No.1040678

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第102話

2020-09-11 00:27:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2183   閲覧ユーザー数:1636

 

 

 

~トールズ士官学院・グラウンド~

 

「あ、あの6枚の翼の女性達はまさかファーミシルス大将軍と同じ……!」

「ええ……上級悪魔の更に上の位階の存在にして”貴族悪魔”とも呼ばれる上級魔族――――――”飛天魔族(ラウマカール)”よ……!」

「しかも”飛天魔族”と共にいる睡魔族からも相当な魔力が感じられますね……」

「……恐らく彼女達は高位の睡魔族なのでしょうね……」

”飛天魔族”を見て何かに気づいたツーヤは信じられない表情を浮かべ、ツーヤの推測に頷いたプリネは厳しい表情を浮かべて”飛天魔族”を見つめ、ステラとエーデルガルトは警戒の表情で周囲の睡魔族を見つめた。

「……プリネ皇女殿下、念の為に聞きますが現在自分達の目の前にいる”飛天魔族”はファーミシルス大将軍閣下自らが率いられる”飛天魔族”の精鋭部隊に所属している方達ではありませんよね?」

「私もファーミシルス様直々が率いられている”飛天魔族”の精鋭部隊の方々の顔を全員把握はしていませんが……間違いなく、目の前にいる”飛天魔族”はファーミシルス様の部隊――――――いえ、メンフィル帝国とは何の関りもない方々です。もし、ファーミシルス様の部隊を動かすのであれば必ず私達の下にも連絡が来るはずですし、そもそも彼女達がファーミシルス様の部下の方々ならばお父様の娘の一人であり、それも基本的に本国の”帝城”であるマルーダ城にいる私の顔を知らない訳がありません。」

真剣な表情で”飛天魔族”達を見上げながら訊ねたリィンの疑問にプリネも真剣な表情で答えた。

 

「何故天使、魔族、人間が協力しているのかはわからないが、早々に立ち去れ。」

「――――――それを判断する前にいくつか聞きたい事がある。貴女が”飛天魔族”や”睡魔族”を率いる立場の人物でいいのか?」

飛天魔と睡魔達を率いていると思われる白と黒の6枚翼の飛天魔に警告されたリィンは真剣な表情で飛天魔を見つめて問いかけた。

「いかにも。私の名はベアトリース。そういう君はこの混合軍を率いる立場の人物か?」

飛天魔――――――ベアトリースはリィンの問いかけに頷いた後リィンに問い返した。

「ああ……俺の名はリィン・シュバルツァー。現在この街を占領する為に襲撃をかけたこの軍を率いる立場の者で……そして貴女達の背後にある建物――――――”トールズ士官学院”に所属していた者だ。ベアトリース、もしかして貴女達は何者かによる、もしくは事故の類による”転位”によってこの場に突然”転位”させられたのか?」

「……何故それを知っている。まさか、私達の今の状況に何らかの関りがあるのか……?」

ベアトリースの問いかけに答えたリィンはベアトリースに自身の推測で問いかけ、問いかけられたベアトリースは目を細めてリィンを見つめて問い返した。

 

「俺達の世界にそういう”前例”があるのを偶然知る事ができて、当てずっぽうで貴女達の今の状況をその”前例”に当てはめて聞いただけさ。」

「”俺達の世界”……?まるで私達の世界と君達の世界は違うような言い方だったが、まさかここは異世界なのか……?」

「ああ――――――」

自分の言葉に眉を顰めているベアトリースの疑問に頷いたリィンはゼムリア大陸や”零の至宝”の件を隠して原因不明でゼムリア大陸とディル=リフィーナが繋がった事を説明した。

「……………俄かには信じがたいが、私達が今まで見た事もない建造物に先程私達が殲滅した不可思議な甲冑を操る人間の軍が今私達の目の前にあるのだから、君のその話だけで納得はしていないが、理解はした。」

「……やはり、彼らは貴女達が殲滅したのか。それに先程の口ぶりからすると、そちらの天使達の状況も貴女達によるものか?」

「ああ。天使達も私達と同じようにどこからか転位させられて状況に困惑していたようだが……先程殲滅した者達のように襲い掛かったから、迎撃したまでの事だ。」

「……っ!という事は生き残った私の部下達をこのようにしたのは貴女達によるものだったのですか……!」

リィンの問いかけに答えたベアトリースの話を聞いたルシエルは唇を噛み締めて怒りの表情でベアトリース達を睨んだ。

 

