんじゃ……」
エルミナ達の登場にガイウスが目を丸くしている中パティルナは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらエルミナに問いかけた。
「ええ……貴女が勝手に抜け出したせいで、メンフィル軍と協力したとはいえ、戦後処理に”少々”時間がかかりましたよ。それで、リィン少将達が紅き翼の介入によって”ログナー侯爵が紅き翼に捕縛されたという予定外の事”が発生したとはいえ、当初の予定通りログナー侯爵邸は制圧したとの報告を受けましたから、制圧後の侯爵邸もそうですがルーレ市内での戦後処理の為に市外の黒竜関やザクセン鉄鉱山の戦後処理はメンフィル軍に委ねて市内の戦後処理は私達に任せてもらいました。――――――占領後のルーレ市内では侯爵邸での戦後処理もそうですが、市内にあるRF(ラインフォルトグループ)の軍需工場の掌握や本社にいると思われるイリーナ会長との交渉等とやる事が山ほどありますからね。」
「……ッ!…………………」
「アリサ………」
パティルナの問いかけに対して答えたエルミナの話――――――”ラインフォルトグループの軍需工場がクロスベル帝国軍に掌握されるという事実”を聞いたアリサは息を飲んだ後複雑そうな表情で黙り込み、アリサの様子をエリオットは心配そうな表情で見つめていた。
「へ、へ~……そうなんだ。じゃあ、あたしもガイウス達との戦いはこのくらいにして、今からエル姉達を手伝うよ……」
一方エルミナの話を聞いたパティルナはビクビクした様子で答えた後エルミナに協力の申し出をした。
「――――――当たり前です!説教はいつもより少なめにしてあげますから、早急に部隊を率いて市内の軍需工場の掌握を行いなさい!!」
「は、はいぃぃっ!聞いての通り、今から市内の軍需工場の掌握をするからロギンス隊とブルード隊はあたしについてきな!」
「イエス・マム!!」
そしてエルミナが怒鳴って指示をするとパティルナは姿勢を正して答えた後クロスベル軍の一部の部隊と共にその場から去りかけたがある事を思い出すと立ち止まってアリサ達に話しかけた。
「あ、そうだ。”死線”がそのままあんた達の所にいるんだったら、連合の”抹殺対象”から外すようにギュランドロス様に言っておくから、”死線”を頑張って説得しときなよ。ま、あんた達を助けに来たときの様子を見た感じ説得をする必要もなさそうだけどね。」
「え…………」
「パティルナ将軍閣下……」
「パティ!貴女、また勝手なことを……!」
パティルナの言葉を聞いたアリサとシャロンが呆けている中エルミナはパティルナを睨んで注意しようとしたが
「まーまー、その方が鉄血宰相達に協力している”裏の協力者”を減らせられるんだから、あたし達にとってもそっちの方がいいから、エル姉も文句はないんじゃないの?ましてや”死線”はメンフィルからもらった情報だと”暗殺”や”諜報”を専門としている隠密タイプの執行者らしいから、”死線”がガイウス達の所に寝返れば鉄血宰相達にとっては貴重な腕利きの隠密も失う事になるから、鉄血宰相達にとってもかなり痛いと思うよ。」
「くっ………こんな時に限って悪知恵を……!貴女やギュランドロス様といい、何故その悪知恵を他に生かすことができないんですか……――――――貴女の話はわかりましたから、いい加減さっさと行きなさい、パティ!!」
「了解~。それじゃ、紅き翼は次やり合う時には死線と共に今よりもっと強くなってあたしをもっと楽しませるように頑張りなよ~。」
パティルナの正論を聞くと一瞬唇をかみしめて頭痛を抑えるかのように頭を抱えてパティルナを睨んだ後疲れた表情で溜息を吐いたが、すぐに気を取り直してパティルナに指示を出し、エルミナの指示を了承したパティルナはひらひらと片手を軽く振りながら部隊を率いてその場から去った。
「全く…………――――――今回の件が上手く行ったのは様々な要因が重なったからです。2度と今回のような”幸運”に恵まれる事はないと思った方がいいですよ。――――――総員、行動再開!」
「イエス・マム!!」
パティルナ達が去った後溜息を吐いたエルミナはアリサ達に視線を向けて忠告をした後クロスベル帝国軍と共にログナー侯爵邸へと向かった。
