No.105029

とある寒い日のとある冬支度

華詩さん

気温が一気に下がり冷たい風が吹き場所によっては雪が舞い、季節はすっかりと冬の準備が整ったようです。皆様は準備はすみましたでしょうか。彼女も冬の準備をしたみたいです。

2009-11-03 20:16:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:838   閲覧ユーザー数:823

 日差しは気持ちがいい位のに、肌で感じる暖かさなく。冷たい風に身を包まれる。冬がもう間近に迫ってきた。今朝、起きたときはすごく寒かった。

 

「寒い。朝よりはいいけど。」

 

 私は一人呟き、裏庭にある物置から取り出してきた、ストーブについた半年間のホコリを払う。ビニール袋に入れておけば良かったかな。でもストーブを包める手頃なビニール袋何てないしな。そんな事を思いつつ火をいれた時に焦げ臭くないようにホコリを払っていく。

 

「おねえちゃん。なにしてるの。」

「それなに?おもちゃ?」

 

 そんな作業をしていると後ろから弟妹が抱きついてくる。この子達には寒さは関係ないみたいだ。いつものように元気に遊び回っている。二人から伝わってくる体温が心地よい。

 

「朝寒かったでしょう。だからストーブを使えるように掃除してるの。」

「すとーぶ、さわるとだめなやつ。」

 

 そう言って妹はペチペチとストーブを叩く。これが動いているときは触れないしね。近づけないように簡単な柵も周りに置いてあるし。

 

「そうだね。今は良いけど、ここが赤いときは絶対に触っちゃダメだよ。いい。」

「わかってるよ。ほら、りょうちゃんあっちであそぼう。」

 

 私が出しているものがストーブだとわかった弟は興味をなくしたみたいで、妹の手を引いて日だまりで遊びはじめる。もしかして妹が私の邪魔をしないように連れて行ってくれたのかな。そう思って見ていると声をかけられる。

 

「ホコリとれた?」

「とれたよ。後は家の中にいれるだけ。」

「一人で運べる?一緒に持とうか?」

「大丈夫だよ。灯油が入ってないから一人で持てるよ。」

 

 物置から出したとき、ストーブは思っていたより重くなかった。私も成長したもんだ。片付けをしたときは彼がいたから運んでもらったんだっけな。

 

「じゃ、お願いね。そうだコタツに出すから手伝って。」

「いいよ。これ置いたらリビングにいくね。」

 

 ストーブの周り最後に軽く拭いて部屋の中に運び込む。いつもの定位置にストーブを置き、タンクの中に灯油を補充してセットする。そしてまわりにあの子達が火傷するのを防ぐ為の柵を置いて準備完了。

 

 リビングに行くとお母さんがコタツ用の敷き布団を広げていた。今までつかっていたテーブルは見事に分解されて片付けられていた。今までご苦労様、来年の春にまた会いましょう。あとで物置にしまいにいかないと。

 

 敷かれた布団を触るとフワフワしていて気持ちよかった。取り出したときはペチャンコだったのに。日に当てるだけでだいぶ違う。

 

「昨日干しておいたから、ふかふかだね。」

「天気予報を信じて大正解。さて組み立てますか。」

 

 二人でコタツを組み立てていく。ネジで簡単にはめる事ができるのでさほど難しくはない。10分ほどで組み立て上がる。組み上がったものに掛布団をしいて上に机板をおいて完成。コンセントを繋げて電源をいれる。お母さんと並んでコタツに入る。足元から暖かさが伝わってくる。

 

「温かいね。あっ、お母さんあれ、見て」

 

 そう言って庭を指差す。差した先では弟と妹が手を繋ぎ踊っていた。ステップはでたらめだけど形はワルツの形をしている。二人とも楽しそうに庭で踊っていた。何度見ては二人が踊っているのは可愛い。

 

「相当、気に入ったのね。そう言えば、どうだったの文化祭。」

「楽しかったよ。」

 

 二人を見ながら、あの日の事を思い出しつつ、一言そう答えた。長い一日だった気もするしあっという間に終わったような気もしている。

 

「もう、アンタはいつも詳しく教えてくれないんだから。真一君とは何か良い事会った。隠さず教えなさい。」

「えっと、お母さんの想像にお任せします。」

 

 そう言って私が濁すとお母さんはすかさず言葉を続けた。

 

「という事は、キスはしたのね。あとは?」

 

 なんでわかるのかな。私がビックリしているとお母さんは横で面白そうに笑っていた。

 

「何でもお見通しよ。どこでしたの、教室?人気の少ない展示室?校舎裏?屋上?」

「踊ってる時だよ。」

 

 私がそうボソッと答えると、今度はお母さんがビックリしたようだった。それはそうだろうな、当事者の私でさえも予想しなかった場所だし。その時の話を一通りし終えるとお母さんは嬉しそうにしていた。

 

「真一君も大胆な事するわね。受けたアンタもだけど。さて、お茶にしようか。コーヒーでいい。アンタはアイスが良いわよね。」

「私も温かいので良いよ。なんで。」

「だって顔真っ赤だもん。暑いでしょう」

「それはお母さんの所為でしょう。」

 

 私がそう言って反論するとお母さんはすかさずコタツからでてキッチンに向かう。

 

「はいはい、じゃ、二人を呼んできて。おやつだよって。」

「わかった。でもコタツからでるのは腰が重くなるね。」

「今そんな事いってると、真冬が大変よ。」

 

 そんなやりとりをしながら私はコタツから出て、リビングのガラスドアを開ける。外から吹く風がコタツの温かさと、恥ずかしさから来た熱とで火照っていた頬を優しくなでる。

 

「よう君。りょうちゃん。おやつだよ。」

「「は〜い。」」

 

 二人は大きな返事して、遊ぶのをやめて家の中に入っていく。ドアを閉めてカーテンを引く前に、ふっと思い空を見上げると雲がすごい勢いで動いていた。上空は凄い風が吹いているみたいだ。今年は寒さと共にどんな冬がやってくるのかな。暖かくて幸せが数多くやってくると良いけど。

 

fin


 
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