「……突然襲い掛かってきた正規軍、天使達を迎撃した事は理解できるのですが……何故、天使の方達は生かした状態で無力化したのですか?特に魔族である貴女方にとって天使族は最初から敵対勢力のはずですが。」

「敵対勢力か。繰り返されるだけで終着点の見えない戦闘に意義があるとは思えない。ただ魔族だからと敵対するだけならば愚かとしか言えない。また、そちらの天使達は私達が先程殲滅したその”エレボニア”という国に所属している人間達と違って、最初から士気が低かった。結果が決まっている争いを行うこともそうだが、その争いで命を奪う意義がないと判断し、”止め”までは刺さなかっただけだ。」

(………随分と理性的な性格ですよね?確か大概の飛天魔は飛天魔特有の戦闘思想に染まっているという話ですから、問答無用で戦闘に発展すると思ったのですが……)

(そういえばお父様やファーミシルス様達からも年若い飛天魔は戦闘思想に染まっていないという話を聞いた事があるわ。それを考えると、もしかしたら彼女は外見通り年若い飛天魔なのかもしれないわね。)

ステラの問いかけに答えたベアトリースの答えを聞いて不思議に思ったツーヤはプリネに念話を送り、ツーヤの念話を受けたプリネは静かな表情でベアトリースを分析していた。

 

「………………………ベアトリース、俺達が所属している国――――――”メンフィル帝国”は君達の世界であるディル=リフィーナにある国の一つだ。よって、君達を”保護”して可能な限り君達の故郷に帰還できる協力は可能だ。だから、できれば俺達の”保護”を受け入れて欲しいのだが。」

「に、兄様!?」

「よりにもよって”飛天魔族”に”保護”を持ちかけるなんて、何を考えているの?”飛天魔族”のプライドの高さはリィンも訓練兵時代に学んでいるでしょう?」

ベアトリースの話を聞いて少しの間考え込んだ後ベアトリースにある提案をしたリィンの提案を聞いたその場にいる多くの者達が驚いている中エリスは驚きの声を上げ、エーデルガルトは戸惑いの表情でリィンに訊ねた。

「勿論その件を忘れた訳じゃない。だけど、少なくてもベアトリースは”一般的な飛天魔族”には当てはまらない事は先程のやり取りをみればわかるだろう?」

「それはそうだけど………」

リィンの指摘を聞いたエーデルガルトは戸惑いの表情でベアトリースを見つめた。

 

「断る。君達は”エレボニア”とは違うようだが、だからと言って信用する理由にはならないし、そもそもこの世界に来る前の私達がいた領域はあくまで”拠点”として利用していただけで、”故郷”と思える程思い入れがある訳でもない。」

「そうか………とは言っても、何もかもが違うこの世界で活動する事は貴女達にとっては色々と不都合じゃないのか?例えば先程貴女達によって殲滅された正規軍が貴女達によるものだとエレボニアが把握すれば、エレボニアはその”報復”の為に貴女達に軍を差し向けると思うが。」

「その時は迎撃するまでの事だ。数は私達を上回ろうと、所詮は力無き存在である”人間”だ。人間が束になった所で、私達”飛天魔”と対抗する等”不可能だ。”」

「……なるほど。だけど俺達もエレボニアとの戦争を勝利する為に、この街を制圧しなければならない。」

ベアトリースの頑なな答えを聞いたリィンは真剣な表情でベアトリースを見つめて答えた。

「……ほう。という事は君達は私達が君達にとってはあまりにも強大な相手である私達を制圧してでも、この拠点を制圧するつもりか?」

リィンの答えを聞いたベアトリースは目を細めてリィンに問いかけた。

 

「いや―――――”飛天魔族”である貴女達とまともにぶつかり合えば、勝利できたとしてもこちらの被害が今後の軍事作戦に支障が出る程の被害になる可能性が高い事を理解しているから”俺はそのつもりはない。”だから提案だ、ベアトリース。それぞれの部隊を率いる”将”同士――――――つまり、貴女と俺の一騎打ちで貴女が敗北すれば、貴女を含めた部隊は俺達に投降してくれ。逆に俺が敗北すれば、俺が率いる部隊はこの場から退く。」