「よ、よくわかんないけど、連合はシャロンさんを狙うつもりはないって事だよね……?」
「ああ………今回の件が終わったら、パティルナさん達には改めてお礼を言った方がいいだろうな。」
エルミナ達が去った後我に返ったエリオットの言葉に頷いたガイウスは静かな笑みを浮かべた。
「ふふっ………お嬢様達の”愛”を裏切ったわたくし如きが………お嬢様達どころか………リィン様達や………パティルナ将軍閣下にまで……未だに”愛”を頂けるなんて……わたくしは……本当に果報者……です……わ………」
「シャロン!?しっかりして!お願いだから目を開けて、シャロン―――――ッ!」
その時シャロンは今までの戦闘の疲労や傷によって限界が来た為、微笑みながら気絶して地面に倒れ、それを見たアリサは慌ててシャロンにかけよって必死な様子でシャロンに声をかけ
「ガイウス!僕はシャロンさんの手当てをするから、ガイウスはトマス教官達の方をお願い!」
「わかった!」
その様子を見たエリオットとガイウスは手分けして回復魔法や薬でシャロン達の手当てを始めた。
~少し前・ログナー侯爵邸・エントランス~
ベルフェゴールがベアトリース達に戦闘の中止を告げる少し前、エリゼ達とオリヴァルト皇子達が激戦を繰り広げてそれぞれが攻撃を放った瞬間、戦場の中心部にアイドスが転移魔術で現れると共にドーム型の結界を展開して双方の攻撃を受け止めた!
「!?貴女は……!」
「アイドス様!?何故このような危険な事を……!」
「フフッ、激戦を止めるためにはこうした方が手っ取り早いでしょう?」
攻撃を受け止められると共にアイドスを認識したアルティナとエリゼは驚いた後デュバリィ達と共にすぐに武器を退き、アネラス達もそれぞれ武器を退いて距離を取っている中エリゼの疑問にアイドスは苦笑しながら答えた。
「た、確かにそうですが、幾ら戦いを止めるためとはいえ、普通はこんな自殺行為同然な方法で止めませんわよ!?」
「クスクス、止める人物が”普通”ならそうでしょうね。」
「ああ。アイドス殿はその”普通”の枠を軽く超える存在だからこのような事が容易にできるのだろう。」
「……それで、リィン少将と共におられるはずのアイドス殿がこのような危険な事をしてまで戦いを止めたという事は、この屋敷での戦いの決着はついたのでしょうか?」
アイドスの言葉にデュバリィは疲れた表情で指摘し、デュバリィの指摘に対してエンネアとアイネスは苦笑しながら答え、オリエは静かな表情でアイドスに訊ねた。
「ええ。アンゼリカ達が敵将であるログナー侯爵を捕えた後ログナー侯爵から爵位を簒奪したアンゼリカの宣言によってログナー侯爵と共に戦っていた兵達も降伏したから、戦いは終わったわ。」
「そうか……!」
「何とか間に合ったようだな……!」
「えへへ、ボクの勝ちだね~、アーちゃん♪」
「………そうですね。ミリアムさん達の”目的”は達成していますから、”勝負”という意味ではミリアムさん達の”勝ち”でしょうね。……まあ、連合による”ルーレ制圧”が失敗に終わった訳ではありませんから、”試合に勝って勝負に負けた”という状況ですね。」
アイドスの説明を聞いたオリヴァルト皇子とミュラーは明るい表情を浮かべ、無邪気に喜んでいるミリアムの言葉に対して静かな表情で答えたアルティナはジト目で指摘した。
「ふっ、今宵の”ワルツ”はここまでだな。」
「そうね。――――――貴女との共演、悪くなかったわよ、”蒼の深淵”。」
「フフ、また機会があればよろしくね、ルシオラ。」
一方ブルブランと共にその場から去るつもりでいるルシオラに声をかけられたクロチルダはウインクをして答えた。
「あっ、待ってください!せめて一言だけでもいいですからシェラ先輩に会って―――――」
ブルブランとルシオラがその場から去ろうとしている様子を見たアネラスがルシオラに声をかけたその時
「――――――ルシオラ姉さん!?」
シェラザードの驚いた様子の声がその場に響き、声を聞いたその場にいる全員が声が聞こえた方向に視線を向けるとそこには信じられない表情を浮かべているシェラザードとサラがいた。
「あんたの”姉”って……まさか”リベールの異変”でやりあったっていう”幻惑の鈴”!?しかもエリゼや”神速”達、”怪盗紳士”までいるって、一体どういう状況よ……」
