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玄輝さんが席を立った後、私たちはしばらく話をしていたけどもその内話すことが無くなってしまい、沈黙することになってしまう。
(……玄輝さん、遅いなぁ)
ぼんやりと思いながら愛紗さんの顔を見る。
(……やっぱり愛紗さんの髪、きれいだなぁ)
巷では“美髪公”とまで言われるほどの美しい黒髪を見て小さくため息を吐いた。
(…………いいなぁ)
こんな時こそこっそり聞けばいいのに、どうにも勇気が出ない。聞いたら教えてくれるだろうし、色々としてくれるとは思うのだけど、
(はぁ……)
自分の意気地の無さに思わず別のため息を吐きそうになるけど、それをぐっと堪えて髪から目線を下げる。ちょっと目を逸らしたかった。
(……あわわ)
でも、それは失策だった。だって、髪の下にあるものと言えば……
「ん? どうしたのだ?」
「……なんでもありません」
私にとって一番の急所ともいえる短所。胸に視線が行ってしまう。
(どうやったら一体その大きさになるんだろう……?)
朱里ちゃんとも何度も研究、議論を交わしているけども結局結果は出ていない。そもそも、武器を扱うときに邪魔にならないのかな? と半ば恨めしい気持で疑問に思う。
(はっ?!)
思わず出てきた邪念を振り払って深呼吸をする。
(いけない、いけない……)
私はまだ成長途中。そう、成長途中なんだと自分の心をなだめて、今度は視線をお茶に向ける。そこには自信無さげな自分の顔が映り込む。
(…………私、どうしてこうなんだろう)
どうしても自分に自信が持てない。それは玄輝さんを好きになってから日に日に大きくなっていく気がする。
(……もう少し、男の人のことを知っておけば変わったのかなぁ)
こんなにも“好き”が苦しいなんて知らなかった。
(…………愛紗さんは、どうなんだろう?)
玄輝さんは愛紗さんが好き、なんだと思う。確かに愛紗さんは魅力的だし、きれいだし、強いし……
(…………………でも、それで私は玄輝さんをあきらめられるの?)
自分に問いかけると、心の中に負けたくないって気持ちがある。あきらめたくない。
(……じゃあ、言葉にしないと)
心にできた強い想いが、私の口を押し開けてくれる。
「あ、あの、愛紗さん」
「ん、何だ? 雛里」
「その、あ、愛紗さんは玄輝さんのことどう思っているんですかっ」
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「その、愛紗さんは玄輝さんのことどう思っているんですかっ!」
「…………え、ええ?!」
雛里からの突然の言葉に思わず動揺してしまう。
「な、なにをいきなり」
「わ、私は、玄輝さんが男の、男の人として好きでしゅ!」
「なっ!? なな、な」
あまりの事に自分でも驚くような声が口から飛び出る。
「愛紗さんは、どう、なんですか?」
「そ、それは……」
雛里に問い詰められ、たじろいでしまう。
(ひ、雛里が玄輝殿を好き、その、殿方として……)
正直、考えたこともなかった。でも、言われれば思い当たることも多々ある。それに、今日の軍議の時の一連の事は私でも“もしや”とは思ったが、こうも目の前で打ち明けられるとは思いもよらなかった。
(し、しかし、私が玄輝殿を好きかだなんて……)
そんなのは……
「玄輝殿は、その心強い戦友と」
「……本当、ですか?」
「……うぅ」
雛里からの視線に思わずたじろいでしまう。戦場でこのようなことはありはしないのに。
「…………私は」
どう、なのだろう? 戦友という想いは、嘘ではない。でも、ただの戦友と言ってしまうと今の心にはもやが出てしまう。
(だ、だが、それ以上となれば……)
思いつくのは、想い人……?
(……あ)
心がスッとしてしまう。まるで精巧な絡繰り細工のように、流麗とも言えるほどに。
(あ、あ、ああ……)
気が付いてしまった。今までは、戦友と思ってごまかしていたものに気が付いてしまった。途端に今までの事を思い出して顔に血が集まるのがわかる。
「私は、玄輝殿を……」
そこまで口にしたところで、
「すまん、今戻った」
運悪く、玄輝殿が戻ってきてしまった。
はい、どうもおはこんにゃにゃにゃちわ。 戻ってきた風猫です。
またぼちぼち更新をしてこうと思いますので、よろしくお願いいたします。
誤字脱字などございましたら、コメントのほうにお願いいたします。
では、また次回。
あと、コロナ許すまじ。
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白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。
大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
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