「リ、リィンさん、一体何を……!?」

「何……?何故そのような”提案”を考えた?」

ベアトリースの問いかけに対して答えたリィンの驚愕の提案にその場にいる多くの者達が驚いている中プリネは信じられない表情で声を上げ、ベアトリースは眉を顰めてリィンに訊ねた。

「貴女達”飛天魔族”は数ある様々な魔族達の中でも凄まじい使い手ばかりであると同時に、その強大な力の持ち主である事から”誇り”も人一倍高く、決して嘘はつかない種族である事と聞いている。だから俺はこの部隊を率いる者として、俺の部隊の被害を最小限に抑える為に提案した。この提案は俺もそうだが、貴女にも適用されることになるから、突然異世界であるゼムリア大陸に転位させられた事で現状の戦力で状況を何とかしなければならない立場である貴女にとっても”利”はある提案だと思うが。」

「よりにもよって、このタイミングですか、リィンさん……」

「フウ…………まさか、”飛天魔”相手にも発揮するとはね………仲間を守る為に無茶を仕出かすその癖は。」

「………なるほど。だが君は自分が今言った事がどれだけ無謀な事だと理解しているのか?力無き種族である”人間”の君が”飛天魔”である私相手に勝利する等ありえな――――――」

リィンの説明を聞いたステラとエーデルガルトが呆れた表情で溜息を吐いている中、リィンの説明に納得したベアトリースが静かな表情でリィンを見つめて忠告したその時

「神気―――合一!!」

「な………その姿や凄まじい魔力は一体……!?」

リィンは”慈悲の大女神の力”を解放した姿になり、ベアトリースは”力”を解放した状態のリィンを見て一瞬絶句した後驚きの表情を浮かべてリィンを見つめた。

「生憎だが俺は”普通の人間”じゃない。これでも過去何度か”魔人”と戦い、生き残ってきた。だから、”飛天魔”の貴女との一騎打ちも”俺にとっては決して勝機がない戦い”ではない。」

「………………………いいだろう。どのような”力”があろうとも所詮は人間如きである君がそんな大それたことを実現できるかどうか、証明してみせろ。」

リィンが太刀をベアトリースに向けると少しの間目を伏せて考え込んでいたベアトリースは全身に凄まじい闘気や魔力を纏い、自身の得物である連接剣を構えてリィンと対峙した。

 

「リィンさん、”一騎打ち”をするのでしたらせめて私が代わります!”灰獅子隊”を率いる”将”であるリィンさんがここで無理をする必要はありません!」

その時プリネが慌てた様子でリィンに駆け寄ってリィンにある事を申し出たが

「殿下のお心遣いはありがたいですが、それはできません。ベアトリースが俺の提案を受けた以上、俺もその提案を破る訳にはいきません。”飛天魔族”の誇り高さについては大将軍閣下とある程度親しい関係を築いている殿下の方がよくご存じなのでは?」

「それは………」

リィンに指摘されると複雑そうな表情で答えを濁した。

「それと………(”本陣”にいるリウイ陛下に通信で今の状況を説明して、無理を承知で大将軍閣下率いる精鋭部隊をこちらの援軍に向かわせる事、俺とベアトリースの勝負に決着がつくまでは一騎打ちに介入しない事、介入のタイミングはもし俺が一騎打ちで敗北が濃厚になり、命を奪われそうになった時である事を要請してください。)」

「!わかりました……どうか、御武運を。」

そしてリィンに小声である事を伝えられると表情を引き締めて頷いた後リィンから離れた。

「兄様……」

「大丈夫だ、エリス。お前達をこれ以上悲しませない為にも、絶対に無理はしないさ。」

心配そうな表情を浮かべたエリスに見つめられたリィンは苦笑しながら答え

「はい……!どうか、ご無事で……!」

リィンの答えを聞いたエリスはその場で祈りをささげた。

 

「一騎打ちを申し出ていながら、待たせてしまってすまないな。」

「いや、親しい相手を心配するのは君達”人間”によくある出来事で、彼女達は君の無謀な行動を諫めるか心配している事は理解しているのだから、気にしていない。」

ベアトリースと対峙したリィンはベアトリースに謝罪し、謝罪されたベアトリースは静かな表情で答えた。

「気遣いには感謝する。――――――だからといって、手心を加えるような”飛天魔”である貴女に対して失礼な事はできないし、そもそもそんな余裕はないが。」

「その通りだ。むしろ手心を加えるような事ができるのは私の方だ。」

苦笑しながら答えたリィンの言葉にベアトリースは静かな表情を浮かべて同意した。

 

「灰獅子隊軍団長リィン・シュバルツァー………――――――参る!!」

「来るがいい――――――”飛天魔”である私に一人で挑む無謀な人間よ!」

そして二人は一騎打ちを開始した!