「あはは………”影の国”の時でやりあった偽物の姉さんに”見極めなさい”って言われていたけど、まさかこんな形で姉さんの生死を確かめる事ができるなんてね……」
サラが困惑の表情でブルブラン達を見回している中シェラザードは乾いた声で笑った後僅かに嬉しそうな表情を浮かべてルシオラを見つめた。
「そう………フフ……私がその場にいたら同じ事を言ったでしょうね。」
シェラザードの言葉を聞いたルシオラは静かな笑みを浮かべた後自身の転移術の発動の構えをし、ブルブランも自身の転移術の発動した。
「待って、姉さん!他にも色々と話したいことが……!」
「ふふ………貴女は”蒼の深淵”の”妹”と違って姉(わたし)から”巣立ち”をしたのだから、私の事等気にせず自分の”幸せ”の為に歩み続けなさい。」
「あら、そこで私とエマを例えに出すとはね。」
真剣な表情で声を上げて自分を呼び止めようとするシェラザードに対して静かな笑みを浮かべて答えたルシオラの話を聞いたクロチルダは苦笑していた。
「今回の”黄昏”の件は”福音計画”すらも比較にならないあまりにも強大よ。私やブルブランもそうだけど、”蒼の深淵”や”死線”が貴女達に手を貸した所で、貴女達にできるのは”ほんの僅かな変化”でしょうね。だけど、それでも諦めずに全力で立ち向かいなさい。――――――貴女達の”未来”の為にもね。」
「姉さん………」
「No.Ⅵ、まさか貴女は……」
「”怪盗紳士”や”蒼の深淵”のように”嵐の銀閃”に手を貸す為に紅き翼(かれら)に影ながら協力する事を決めたようね。」
「フッ、そういう意味で考えれば、聖女殿の新たなる道に付き合う事を決めた君達”鉄機隊”も私達の事は言えないと思うがね?」
「フフ、言われてみればそうだな。」
ルシオラの言葉を聞いたシェラザードが呆けている中ルシオラが紅き翼に協力している理由を悟ったデュバリィは目を丸くし、エンネアは静かな表情でルシオラを見つめ、静かな笑みを浮かべたブルブランの指摘に対してアイネスは苦笑しながら同意した。
「それと……その髪と服、とっても似合っているわよ。」
「あ……フフ、その言葉は影の国の時の偽物の姉さんにも言ってもらったけど……それでも、本物の姉さんにも言ってもらえたんだから、とても嬉しいわ。ありがとう、姉さん。」
そしてルシオラに今の自分の姿を誉められたシェラザードは一瞬呆けた後嬉しそうな表情を浮かべた。するとブルブランとルシオラはそれぞれ自分達の転移術でその場から去った。
「………あんな短いやり取りでよかったのかい、シェラ君?」
「ええ。姉さんが今も生きていることを自分の目で確認できた上話す事もできたんだから、今はそれで十分よ。ふふっ、これも女神(エイドス)による運命の悪戯のお陰……といえば自称”ただの新妻”のあのハチャメチャ女神は嫌がるでしょうね。」
「シェラ先輩………」
心配そうな表情で話しかけたオリヴァルト皇子の問いかけに静かな表情で答えた後エイドスを思い浮かべて苦笑したシェラザードの様子を見たアネラスは微笑んだ。
「――――――何はともあれ戦いは終わったようですし、我々は一旦リィン少将の元に向かいましょうか。」
「……はい。」
「了解です。」
「「ええ。」」
その場の空気を読んで提案したオリエの提案にエリゼ、アルティナ、デュバリィ、アイドスは頷いてリィン達の元に向かおうとするとオリヴァルト皇子がエリゼ達に声をかけた。
「――――――エリゼ君。君の血統主義に染まった帝国貴族達やアルノール皇家に対する”怒り”や”恨み”は正当なものだ。君達シュバルツァー家もそうだが、エーデルガルト君やステラ君等と言った”尊き血を重視するエレボニアの旧い体制によって生まれた被害者達”を2度と生まない為にも今回の”黄昏”の件が解決した後エレボニア帝国や私達アルノール皇家の存続が許されるのであれば、私――――――いや、私達アルノール皇家が先頭に立って未だ旧い体制に囚われているエレボニアを変えようと思って――――――いや、”変えて見せる。”血統主義の貴族達によって支配された愚かな旧い体制を保ち続けていたエレボニアをね。」
「……オリビエ、わかっているのか?その考えの果ては―――――」