 

~メンフィル帝国軍本陣~

 

「…………ああ……………ああ………わかった。すぐに向かわせていつでも介入できるように配備しておく。まさかこのタイミングでも”並行世界の零の至宝”による介入があるとはな………」

「あなた?その口ぶりですと何か想定外の出来事があったのですか?」

リィンとベアトリースが戦い始めたその頃誰かとの通信を終えて真剣な表情で考え込んでいるリウイが気になったイリーナは不思議そうな表情で訊ねた。

「ああ。先程の通信はプリネからなのだが――――――」

そしてリウイはイリーナ達にプリネから聞いた通信内容を説明した。

 

「ええっ!?という事は以前の”灰獅子隊”の作戦でリィン・シュバルツァーさん達が保護してリィンさん達の勧誘によってそのまま指揮下に入った”能天使”の部下の天使達に加えて、リィン・シュバルツァーさんが今戦っている飛天魔が率いている魔族達まで並行世界のキーアさんが……!?」

「並行世界のキーアさんが何を考えてそのような事をしたのかを知る余地はありませんが……それよりも、その飛天魔達を率いているベアトリースという飛天魔と単身で戦っているリィンさんが危険なのでは?」

「お姉様の言う通りよですよ、あなた……!プリネの要請に応えてすぐにリィンさん達の援軍としてファーミシルス様達を送るべきです……!」

「ご命令とあらば、私達はいつでも出陣(で)られます、リウイ様。」

リウイの説明を聞いたシルフィエッタは驚き、エクリアは真剣な表情で指摘し、エクリアの指摘に頷いたイリーナは真剣な表情でリウイを見つめて意見し、リウイ達の話を聞いていたファーミシルスは静かな表情で申し出た。

「――ならばすぐにリィン達の援軍に向かえ。――――ただし、介入のタイミングは一騎打ちでリィンの敗北が濃厚になり、リィンが殺されそうになったその時に介入してくれとのリィンの要望との事だから、それまでは士官学院にいる飛天魔達に気づかれない距離で待機しておいてくれ。」

「え……何故、リィンさんはそのような要請を………」

リウイのファーミシルスへの指示を聞いたペテレーネは不思議そうな表情を浮かべた。

 

「恐らくだけど、一騎打ちに応じたそのベアトリースという飛天魔の”誇り”を穢さない為でしょうね。それにしても……リィンがそのベアトリースという飛天魔に勝利する事ができれば、そのベアトリースという飛天魔が自分の軍門に下る可能性が高い事はリィン自身は気づいているのでしょうか?」

ペテレーネの疑問に答えたファーミシルスは口元に笑みを浮かべてリウイに問いかけ

「飛天魔の”誇り”を知っていたとの事だから、その可能性がある事も知ってはいると思うが……今はそれを気にしている時ではない。ファーミシルス、俺達の代わりに見届けてくるといい―――――”零の至宝”によって俺達メンフィルに所属させられたことで”運命”が大きく改変された”灰色の騎士”という”英雄”が”飛天魔”を打ち倒す事ができるかどうかを。」

「ハッ!」

問いかけられたリウイは静かな表情で答えた後ファーミシルスに指示し、指示をされたファーミシルスはリィンとベアトリースの一騎打ちを見届ける事が楽しみであるかのように口元に笑みを浮かべてリウイに敬礼した。

 

少し前―――

 

リィン達がベアトリース達と遭遇する少し前、セレーネ達は旧校舎に到着していた。

 

~旧校舎~

 

「……さすがに旧校舎には兵を配置していなかったようですね。」

「……まあ、リィンさん達が攻めている裏口と違い、街道と直接繋がっている訳ではありませんから、普通に考えれば森を抜けてまでこちらに潜入するという考えには及ばないかと。」

森から旧校舎の前に出て静かな表情で呟いたエリゼの言葉にアルティナは自身の推測を指摘し

「森を抜けての奇襲なんて、異世界(ディル=リフィーナ)では定石の”戦術”の一つなのに、その可能性すらも考えないなんて俺達からすれば常識を疑う行為だな。」

「……ゼムリア大陸はディル=リフィーナと違い、導力技術――――――”科学”が発展した事で戦争の”主力”は”兵器”である事から、兵器の運用に支障が出る地形を”戦場”としては選ばない事による”驕り”と”弊害”によるものだろうな。」