決意の表情を浮かべたオリヴァルト皇子の話を聞いたミュラーは複雑そうな表情で指摘しかけたがオリヴァルト皇子が先に答えた。
「―――――”第二の鉄血宰相”になってしまうといいたいんだろう?勿論、宰相殿のやり方はある程度参考せざるを得ないだろうが……――――――それでも私は決して”第二の鉄血宰相にはならない。”3年前のリベールとエレボニア、メンフィルの国境でゼクス先生の前で宣言した言葉――――――”ハーメルのような欺瞞を繰り返すことは許さない”事を破らない為にもね。そしてその”欺瞞”の中には今回の”黄昏”の件も当然含まれている。」
「オリビエ…………」
「フフ、今の殿下のお姿を夫やゼクス将軍閣下が目にすればお二人とも殿下が逞しく成長なされたと喜ばれるでしょうね。」
オリヴァルト皇子の決意を知ったミュラーが静かな表情でオリヴァルト皇子を見つめている中、オリエは微笑みながら答えた。
「それと”黄昏”の件が解決した後アルノール皇家全員でユミルを訪問して君達シュバルツァー家に男爵閣下がリィン君を養子にした事で起こった様々な出来事の件に内戦、今回の件に対する謝罪は当然として、リィン君達の留学時代に私達アルノール皇家がリィン君達から受けた恩や内戦と今回の戦争で受けた恩に関する感謝の言葉を言うつもりだ。――――――勿論謝罪と感謝の”証”として、”言葉”だけでなくシュバルツァー家にとっての”利益”となる何らかの賠償や報償も一緒にね。」
「……………………………殿下のその決意と口約束が決して揺らがず、現実にしてくださることを”かつてのエレボニア帝国貴族の一員”として、影ながら願っております。」
オリヴァルト皇子の言葉に対してエリゼはオリヴァルト皇子達に背を向けたまま答えた後アイドス達と共にリィン達の元へと向かう為にその場から立ち去った。
こうして……メンフィル・クロスベル連合による”ルーレ占領作戦”は紅き翼の介入によって、様々な想定外の結果になったとはいえ、”ルーレを占領するという作戦の目的”は成功した。ルーレ占領とノルティア州統括領主ログナー侯爵家の降伏の事実を知ったノルティア州を納める領主達の抵抗の意思は折られ……連合による降伏勧告を受け入れ、ノルティア州全土は連合に制圧されることとなった。
ノルティア州全土を制圧した連合だったが、領主や市民達を刺激しない為にもルーレ以外の街には軍を駐屯させる事はせず、ノルティア州の防衛上重要な都市の郊外に陣地を展開するに留めた。
また、エレボニア帝国軍の兵器や武装の量産を担っているラインフォルトグループ会長のイリーナ会長と今後の事についての交渉をするつもりの連合であったが、イリーナ会長はルーレにある本社どころかノルティア州のどこにも滞在していなかった為、連合は敵国であるエレボニア帝国軍の戦力の増強を防ぐという名目でイリーナ会長に話も通さずノルティア州の各地にある軍需工場を占領し、更に本社ビルも連合の監視下に置いた。
なお、捕縛されたログナー前侯爵や降伏したノルティア領邦軍は戦争が終了するまで黒竜関で謹慎することとなった。
一方、ハイデル元取締役の暗殺阻止を除けば上手くいった為、全体的に見えれば”成功”という結果を出した紅き翼であったが、その代償として七耀教会に顔が利き、また頼れる戦力でもあった守護騎士(ドミニオン)のトマスがベアトリースとの戦いによって負った重傷に加えてベアトリースとの戦いで”聖痕”を酷使し続けた事による負担で昏睡状態に陥り、更にレンがルシエルと共にリウイ達を通して七耀教会の総本山であるアルテリア法国に紅き翼の足止めを行っていたルシエル達に対するトマスの妨害行為を抗議した事によって、その抗議を重く受け止めたアルテリア法国がトマスが持つ”星杯騎士団副長”と”守護騎士(ドミニオン)”としての権限が一時凍結する事を決定するとは、この時はまだ誰も想像していなかった―――――
これでようやくルーレ篇は終わりました……ちなみに閑話として次回ともしかしたら次々回に紅き翼側の話をして、連合の次の侵攻の話を始める予定です。なお、シェラザードとルシオラの会話のシーンからのBGMは空3rdの”大切なもの”だと思ってください♪
Tweet |
|
|
3
|
1
|
追加するフォルダを選択
第119話