「ま、要するに機甲兵や戦車とかいう”鉄屑”に頼っている方が馬鹿って事だね。」

「それをNO.Ⅰと同レベルの”化物”である貴女が言っても何の説得力もないと思われるのですが?」

フォルデの感想に答えたレーヴェの話を聞いて呟いたエヴリーヌの言葉にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中デュバリィはジト目で指摘した。

 

「アハハ……それよりも、先程から気になっていたのですが何故この周辺にも黒焔のプレロマ草が咲き乱れているのでしょうね……?確か黒焔のプレロマ草が多く咲いている場所は人気(ひとけ)のない場所ばかりだという話でしたが……」

デュバリィの言葉に苦笑したセレーネは不安そうな表情を浮かべて自分達の周囲に咲き乱れている黒焔のプレロマ草を見回し

「フム、確かに言われてみれば……」

「恐らくは”呪いの大元”の帝都(ヘイムダル)に近い事が関係しているとは思うけど……確かあの旧校舎は”灰の騎神”が眠っていた”試練の場”だったわよね?もしかしたらそれも関係しているかもしれないわね。」

「……気にはなる話ですが、迅速に作戦を遂行する為にもすぐにこの場から離れた方がいいでしょうね。」

「ええ。――――――それでは行きますわよ――――――」

セレーネの言葉に頷いたアイネスは周囲を見回し、エンネアは真剣な表情で考え込み、静かな表情で呟いたオリエの意見に頷いたデュバリィが号令をかけたその時

 

久方ぶりの……迷い子か……感じるぞ……強き光……我の元へ……

 

「何者……ッ!?」

「一体どういう事ですの……!?この中の誰も気配すら感じ取れずに敵の接近を許すなんて……!」

「アルティナさん、私達の周囲は現在どうなっているのですか?」

「少々お待ちください……―――!?クラウ=ソラスが感知できる限界の範囲までサーチしましたが、何の反応もありません……!」

「――――――?」

突如何者かの声が聞こえ、声を聞いたエンネアは警戒の表情を浮かべて周囲を見回し、デュバリィは困惑し、エリゼに訊ねられたアルティナはクラウ=ソラスに周囲をサーチさせたが何も反応がない事にクラウ=ソラスと共に驚いていた。

「……?何でしょう、この違和感は……?」

「この異質な気配はまさか………」

「ええ……―――”はぐれ魔神”でしょうね。」

「隠れていないてで、とっとと出てきたら!?エヴリーヌ達がたっぷり遊んであげるよ!」

仲間達と共に周囲を見回していたセレーネは不安そうな表情をし、ある事に気付いて呟いたユリーシャの言葉にベルフェゴールが頷き、エヴリーヌが周囲を見回して声を上げたその時、周囲のプレロマ草が妖しく輝いて瘴気を発生させてセレーネ達を包み込んだ。そして徐々に視界が開けたセレーネ達の目に映ったのは、これまでいた場所とは似ても似つかない異様な空間だった。

 

~吸雷の暗礁領域~

 

「なあっ!?」

「ここは一体……旧校舎とは明らかに異なる場所のようですが……」

「感じとしては”金の騎神”を入手したときの”太陽の砦”の”試練の場”のような異空間に近いようだが……」

突如変わった周囲の光景を見たデュバリィは驚き、アルティナは周囲を見回して困惑し、アイネスは真剣な表情で考え込んでいた。

 

「―――どうやら”歪み”の中に飲みこまれたようね。」

「ベルフェゴール様はこの状況について何かご存じなのですか?」

静かな表情で呟いたベルフェゴールの言葉が気になったエリゼはベルフェゴールに訊ねた。

「ええ。”歪み”とは世界の理から逸脱した、私達の住まう世界とは異なる”領域”よ。多分さっき聞こえた声の主がこの”領域”を支配しているんでしょうね。」

「―――離れていても、この”領域”の主とやらが相当の力を持っている事が感じられます。……その”領域”から脱出するにはどうすればいいのでしょうか?」

ベルフェゴールの説明を聞いたオリエは静かな表情で呟いた後ベルフェゴールに訊ねた。

 

光よ……強き、光よ…………我が元へ、来るがいい…………

 

するとその時再び声が聞こえて来た。

「また聞こえてきたわね……」

「エヴリーヌ達に喧嘩を売るなんて、どこのはぐれ魔神か知らないけど、いい度胸をしているね、キャハッ♪」

声を聞いたエンネアは警戒の表情で周囲を見回し、エヴリーヌは不敵な笑みを浮かべた。

「―――この様子だと私達を逃がす気はないようね。そうなるとこの”領域”の主を撃破するか、私達の世界に通じる”亀裂”を見つけるしかなさそうね。」

「我が主達よりこの身達に与えられた使命を果たす為にも、できれば無駄な戦闘は避けたいですから、”亀裂”を見つける事を最優先にした方がよさそうですね。」

「ユリーシャちゃんの言う通り、”はぐれ魔神”との戦闘とかマジで勘弁してほしいぜ……」

ベルフェゴールの説明を聞いたユリーシャは真剣な表情で今後の方針を口にし、フォルデは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

その後探索を開始したセレーネ達は”亀裂”を探したが、”亀裂”は一向に見つからず、ついに最奥に到着するとそこにはおびただしい魔物の屍があった。

 

「足りぬ……この程度の光では、我は充たされぬ……」

声が聞こえた後、魔物達の骸の中から、紫電を纏う荘厳なる天使が現れた!

「ええっ!?て、”天使”!?」

「第四位の天使―――” 主天使(ドミニオン)”ね。」

「ええ……ですが、魔物達を喰らっているのですから、天使ではなくもはや”魔神”と呼ぶべきでしょう。」

天使を見たセレーネは驚き、静かな表情で呟き、ユリーシャは厳しい表情を浮かべて天使を睨み

「―――天使殿。私達は貴方と敵対するつもりはありません。どうか私達をこの領域から解放して頂けないでしょうか?」

オリエは一歩前に出て天使に問いかけた。

 

「光……より強き……光を……」

しかし天使はオリエの問いかけに答えず、鋭い眼光でオリエ達を捉え、感じるのは敵意だけだった。

「問答無用という訳ね。」

「どうやら話が通じる相手ではなさそうだな。」

「兄様達の下に帰る為に、目の前の天使を撃破するしかないようですね……!」

「くふっ♪久しぶりに遊びがいのありそうな相手だね♪」

「やれやれ……”並行世界の零の至宝”は何を考えて奴と俺達を戦わせたのか問い詰めたいな。」

「ハア……できれば戦わずに脱出したかったんだけどな……」

天使の様子を見たエンネアとアイネスは警戒の表情で呟き、エリゼは真剣な表情で呟き、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべ、レーヴェは呆れた表情で溜息を吐き、フォルデは疲れた表情で溜息を吐いた後それぞれの得物を仲間達と共に構えた。

 

「―――我が名はバルディエル。我は……光さえも喰らう、雷天の覇者……愚か者共よ、我が雷光により、その身を焼くがいい……!」

天使―――バルディエルは名乗った後戦いの構えをし

「雷天の覇者だか、何だか知りませんが己の私欲の為に私達をこの場に呼び寄せたその愚かさ………その身にたっぷりと刻んでやりますわ!――――――灰獅子隊奇襲B部隊、目の前の狂った天使をさっさと片づけますわよ!」

対するデュバリィも剣をバルディエルに突き付けて宣言した後号令をかけ

「おおっ!!」

デュバリィの号令を合図に仲間達は”はぐれ魔神”―――”雷天の覇者”バルディエルとの戦闘を開始した――――――!

 

 

という訳で予告していたコンキスタからの新たな電撃参戦キャラはベアトリースでした!実はエベリエナルも考えていましたが、既に天使が3人もいるのでベルフェゴール達とは全く被らないベアトリースにしました。(正確に言えばエベリエナルも天使ではないですがw)そしてもう一人の使い魔キャラはバルディエルでしたwwなお、次回の戦闘BGMはコンキスタの”天魔は永久の交戦を極める”だと思ってください♪

 

 

それと創は現在チャプター3が終わりましたが……とりあえず終盤のある人物とリィンの一騎打ちを見て思った事……リィンも正真正銘マクバーンやアルゼイド子爵と同じ化物キャラの仲間入りじゃね?と思いましたww後何気にあのキャラ相手に気合と仲間の連携で一瞬とはいえ乗り越えたロイドも凄いとしかww


 
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